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別荘の日々: レイも一緒 Ⅶ

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 別荘に戻り、みんなでお茶にする。
 今日は珍しく緑茶を煎れてみたらし団子を食べた。
 その後で俺は早速パンプキンプリンを作り始める。
 勉強をしている子どもたちと柳がこっちを見ている。
 レイは独りで風呂に入りに行った。
 風呂が気に入ったようだ。

 俺が煮えたカボチャをフードプロセッサーにかけ、卵やバニラエッセンスと混ぜていると、レイが風呂から上がって来た。

 「あ! 本当に作って下さるんですね!」
 「楽しみにしてろ。夜には喰わせてやる」
 「はい!」

 レイが喜ぶ。

 「生クリームも乗せるか?」
 「はい、お願いします」
 「「「「「お願いします!」」」」」

 「お前らのためじゃねぇ!」

 みんなが笑った。
 俺はレイに夕方まで寝るように言った。
 レイは笑って、「じゃあ」と言った。


 俺はパンプキンプリンを冷蔵庫に仕舞い、そのまま魚介類の処理を始める。
 子どもたちが勉強を終え、それに加わったので、俺は一休みした。
 亜紀ちゃんがコーヒーを淹れてくれた。

 「かぼちゃ、買って来たんですね」
 「ああ、レイの好物らしい」
 「そうですか!」

 亜紀ちゃんは嬉しそうに笑い、カボチャを切り始めた。
 5時になり、準備が出来る。
 俺が起こしに行こうとすると、レイが降りて来た。
 ウッドデッキで柳がバーベキュー台を扱っていた。
 皇紀に出来を見てもらっている。

 今日は肉もあるが、魚介類が豊富だ。
 アワビ、伊勢海老、ホタテ、車エビ、タラ、スズキ、鯛、タコ、その他。
 スープは海鮮だ。
 魚介類の骨やアラを一度焼いてから出汁を取っている。
 メイラード反応を利用した調理法だ。

 双子がレイに、ホタテのバター醤油を教えている。
 レイがその美味さに喜んでいた。
 タコは苦手なようだったが、俺がゲソをオチンチンに見立ててから焼いて食えと言った。

 「セクハラです!」

 そう言っていたが、一口ワサビ醤油で食べるとどんどん食べた。

 「生でも美味しいんだぞー」

 俺が股間でゆらゆらさせると、亜紀ちゃんに怒られた。

 柳も豊富な海鮮に喜んでいる。
 俺が軽く鯛を炙って茶漬けを作ってやると喜んで食べた。
 亜紀ちゃんと双子も作ってくれと言うので、作り方を教えて自分でやらせた。
 レイにも少し作ってやる。
 あっさりとした旨味に喜んだ。
 カボチャはレイが喜んで沢山食べた。

 伊勢海老とアワビは俺の管轄だ。
 俺が焼いて、みんなに分ける。
 伊勢海老には焼き終えて少量の粉チーズを振るった。
 アワビにはライムを絞る。
 幾らでも買えるが、量は抑えている。
 こういうものは喰い散らかすものではない。
 ロボも唸りながら食べていた。

 片付けながら、残っていた花火でレイと遊んだ。
 片づけを終えて、子どもたちも加わる。
 ロボは匂いが苦手なのか、近寄らない。

 その後でみんなで風呂に入った。
 俺が望んだのではない。
 亜紀ちゃんに突然担がれ、双子が寝間着と下着を持って来た。
 裸にされた。

 皇紀は来ない。
 一人でバーベキュー台を掃除した。

 みんなで背中を流し、髪を洗い合う。
 俺はオチンチンけん玉の修練の結果を見せて、喝采を浴びた。
 全員で湯船に浸かる。
 余裕がある。

 「金髪、黒、黒、ツルツル、ツルツル」

 俺が言うと、全員が笑った。

 「オッパイ、チッパイ、チッパイ、ツルツル、ツルツル」

 亜紀ちゃんに叩かれた。


 皇紀も風呂から上がって来る。

 「いいな、お前は人気がなくて!」
 「どうも」

 皇紀は冷たい牛乳を飲んで幸せそうな顔をしていた。
 俺が尻を蹴ると、イタイと言った。

 みんなでパンプキンプリンを食べる。
 レイが美味しいと感動していた。
 まだ一杯あるので、明日にまた食べることにする。



 全員で屋上に上がる。
 今日はレイ、亜紀ちゃんが俺に付き合いワイルドターキーを。
 柳と皇紀は梅酒を。
 ルーとハーはミルクセーキを作った。

 今日はブルーのライトにしている。

 「わぁー! タカさん、ライトが変わるんですね!」
 「ああ、驚いたか」
 「はい!」

 俺は中心の部屋だけ、暖色系の灯を点ける。
 温かな空間が出来た。
 しばし、全員で雰囲気を味わった。

 「石神さん、好きです」

 レイが呟いた。

 「あたしもー!」
 「私もー!」

 「うるせぇ! 黒チッパイ共!」
 「「えぇー!」」

 レイが笑った。

 


 「今日はレイのリクエストなんで、俺の傭兵時代の話を少ししよう」

 全員が黙って俺を見た。

 「俺の窮地を聖が救ってくれ、俺は聖に誘われてアメリカへ行った。チャップという傭兵の世界じゃ有名な人間がやっている訓練機関へ入ったんだ。そこで一ヶ月ほど訓練を受けた」




 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■



 最初に試験的なものがあった。
 体力測定と格闘技や銃の扱い。
 銃に関してはド素人だった俺たちも、そこそこの成績で訓練を受ける資格を得た。
 体力と格闘技は抜群だった。

 最初は宿舎に入れられた。
 だが、問題が一つあった。
 俺と聖は日本人で、差別的な人間から毛嫌いされた。
 嫌われるのは一向に構わないが、支障が出てきた。

 ある日、訓練を終えて食堂で夕飯を受け取る時、サーブしていた奴が俺たちの肉を地面に放った。

 「ヘイ、チンク! 犬のように喰え!」

 笑っているそいつを、俺と聖でボコボコに締めた。
 外に連れ出して、両肘をへし折った。
 相部屋になった俺たちは、話し合った。

 「聖、ここはお上品な場所じゃねぇ」
 「おう!」
 「舐められたら終わりだ。明日から強気で行くぞ!」
 「おう!」
 「お前、分かってねぇな?」
 「おう!」

 俺と聖は、翌日から本来の暴力的な人間として振る舞った。
 睨みつける奴を殴り飛ばし、舐めた口を利く奴を沈めた。
 訓練は厳しいなんてものじゃなかった。
 起き抜けから指定されたコースの匍匐前進をさせられる。
 頭が上がった奴に、容赦なく44マグナムが顔のすれすれにぶち込まれる。
 銃口が1ミリずれれば、頭が吹っ飛ぶ。
 銃の扱いと射撃訓練。
 成績の悪い奴はどんどん追い出された。
 俺と聖は必死で覚えた。

 格闘技訓練。
 これはまったく問題が無いばかりか、俺たちに勝てる奴は教官にもいなかった。
 しかし、様々なテクニックは大いに役立った。
 俺も聖も真面目に教わった。



 そのうちに宿舎を追い出され、みんな森の中で寝起きさせられた。
 最初は与えられた毛布も奪われた。
 俺と聖は他の連中から奪った毛布を隠し、ぬくぬくと寝た。
 更に食糧の供給が断たれ、自分たちで調達しなければならなくなった。
 俺たちは狩を覚えた。

 聖は射撃で抜群の才能を発揮した。
 俺は聖ほどではないが、射撃は上達し、格闘技で真価を見せつけた。

 夜間に戦闘訓練が行われる。
 不意打ちで教官たちが寝ている俺たちを襲った。
 俺も聖も気配で察知し、毎回撃退していた。
 本来は襲撃を察知して反応すれば終わりだったが、ある晩に俺たちを憎んでいる教官が来た。
 教官に逆らえば終わりなので、酷い目に遭っていた。
 俺は闇に乗じて、教官の腹を尖らせた木の枝で抉った。

 「事故がありまして」

 引きずって行った俺を、他の教官たちが取り囲んだ。
 全員がナイフとガンを抜いていた。

 「お前がやったのか」
 「はい」

 トップのチャップが現われて俺に聞いた。

 「お前らを毛嫌いしていたからか」
 「はい」

 突然チャップが笑い出した。

 「分かった、もういい。お前らの成績は聞いている。最後まで残れ」
 「はい」

 俺は聖の所へ戻った。
 聖は近くまで来ていた。

 「トラがやられそうになったらって」
 「ありがとうな」

 俺は聖と肩を組んで戻った。





 俺と聖は優秀な成績で訓練課程を修了し、特別にチャップの指揮するチームに加えてもらった。
 ニカラグアの反政府ゲリラたちの軍事教練と同時に、LRRP(Long Range Reconnaisance Patol)を行なう。
 危険で厳しい任務だった。
 三日後、俺たちはニカラグアのジャングルにいた。
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