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トラ&亜紀:異世界転生 Ⅴ

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 俺たちがクライスラー王国王都「クライスラー」に近づくと、激しい戦闘中だった。

 「あー、カイザードラゴンかぁ」
 「あのおっきいドラゴンですか?」
 「ああ、そうだ。前回も襲撃されてたんだよなぁ」
 「なんか、タカさんやる気ないですね?」
 
 「俺さ」
 「はい?」
 「最近、「ワンパターン」っていうのが苦手でさ」
 「そうなんですか?」

 カイザードラゴンの強烈なブレス。
 王都側でも必死に防御結界を張るが、多少は軽減しても突破され、王都内が爆発している。

 「まあ、しょうがねぇか」
 「漢ですもんね!」
 「まーなー」

 俺と亜紀ちゃんはシエルから飛び降りた。
 シエルは空間収納で仕舞う。
 「鷹閃花」で高速飛行し、二人で「轟閃花」を撃ち込む。
 瞬時にカイザードラゴンたちは消滅した。
 王都の内側に着地する。
 大歓声と共に、兵士たちが集まって来た。

 「すごいぞ、あんた!」
 「もう終わりかと思ったよー!」
 「ありがとう! ありがとう!」

 俺はうんざりしながらも、手を上げて歓声に応えていた。

 「「!」」

 俺と亜紀ちゃんは同時に感じた。
 恐ろしく巨大な気配。

 「あれはなんだぁー!」

 兵士たちが空を見た。
 全長3キロメートルの超巨大なドラゴンがいた。
 俺も近くに来るまで気付かなかった。

 「亜紀ちゃん、あいつは恐ろしく速いぞ!」
 「はい!」
 「亜紀ちゃんはディフェンスだ! 俺が攻撃に出る!」
 「タカさん、気を付けて!」
 「おう! 任せろ!」

 巨大ドラゴンの口が開いた。
 亜紀ちゃんが最大の結界を張る。
 俺はマッハ20で高速移動した。
 服が瞬時に消える。

 ブレスが王都にぶち込まれる。
 亜紀ちゃんの張った結界が破れる。
 しかし、亜紀ちゃんは多層構造で結界を張っていた。
 何枚も壊れるが、半分を超えたところで何とか凌いだ。

 俺は「虎王」を抜き、ドラゴンの首を斬り裂いた。
 高層ビル程の首が落ち、頭は王都の内側へ、山のような身体は城壁の外へ落ちた。
 しばらくの沈黙の後で、大歓声が響いた。
 俺は亜紀ちゃんの隣に降りた。

 「すっげぇー! なんだあの技はぁ!」
 
 口々に褒め称えられる。
 
 「でっけぇー!」

 俺は裸なのに気付いた。

 「あんなの、見たことねぇ!」
 
 俺は嬉しくなり、兵士からナイフを借りてオチンチンけん玉を披露した。
 亜紀ちゃん以外に見せるのは初めてだ。

 「オォォォォー!」
 
 高難易度の、ナイフをひっくり返して立てる技を披露した。
 歓声が沸いた。
 ナイフがちょっと刺さって血が出た。
 慌てて終わった。
 亜紀ちゃんが空間収納から毛布を出してくれた。

 「バカなんですか!」
 「悪い……」





 俺たちはすぐに王城へ案内された。
 馬車の中でちゃんと服を着た。
 謁見の前に、部屋へ案内される。
 宰相と名乗る人物が来た。

 「メシア様」
 「ああ、アイザック家の人間か」
 「はい。この度のお越しを感謝いたします」
 「ああ。魔王のことは何か分かったか?」
 「それはこの後で王との謁見の席で」
 「分かった」

 宰相自ら、俺たちを謁見の間へ案内した。
 王に超巨大ドラゴンの討伐と、カイザードラゴンの群の討伐を感謝される。
 亜紀ちゃんの防御にも。
 宰相から、俺がメシアであり魔王の討伐のために来たことが明かされる。
 当然王も知らされていたはずだが、知らない貴族たちに動揺が走った。

 「魔獣の強大化、凶暴化は、魔王の復活と関連していると古文書を調べて分かりました」

 宰相が報告する。

 「しかし、調査団を派遣しても、未だ魔王の痕跡すら発見できていません」
 「ああ、ここに来る前に大森林のエルフの里に寄って来たが、そっちでも何もなかった」

 俺が付け加えた。

 「そうなると、また獣人の国ですか」
 「そうかもしれんが、まずは国内の詳細な調査だ。あそこへ軍隊を派遣すれば、全面戦争になりかねない」
 「分かりました!」

 「そういうことで、メシア様。しばらく調査の時間の御猶予を」
 「それはいいんだけどな」
 「何か問題が?」
 「ああ。この辺りはあまり魔獣もいないだろう。だから暇を持て余しそうでなぁ」
 「あのごゆっくりと過ごされるわけには?」
 「俺も娘も、働いてないと落ち着かないんだ」
 「そうなんですか」

 宰相は王に近づき、耳元で何か囁いた。
 王が頷く。

 「王の承諾を得ました。実は、メシア様……」

 宰相は、しばらく前から異様な男たちに悩まされていると説明した。
 王都近くの森に棲んでいるらしいのだが、通行人に喧嘩を吹っかけているようだ。

 「首領が言っているのは、「漢の中の漢」を探し出すこと。要するに、勝負に勝てば大人しく引き下がるということです」
 「めんどくせぇな、そりゃ」
 「まあ、メシア様の暇潰しになればと」
 「軍でも派遣すりゃいいじゃねぇか」
 「それがまあ、正直に申しまして、滅法強いと言いますか」
 「情けねぇな、王都」
 「面目ない」

 まあ、困っているようだからいいか。

 「分かったよ。ちょっと行って来る」
 



 「亜紀ちゃん、ここら辺かぁ?」
 「そうですかねぇ」

 王都から1時間の距離。
 まあ、普通の人間の徒歩だが。

 「おい、そこのでかいの!」

 声を掛けられた。
 大柄な男だが、俺よりは身長が低い。
 この世界の平均は、大体170センチほどだ。
 ただし、両腕に巨大な鋏のような武器を持っている。 
 手下の連中も同じだ。

 「お前、強そうだな」
 「お前もな」
 「俺の名はバル民!」
 「なんか混じったな」
 「フォッフォッフォッフォ!」
 「……」

 勝負は一瞬でついた。
 「螺旋花」で鋏を破壊し、前蹴りで顎を蹴り上げると、気絶した。

 「あなたが探し求めていた「漢の中の漢」!」
 「いや、ちげぇ」
 「なんと!」
 「それなら知ってる奴がいるぞ」
 「本当ですか!」
 「ああ、連れてってやろうか?」
 「是非!」

 俺はシエルを出した。
 
 「じゃあ、後ろへ乗れ」
 「タカさーん、それは私のお仕事ぉー」

 亜紀ちゃんが泣き真似をする。

 「真似すんな!」
 「だってぇー」

 仕方なくバル民をロープでくくって空中を飛んだ。

 「ワァァァァァァァァーーー!」
 「うるせぇ!」

 1時間でエルフの里の俺の家の前に着く。
 ヤマト煮が駆け寄って来た。

 「おー! 元気だったか?」

 俺に身体をすりつける。
 カワイイ。

 「あのぉ……」

 バル民がおずおずと聞く。

 「ああ、こいつが「漢の中の漢」なんだよ」
 「カワイイ……」

 俺は長老に話を通し、バル民たちに里で住まう許可を得た。

 「ヤマト煮の世話をさせればいいよ。それと腕はそこそこだから、危険な時は前線に出してくれ」
 「マイトレーヤ様の仰せの通りに」

 「じゃあな!」
 「はい!」





 聞くな。
 俺にもよく分らん。 
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