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御堂家、大騒動 Ⅴ
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「石神様!」
麗星は激怒している。
あの冷静で優し気な雰囲気は無い。
「何故あんなことを!」
「はい?」
「名前です! もしも「羅天遠呂智」様が気に入らなければ、私たちもこの辺り数百キロも無くなってましたよ!」
「そうなんですか!」
そうなのか!
「あやかし」、特にオロチレベルの大きな格を持つ者への名付けは、非常に危険らしい。
相手が気に入らなければ、大暴れし人間ごときは一切が殲滅され滅ぼされるということだった。
「名前というのは、霊的に非常に重いものなのです。軽々しく名付けようとして一瞬で滅びた者は大勢います」
「それは知りませんでした」
「道間家でも、慎重に慎重を重ねて名を付けております。もちろん、我々には届かない方も多く、その場合は仮の呼び名ということでご了承いただいています」
「あの、「クロピョン」は?」
「「大黒丸」様も仮の呼び名でした。石神様が呼んでいらっしゃるので、一族はそれはもう驚きました」
「タマは?」
「は?」
「タマ! 来い!」
畳の上に、細長いイタチが現われた。
麗星も、その場にいた全員が驚く。
「なんだ」
「呼んだだけ」
「お前! またそんな!」
「冗談だよ。お前に名前を付けたのは俺だよな?」
「そうだ」
「お前、喜んでたよな?」
「何を言う! こんなふざけた名を付けておいて!」
「あの、石神様……」
麗星がおずおずと俺に言った。
「はい、何か?」
「この方は?」
「あー、タマ。俺の舎弟です」
「!」
タマが麗星を見ていた。
「ああ、道間の小娘か」
麗星が畳に頭を押し付けた。
「「獄赤魔狐王」様!」
「あんたら、その名前の付け方がちょっとさ」
麗星が俺を手で制した。
「なんということ! 石神様がそのような御名を!」
「そうだ。このふざけた男がそう名付けた」
麗星が俺を見ている。
「嫌ならそう言えば良かっただろう!」
「有無を言わさずにお前がやったんだろう!」
俺たちの遣り取りに、麗星が驚いている。
「分かりました。確かに承りました。私共はこれまで通りに「獄赤魔狐王」様とお呼びしても?」
「構わん。むしろそうしてくれ」
「かしこまりました」
「おい、なんか面白いことはないか」
俺がタマに言った。
「ここは居心地が悪い。出来ればもう行かせてくれ」
「しょーがねーなー! また今度な!」
「分かった」
タマは消えた。
オロチとロボがいるのが嫌だったんだろう。
「石神様!」
麗星が涙目になっている。
「あなたという方は! 本当に!」
「なんですか?」
「道間がこれまでどれほどの血と汗を流してここまで……それをあなたという人は」
「まーまー」
「他にはおりませんよね?」
「え、あの、名前関連で?」
「そうです!」
「オロチャイムとか?」
「石神様!」
みんなの前で、散々怒られた。
俺もいい加減に疲れ、一度風呂に入らせてもらった。
亜紀ちゃんが付いて来る。
背中を流してもらい、一緒に湯船に入った。
「あー、疲れた」
「お疲れ様ですー」
亜紀ちゃんが笑っている。
「散々だったぜ」
「大変でしたよね」
「ロボはおいて来れば良かったか」
「可哀そうですよ」
「そうなんだけどなー」
温めの湯が気持ちいい。
「タカさん」
「あんだよ」
「ヘビの名前、栞さんたちですよね?」
「ああ、咄嗟にな」
「私の名前、入ってませんが」
「お前なぁ!」
「だって!」
「好きな女だから、ニジンスキーでいいだろう」
「それって、なんか「虎曜日」的な?」
「五匹しかいねぇんだから、しょうがねぇだろう」
「ベスト・ファイブに入らないってことですか!」
「亜紀ちゃんは娘だぁ!」
「えーん」
泣きまねしがやる。
「響子だって入ってねぇ」
「あぁ! やった女の!」
亜紀ちゃんの頭をはたく。
「柳ともやってねぇ!」
「だったら」
「御堂家のヘビなんだから、入れとかなきゃ不味いだろう」
「えーん」
頭をはたく。
「ヘビの名前くらいでウダウダ言うな!」
まったく。
「でも、あのヘビ可愛かったですよね!」
「そうだな」
「もう、タカさんに一生懸命にまとわりついて」
「まーなー」
「しかし、初めての子どもがヘビなんて」
「言うな!」
きつい反撃を喰らった。
風呂から上がり、スイカをいただいた。
澪さんが、前に持って来たうちのスイカの種で育てたものだ。
美味しかった。
「スイカの専門の人に作ってもらいました。その人も驚いていますよ」
澪さんが説明した。
「そうなんですか」
「でも、石神さんのスイカにはまだまだ及びませんが」
「アハハハハハ!」
まあ、土が違う。
前に双子がカブトムシにスイカを喰わせているのを見掛け、大慌てでやめさせた。
あいつらは目を離すと恐ろしいことをやる。
でかくて銀色になったらどうすんだ。
正利が塾から帰って来た。
俺は皇紀と一緒に正利の部屋へ行って、しばらく話した。
その後で庭に出て、竹刀で打ち合った。
「石神さんには、もう全然敵いませんね!」
「ダァッハッハッハァー!」
亜紀ちゃんや双子とも楽しんでやった。
正利はマッハで振られる竹刀に、青ざめていた。
竹刀が粉砕し、本気で謝った。
夕飯の準備が出来たと、澪さんが呼びに来た。
まあ、分っちゃいるが、バーベキューだろう。
俺たちは、肩を組んで向かった。
麗星は激怒している。
あの冷静で優し気な雰囲気は無い。
「何故あんなことを!」
「はい?」
「名前です! もしも「羅天遠呂智」様が気に入らなければ、私たちもこの辺り数百キロも無くなってましたよ!」
「そうなんですか!」
そうなのか!
「あやかし」、特にオロチレベルの大きな格を持つ者への名付けは、非常に危険らしい。
相手が気に入らなければ、大暴れし人間ごときは一切が殲滅され滅ぼされるということだった。
「名前というのは、霊的に非常に重いものなのです。軽々しく名付けようとして一瞬で滅びた者は大勢います」
「それは知りませんでした」
「道間家でも、慎重に慎重を重ねて名を付けております。もちろん、我々には届かない方も多く、その場合は仮の呼び名ということでご了承いただいています」
「あの、「クロピョン」は?」
「「大黒丸」様も仮の呼び名でした。石神様が呼んでいらっしゃるので、一族はそれはもう驚きました」
「タマは?」
「は?」
「タマ! 来い!」
畳の上に、細長いイタチが現われた。
麗星も、その場にいた全員が驚く。
「なんだ」
「呼んだだけ」
「お前! またそんな!」
「冗談だよ。お前に名前を付けたのは俺だよな?」
「そうだ」
「お前、喜んでたよな?」
「何を言う! こんなふざけた名を付けておいて!」
「あの、石神様……」
麗星がおずおずと俺に言った。
「はい、何か?」
「この方は?」
「あー、タマ。俺の舎弟です」
「!」
タマが麗星を見ていた。
「ああ、道間の小娘か」
麗星が畳に頭を押し付けた。
「「獄赤魔狐王」様!」
「あんたら、その名前の付け方がちょっとさ」
麗星が俺を手で制した。
「なんということ! 石神様がそのような御名を!」
「そうだ。このふざけた男がそう名付けた」
麗星が俺を見ている。
「嫌ならそう言えば良かっただろう!」
「有無を言わさずにお前がやったんだろう!」
俺たちの遣り取りに、麗星が驚いている。
「分かりました。確かに承りました。私共はこれまで通りに「獄赤魔狐王」様とお呼びしても?」
「構わん。むしろそうしてくれ」
「かしこまりました」
「おい、なんか面白いことはないか」
俺がタマに言った。
「ここは居心地が悪い。出来ればもう行かせてくれ」
「しょーがねーなー! また今度な!」
「分かった」
タマは消えた。
オロチとロボがいるのが嫌だったんだろう。
「石神様!」
麗星が涙目になっている。
「あなたという方は! 本当に!」
「なんですか?」
「道間がこれまでどれほどの血と汗を流してここまで……それをあなたという人は」
「まーまー」
「他にはおりませんよね?」
「え、あの、名前関連で?」
「そうです!」
「オロチャイムとか?」
「石神様!」
みんなの前で、散々怒られた。
俺もいい加減に疲れ、一度風呂に入らせてもらった。
亜紀ちゃんが付いて来る。
背中を流してもらい、一緒に湯船に入った。
「あー、疲れた」
「お疲れ様ですー」
亜紀ちゃんが笑っている。
「散々だったぜ」
「大変でしたよね」
「ロボはおいて来れば良かったか」
「可哀そうですよ」
「そうなんだけどなー」
温めの湯が気持ちいい。
「タカさん」
「あんだよ」
「ヘビの名前、栞さんたちですよね?」
「ああ、咄嗟にな」
「私の名前、入ってませんが」
「お前なぁ!」
「だって!」
「好きな女だから、ニジンスキーでいいだろう」
「それって、なんか「虎曜日」的な?」
「五匹しかいねぇんだから、しょうがねぇだろう」
「ベスト・ファイブに入らないってことですか!」
「亜紀ちゃんは娘だぁ!」
「えーん」
泣きまねしがやる。
「響子だって入ってねぇ」
「あぁ! やった女の!」
亜紀ちゃんの頭をはたく。
「柳ともやってねぇ!」
「だったら」
「御堂家のヘビなんだから、入れとかなきゃ不味いだろう」
「えーん」
頭をはたく。
「ヘビの名前くらいでウダウダ言うな!」
まったく。
「でも、あのヘビ可愛かったですよね!」
「そうだな」
「もう、タカさんに一生懸命にまとわりついて」
「まーなー」
「しかし、初めての子どもがヘビなんて」
「言うな!」
きつい反撃を喰らった。
風呂から上がり、スイカをいただいた。
澪さんが、前に持って来たうちのスイカの種で育てたものだ。
美味しかった。
「スイカの専門の人に作ってもらいました。その人も驚いていますよ」
澪さんが説明した。
「そうなんですか」
「でも、石神さんのスイカにはまだまだ及びませんが」
「アハハハハハ!」
まあ、土が違う。
前に双子がカブトムシにスイカを喰わせているのを見掛け、大慌てでやめさせた。
あいつらは目を離すと恐ろしいことをやる。
でかくて銀色になったらどうすんだ。
正利が塾から帰って来た。
俺は皇紀と一緒に正利の部屋へ行って、しばらく話した。
その後で庭に出て、竹刀で打ち合った。
「石神さんには、もう全然敵いませんね!」
「ダァッハッハッハァー!」
亜紀ちゃんや双子とも楽しんでやった。
正利はマッハで振られる竹刀に、青ざめていた。
竹刀が粉砕し、本気で謝った。
夕飯の準備が出来たと、澪さんが呼びに来た。
まあ、分っちゃいるが、バーベキューだろう。
俺たちは、肩を組んで向かった。
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