富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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亜紀ちゃんと蓮花研究所

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 蓮花の研究所が見えて来た。
 門の前で車を停め、リモコンで開いた。
 俺が中に車を入れると、本館の入り口で蓮花が立っているのが見えた。

 「石神様、亜紀様、お待ち申し上げておりました」

 蓮花が深々と頭を下げた。
 俺は亜紀ちゃんに荷物を任せ、自分でガレージに車を入れる。

 「蓮花、また世話になる」
 「こちらこそ。毎回お越し下さるお手間に恐縮しておりますが、やはり石神様にいらして頂けて嬉しい限りです」
 「来て早々に悪いんだが」
 「はい、お食事でございますね。準備しております」
 「やったー!」

 亜紀ちゃんが喜んだ。
 俺や皇紀、六花から、蓮花の食事の美味さを聞いているのだ。
 三人でエレベーターに乗る。
 蓮花の研究所のエレベーターは階数ボタンが無い。
 量子コンピューターが乗った人間の行き先を推測して案内する。
 声を掛ければその都度行き先に行く。
 今は恐らく事前に蓮花が指示している。
 
 ちなみに階段は強固なシャッターが下りている。
 緊急時にはより強力な防壁が降り、攻撃システムも起動する。
 ここは堅固な要塞になった。

 

 フロアで扉が開き、俺たちは食堂へ向かった。
 亜紀ちゃんとテーブルに座ると、すぐに蓮花が食事を運んで来た。

 俺には和風の膳。
 ハナダイの焼き物。
 キスと野菜の天ぷら。
 シラエビの酢の物。
 カツオの叩き。
 ハマグリの吸い物。
 他に各種煮物などの器。

 亜紀ちゃんは肉だ。
 テールスープ。
 ステーキ。
 メイクイーンとニンジンのバター焼き。
 カリフラワーと千切りゴボウのサラダ。
 野菜のリゾット。

 俺たちは腹が空いていたのでどんどん食べた。
 いつもは遅くとも6時には夕飯を食べているが、今日は7時に近い。
 亜紀ちゃんがステーキを早速食べ終えた。

 「あの、お替りってありますか?」
 「はい。ですが次の一枚で終わりなんです」
 「そーなんですかー」

 悲しそうな顔をした。
 蓮花が二枚目を持って来る。

 「ワーーー!」

 亜紀ちゃんが嬉しそうに笑った。
 5キロ近い肉の塊だった。

 「亜紀ちゃん、蓮花はちょっとオチャメな所があるんだ」
 「そーですねー!」

 蓮花が微笑んでいた。

 「石神家の方をお招きするのに、油断はありません」
 「そうかよ」

 俺も笑った。
 亜紀ちゃんはさっきのものよりも美味しいと言った。

 「昼からずっと低温で焼いていました」

 蓮花の説明で分かる。
 肉は低温で時間をかけて焼くことで、見事な仕上がりになる。
 表面を見ると、カットされている。
 元はもっと大きな肉だったに違いない。
 一番美味しく焼けた部位だけを取り出したのだ。

 美味い食事を終え、俺は新たなブランに会うことにした。
 亜紀ちゃんはシャノンに施設を案内してもらう。

 「キャー! シャノン可愛い!」
 「アきサマ、ヨロしくニャン!」

 シャノンが目を細めて挨拶すると、亜紀ちゃんが抱き着いた。
 主に今回使う施設を案内していく予定だ。





 俺は蓮花の案内で、訓練場に案内された。

 弁財
 大黒
 吉祥
 韋駄
 摩利支
 迦楼羅
 持国
 増長
 広目
 多聞
 帝釈

 仏教の仏から名を取って俺がつけた10名。
 それに加え

 朱雀
 白虎
 玄武
 青龍

 この四名は、主に拠点防衛に特化した者たちだ。
 最後に

 羅刹

 この15名が俺に歓喜の感謝と絶対服従を誓った。
 今回は万能型のミユキや前鬼、後鬼とは違い、ある程度の方向性がある。
 スピード重視であったり、情報収集能力や作戦立案や指揮能力など。
 羅刹は徹底的な攻撃特化型だった。

 俺は全員を外に連れ出し、クロピョンによる記憶再生を施した。
 ミユキたちと同様に、過去の記憶を取り戻してさえ尚、俺への忠誠を誓ってくれた。

 それぞれの過去には、業のどす黒い影がある。
 それが俺たちの絆だ。

 新たなブランたちを休ませ、俺は蓮花と作戦室へ行った。

 



 「石神様、お疲れ様でございました」
 「蓮花、よくやってくれた。これでブランたちの戦力は飛躍的に上がった」
 「はい。「個」としての戦力には限界がございます。ああ、もちろん石神様や亜紀様は別で」
 「いや、蓮花の言う通りだ。デュール・ゲリエは明日見せてもらうが、ブランたちとの共同戦線が張れるかもしれないな」
 「デュール・ゲリエにそれなりの防御と武装を与えれば、さぞ見事な戦いが出来ましょう」

 話していると、亜紀ちゃんが来た。

 「タカさーん! 入ってもいいですか?」
 「おう、入れよ。遠慮するな」
 「はーい」

 蓮花が笑顔で出て行った。
 コーヒーを持って来る。

 「お酒はお風呂の後がよろしいかと」
 「そうだな。これを飲んだら風呂に入るか!」
 「オッシャー!」

 俺と蓮花で笑った。

 「ミユキさんとお会いしたいんですが」
 「では、後で呼びましょう」
 「ありがとうございます!」

 俺たちは部屋へ行った。
 亜紀ちゃんと同室だ。
 着替えの浴衣も二人分あった。

 俺は遠くの山に向かう夜道を行く虎の後姿が、月光に照らされる意匠。
 亜紀ちゃんはマシンガンとでかい大鎌を構える死神髑髏の意匠。

 「カッコイイですね!」
 「な、蓮花の趣味はいいだろう?」
 「はい!」

 二人で浴衣を抱えて風呂に行った。




 「広いですね!」
 「そうだろう」

 いつものように互いを洗って、俺たちは湯船に浸かった。

 「タカさん」
 「なんだ?」
 「お父さんの話をしてくれませんか?」
 「どうしたんだよ」
 
 「タカさんといると、毎日が楽しくて幸せで。あのまま両親が生きていたら、こんなことは無かっただろうと」
 「山中たちが生きていれば、もっと幸せだったさ」
 「そうかもしれませんけど」
 
 「あいつは心底、奥さんと亜紀ちゃんたちを愛していた。俺なんかよりもずっと可愛がって幸せだったろうよ」
 「タカさんはそう言いますよね」
 「その通りだからな」
 「はい」

 亜紀ちゃんが俺に向いた。





 「じゃー、ちょっと私の話を聞いてくれますか?」

 「もちろんだ」

 亜紀ちゃんが語り出した。
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