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俺たちは、繋がっていく

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 子どもたちがうちへ来た。
 
 《どうやって馴染ませようか》

 そんなことは1秒も考えなかった。
 俺の好き勝手にやる。
 ただ、俺は子どもたちのためになると俺が思ったことは全部やる。
 子どもたちには一言だけだ。

 「やるべきことをやれ」

 それが俺たちの約束だ。

 亜紀ちゃんは優しい。
 俺が目の前でおならをすると、聞かなかった振りをする。
 もう一度やると、困った顔をする。
 面白いのでもう一度やると、勘弁して下さいと赤い顔をする。
 面白い。

 皇紀の尻を蹴る。
 「?」
 不思議な顔をする。
 俺がニコニコすると、皇紀も笑顔になる。
 いい奴だ。

 双子のスカートをまくる。
 「イヤー」と言って喜ぶ。
 カワイイ。
 亜紀ちゃんが俺を睨むのでやめる。



 リヴィングにいると、亜紀ちゃんは何となく、俺の傍にいる。
 俺が用事を言いやすいようにだ。
 気配りのある子だった。

 「オチンチンが痒いな」
 「え?」

 困った顔をする。

 「さて! オチンチン体操をしてくるかな!」
 「あ、行ってらっしゃい」

 真面目だ。


 「皇紀! エッチなDVDを貸してやろうか!」
 「え、いいです」

 俺をキラキラした目でいつも見ているので言ってみた。
 
 「なんだよ、興味ねぇのか?」
 「はい、あんまり」
 「俺がお前くらいの時は、さんざんエロ本を読んでたぞ?」
 「そうなんですか!」
 「あたぼうよ! 俺はよく入院してたからな。長い入院の人で「エロ魔人のチョーさん」って方がいてよ。気に入られてよく貸してもらってたもんだ」
 「へぇー!」

 俺は何枚か貸してやった。
 「大事に観ろよな!」
 「はい!」

 数日後、部屋の掃除に入った亜紀ちゃんに見つかり、怒られていた。
 俺から借りたと言いやがったので、後で尻を蹴った。
 
 「……」


 双子の部屋へよく遊びに行く。
 ドアを開け、中へ疾風のように飛び込み、二人をベッドへ投げて遊ぶ。
 二人は大喜びで俺に駆け寄り、また投げられる。

 夕飯後にやっていたら、二人が吐いた。
 亜紀ちゃんに、辞めて下さいと言われた。
 
 「すまん」
 「ほんとにもー」

 一生懸命に掃除した。



 独りの時間が無くなって来た。
 独りでいると、子どもたちの顔が浮かんでくる。
 ちょっかいを出しに行く。

 みんな笑って俺にいじられてくれる。

 「亜紀ちゃん、一緒に風呂に入ろうか!」
 「え」
 「ほらー!」
 「は、はい」

 「お前よ」
 「はい」
 「嫌がれ!」
 涙目になっていた。

 俺は冗談だったと必死で謝った。
 亜紀ちゃんが泣きながら笑おうとするので、本当に反省した。
 その後、亜紀ちゃんが一緒に入りたがって困ることになるとは、この時は思いもしなかった。


 逆に双子が一緒に入りたがるので困った。
 俺は自分の傷だらけの身体を見せたくなかった。
 きっと気持ち悪がるだろう。

 俺の身体は、子どもの頃の大病と、主に喧嘩が原因の大小の傷で覆われている。
 子どもたちは分からないだろうが、銃痕も幾つもある。
 子どもの頃は、その傷が原因で多くの人に嫌な思いをさせた。
 気持ち悪いとはっきり言われた。
 俺は傷を隠すのが倣いになっていた。

 双子に嫌な思いをさせたくない。

 「お前たちに毛が生えたらな!」
 
 亜紀ちゃんがギョッとして俺を見た。

 「いや! 胸にだぞ!」

 「「ギャハハハハハ!」」
 双子が笑った。
 明るい奴らだ。


 その双子が、時々俺をじっと見ていることがある。
 俺に構って欲しいという目ではない。
 真剣なまなざしだ。

 「あんだよ?」
 「「なんでもー」」

 カワイイ。

 でも、あまりにもそういうことがあるので、一度皇紀に聞いてみた。

 「あいつら、なんか俺をじっと見てるんだよなー」
 「ああ、なるほど」
 「お前、なんか心当たりがあるのか?」
 「えーと」

 口ごもっているので脇をくすぐってやる。
 身悶える。

 「ルーとハー(瑠璃と玻璃)は、普通は見えないものが見えるらしいんです」
 「なんだよ、怖いじゃんか」
 「僕もよくは分かりません。二人が言うには、あんまり喋っちゃいけないことのようで」
 「よく分らんな」
 「はい」

 霊感みたいなものか?

 「俺になんか見えてるってことか?」
 「そういうことじゃないかと」
 「気持ち悪いな」
 「そうですけど」

 「後ろで天使が笑ってるとか?」
 「それはないかと」
 
 俺は皇紀の頭を引っぱたく。

 

 俺は双子の部屋へ行った。

 「おい、俺になんか見えてるのか?」

 二人が顔を見合わせた。

 「どーして分かったの?」
 俺は皇紀から聞いたと言った。

 「もー、しょうがないなー」
 「皇紀ちゃん、お喋りだよね」
 「俺が無理矢理聞き出したんだ。勘弁してやってくれ」

 「いーけど」
 瑠璃が言った。

 「それで、なんなんだよ」
 「あのね、あんまり話しちゃいけないの」
 「そこをなんとか!」
 
 二人はこそこそと相談していた。

 「じゃあ、ちょっとだけね。あのね、物凄い光の柱が見えるの」
 「見たことないくらいスゴイよ」
 「へー」

 よく分からなかった。

 「それとね」
 「ルー! ダメ!」
 
 瑠璃が口に手を当てた。

 「まー、いいや。教えてくれてありがとうな!」
 「「うん!」」

 気持ちの悪いものじゃないようだ。
 もしもそんなものを見せているとしたら、可愛そうだ。


 俺が鼻歌を歌ってリヴィングに降りると、亜紀ちゃんが笑顔で言った。

 「ご機嫌ですね!」
 「うん!」
 俺も亜紀ちゃんにニッコリと笑ってやった。

 


 俺は地下へ行って、ギターを弾いた。
 子どもたちが来てから、弾いていなかった。
 


 俺たちは少しずつ、繋がっていく。
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