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別荘の日々: レイも一緒 Ⅴ

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 話し終えて、みんなに拍手された。

 「おい、なんだよ」
 「いいお話でしたぁ!」
 「亜紀ちゃんに褒めてもらってもなぁ」

 俺は笑った。

 「うちの亜紀ぼーも、いい加減不良なんだけどな」
 「そんなことないですよ! 亜紀ちゃんはいい子です!」
 「お前何言ってんだよ! 高校生が大酒のみで、ちょっと遊びに行くとヤクザと喧嘩してくるじゃねぇか!」
 「それは親のせいです」
 「山中ぁー!」

 みんなが笑った。

 「その後、明彦さんは?」

 レイが聞く。

 「ああ、仕事も家庭も順調でな。小さい男の子が二人いるよ」
 「そうですかー!」

 「その和田社長という人もスゴイですよね」

 柳だ。

 「そうだな。間違いなく凄い霊能者だ」
 「元ヤクザなんですか?」
 「ああ。若い頃は相当酷い人だったらしい。でもお母さんが泣きながら死んで行ったのを見て、改心したらしいな」
 「そうなんですか」
 「その後で数年刑務所に入って。そこから会社を立ち上げたらしい。霊能は生まれつきだったかどうかは知らん」
 「あの、一つ気になったんですけど、独立した方の親戚の家ってその後どうなったんでしょうか」
 「みんな死んだ。病気とか事故でな」
 「そ、それって!」

 「俺は和田さんがやったわけじゃないと思うよ。因果応報だったんだろう」
 「怖いですね」
 「柳、人間にはな、絶対にやってはならんことがあるんだ。覚えておけよな」
 「はい!」




 俺たちはしばらく黙って、夜の闇を味わった。

 「またシズエ様にいいお話が出来ます」
 「レイは静江さんと響子が大好きだもんな!」
 「みなさんのこともですよ」
 
 「そうだったな」

 俺は一旦解散だと言った。

 「残りたい奴はまだ飲んでていいぞ」
 
 皇紀と双子はつまみを口に押し込んで降りて行った。
 亜紀ちゃん、柳、レイ、ロボが残る。
 双子たちにつまみを喰い荒らされたので、一旦キッチンで補充する。
 
 「レイ、何か食べたいものはある?」

 亜紀ちゃんが聞く。

 「なんでしたっけ、赤い魚の卵」
 「あー、メンタイコ!」
 「それそれ!」

 「柳ー、何か食べたいものはある?」

 俺が聞いた。
 
 「じゃあ、お豆腐を」
 「バカヤロー! そこは「なんでしたっけ、大豆の白いやつ」とか言え!」
 「あ!」

 レイと亜紀ちゃんが笑った。
 木綿豆腐を切った。
 四人でまた屋上に上がる。





 「不思議な話って言えばよ」

 俺は小学生の頃に出会った佐奈の話をした。
 三人が泣く。

 「佐奈ちゃんはタカさんを連れて行こうとしたんでしょうか」
 「分からないな。そう思ったのかもしれないけど、辞めたのは確かだな」
 「そうですね」

 俺は「四十九日」というものをレイに話した。

 「仏教では、生まれて生きて死んで。そして次の世界に移ると考えているんだ」
 「そうなんですか」
 「死んだ後に、その人間のこの世での生き方が閻魔というあの世の審問官に判定され、天国に行くか地獄へ堕とされるか次の転生先を決められる。その期間が「四十九日」という期間なんだよ」
 「なるほど」
 「だから遺族は49日間、喪に服して死者のために祈る。佐奈はその最後の日に俺に別れを告げた、ということになるな」
 「ああ」

 「またこれは別な意味というかな。悲しい別れをいつまでも引きずらないで、残された人間も切り替えて元気に生きよう、ということにもなる。昔の人間の知恵だな」
 「なるほど、素晴らしいですね」
 「まあ、なかなかそうも行かないことも多いけどなぁ」
 「そうですね」

 「雲竜寺の和尚さんも霊能があったんですね」
 「ああ、結構修行したらしいからな」
 「そうなんですね」
 「でも、酒が好きでなぁ。よく城戸さんの店にも来てた」
 「そうですか!」

 亜紀ちゃんが喜ぶ。
 城戸さんの話が大好きなのだ。

 「最初は俺を見て驚いてたけどな。まあ、細かいことは気にしない人だったから。坊主のくせにウイスキーが好きでなぁ。グイグイ飲んでた」
 「アハハハハ!」
 「「般若湯じゃないんですね」って言うと、「俺はクリスチャンなんだ」ってよ。面白い人だったよ」
 「アハハハハ!」

 「毎年寺の縁日に露店が集まってな。小学校はその日は午前中で終わって、子どもたちがみんな行くんだ」
 「へぇー」
 「じゃあ、佐奈ちゃんはそういう時に石神さんを見たんですかね?」

 柳が言った。

 「あー、そうか! そうだったのかもな。近隣の学校の子もみんな来てたしな」

 亜紀ちゃんがレイに、俺が小学生からよく女の子にモテたのだと話した。

 「石神さんならそうだったでしょうね」
 「レイがいりゃ、俺はレイと付き合ってたけどな!」
 「ウフフフ、ありがとうございます」
 「まあ、子どもだったからな。女の子と遊ぶよりも、男と遊ぶ方が楽しかったし。だから逃げ回ってた」
 「あー」

 「でも知子ちゃんで、女の子の価値を知ったんですよね!」

 亜紀ちゃんが言う。

 「おい、やめなさい」

 亜紀ちゃんはレイと柳に、知子ちゃんで初体験をしたのだと話した。
 二人は爆笑した。

 「しょうがないだろう! 俺は善悪もねぇただのガキだったんだから」
 「酷い人ですね」

 レイが言う。

 「待て待て待て! 俺は全員、同意でやってたんだぁ!」
 「酷い男がよく言うセリフです」
 「本当に勘弁してくれ。俺だってやり過ぎだったと思ってるんだから」

 三人が笑った。




 「一江がよ、昔の俺の交友関係とか洗ってるらしいんだよ」
 「そうなんですか!」
 「ああ。知子ちゃんも捕まえたらしい」
 「へぇー!」
 「あいつは無駄にそういう才能があるからなぁ。もちろん男関係もな。前の宇留間の件みたいのを防ぐためだって言ってたけど、ありゃ完全に趣味よな」

 「凄い人ですね!」

 「俺に知りたければ、みんな今どうしてるとか教えると言っていた。会いたければ手配するともな」
 「会えばいいじゃないですか!」

 亜紀ちゃんが言う。

 「あのなぁ。別れた人間は別れたんだ。俺は人生を懐かしむほど耄碌してねぇ」
 「アハハハハ」
 「じゃあ、レイ。お前の初体験を話せ」
 「嫌ですよ!」

 「レイ、愛する男に初体験の話をすると、その男と一生結ばれると言う日本の伝説があるんだ」
 「本当ですか!」
 「レイさん、タカさんのいつもの嘘ですから、引っ掛かっちゃダメですよ!」
 「石神さん!」
 「ニャハハハハ!」

 俺はロボを抱き上げ、ロボの手を振った。

 「レイは確かジュニアハイスクールの時に、地元の漁師のジェイムズだったよな」
 「全然違いますよ! 大体私は海の近くの生まれじゃありません!」
 「ニャハハハハ!」

 「じゃあ、レイ。俺に初体験の話をするのと、俺にウンコをするのを見せるのとどっちがいい?」
 「え、それは……」

 「レイさん、応えちゃダメ! タカさんの誘導なんですから! この人、悪魔みたいに狡猾なんですよ」
 「え!」

 俺は笑った。

 「石神さん。私の初体験は地元の漁師のジェイムズです」

 みんなで笑った。
 下らない話で、夜中まで盛り上がった。
 柳に少し飲ませ、異常に弱いことが分かった。

 「柳、新歓コンパがあったら亜紀ちゃんを連れてけ」
 「はい」

 柳が眠そうなので解散した。
 片付けてみんな部屋に入る。

 「タカさん。私の初体験の話を知りたければどうぞ」

 亜紀ちゃんが言う。

 「ニャハハハハハ!」

 レイも笑いながら部屋に入った。




 「お前の初体験は?」
 ロボが耳元で、ニャーと鳴いた。
 当然分からなかった。
 ぐっすりと寝た。 
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