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亜紀ちゃんと蓮花研究所 Ⅳ
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夕飯はバーベキューだった。
蓮花が、亜紀ちゃんの「本気」を見たがったのだ。
しかし、危険が大きすぎる。
俺の指示で、亜紀ちゃん専用のバーベキュー台と、他の人間のものとを分けさせた。
亜紀ちゃんがそれを見て言った。
「あんだ、こりゃ」
亜紀ちゃんはガンガン自分で焼いて食べている。
俺はみんなのために焼き、各々が賑やかに食べた。
「このような楽しい食事は、ここに来て初めてです」
「そうか」
蓮花が嬉しそうに言った。
ミユキたちも楽しそうに笑っている。
亜紀ちゃんがこっちを見ていた。
「私もタカさんが焼いたのを食べたいなー」
「絶対やめろ!」
亜紀ちゃんが来たら、誰も喰えない。
そのうちに、満腹した人間も出て来た。
亜紀ちゃんがニコニコして来る。
俺も笑って、焼いてやった。
まだ食べたい人間は、亜紀ちゃんにすべて奪われた。
俺は亜紀ちゃんが使っていた台で自分で焼けと言った。
「やっぱりタカさんが焼くと美味しい!」
蓮花が嬉しそうに、亜紀ちゃんを見ていた。
夕飯後、亜紀ちゃんはブランたちの収容施設を見たいと言った。
俺が案内した。
まだ自我の無いブランたち。
皇紀から話は聞いていただろうが、亜紀ちゃんはショックを受けていた。
「こんな、こんなことを!」
亜紀ちゃんは泣いた。
「俺も皇紀も蓮花も、何とかしたいと思っている。必ず全員をミユキたちのように甦らせるからな」
「はい、お願いします」
亜紀ちゃんが服を脱いだ。
何をするつもりかと思った。
「少し灯を暗くしてもらえますか?」
俺はその通りにした。
暗くなっても、ブランたちは何の反応もない。
彼らはスタッフにベッドへ寝かされ、暗くなると眠るだけだ。
今は無反応にただ立っているか、ゆっくりと歩いている。
誰も俺たちを見ようとはしない。
亜紀ちゃんの身体が仄かに輝いた。
白い光が全身から放出していた。
「私、こんなことしか出来ませんけど」
「花岡」の技を組み合わせてやっているようだ。
「いや、亜紀ちゃん。見てみろよ」
ブランたちが、こちらを向いていた。
「みんな見ているぞ。嬉しそうだ」
亜紀ちゃんは涙を流しながら、しばらく優しい光をブランたちに見せた。
美しい光だった。
風呂に入った。
「タカさん、連れて来てくれてありがとうございました」
「大丈夫か?」
「はい」
亜紀ちゃんは何かを思っているようだった。
「私、もっと頑張りますね」
「ああ、頼むぞ」
「私は、「石神一家」の最大戦力ですから」
「そうだな」
「今日は負けちゃいましたけどね」
「カッコ悪いな」
「エヘヘヘ」
亜紀ちゃんは俺に抱き着いた。
「タカさんも、ブランたちのこと、それにミユキさんたちをお願いします」
「もちろんだ。また亜紀ちゃんの力も借りるしな」
「私、何でもしますから」
「ああ」
俺たちと蓮花で、三人で酒を飲んだ。
今日は蓮花と一緒に日本酒を熱燗で飲む。
蓮花が刺身の盛り合わせと松前漬けをつまみに出した。
「本日はありがとうございました」
「いや、俺も訓練の成果が見られてよかった。予想以上だったよ」
「そうおっしゃって頂けると」
「蓮花さん、お世話になりました」
「いえ、大したおもてなしも出来ずに申し訳ございません」
「蓮花さんのお料理、とても美味しかったです」
「ありがとうございます」
亜紀ちゃんが松前漬けを口に入れ、熱燗を飲む。
蓮花が笑っていた。
「やはり、皇紀様とは違いますね」
「そうですか?」
「はい。亜紀様は石神様のようにお強い」
「皇紀はまだ中学生ですから」
「お前も高校生だろう!」
「えー! 私は「超高校生」ですから!」
「このやろう」
俺たちは笑った。
「きっと、親御さんが悪いんですよ」
「おい、蓮花」
「そーですよねー!」
亜紀ちゃんは鯛の刺身を取った。
ワサビを乗せ過ぎて、少し咽ていた。
「ガキが」
蓮花が笑った。
亜紀ちゃんが目を赤くして俺を睨んだ。
亜紀ちゃんが今日の戦いで気付いたことを蓮花に話した。
蓮花は真剣な顔をして聞いていた。
話し終えると、亜紀ちゃんはもう寝ると言った。
「今日はちょっと疲れちゃいました」
「ああ、お休み」
「お休みなさい」
亜紀ちゃんはシャノアに案内され、部屋に戻った。
「大丈夫でしょうか」
「ああ、多分気を遣ったんだろうよ」
「はい?」
「俺と蓮花、ミユキとの時間をさ」
「そうなんですか?」
「まあ、そういうことにしよう。ミユキを呼べよ。一緒に風呂に入ろう」
「はい、かしこまりました」
俺たちは風呂で愛し合った。
部屋に戻ると、亜紀ちゃんが起きた。
「遅かったですね」
枕元に置いたブライトリングの「ブラックバード」を見て言った。
「また風呂に入ったんだ」
「あー、呼んでくれればいいのに」
「もう寝よう」
「何か歌って下さい」
「超高校生のくせに甘えるなぁ」
「いーじゃないですか、今日くらい。私、結構頑張りましたよ?」
俺はラウドネスの『アレスの嘆き』を歌った。
亜紀ちゃんは目を閉じて聴いていた。
「満足したか?」
「はい。いい歌でした」
「アレスというのはギリシャ十二神の一柱で、戦場の狂乱の神なんだ」
「そうなんですか」
「ガンガン戦争を起こしては大量の死者を生む。だから冥界の王ハデスからは大歓迎されていたんだな」
「アハハハハハ!」
「それにな。神々の中でも最も美しい容貌を持っていて、愛と美の女神アフロディテの愛人なんだ」
「なんか、誰かを想像しますねー」
俺は亜紀ちゃんの髪の毛をクシャクシャしてやる。
「やー」と言った。
「海神ポセイドンの息子がアレスの娘アキッペ(本当はアルキッペ)を犯したんだよ」
「え!」
「それに激怒して、アレスはポセイドンの息子を殴り殺す」
「ヤッター! いいぞアレス!」
俺は笑った。
「いいよな」
「タカさん、頼みますね!」
「誰がうちの亜紀っぺを襲うんだよ」
「アハハハハ!」
「さあ、もう寝るぞ」
「はい、おやすみなさい」
「おやすみ、亜紀っぺ」
布団の中は亜紀ちゃんの体温で満たされていた。
この温もりを奪おうとする奴は絶対に許さない。
俺はいつもそう思っている。
蓮花が、亜紀ちゃんの「本気」を見たがったのだ。
しかし、危険が大きすぎる。
俺の指示で、亜紀ちゃん専用のバーベキュー台と、他の人間のものとを分けさせた。
亜紀ちゃんがそれを見て言った。
「あんだ、こりゃ」
亜紀ちゃんはガンガン自分で焼いて食べている。
俺はみんなのために焼き、各々が賑やかに食べた。
「このような楽しい食事は、ここに来て初めてです」
「そうか」
蓮花が嬉しそうに言った。
ミユキたちも楽しそうに笑っている。
亜紀ちゃんがこっちを見ていた。
「私もタカさんが焼いたのを食べたいなー」
「絶対やめろ!」
亜紀ちゃんが来たら、誰も喰えない。
そのうちに、満腹した人間も出て来た。
亜紀ちゃんがニコニコして来る。
俺も笑って、焼いてやった。
まだ食べたい人間は、亜紀ちゃんにすべて奪われた。
俺は亜紀ちゃんが使っていた台で自分で焼けと言った。
「やっぱりタカさんが焼くと美味しい!」
蓮花が嬉しそうに、亜紀ちゃんを見ていた。
夕飯後、亜紀ちゃんはブランたちの収容施設を見たいと言った。
俺が案内した。
まだ自我の無いブランたち。
皇紀から話は聞いていただろうが、亜紀ちゃんはショックを受けていた。
「こんな、こんなことを!」
亜紀ちゃんは泣いた。
「俺も皇紀も蓮花も、何とかしたいと思っている。必ず全員をミユキたちのように甦らせるからな」
「はい、お願いします」
亜紀ちゃんが服を脱いだ。
何をするつもりかと思った。
「少し灯を暗くしてもらえますか?」
俺はその通りにした。
暗くなっても、ブランたちは何の反応もない。
彼らはスタッフにベッドへ寝かされ、暗くなると眠るだけだ。
今は無反応にただ立っているか、ゆっくりと歩いている。
誰も俺たちを見ようとはしない。
亜紀ちゃんの身体が仄かに輝いた。
白い光が全身から放出していた。
「私、こんなことしか出来ませんけど」
「花岡」の技を組み合わせてやっているようだ。
「いや、亜紀ちゃん。見てみろよ」
ブランたちが、こちらを向いていた。
「みんな見ているぞ。嬉しそうだ」
亜紀ちゃんは涙を流しながら、しばらく優しい光をブランたちに見せた。
美しい光だった。
風呂に入った。
「タカさん、連れて来てくれてありがとうございました」
「大丈夫か?」
「はい」
亜紀ちゃんは何かを思っているようだった。
「私、もっと頑張りますね」
「ああ、頼むぞ」
「私は、「石神一家」の最大戦力ですから」
「そうだな」
「今日は負けちゃいましたけどね」
「カッコ悪いな」
「エヘヘヘ」
亜紀ちゃんは俺に抱き着いた。
「タカさんも、ブランたちのこと、それにミユキさんたちをお願いします」
「もちろんだ。また亜紀ちゃんの力も借りるしな」
「私、何でもしますから」
「ああ」
俺たちと蓮花で、三人で酒を飲んだ。
今日は蓮花と一緒に日本酒を熱燗で飲む。
蓮花が刺身の盛り合わせと松前漬けをつまみに出した。
「本日はありがとうございました」
「いや、俺も訓練の成果が見られてよかった。予想以上だったよ」
「そうおっしゃって頂けると」
「蓮花さん、お世話になりました」
「いえ、大したおもてなしも出来ずに申し訳ございません」
「蓮花さんのお料理、とても美味しかったです」
「ありがとうございます」
亜紀ちゃんが松前漬けを口に入れ、熱燗を飲む。
蓮花が笑っていた。
「やはり、皇紀様とは違いますね」
「そうですか?」
「はい。亜紀様は石神様のようにお強い」
「皇紀はまだ中学生ですから」
「お前も高校生だろう!」
「えー! 私は「超高校生」ですから!」
「このやろう」
俺たちは笑った。
「きっと、親御さんが悪いんですよ」
「おい、蓮花」
「そーですよねー!」
亜紀ちゃんは鯛の刺身を取った。
ワサビを乗せ過ぎて、少し咽ていた。
「ガキが」
蓮花が笑った。
亜紀ちゃんが目を赤くして俺を睨んだ。
亜紀ちゃんが今日の戦いで気付いたことを蓮花に話した。
蓮花は真剣な顔をして聞いていた。
話し終えると、亜紀ちゃんはもう寝ると言った。
「今日はちょっと疲れちゃいました」
「ああ、お休み」
「お休みなさい」
亜紀ちゃんはシャノアに案内され、部屋に戻った。
「大丈夫でしょうか」
「ああ、多分気を遣ったんだろうよ」
「はい?」
「俺と蓮花、ミユキとの時間をさ」
「そうなんですか?」
「まあ、そういうことにしよう。ミユキを呼べよ。一緒に風呂に入ろう」
「はい、かしこまりました」
俺たちは風呂で愛し合った。
部屋に戻ると、亜紀ちゃんが起きた。
「遅かったですね」
枕元に置いたブライトリングの「ブラックバード」を見て言った。
「また風呂に入ったんだ」
「あー、呼んでくれればいいのに」
「もう寝よう」
「何か歌って下さい」
「超高校生のくせに甘えるなぁ」
「いーじゃないですか、今日くらい。私、結構頑張りましたよ?」
俺はラウドネスの『アレスの嘆き』を歌った。
亜紀ちゃんは目を閉じて聴いていた。
「満足したか?」
「はい。いい歌でした」
「アレスというのはギリシャ十二神の一柱で、戦場の狂乱の神なんだ」
「そうなんですか」
「ガンガン戦争を起こしては大量の死者を生む。だから冥界の王ハデスからは大歓迎されていたんだな」
「アハハハハハ!」
「それにな。神々の中でも最も美しい容貌を持っていて、愛と美の女神アフロディテの愛人なんだ」
「なんか、誰かを想像しますねー」
俺は亜紀ちゃんの髪の毛をクシャクシャしてやる。
「やー」と言った。
「海神ポセイドンの息子がアレスの娘アキッペ(本当はアルキッペ)を犯したんだよ」
「え!」
「それに激怒して、アレスはポセイドンの息子を殴り殺す」
「ヤッター! いいぞアレス!」
俺は笑った。
「いいよな」
「タカさん、頼みますね!」
「誰がうちの亜紀っぺを襲うんだよ」
「アハハハハ!」
「さあ、もう寝るぞ」
「はい、おやすみなさい」
「おやすみ、亜紀っぺ」
布団の中は亜紀ちゃんの体温で満たされていた。
この温もりを奪おうとする奴は絶対に許さない。
俺はいつもそう思っている。
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