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御堂家、大騒動 Ⅶ

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 「その子だけじゃないんだよ。もう石神の女性からのモテ方って尋常じゃなかったよね」

 話し終えた御堂が笑いながら言った。

 「その子とはその後どうなったんですか?」

 亜紀ちゃんが俺に聞く。

 「どうもないよ。普通の先輩と後輩だ」
 「でも、何度も石神に突撃してたよね?」
 「おい、御堂!」

 御堂はまた笑っている。

 「一度、下着姿で追い掛けられて」
 「やめろって!」
 「あの子、お酒を飲むと物凄い積極的だった」
 「本当に酒癖の悪い奴だったよ」
 「奈津江さんは?」

 亜紀ちゃんが突っ込む。

 「ああ、いつも怒ってたけど、そのうち笑うようになった」
 「そうなんですか!」
 「石神を信じてるのと、石神がモテるのが嬉しかったって感じかな?」
 「そんなことなぁ。俺は何十回も怒られてたんだぞ。俺のせいじゃねぇのに」
 「アハハハハハハハ!」

 「石神様。今日はわたくしの心を正直に申し上げます」
 「あんたは寝ろってぇー!」

 麗星は俺に抱き着いて来る。

 「おい、亜紀ちゃん! 麗星さんを寝かせて来てくれよ」
 「えー、だって面白いですよ?」
 「ふざけんなぁー!」

 麗星が障子を開き、廊下の向こうのサッシを開けた。

 「おい、あいつ何すんだ?」
 「さー」

 外に向かって手を開き、何か呟き始めた。
 
 「亜紀ちゃん! なんか不味い、止めろ!」
 「はい!」

 亜紀ちゃんが麗星に近づく。
 その時に、警報が鳴った。

 
 《侵入者! 侵入者! 「アダマン・システム」起動します! 御堂家の方々は、避難を始めて下さい!》

 
 警報がメッセージを繰り返す。
 赤いランプが明滅し、異様な雰囲気になる。

 「石神!」
 「あのバカァ!」

 皇紀システムが起動した。
 庭のあちこちで偽装された攻撃システムが現われる。
 正巳さんたちや御堂家の全員が座敷に駆けて来た。

 「石神さん! 大変だ!」

 正巳さんが俺に駆け寄って来る。

 「す、すぐに終わりますからぁ!」

 荷電粒子砲が唸り、レールガンと共に上空を攻撃し始める。
 庭にオロチが出て来た。
 
 「お、オロチ様!」

 正巳さんが叫び、菊子さんが掴まっている。
 オロチが上空に熱線を吐いた。
 見えなかったが、その左から五本の光線が伸びる。
 ニジンスキーたちか。

 「亜紀ちゃん! ロボを絶対に止めろぉーーー!」

 亜紀ちゃんが駆けて行く。
 
 「ロボォォォーーー!!!」

 亜紀ちゃんの絶叫が聞こえた。
 上空に光球が飛翔し、大爆発した。


 「あぁ! わたくしの「愛賀来屡王」がぁーーー!」
 「お前は寝てろぉ!」

 俺は麗星の顎にフックを入れ、瞬時に意識を喪わせた。

 「皇紀! ボサっとすんなぁ! すぐにシステムを止めろ!」
 「は、ハイぃ!」

 俺はロボの所へ行き、必死で宥めた。
 まだ尾を割ってパチパチと弧電を幾つも移動させていた。
 次いで庭に駆け下り、オロチたちを宥めて軒下へ戻した。
 みんな座敷で俺を見ていた。
 御堂だけが、大爆笑していた。





 翌朝、俺は御堂家のみなさんに土下座して謝った。
 麗星も隣で土下座している。

 「御堂! 本当に申し訳ない! 俺たちはこれで帰る!」

 俺がそう言うと、みんなに止められた。
 何度も辞そうとしたが、御堂や正巳さんたちが必死に俺を止める。
 仕方なく、このままいさせてもらった。
 代わりに全員で徹底的に掃除をさせてもらい、庭も俺が必死で手入れした。
 皇紀は防衛システムのチェックだ。
 一応、夕べのログは全て回収させた。

 「石神、そんなこといいよ」

 御堂は何度もそう言ったが、俺たちはやらせてもらった。

 
 麗星に空港まで送って行くと言った。

 「あの、明日の便になっております。夕方の」
 「あんた、メンタル強いなー」
 「オホホホホ!」

 御堂がまた大笑いした。
 麗星は敷地内を歩き回り、何かして回ったようだ。
 戻ると、上着を脱いでおり、Tシャツ姿になっていた。

 「おい、それ!」

 《石神一家》

 俺があちこちに配ったものだ。
 背中にそうプリントしてある。

 「はい、知人から譲り受けました。トレーナーもございます」
 「……」
 「わたくしの宝です」
 「……」

 ロボは澪さんを大好きになった。
 マグロや鮭の切り身をたくさんもらったからだ。

 「うちもネコでも飼いましょうか」

 御堂に言っていた。
 
 「そうだねぇ」
 「尻尾が一本に奴にした方がいいですよ」

 俺が言うと、二人で笑った。
 正巳さんと菊子さんも、ロボを呼んで可愛がった。
 立場が分かっているのか、ロボも喜んでお二人に甘えた。
 柳も掃除を手伝っている。
 御堂家の人間だが、石神一家なのだということだろう。

 「タカさーん! チェックをお願いしますー!」

 亜紀ちゃんが俺を呼びに来た。
 一通り屋敷を回り、俺が確認し、追加を指示した。
 掃除の傍ら、子どもたちが昼食を作る。
 今日はほうとう鍋だ。
 俺は天ぷらをちょっと付けるように言った。
 モッツァレラチーズがあったので、亜紀ちゃんにカプレーゼを作らせる。
 俺はメロンとスイカに飾り包丁を入れた。





 食事は大好評だったが、ケダモノたちの喰いっぷりに、俺は頭を抱えた。
 麗星は

 「ほうとう鍋って初めていただきました! 美味しゅうございます!」
 
 そういって三杯食べた。




 「……」
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