上 下
739 / 2,806

トラ&亜紀:異世界転生 Ⅱ

しおりを挟む
 俺たちが城壁に向かうと、スノーモービルのようなものに乗った、数人のエルフが飛んで来た。

 「動くなぁ! 何者だぁ!」

 地上30メートルほどを旋回している。

 「よう! 千年振りに来たんだ! マイトレーヤだ!」
 「なんだと!」
 「マイトレーヤって何ですか?」
 「ああ、エルフたちの伝説でな。俺たちがエルフの救世主になるってことで、前回大歓迎されたんだ」
 「へぇー」

 「お前がエルフの天敵かぁ!」
 「へ?」

 エルフたちが攻撃してきた。
 前部のターレットが回転し、無数の弾丸が襲い掛かる。
 俺と亜紀ちゃんは高速移動で回避していった。

 「タカさん! 話が違うじゃないですかぁ!」
 「ああ! 暇でエルフの里を襲ったのを忘れてたぁ!」
 「もーう!」

 俺は亜紀ちゃんに絶対殺すなと言い、弱い轟雷でスノーモービルのようなマシンを落とし、落下するエルフを受け止めて助けた。

 「お前らぁ!」
 「まあ、落ち着け。前回は悪かったって」
 「何を言う!」




 
 城壁の内側が騒がしくなった。

 「キングヒュドラの群れだぁー!」

 俺はサーチで探った。
 40匹のキングヒュドラが城壁に向かっている。
 おかしい。
 あいつらはそうそうは現われないAランクの魔獣だ。
 しかも、群れて行動することはなかった。

 「亜紀ちゃん、行くぞ!」
 「はい!」

 俺たちはエルフたちを置いて、「鷹閃花(飛行)」で空中に舞い上がった。
 俺のサーチで捉えた方向へ、亜紀ちゃんと向かう。
 エルフの里は前回よりも格段に大きくなっていた。
 逃げ惑うエルフたちと、迎撃に急ぐエルフたちが見える。
 先ほどのスノーモービルのようなものも、数百空に上がろうとしている。

 数匹が里の内側に降りていた。
 三つ首がそれぞれ毒液を吐いて行く。

 「亜紀ちゃん、あの毒液を浴びるな。瞬間で骨になるぞ」
 「分かりました!」

 亜紀ちゃんは地上の三体に向かい、俺は空中を迫って来る群れに「轟閃花」を放った。
 亜紀ちゃんは「虚震花」で慎重に三体を撃破し、俺の攻撃は、群れを「消滅」させた。
 地上に降りる。

 「助かったぁー!」
 「ありがとー!」

 エルフたちに賞賛される。
 駆け寄って来る者もいて、俺たちは手を振って応え、抱き合った。
 長老が現われた。

 「あ! 二万歳!」
 「お久しぶりでございます」
 「まだ生きてたんだなぁ」
 「はい」




 俺と亜紀ちゃんは頑丈な鉄筋コンクリートで作られた建物に案内された。

 「タカさん」
 「あんだよ」
 「森の民エルフのイメージが」
 「そうだよなぁ」

 「ホッホッホ、これは以前にマイトレーヤ様から教わった技術なのです」

 長老が説明した。
 そう言えば、里の女とヤリながら、そんな話をした。
 広い部屋に入る。
 茶を出されたが、俺は亜紀ちゃんにまだ飲むなと言った。

 「最初に謝る。千年前は悪かった」
 長老や他のエルフたちが黙っている。

 「あれは、相棒の暴走だったんだ。俺は止めようとしたんだが」
 「そうなのですか?」

 みんな沈黙していた。
 聖には悪いが、ここにはいない。
 あいつに全部投げた。




 「大変ですぅー!」
 部屋に突然エルフの男が飛び込んで来た。

 「先ほどキングヒュドラが破壊した地面から、こんな宝箱が!」
 「なんと!」
 「中を開くと、「伝説の書」が入ってました!」
 「すぐに見せなさい」

 エルフの男は恭しく長老に渡す。
 長老は真剣に巻物を呼んでいった。

 「なんということだ! 今、マイトレーヤ様が話されたことが書かれている!」

 長老の後ろに、一瞬羽虫が現われた。
 右手の親指を立て、ウインクをしてから消えた。
 エルフたちには見えないようだった。

 「マイトレーヤ様の一人が魔王の魂に操られ、世界を崩壊に招く。しかしもう一人のマイトレーヤ様がそれを止められ、世界は崩壊寸前で救われた! あぁー、なんという!」
 「いやいや」
 「「伝説の書」の続きです! 千年後にマイトレーヤ様が、エルフには劣るが漆黒の髪の美少女を連れて、また現われると」

 「おい、じじぃ!」
 亜紀ちゃんが凄む。

 「そして、最強の魔王と戦い、再び世界を救うのだと! オォー!」
 「だから、じじぃよ」
 「お願いいたします! 我々を御救い下さい」
 「てめぇ、なんてったぁ!」

 俺は亜紀ちゃんを止めた。

 「まあ、そういうことで来たんだ」





 長老たちは宴の準備をすると言った。
 まあ、腹も減っているので助かる。
 建物の前の広場に、宴の準備がされていく。
 暇なので、俺と亜紀ちゃんで見物に行った。

 「お肉がたくさんありますよ!」
 「そうだなぁ。エルフは草食だったはずだが」
 「マイトレーヤ様! 肉を喰わなきゃ、強くなった魔獣とは戦えませんって!」

 案内についているエルフの男が言った。

 「マイトレーヤ様がいらした時ね、なんであんなにお強いのかってみんなで話してたんですよ」
 「そうかよ」
 「それで、里の女と一生懸命にやってる中で、ほら!」

 亜紀ちゃんが俺の腹を突いた。

 「でっかい魔獣の肉をガンガン食べてたじゃないですかぁ!」
 「ああ、そうだったな」
 「これだ! ってね。あれからみんな肉を喰うようになりました」
 「そうだったのか」
 
 良く見ると、みんな屈強な身体をしている。
 前はもっと痩せて細身だったはずだ。

 「初めて食べた頃はね、みんな酷い下痢でした。アハハハ!」
 「なんか、そんな話をタカさんから聞きましたね」
 「あー、高校生で初めてステーキ喰った奴な」
 「でも頑張って食べてるうちに、みんな強くなりましたよ! お陰様です!」
 「そうか」

 俺は何か忘れているような気がした。

 「俺はまだ800歳ですが、肉食とマイトレーヤ様の血のお陰で……」

 「あ、アァァァァー!」
 「どうしました?」
 「タカさん?」
 「お前、息子ぉー?」
 「はい! 父上とはとても御呼びできませんが」

 「タカさん!」
 「待て待て待てぇ!」

 亜紀ちゃんがでかい「轟雷」を出そうとするので止めた。

 「しょうがないだろう! まだ18歳で何も考えてねぇんだからぁ!」
 「赦しません!」
 「泣くな! 「花岡」を使うな!」

 俺は亜紀ちゃんを抱き締めた。
 男に早く肉を持って来いと言った。
 亜紀ちゃんは肉を食べて、少し落ち着いた。

 「ここは現実じゃねぇんだ。いろんなことがある」
 「そんなぁ!」
 「里の危機だったしな。長い期間、子どもが生まれてなかった」

 嘘ではない。
 この男が生まれたのも、200年後だったはずだ。

 「主に聖が頑張ったしな」
 「そうなんですか」
 「いえ、自分はマイトレーヤ様の子ですよ?」
 「お前は黙ってろ!」

 分かんのかよ。




 宴が始まり、俺と亜紀ちゃんは豪華なテーブルの席に着かされた。
 目の前に大量の肉と美味そうなフルーツが山盛りになっている。
 亜紀ちゃんはご機嫌で肉を食べ始める。

 「ああ、足りないと思うから、これも使ってくれ」

 俺は空間収納から、大量の魔獣を出した。
 エルフたちは亜紀ちゃんの大食いに驚いていたが、俺の出した肉を急いで使い始めた。
 宴が盛り上がり、歌とダンスが始まる。

 「あ! オチンチン回してますよ!」
 「そうだなぁ」

 男たちが数十人オチンチンを回しながら踊っている。

 「タカさんの血ですねぇ」
 「そ、そうかもな」


 俺の隣にエルフの女性が座った。

 「お久しぶりでございます」

 ナスターシャ・キンスキー似の、俺が一番好きだった女だ。
 長命種のエルフなので、見た目は何も変わっていない。

 「おう! 元気だったか?」
 「はい。マイトレーヤ様のお子を身ごもってから、更に健康で能力も格段に上がりました」
 「そ、そうかぁ」

 亜紀ちゃんがまた睨んでいる。

 「また、是非子種をいただきたく」

 亜紀ちゃんの顔が変わった。
 ディアブロ・モードだ。

 「ダメだぁ! 今回は一切子種は残さないことになってる!」
 「そうなのですか?」
 「ああ! 残念だな!」
 「はい。でも、子種を残さない穴でしたら」

 「ダメだぁ! 俺はこの子を愛しているんだぁ!」
 「!」

 亜紀ちゃんを抱き締めた。

 「さようでございますか。それは本当に残念でございます」
 「お、おう!」

 エルフの女は去って行った。
 亜紀ちゃんは一転してニコニコしている。

 「もっと肉を喰えよ。いつもより遠慮してんじゃねぇのか?」
 「はい!」

 そっとため息をついた。




 今回はエロなしかぁ。
 俺は寄って来た、或民さんとこのヤマトに似た猫を抱き上げた。

 「女はもういいよな。ワンパターンだしな!」
 「にゃー」

 サラダに檸檬を絞った。
 野菜も結構美味い。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

まさか、、お兄ちゃんが私の主治医なんて、、

ならくま。くん
キャラ文芸
おはこんばんにちは!どうも!私は女子中学生の泪川沙織(るいかわさおり)です!私こんなに元気そうに見えるけど実は貧血や喘息、、いっぱい持ってるんだ、、まあ私の主治医はさすがに知人だと思わなかったんだけどそしたら血のつながっていないお兄ちゃんだったんだ、、流石にちょっとこれはおかしいよね!?でもお兄ちゃんが医者なことは事実だし、、 私のおにいちゃんは↓ 泪川亮(るいかわりょう)お兄ちゃん、イケメンだし高身長だしもう何もかも完璧って感じなの!お兄ちゃんとは一緒に住んでるんだけどなんでもてきぱきこなすんだよね、、そんな二人の日常をお送りします!

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

双葉病院小児病棟

moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。 病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。 この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。 すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。 メンタル面のケアも大事になってくる。 当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。 親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。 【集中して治療をして早く治す】 それがこの病院のモットーです。 ※この物語はフィクションです。 実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。

イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?

すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。 病院で診てくれた医師は幼馴染みだった! 「こんなにかわいくなって・・・。」 10年ぶりに再会した私たち。 お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。 かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」 幼馴染『千秋』。 通称『ちーちゃん』。 きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。 千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」 自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。 ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」 かざねは悩む。 かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?) ※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。 想像の中だけでお楽しみください。 ※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。 すずなり。

イケメン歯科医の日常

moa
キャラ文芸
堺 大雅(さかい たいが)28歳。 親の医院、堺歯科医院で歯科医として働いている。 イケメンで笑顔が素敵な歯科医として近所では有名。 しかし彼には裏の顔が… 歯科医のリアルな日常を超短編小説で書いてみました。 ※治療の描写や痛い描写もあるので苦手な方はご遠慮頂きますようよろしくお願いします。

処理中です...