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「紅六花」ビル、再び Ⅵ

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 俺は深夜に風呂に入った。
 六花が入って来る。

 「よう」

 俺が声を掛けると、六花はニコニコして湯船に入って来た。

 「今回も楽しかったですね!」
 「そうだな」

 まあ、六花がいればどこでも楽しい。
 俺たちは長いキスをして、愛し合った。

 部屋に戻ると、でかいベッドのあちこちで響子と柳、子どもたちとロボが寝ていた。
 俺たちは空いている場所に、そっと潜り込んだ。
 ロボが気付いて寄って来る。
 俺の足の間で眠った。



 朝起きると、まだみんな寝ている。
 俺は着替えて顔を洗い、一階へ降りた。
 ロボも付いて来る。
 小鉄がまた早起きして準備をしている。

 「おはよう、小鉄!」
 「石神さん! またこんなに早く起きていらして!」
 「アハハハハ」

 俺は小鉄にテーブルに座って欲しいと言われ、そうした。
 朝食セットを持って来る。
 ちゃんとヨーグルトも付いていた。
 ロボにはマグロを炙ったものが出た。
 食べ終わると、よしこが数人を連れて入って来た。
 俺は厨房の陰に隠れる。

 「よし! 片付けるぞ!」
 「よしこさん、すいません!」
 「おう! 小鉄、おはよう!」
 「よしこさん! すいません!」

 俺は出て行って一緒にテーブルを運んだ。

 「石神さん! また! どうか座ってて下さい!」
 「いや、お前がやれって言った」
 「勘弁して下さいよ!」

 俺は笑って手伝った。
 みんなで食器を洗う。
 1時間ほどで店の中は戻り、よしこたちは小鉄に朝食セットをもらった。
 俺はコーヒーを淹れてもらう。
 タケも来た。

 「石神さん! おはようございます!」
 「ああ、おはよう。悪いが先に小鉄に朝食をもらったよ。ヨーグルトがいつも美味いなぁ」
 「ありがとうございます」
  「タケ、また石神さんが手伝ってくれたんだ」
 
 よしこが言った。

 「もう! ゆっくりしていただきたいのに」
 「いや、身体を動かさないと気持ち悪くてな」

 ロボは全然遊んでない。
 俺は外に連れ出して、ロボと鬼ごっこをした。
 よしこたちも一緒にやりたがるので、遊んだ。

 「すげぇー! ちゃんとルールが分かってるんですね!」
 「東大卒の家の猫だからな!」
 「やっぱぁー!」

 しばらく遊んで、中へ戻った。
 ロボにミルクをもらう。
 子どもたちも降りて来た。
 六花と響子はまだだ。
 みんな朝食を頂く。

 「柳、よく眠れたか?」
 「はい! なんかみんなで寝て楽しかったですよ」
 「そうか」

 俺は響子と六花を起こしに行った。
 二人を連れて降り、朝食を食べさせる。

 「よし! じゃあ恒例の御恩返しだ!」
 「「「「「はーい!」」」」」

 子どもたちと柳で、8階の掃除と1階の掃除をさせてもらう。
 布団は双子が屋上に運んで干した。

 「石神さん! 困りますって!」
 「いいからやらせてくれよ。子どもの教育のためなんだ」
 「そんなぁ」

 タケが困った顔をしていたが、教育のためと言われて言い返せない。
 俺は掃除を任せ、響子と六花と一緒にハマーで「紫苑六花公園」へ行った。
 鍵は俺が開ける。
 ダイヤル式のチェーン鍵は、引っ張りながらダイヤルを回すと外れる。
 俺たちはベンチに座り、響子に紫苑と六花の話をした。
 響子は途中から六花に抱き着いて泣いた。

 ヒロミのカフェバーに行ってみた。
 10時半で開店の準備をしていたが、俺たちを見て入れてくれた。
 みんなでカウンターに座り、ホットミルクをもらう。

 「石神さん、昨日は本当に楽しかったです!」
 「俺たちもだよ、ありがとうな」

 六花はニコニコし、響子ももう笑っていた。

 「よしこが帰りに大泣きしちゃって」
 「そうなのかよ」
 「はい! 石神さんのためなら死ぬって言ってました」
 「なんだよ、そりゃ」
 
 俺は笑った。

 「総長はやっぱ、すごいですよ」
 「なんで?」

 六花が不思議そうな顔をする。

 「だって、こんなにすっげぇお方を連れて来てくれるんですから!」
 「そうだね!」
 「オセロは弱いけどな」

 みんなで笑った。
 六花が、最近響子がオセロを一緒にしてくれないと言った。

 「だって、六花は負けると悲しそうな顔をするんだもん」
 「そんなぁー」
 「大食い勝負なら負けないけどな」
 「そんなぁー」
 「腹が減ると、響子も喰われちゃうぞ」
 「え、やだ」

 六花が響子の耳をペロペロする。
 響子は笑って嫌がった。
 俺も反対側から舐める。

 「うーん、今日はカレー味かぁ」
 「響子、耳もたまには洗いなさい」
 「えー! 洗ってるよ!」

 「いいか、響子。人間はいくらオセロが強くても、何か国語も喋れてもな。耳がカレー味になったら終わりよ」
 「アハハハハハ!」
 
 俺は六花の耳を舐める。

 「おお、今日もバラの味だな!」

 六花も俺の耳を舐める。

 「石神先生もバラです!」

 二人でドヤ顔をすると、響子が大笑いした。

 「おい、カレー味が笑ってるぞ」
 「ほんとですね、カレー味のくせに」
 「夕べタカトラが洗ったんじゃない!」
 「ばかやろー! お尻と耳は自分で洗え!」
 「ひどいよー!」

 ヒロミが爆笑していた。




 俺たちはヒロミに礼を言い、「紅六花」ビルへ戻った。
 小鉄が駆けて来て、昼はカレーにしたいと言った。
 響子が微妙な顔をした。

 「ああ、頼むよ。俺も子どもたちもカレーが大好きなんだ」
 「ありがとうございます!」

 俺はちょっと厨房に入れてもらい、幾つか指示した。
 子どもたちも掃除を終え、帰り支度をした。
 皇紀と双子が屋上から布団を回収する。
 帰るのを察したのか、ロボが俺にピッタリ付いている。
 前回、忘れてしまったのを覚えているのか。
 居間で寛いでいると、タケが呼びに来た。

 一階でカレーをいただく。
 美味しかった。
 子どもたちが大喜びでお替りをもらいに行く。
 小鉄が満面の笑みで、全部食べて下さいと言った。
 よしこと数人が来て、カレーを食べて感動する。

 小鉄が俺にオムライスを持って来た。

 「こっちも味見してもらえませんか?」

 俺はスプーンで一口食べた。

 「ああ、美味いよ!」

 小鉄とタケが喜んだ。

 「命名! 虎オムライスとリッカレー! ブロマイドはロボと響子な!」

 みんなで笑った。
 響子の写真をあらためて撮る。
 響子は喜んでポーズを決めた。
 俺たちが帰ろうとすると、また「紅六花」全員が見送りに来ていた。

 「ひろみ! お前店はどうしたんだ!」
 「外出中になってます!」
 
 俺は笑った。
 集まってくれたみんなに礼を言った。

 「タケ、よしこ、また世話になったな」
 「いいえ! こちらこそ!」
 「みんな、また来るからなー!」
 
 六花が叫んだ。
 俺たちはハマーに乗り込む。
 一応、全員がいることを確認した。
 ロボは響子の隣にちゃんといる。





 道を走っていると、集団が見えた。
 近づくと、孤児院の子どもたちだった。
 車を停めた。

 「なんだ、見送りに来てくれたのか」
 
 院長が、子どもたちがどうしても見送りたいとせがんだと言う。

 「長いこと待ってたんじゃないのか?」
 「いいえ。よしこさんに出発を教えて頂きました」
 「そうか」

 竹流が駆け寄って来た。

 「僕、将来医者になります!」
 「ん? どうしてだ?」
 「神様はお医者さんだと聞きました!」
 「そうか。じゃあ俺が全部援助してやるからガンバレ」
 「はい!」
 「じゃあ、みんな! これは見送りに来てくれた礼だぁ!」

 俺は空に「轟閃花」を放った。
 上空に巨大なプラズマが拡がり、しばらくそらが薔薇色に染まる。
 子どもたちが喜んでくれた。

 「じゃあな! 勉強を頑張れよ!」




 俺たちのうしろで、子どもたちがいつまでも手を振っていた。
 助手席で柳がニコニコしている。

 「どうした?」
 「石神さんの所へ来て、本当に良かったです!」
 「そうかよ」




 高速に入り、亜紀ちゃんが言った。

 「じゃーそろそろ、タカさんが好きな任侠映画の歌合戦をするよー!
 「えー! 一曲も知らない!」

 柳が泣きそうな顔になった。
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