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トラ&亜紀:異世界転生

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 綺羅々との戦闘を終えた直後。
 俺と亜紀ちゃんは突然に消えた地面に驚いた。

 「亜紀ちゃん! 飛行だ!」
 「さっきからやってます! でも全然!」
 
 俺たちは手を繋ぎ合い、最後を覚悟した。

 「タカさん!」
 「亜紀ちゃん!」

 自然に抱き合った。




 
 気が付くと知らない場所に立っていた。

 「この植生は……」
 
 俺は前回聖と飛ばされた異世界の記憶を取り戻していた。

 「亜紀ちゃん、気を付けろ」
 「はい!」
 「イービルボアが来るぞ」
 「はい?」

 遠くから重々しい音が近付いて来る。
 俺は「サーチ」で既に捉えていた。
 気付いた瞬間に使っていたのだ。

 体長10メートル、体高8メートルのでかい猪。
 血走った目で俺たちを睨みながら突進してくる。

 「亜紀ちゃん、「槍雷」を撃て!」
 「はい!」

 亜紀ちゃんは落ち着いている。
 俺を信頼し、俺にすべて預けるように考えている。
 それに、俺を守ることしか考えていない。
 亜紀ちゃんの右手から激しいプラズマの線が伸びた。
 イービルボアの頭部を粉砕し、巨体を吹っ飛ばしながら尻に抜けた。

 「なんですか、これ!」
 そう言った亜紀ちゃんが、直後に微妙な表情を見せた。
 レベルアップだ。

 「え、なにこれ?」
 「「ステータスオープン」と言ってみろ」
 「すてーたすおーぷん?」

 「アァー!」
 俺は開示された亜紀ちゃんのステータスを見た。
 レベル4522。
 幾つかの魔法が使えるが、まだ数値は低い。
 ストレングスや敏捷性の数値が異常に高く、知性などの他の数値も概ね高い。
 「超絶格闘技「花岡」上級者」の称号。

 俺も自分のステータスを開示し、亜紀ちゃんにも見せる。
 レベル∞、膨大な魔法の数々、皇帝龍の天敵、人族の天敵、エルフ族の天敵、獣人の保護者、超獣の友、神獣の友等々の称号。

 「タカさん! 私よりずっと多いですね」
 「まーなー」

 俺は簡単に、18歳の時にこの異世界へ聖と共に来た話をした。
 
 「なんで今まで教えてくれなかったんですか!」
 「記憶を消されていた。さっき戻ったんだ」
 「えぇー!」
 「まあ、そろそろかな」

 俺たちの前で空間が光った。





 「ひっさしぶりぃー!」
 「てめぇ!」
 「やー、千年ぶりだねぇ」
 「なんだと?」
 「あんたたちを追いはら、あぁ、元の世界に帰還させてから、この世界で千年経ったの」
 「そうかよ」
 
 「あのさ、また魔王が出て来てさ」
 「俺たちに関係ねぇ! すぐに戻せ!」
 「だーめ」

 俺は羽虫に「インフェルノ」を放った。

 「熱い熱い熱いぃー!」
 羽虫の羽が少し焦げた。

 「もう! なにすんのよー!」

 「早く戻せ」
 「だから無理なんだって! 魔王を斃す目的で召喚したんだから、それまで絶対に戻れないの!」
 「お前がやったんだろう!」
 「そうよ! 私が決めてやったんだから、もう私でも無理なんだってば!」

 まあ、そういうものらしい。

 「それで俺たちの能力は?」
 「あんたは前のまま。あ、でも銃はダメよ! あれで前回は無茶苦茶になったんだからぁ!」
 「亜紀ちゃんは?」
 「前のあんたたちと同じ。向こうでの能力に応じて、この世界の力が備わってるよ。ああ、またとんでもなく強いよねぇ」

 「亜紀ちゃんの魔法が全然ドベなんだが?」
 「無理よ。だって向こうでは使ってないでしょ! 前のあんたたちと同じで、こっちで高めるしかないよ」
 「チッ! じゃあレベリングからかぁ」
 「しょうがないじゃない。まあ、今のままでも十分に最強だけどね」
 「「花岡」は、こっちでも通じるんだな」
 「そうよ。向こうで出来たことはこっちでも出来る。むしろ量子的相性がいいから、とんでもなく強力にもなるけどね」
 「へぇ」
 「なんか、すごい技よねぇ」
 「まーな」

 羽虫の「焦げ」が治った。

 「それで今回の魔王は?」
 「あーそれね! 前回とは比較にならないほど強いの!」
 「そうなのか?」
 「あんたでももしかしたら、って感じ?」
 「てめぇ! よくもそんな奴に俺たちを」
 「しょうがないじゃない! あんたたちのせいなんだからね!」
 「どういうことだよ?」

 「あんたたちが無茶苦茶したじゃない! その負のエネルギーで超強力な奴が生まれたのよ!」
 「ヘッ!」
 「それに今回は狡猾な奴なのよ。誰も居場所を掴んでないの」
 「じゃあどうして魔王がいるって分かるんだよ」
 「それはあたしだけ! 管理神だからね」
 「一から探さなきゃならねぇのか」
 「そういうことね。ああ、魔王の名前は教えてあげる」
 「聞こう」
 「「ウルマルティ」よ」
 「宇留間?」
 「「ウルマルティ」! 強いよ!」
 「小物だろう」

 俺が言うと、羽虫は不満そうだった。

 「この世界最大の危機なんだから、油断しちゃダメ! あ、それとさ」
 「あんだよ」
 「こないだはさー。あの相手の男が悪かったと思うんだよね。今度はお嬢さん? ああ彼女? だったら無茶苦茶はしないんじゃないかって」

 「彼女!」
 「亜紀ちゃん、喜んでる場合じゃねぇんだ」

 「「彼女」さんにも「言語理解」はあげたからね。言葉で苦労することはないよ」

 「分かった。じゃあ魔王をぶっ殺したら、また戻せよな」
 「うん。前と同じだよ。1秒後の世界に、元のまま送り返す」
 「よし」

 「お嬢さん」
 「彼女!」
 「ああ。あのね、肉体も元のままだからね」
 「?」
 「処女膜も戻るのよ!」
 「!」

 「おい、てめぇ!!」
 
 「じゃー、ガンバッテね!」

 「この、エロ羽虫がぁ!」

 羽虫は消えた。
 亜紀ちゃんが俺に腕を絡めて来る。

 「じゃー、行きましょうか!」
 「おい」

 仕方なく、前回行ったエルフの里へ向かった。
 亜紀ちゃんは腕を絡めたまま、襲ってくる魔獣を「槍雷」や「螺旋花」で撃退した。
 俺は空間収納を教え、獲物を仕舞っていった。
 途中で亜紀ちゃんに魔法の練習をさせる。

 やはり呑み込みがいい。
 エルフの里に着く前に、結構習得し、レベルも上げた。





 エルフの里に着いた。
 高さ20メートルの金属の城壁に覆われている。
 城壁には幾つも巨大な砲塔が見える。


 「「でっかぁー!」」
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