893 / 2,876
五度目の別荘 XⅤ
しおりを挟む
幾つかスイカを切り取って別荘に戻った。
俺は寝ている響子と六花の隣にロボと横たわった。
いつの間にか寝てしまったようだ。
響子が俺にキスをしていた。
「おお、俺の最愛のツルツルか」
「エヘヘヘヘ」
響子が俺に抱き着いて、顔にキスを一杯する。
「モジャモジャも起こしてやるか」
一番モジャモジャの子を顔に乗せる。
「うーん、重いー」
ロボが六花の顔を舐める。
六花はロボをどかせた。
「起きたか?」
「はい」
俺の顔を見て、ニコニコした。
俺は顔を洗い、下に降りた。
みんなで映画を観ていた。
『初恋のきた道』だった。
栞と鷹がソファに座り、子どもたちが椅子を集めて観ていた。
「お前ら、ついにこれを観てしまったか」
「「「「「?」」」」」
「鷹と前にここで観たんだよな?」
「はい。石神先生は、子どもたちには見せたくない、とおっしゃってました」
「「「「?」」」」
「タカさん、いい映画だったよ?」
ハーが言った。
俺は、あの後ろで手を組むポーズをした。
「ハー、やってみろ」
ハーがやった。
「鷹、やっぱりとんでもなくカワイイぞ!」
「はい!」
鷹が大笑いした。
鷹がみんなに、このポーズをされたら俺が怒れなくなると説明した。
みんなが笑った。
栞が大笑いした。
お茶を飲んで、夕飯の支度をした。
俺は鰻係だ。
バーベキューなので米は炊かないつもりだったが、一升を炊く。
亜紀ちゃんが俺と一緒に捌き方から一通りの調理を覚える。
鷹の陣頭指揮で柳と他の子どもたちがバーベキューの準備を。
栞は吸い物を作った。
「ウナギの肝って、なんかエイリアンみたいだよね」
「日本に来た時にギーガーが鰻を喰ったんだろうよ」
「へー」
知らん。
俺は料理をしながら栞とギーガーの「バイオメカノイド」などの話をし、ズジスワフ・ベクシンスキーの絵画の話をした。
「ギーガーも好きなんだけど、ベクシンスキーというポーランドの画家がいてな」
「へー、知らない」
「徹底して恐怖と絶望を描いた画家なんだ。しかもこの世界ではない景色でな」
「ふーん」
栞は知らないので、感想の言いようもない。
「それで俺はさ、ベクシンスキーの作品の情景を全部見たことがある気がするんだよ」
「そうなんだ」
栞は一段落したので、スマホを持って来て検索した。
「うわ! なにこれ!」
「な、凄いだろ?」
栞は魅入っている。
「気持ち悪いのかもしれないけど、なんだか引き込まれるね」
「ああ」
夕飯が出来、みんなでワイワイと食べた。
最初に鰻が狙われる。
俺は先に皇紀に三枚渡し、ゆっくり喰えと言った。
白焼きも渡したが、半分亜紀ちゃんに喰われた。
「皇紀に喰わせてやれって言っただろう!」
「ワハハハハハー!」
まあ、こいつらなりのコミュニケーションなのだろう。
皇紀も笑っていた。
響子にも小さな茶碗で鰻を食べさせ、白焼きを俺と一緒に食べる。
響子は焼き鳥も好きだが、和食の「たれ」が好みのようだった。
美味しそうに食べている。
六花はもちろん幸せそうな笑顔で頬張っている。
栞と鷹もニコニコして食べていた。
鰻はすぐに食べつくされ、本格的なバーベキューになった。
亜紀ちゃんが皇紀に焼いた肉を渡そうとしている。
泣き顔になっている。
「皇紀、これあげる」
「え?」
「ほら!」
「え、いいよ」
「なんでよ?」
「自分で好きな焼き方で食べるから」
「てっめぇー!」
亜紀ちゃんが強烈な回し蹴りを放ち、皇紀が必死に防いだ。
「何やってんだよなぁ」
「なんか、いつも通りね」
響子が見ていた。
二匹のケダモノが争っているうちに、双子と柳がどんどん喰っていた。
響子は頑張って吸い物の肝を食べた。
顔をしかめ、口の中で咀嚼する。
「!」
「どうした?」
「なんか分かった!」
「そうか、響子はカワイーなー」
「ウフフフ」
亜紀ちゃんが他の連中にも攻撃を始めた。
一気に騒がしくなる。
「お手!」
俺が宣言し、子どもたちと柳が離れた場所に立つ。
五人が後ろ手に組んだポーズをする。
「分かった! 解除! 仲良く喰え!」
みんなが笑った。
食事が終わり、片づけをしながら、俺は花火の準備をした。
みんなで楽しんでいると、ロボがまたパチパチ始めた。
「これはそういんじゃねぇからぁー!」
必死に止めた。
俺は楽しそうに花火をしているみんなを見ながら、コーヒーを飲んだ。
栞が隣に座る。
「楽しいね」
「ああ」
栞はミルクをピッチャーから注いで飲んだ。
「石神くんって、花火をしてると時々寂しそうな顔をするよね」
「そうか?」
「うん。どうしてかなって思ってた」
モモの話は誰にもしていない。
「まあ、思い出すことがあるんだ」
「そうなんだ」
鷹もこちらへ来た。
コーヒーをカップに注いで、一緒に座った。
「石神先生、どうかされました?」
鷹が心配そうに聞いて来る。
自分では笑顔でみんなを見ていたつもりだったが。
俺は二人にモモの話をした。
「三本だけだったんだ。それしかモモに渡せなかった」
「石神くんは、だからいつも花火を一杯買うのね?」
栞が俺の肩を抱いた。
鷹も反対側から俺を抱き締めてくれた。
「あ! 青い花火だぁー!」
響子が叫んでいるのが聞こえた。
「六花! 見てぇー!」
六花が響子の脇に座って一緒に観ていた。
青い炎だった。
「石神くん!」
栞と鷹が強く俺を抱いてくれた。
俺は二人を連れ、響子の傍に行った。
「タカトラー! 見て!」
「ああ。響子、良かったな」
「うん!」
青い花火は、俺が観た中で、一番美しかった。
俺は寝ている響子と六花の隣にロボと横たわった。
いつの間にか寝てしまったようだ。
響子が俺にキスをしていた。
「おお、俺の最愛のツルツルか」
「エヘヘヘヘ」
響子が俺に抱き着いて、顔にキスを一杯する。
「モジャモジャも起こしてやるか」
一番モジャモジャの子を顔に乗せる。
「うーん、重いー」
ロボが六花の顔を舐める。
六花はロボをどかせた。
「起きたか?」
「はい」
俺の顔を見て、ニコニコした。
俺は顔を洗い、下に降りた。
みんなで映画を観ていた。
『初恋のきた道』だった。
栞と鷹がソファに座り、子どもたちが椅子を集めて観ていた。
「お前ら、ついにこれを観てしまったか」
「「「「「?」」」」」
「鷹と前にここで観たんだよな?」
「はい。石神先生は、子どもたちには見せたくない、とおっしゃってました」
「「「「?」」」」
「タカさん、いい映画だったよ?」
ハーが言った。
俺は、あの後ろで手を組むポーズをした。
「ハー、やってみろ」
ハーがやった。
「鷹、やっぱりとんでもなくカワイイぞ!」
「はい!」
鷹が大笑いした。
鷹がみんなに、このポーズをされたら俺が怒れなくなると説明した。
みんなが笑った。
栞が大笑いした。
お茶を飲んで、夕飯の支度をした。
俺は鰻係だ。
バーベキューなので米は炊かないつもりだったが、一升を炊く。
亜紀ちゃんが俺と一緒に捌き方から一通りの調理を覚える。
鷹の陣頭指揮で柳と他の子どもたちがバーベキューの準備を。
栞は吸い物を作った。
「ウナギの肝って、なんかエイリアンみたいだよね」
「日本に来た時にギーガーが鰻を喰ったんだろうよ」
「へー」
知らん。
俺は料理をしながら栞とギーガーの「バイオメカノイド」などの話をし、ズジスワフ・ベクシンスキーの絵画の話をした。
「ギーガーも好きなんだけど、ベクシンスキーというポーランドの画家がいてな」
「へー、知らない」
「徹底して恐怖と絶望を描いた画家なんだ。しかもこの世界ではない景色でな」
「ふーん」
栞は知らないので、感想の言いようもない。
「それで俺はさ、ベクシンスキーの作品の情景を全部見たことがある気がするんだよ」
「そうなんだ」
栞は一段落したので、スマホを持って来て検索した。
「うわ! なにこれ!」
「な、凄いだろ?」
栞は魅入っている。
「気持ち悪いのかもしれないけど、なんだか引き込まれるね」
「ああ」
夕飯が出来、みんなでワイワイと食べた。
最初に鰻が狙われる。
俺は先に皇紀に三枚渡し、ゆっくり喰えと言った。
白焼きも渡したが、半分亜紀ちゃんに喰われた。
「皇紀に喰わせてやれって言っただろう!」
「ワハハハハハー!」
まあ、こいつらなりのコミュニケーションなのだろう。
皇紀も笑っていた。
響子にも小さな茶碗で鰻を食べさせ、白焼きを俺と一緒に食べる。
響子は焼き鳥も好きだが、和食の「たれ」が好みのようだった。
美味しそうに食べている。
六花はもちろん幸せそうな笑顔で頬張っている。
栞と鷹もニコニコして食べていた。
鰻はすぐに食べつくされ、本格的なバーベキューになった。
亜紀ちゃんが皇紀に焼いた肉を渡そうとしている。
泣き顔になっている。
「皇紀、これあげる」
「え?」
「ほら!」
「え、いいよ」
「なんでよ?」
「自分で好きな焼き方で食べるから」
「てっめぇー!」
亜紀ちゃんが強烈な回し蹴りを放ち、皇紀が必死に防いだ。
「何やってんだよなぁ」
「なんか、いつも通りね」
響子が見ていた。
二匹のケダモノが争っているうちに、双子と柳がどんどん喰っていた。
響子は頑張って吸い物の肝を食べた。
顔をしかめ、口の中で咀嚼する。
「!」
「どうした?」
「なんか分かった!」
「そうか、響子はカワイーなー」
「ウフフフ」
亜紀ちゃんが他の連中にも攻撃を始めた。
一気に騒がしくなる。
「お手!」
俺が宣言し、子どもたちと柳が離れた場所に立つ。
五人が後ろ手に組んだポーズをする。
「分かった! 解除! 仲良く喰え!」
みんなが笑った。
食事が終わり、片づけをしながら、俺は花火の準備をした。
みんなで楽しんでいると、ロボがまたパチパチ始めた。
「これはそういんじゃねぇからぁー!」
必死に止めた。
俺は楽しそうに花火をしているみんなを見ながら、コーヒーを飲んだ。
栞が隣に座る。
「楽しいね」
「ああ」
栞はミルクをピッチャーから注いで飲んだ。
「石神くんって、花火をしてると時々寂しそうな顔をするよね」
「そうか?」
「うん。どうしてかなって思ってた」
モモの話は誰にもしていない。
「まあ、思い出すことがあるんだ」
「そうなんだ」
鷹もこちらへ来た。
コーヒーをカップに注いで、一緒に座った。
「石神先生、どうかされました?」
鷹が心配そうに聞いて来る。
自分では笑顔でみんなを見ていたつもりだったが。
俺は二人にモモの話をした。
「三本だけだったんだ。それしかモモに渡せなかった」
「石神くんは、だからいつも花火を一杯買うのね?」
栞が俺の肩を抱いた。
鷹も反対側から俺を抱き締めてくれた。
「あ! 青い花火だぁー!」
響子が叫んでいるのが聞こえた。
「六花! 見てぇー!」
六花が響子の脇に座って一緒に観ていた。
青い炎だった。
「石神くん!」
栞と鷹が強く俺を抱いてくれた。
俺は二人を連れ、響子の傍に行った。
「タカトラー! 見て!」
「ああ。響子、良かったな」
「うん!」
青い花火は、俺が観た中で、一番美しかった。
2
お気に入りに追加
231
あなたにおすすめの小説
こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
双葉病院小児病棟
moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。
病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。
この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。
すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。
メンタル面のケアも大事になってくる。
当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。
親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。
【集中して治療をして早く治す】
それがこの病院のモットーです。
※この物語はフィクションです。
実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
離縁してくださいと言ったら、大騒ぎになったのですが?
ネコ
恋愛
子爵令嬢レイラは北の領主グレアムと政略結婚をするも、彼が愛しているのは幼い頃から世話してきた従姉妹らしい。夫婦生活らしい交流すらなく、仕事と家事を押し付けられるばかり。ある日、従姉妹とグレアムの微妙な関係を目撃し、全てを諦める。
転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる