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別荘の日々: レイも一緒 Ⅱ

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 別荘に戻り、三時前だった。
 お茶の時間にする。
 普段は別に決めているわけではないが、何となく休日などは、三時にお茶と甘いものを食べることもある。
 別荘では、それが決まっていた。
 何も無い場所だからこそ、何かを決めて行なうことが大事な気がする。

 タイ焼きをもらったので、それと適当に菓子を出した。

 「レイ、散歩はどうだった?」
 「はい、楽しかったですよ」
 「本当かよ」

 俺は笑った。
 この辺は何も無い。
 別に景色が綺麗なわけでもないのだ。
 ただ、山林の中を歩くだけ。
 散歩だけであれば、別荘にいる時の気分を変えるだけのものでしかない。

 「「倒木の広場」ですか。そこに案内してもらって、いろいろお話を聞きました」
 「なるほど」
 「また、石神さんと六花さんの「聖地」も行きました」
 「ルー! ハー!」
 「「アハハハハ!」」

 「このやろう」

 「皇紀も楽しんだか?」
 「僕はロボと留守番してただけです!」
 「そうか」

 双子がイヤラシイ笑いをする。


 
 「じゃあ、五時まで自由時間とする。柳は少し寝るからな。うるさくはするな」
 「「「「はーい!」」」」

 「レイはどうする? 少し休むか?」
 「そうですね。部屋で横になってます」
 「じゃあ、夕飯に起こすよ。ゆっくりしてくれ」

 「タカさんは?」

 亜紀ちゃんが聞いて来た。

 「ロボと散歩してくる」
 「いってらっしゃーい」


 ロボ用のミルクを水筒に入れ、小皿を持つ。
 最近は、それが散歩の合図だと覚えたようだ。
 俺と一緒に玄関へ行き、ドアにもたれかかる。

 「よし、行こうか!」
 「ニャウ!」

 歩き出すと、ロボが疾走する。
 20メートル先で俺を待っている。
 カワイイ。

 俺が追いつくと、また先に走る。
 そのうちに飽きて、俺を先に行かせ、自分が後から追いつく。
 俺はロボを抱き上げて歩いた。
 俺の顔を舐めて来る。

 「倒木の広場」でロボにミルクをやり、俺も少し飲んだ。
 飲み終えて俺を見ている。
 尻尾を振っている。

 「おお、ここなら上に撃っていいぞ」
 
 ロボは俺から少し離れ、尻尾を割って放電を始めた。

 「おい! ちっちゃいのにしろよな!」

 ロボの口の前に光球が出来る。

 「だからちっちゃいのにしろってぇ!」

 光球を打ち上げた。

 ドドォォォォォーーーーン。

 「あぁー!」

 被害は無いが、誰かが見たかもしれない。

 「まったく、しょうがねぇなー」

 ロボは俺をキラキラした目で見ていた。

 「100点!」

 言うと俺に駆け寄って来た。
 




 「おかえりなさーい!」

 亜紀ちゃんが俺たちを出迎えた。
 新しく拡張したウッドデッキに、バーベキュー台やテーブルを出している。

 「なんだよ、後でみんなでやればいいだろう」
 「なんか、身体を動かしたくて」

 俺は笑って手伝った。
 ロボが置いたテーブルや椅子に乗って遊ぶ。
 中へ入り、亜紀ちゃんにコーヒーを淹れてもらった。

 「さっき、大きい音がしましたよ」
 「ああ、こいつだ」

 俺はロボを指さした。

 「今度、私も見せて下さい」
 「そうだなぁ。夜にでもやるかぁ」
 「はい!」




 五時になり、みんな集まった。
 柳も起きてきている。
 レイはまだ寝ているようだった。
 
 食材を切り、肉に下ごしらえをする。
 うちに来て一ヶ月が経ち、柳も大分包丁の扱いが上手くなった。
 亜紀ちゃんが燻製機で卵や肉の燻製を作る。
 皇紀はコーンポタージュを担当する。
 柳と双子はひたすら食材のカットだ。
 俺もカットを手伝いながら、頃合いを見てロボと一緒にレイを起こしに行った。

 ドアをノックすると、レイの返事があった。

 「レイ、そろそろ支度が出来る。大丈夫か?」
 「はい、じゃあ下に行きます!」



 子どもたちは食材を運んでいた。
 テーブルの一つに食材を入れたバットを並べている。
 皇紀はバーベキュー台の火を調整している。
 柳が隣で覚えようとしていた。

 レイが降りて来たので、食事を始めた。
 みんなで好きな食材を焼き始める。
 俺はロボに下ごしらえをしていない牛肉を焼いて食べさせた。
 こういう食事の場合、誰もロボの世話をしない。

 レイは楽しそうにみんなと肉を焼いて食べていた。
 俺は冷蔵庫からビールを出してレイに持って行った。

 「バーベキューのつもりなんだがな」
 「ああ、そうなんですね」
 「やっぱ、違うか?」
 「アハハハハハ!」

 串に刺して焼いていないと言われた。

 「まあ、最初は刺してたんだよ。そうしたらこいつらが串を武器に使い出したのな」
 「アハハハハハ!」
 「皇紀が何回か刺された」
 「エェー!」

 ホスト役が焼くそうだ。

 「まあ、最初は俺が焼いてたんだよ。そうしたら鍋と同じで争奪戦になった」
 「アハハハハハ!」
 「皇紀が毎回血を流すんでなぁ」
 「エェー!」

 「だから自由に自分で焼かせるようにしたんだ。まあ、別な人間が焼いたものも奪っていくんで、戦争っていうのは尽きないものだよなぁ」

 皇紀が焼いた肉を亜紀ちゃんが奪い取って行った。

 「ワハハハハハ!」

 高笑いしている。
 口に入れた。

 「ウップゥワッ!」

 吐き出した。
 皇紀が笑っていた。
 裏面にたっぷりと唐辛子を塗ったようだ。

 「楽しそうですね」
 「まったくだ」

 亜紀ちゃんが俺の所へ来て、俺のビールをゴクゴク飲んだ。

 「あー! 辛かったぁ!」
 「てめぇが今飲んだのはなぁ」

 ダッシュで消え、新しいビールを持って来た。
 自分の分もある。
 ニッコリ笑ったが、俺にぶっ飛ばされた。
 動かない。

 「その辺もバーベキューじゃないですね」
 「そう?」

 二人で笑った。
 亜紀ちゃんがすぐに気が付いて、何事も無かったかのように争奪戦に戻った。
 柳が来た。
 何枚かステーキを皿に乗せている。

 「おお、よく守り切ったな」
 「皇紀くんの傍で焼きました」
 「コバンザメかよ、お前は」
 「アハハハハ!」

 皇紀が守ってやったのだろう。

 俺とレイも焼きに行った。
 争っていた子どもたちがちょっと離れる。
 俺の焼きの邪魔をすれば、どうなるのか分かっている。
 俺はゆっくりと焼き、自分とレイの皿に盛った。

 「ありがとうございます」
 「まあ、いつの日か、本当のバーベキューをやろう」
 「アハハハハハ!」




 既に周囲は暗い。
 俺たちは楽しく食事をした。
 ウッドデッキの暖色系のライトが、温かな空間を作っていた。
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