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道間家 Ⅴ
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俺たちは着替え、麗星の心づくしの京料理を堪能した。
麗星は着物に着替えており、薄い青地にノウゼンカズラの鮮やかなオレンジが映えている。
「石神様方のお陰で、道間家の大きな問題が解決いたしました」
食事の前に、麗星が言った。
「今後、道間家とわたくしは、石神様に全面的に協力いたしますことを、お約束します」
麗星は深々と頭を下げた。
麗星が自ら俺たちに給仕し、酒を注いで回った。
「石神様、本当にありがとうございました」
「いえ、お役に立てて光栄です」
「わたくしは、身も心も石神様に捧げます」
「虎曜日?」
ハーの頭をはたいた。
「それは、どのような?」
「何でもありません! おい、ハー! お前は外で牛丼でも喰って来い!」
「えー!」
麗星は笑った。
どの料理も美味く、俺たちが褒めるとその料理が追加でどんどん出された。
食後のコーヒーを飲んでいると、亜紀ちゃんが言った。
「タカさん、肉を持ってるのに、どうして「花岡」が通じないんですかね?」
「肉そのものが本体じゃないからだろう。肉体を作り出すというものの方が本体なんだよ」
「うーん」
「石神様は本当に深い理解がおありなのですね」
麗星が微笑んだ。
「元々俺たちだってそうでしょう。肉体を破壊すれば死にますが、俺はそれで終わらないと考えています」
「なるほど」
「俺はそうした経験もあるんでね」
「あ! チャップさんとか!」
亜紀ちゃんが言う。
「まあ、そうだな」
双子が黙って俺を見ていた。
「そういう方面は、ルーとハーの方が詳しいと思いますが、俺も何度も死者と繋がった。今の俺たちのままかどうかは知りませんが、死んで終わらない何かがあることは確かだと思います」
「私たちも同じ考えです。もちろん、この世で生きる限りはその中での縛りがありますが。でも、この世が全てではありません。道間家は、この世に別な世の存在を繋げることに研鑽してまいりました」
その通りなのだろう。
そして、それは日本を守るためのことだ。
「道間家の方々が協力して下さるのなら、俺たちの大きな力になる。感謝します」
「こちらこそ」
食事の後、俺は風呂をいただきしばらく休んだ。
双子が俺と一緒にいたがるので、三人で少し眠った。
栞と亜紀ちゃんは庭で組み手をした。
亜紀ちゃんが最大出力で攻撃したため、興奮が収まらなかったのだろう。
栞も出番が無かったので、付き合った。
四時ごろに目が覚める。
ルーとハーはスヤスヤと眠っていた。
両側で俺の方を向いて寝ている。
本当に可愛らしい。
俺が頭を抱き寄せると、同時に起きた。
「疲れたか?」
「うん、平気」
「タカさんは?」
「俺は疲れたなー」
「「ウフフフ」」
「可哀そうだったね」
ルーが言った。
「そうか」
「うん。タカさんに殺されて喜んでた」
「タカさんも、なるべく痛みが無いようにしてたでしょ?」
「そうだな」
二人が交互に話す。
「「クロピョン」も感動してたよ?」
「そうなのか?」
「うん。タカさんは優しいって」
「そうか」
俺は起き上がった。
「おい、お前らも着替えろ」
「「うん」」
「さっき気付いたんだけどな」
「なに?」
「お前ら、ちょっとオッパイが出て来たな」
「「エッチー!」」
俺は笑った。
こいつらも成長している。
俺たちは同じ場所にはいられないのだ。
部屋を出ると、麗星がやって来た。
俺たちを庭に案内してくれる。
「折角来て頂きましたのに、不調法でした」
「見事な庭園ですね」
様々な草木が点在している。
美しい庭石も多い。
東屋で休んでいると、茶が運ばれてきた。
俺は普段緑茶を飲まないが、道間家の茶は別格に美味い。
「夕食が近いので茶請けはございませんが」
「こいつらに関してはその心配はいりませんが、これほどの茶ならば不要でしょう」
麗星は笑っている。
徐々に日が傾き、西日が差して来た。
表情を変えていく庭が美しい。
「やっぱり日本人はこういう庭園がいいですね」
「ありがとうございます」
「な! ちっぱい同盟!」
双子が俺を見て笑った。
「石神様は山をお持ちだとか」
「あー、こいつらにほとんどぶっ壊されましたけどね」
「まあ!」
「生態系もボロボロで。こいつらときたら、「キャンプに行ってきます」とか言って、クマだのイノシシだの狩りまくって」
俺が双子の地獄キャンプの話をすると、麗星が爆笑した。
「毛皮を服にするために、「電子レンジ」なんて技も開発しやがって」
「アハハハハハハ!」
「ああ、以前クロピョンに喧嘩売って、中米まで飛ばされました」
「えぇ!」
「こいつら二人は無人島に漂着して。でも自力で帰って来たんですよ」
麗星は俺が詳しく話すと大爆笑した。
「どんな過酷な環境からも帰って来ますから。何でも言って下さい」
「分かりました。よろしくお願いします」
「麗星さんもキャンプいこ?」
「まあ、楽しそうですね」
「素っ裸にされますから。やめた方がいいですよ」
「そうなんですか」
陽が暮れるまで、俺たちは楽しく話した。
麗星は着物に着替えており、薄い青地にノウゼンカズラの鮮やかなオレンジが映えている。
「石神様方のお陰で、道間家の大きな問題が解決いたしました」
食事の前に、麗星が言った。
「今後、道間家とわたくしは、石神様に全面的に協力いたしますことを、お約束します」
麗星は深々と頭を下げた。
麗星が自ら俺たちに給仕し、酒を注いで回った。
「石神様、本当にありがとうございました」
「いえ、お役に立てて光栄です」
「わたくしは、身も心も石神様に捧げます」
「虎曜日?」
ハーの頭をはたいた。
「それは、どのような?」
「何でもありません! おい、ハー! お前は外で牛丼でも喰って来い!」
「えー!」
麗星は笑った。
どの料理も美味く、俺たちが褒めるとその料理が追加でどんどん出された。
食後のコーヒーを飲んでいると、亜紀ちゃんが言った。
「タカさん、肉を持ってるのに、どうして「花岡」が通じないんですかね?」
「肉そのものが本体じゃないからだろう。肉体を作り出すというものの方が本体なんだよ」
「うーん」
「石神様は本当に深い理解がおありなのですね」
麗星が微笑んだ。
「元々俺たちだってそうでしょう。肉体を破壊すれば死にますが、俺はそれで終わらないと考えています」
「なるほど」
「俺はそうした経験もあるんでね」
「あ! チャップさんとか!」
亜紀ちゃんが言う。
「まあ、そうだな」
双子が黙って俺を見ていた。
「そういう方面は、ルーとハーの方が詳しいと思いますが、俺も何度も死者と繋がった。今の俺たちのままかどうかは知りませんが、死んで終わらない何かがあることは確かだと思います」
「私たちも同じ考えです。もちろん、この世で生きる限りはその中での縛りがありますが。でも、この世が全てではありません。道間家は、この世に別な世の存在を繋げることに研鑽してまいりました」
その通りなのだろう。
そして、それは日本を守るためのことだ。
「道間家の方々が協力して下さるのなら、俺たちの大きな力になる。感謝します」
「こちらこそ」
食事の後、俺は風呂をいただきしばらく休んだ。
双子が俺と一緒にいたがるので、三人で少し眠った。
栞と亜紀ちゃんは庭で組み手をした。
亜紀ちゃんが最大出力で攻撃したため、興奮が収まらなかったのだろう。
栞も出番が無かったので、付き合った。
四時ごろに目が覚める。
ルーとハーはスヤスヤと眠っていた。
両側で俺の方を向いて寝ている。
本当に可愛らしい。
俺が頭を抱き寄せると、同時に起きた。
「疲れたか?」
「うん、平気」
「タカさんは?」
「俺は疲れたなー」
「「ウフフフ」」
「可哀そうだったね」
ルーが言った。
「そうか」
「うん。タカさんに殺されて喜んでた」
「タカさんも、なるべく痛みが無いようにしてたでしょ?」
「そうだな」
二人が交互に話す。
「「クロピョン」も感動してたよ?」
「そうなのか?」
「うん。タカさんは優しいって」
「そうか」
俺は起き上がった。
「おい、お前らも着替えろ」
「「うん」」
「さっき気付いたんだけどな」
「なに?」
「お前ら、ちょっとオッパイが出て来たな」
「「エッチー!」」
俺は笑った。
こいつらも成長している。
俺たちは同じ場所にはいられないのだ。
部屋を出ると、麗星がやって来た。
俺たちを庭に案内してくれる。
「折角来て頂きましたのに、不調法でした」
「見事な庭園ですね」
様々な草木が点在している。
美しい庭石も多い。
東屋で休んでいると、茶が運ばれてきた。
俺は普段緑茶を飲まないが、道間家の茶は別格に美味い。
「夕食が近いので茶請けはございませんが」
「こいつらに関してはその心配はいりませんが、これほどの茶ならば不要でしょう」
麗星は笑っている。
徐々に日が傾き、西日が差して来た。
表情を変えていく庭が美しい。
「やっぱり日本人はこういう庭園がいいですね」
「ありがとうございます」
「な! ちっぱい同盟!」
双子が俺を見て笑った。
「石神様は山をお持ちだとか」
「あー、こいつらにほとんどぶっ壊されましたけどね」
「まあ!」
「生態系もボロボロで。こいつらときたら、「キャンプに行ってきます」とか言って、クマだのイノシシだの狩りまくって」
俺が双子の地獄キャンプの話をすると、麗星が爆笑した。
「毛皮を服にするために、「電子レンジ」なんて技も開発しやがって」
「アハハハハハハ!」
「ああ、以前クロピョンに喧嘩売って、中米まで飛ばされました」
「えぇ!」
「こいつら二人は無人島に漂着して。でも自力で帰って来たんですよ」
麗星は俺が詳しく話すと大爆笑した。
「どんな過酷な環境からも帰って来ますから。何でも言って下さい」
「分かりました。よろしくお願いします」
「麗星さんもキャンプいこ?」
「まあ、楽しそうですね」
「素っ裸にされますから。やめた方がいいですよ」
「そうなんですか」
陽が暮れるまで、俺たちは楽しく話した。
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