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手錠
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亜紀ちゃんが修学旅行から帰り、その晩に貢さんの記事の話を聞いた。
俺は亜紀ちゃんに感謝し、記事は基本的に許可で、念のためにゲラの確認をさせてもらうことにした。
亜紀ちゃんと風呂に入る。
「全身を洗ってくださいー!」
「冗談じゃねぇ!」
危ねぇことを言いやがる。
泣きながら自分で洗い、綺麗になったか見ろと言うので頭を引っぱたいた。
その後も湯船でべったりだ。
「タカさんだぁー、エヘヘヘ」
「……」
オチンチンけん玉の練習も出来なかった。
風呂を上がって飲む。
亜紀ちゃんが俺の隣に座り、べったりしてくる。
いつも響子か賓客の座る席だ。
油断すると、膝の上に乗って来る。
「タカさんの匂いだぁー、エヘヘヘ」
気持ち悪い。
レイと柳を呼んだ。
「ガルルルルルゥ」
「今日は遠慮します」
「お二人でごゆっくり」
「……」
双子が皇紀との打ち合わせを終えて、何か食べに来た。
俺を二人が見ている。
「タカさん」
「あんだよ」
「気を付けてね」
「なに?」
「亜紀ちゃんに食べられないでね」
「!」
冷静な亜紀ちゃんじゃないらしい。
「亜紀ちゃん」
「なーに?」
「ちょっと上げたいものがあるんだ」
「ほんとですかぁ!」
「ああ、リング的なものな」
「ハァウッ!」
俺は部屋から手錠を持って来た。
「α」の粉末入りの特製だ。
ガチャン。
「……」
椅子ごと抱えて、いつもの斜め前に移動した。
ゆっくり飲める。
亜紀ちゃんのために肉を焼く。
「ほら、喰えよ」
亜紀ちゃんが条件反射で肉に食らいつく。
手錠で喰いにくそうだが。
でも、一生懸命に肉を食べていた。
「アハハハ」
俺はその様子を見て、思わず笑った。
「なんですか」
「いや、何でもねぇ」
「そうじゃないでしょう。今、ちょっと遠い目をしてました」
「怖ぇな、お前!」
「「トラちゃん道」の求道者ですからね!」
「マジで怖ぇよ!」
「はい、何を思い出したのか話して下さい」
「大したことじゃないよ」
「それは私が決めることです」
「お前なぁ」
「いいお話じゃなかったら承知しませんよ!」
「なんだとぉ!」
まあ、話してやるか。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
俺が高校二年生くらいか。
身体はすっかり元気になった。
熱は相変わらずだが、40度でもほとんど支障ない。
その代わり、よく警察の厄介になった。
族同士の抗争が多かったが、その他にも筋者や愚連隊などとも喧嘩した。
汚い真似をする奴には、俺は異常なほど厳しい報復をした。
何本も骨を折る。
燃えている車に突っ込んで殺しかける。
手足を縛って湖に投げ込む。
芋虫のように泳ぐので大笑いした。
盗んだタンクローリーで突っ込んで来ようとした奴は、途中の歩道橋で飛び乗り、大爆発させた。
一応、運転席からそいつを引きずり出してやった。
でかい木のてっぺんに登らせ、下で斧で切り倒した。
途中で他の木に飛び移りやがって、頭に来た。
時々、裸で町を走った。
多くは警察の知らないことだったが、何しろ数が多いので捕まることもあり、時々留置場に入れられた。
俺の噂は酷いもので、キレるととんでもない鬼畜になると言われていた。
抗争相手を殺しかけ、目を抉り、耳を食いちぎる。
俺に言わせればひ弱なのに俺を殺しに来て、目に根性がなく、耳は引っ張ったら取れちゃっただけだ。
まあ、だからいつも警察署の中では、俺はずっと手錠を掛けられたままだった。
俺には人権なんてものは無かった。
「俺はお前の係じゃねぇんだがな」
いつも佐野さんが調書を取った。
「今回は人助けもしたようだから、カツ丼でも取ってやるか!」
「ありがとうございます!」
手錠を掛けられたままでカツ丼を頬張った。
ただの喧嘩や裸で捕まった場合は、白米にフリカケだった。
俺専用の出前メニューだ。
まあ、喧嘩や裸で捕まっても、時々はカツ丼だったこともある。
要は佐野さんがいい人だったということだ。
概ね警察署では俺は笑われ、人気者とは言えないが、気軽に声を掛けられた。
「トラ、今度は何人殺した?」
「またかよ。佐野さんに迷惑かけるなよな!」
「トラちゃーん!」
婦人警官の佳苗さんは、中でも親切にしてくれた。
佐野さんがいない時には、佳苗さんがお菓子をくれたりした。
性格が明るく、なかなか美人でスタイルが良かった。
署内でも人気のある人だった。
オリヴィア先生と別れた辺りだったと思う。
俺はオリヴィア先生を思い出して、裸で町を走った。
理由は無い。
あっさりと捕まった。
思わず警察署の前を走ったためだ。
三台のパトカーに追い詰められた。
「俺らをバカにしてんのか?」
「すいません」
俺は手錠を掛けられ、誰かのジャージを借りて留置場へ入った。
佐野さんは居らず、明朝の取り調べとなった。
腹を空かせていると、佳苗さんが親子丼を運んでくれた。
「佐野さんが持ってってくれって」
「ありがとうございます!」
俺は礼を言って喰った。
佳苗さんはずっと傍で見ていた。
「手錠、食べにくいよね」
「へーきです!」
まあ、確かに喰いにくかった。
「ちょっと待っててね」
「待ってるも何も、どこへも行きませんよ」
「アハハハハ!」
佳苗さんは、プリンを持って来てくれた。
「はい、デザートね!」
「ありがとうございます!」
俺がプリンを食べようとすると、大きな音がした。
見ると、大柄な男が来る。
警察官ではない。
手に大きなハンマーと、「拳銃」を持っていた。
留置場にいた警察官は、いきなり拳銃で腹を撃たれた。
鍵を奪われ、男は内側から留置場への扉に鍵を掛けた。
「ノブは落とした。しばらく入って来れねぇ」
男は笑いながら言った。
「もう三人殺した。俺は死刑だな。最期に思い切りやってやるぜ」
留置場の俺、撃たれた警官、そして佳苗さん。
男は佳苗さんに近づいた。
ズボンを降ろす。
もういきり立っていた。
「ヘヘヘ、いい女がいるじゃねぇか」
佳苗さんは脅えて動けない。
ドアの向こうから大声が聞こえる。
扉が開かないのと、拳銃を持っている奴がいるので、突入できない。
俺は喚きながら鉄格子の扉を蹴った。
「うるせぇ!」
男が俺を撃った。
俺は銃口の向きを見て、咄嗟にかわした。
「このやろう!」
男は次々に撃った。
俺の左胸に二発撃ち込まれた。
俺は血を吐いて倒れた。
胸が灼けるように痛む。
そのうちに呼吸が出来なくなると分かっていた。
肺に血が溜まっていくためだ。
俺はまた鉄格子を蹴った。
蹴り続けている限り、男は俺を注視している。
意識が飛びそうになるが、俺は必死で蹴った。
何度も血を吐く。
「トラちゃん! ダメ! 大人しくしてて!」
「か、かな、さん!」
男は銃弾を撃ち尽くしている。
ニューナンブは5発しか弾を入れていない。
倒れている警官に1発。
俺に4発撃った。
何十回目かで、鉄格子の扉が吹っ飛んだ。
男は俺にハンマーを振るって来た。
身体がいつものように動けず、左腕で受けた。
左腕があっさりと折れた。
俺は右手を開いたまま、男の顔を掴む。
「もう殴る力もねぇか!」
男が笑った。
俺は指を曲げ、男の眼球を抉った。
物凄い声で叫びのけぞる。
俺は右足で股間を蹴り上げた。
確実に潰れる感触があった。
これで佳苗さんは大丈夫だ。
俺は気を喪った。
佳苗さんが金切り声で叫んでいるのが聞こえた。
いつもの日赤病院で目が覚めた。
お袋と、佐野さんがいた。
お袋が泣いていた。
本当に申し訳なかった。
しかし、俺は喋ることが出来なかった。
「何も言うな、トラ。お前、相当やばかったぞ」
佐野さんが言った。
「胸を撃たれてあれだけ暴れたんだ。死にかけたぞ」
「か、か」
俺は佳苗さんのことを聞きたかった。
「ばかやろう! 喋るなって言っただろう。佳苗は無事だよ、お前のお陰でな」
俺は安心して笑った。
「このやろう、笑ってやがる」
佐野さんも笑った。
「お前な、綺麗なお袋さんのためにも、お前自身をもっと大事にしろ」
お袋が俺の手を握った。
俺はお袋を見るしか出来なかった。
「でもありがとうな。本当に感謝している」
佐野さんが頭を下げた。
「ああ、お前がやった工藤な。外道の集まりの愚連隊だったがよ。仲間を三人殺したんだ。まあ、もう目も見えねぇし、何しろ男じゃなくなったからなぁ! ムショでもホモの的になるんじゃねぇか! ワハハハハ!」
俺は佐野さんを睨んだ。
お袋の前でそんな話をすんじゃねぇ。
「おい、悪かったよ。そんなコワイ顔で睨むな。悪かったって!」
佐野さんが帰ってすぐに、佳苗さんが来た。
俺の頭を抱いて泣きまくった。
俺は笑って、何とか苦しいと言った。
佳苗さんがすぐに身体を離す。
「ごめんね! 大丈夫?」
「ぷ、ぷり」
「え? 何?」
「くえ、かった」
「あ!」
佳苗さんが大笑いした。
そして、また俺の頭を抱いて泣いた。
「一杯持って来てあげる! だから早く良くなって!」
俺は笑って頷いた。
その後、俺は警察署で手錠を掛けられることがなくなった。
あの後で捕まった時、署長がうな重をごちそうしてくれた。
「お前は大食いだからな」
佐野さんが別に、カツ丼をとってくれた。
佳苗さんと、その同僚がたくさんプリンをくれた。
どれも、物凄く美味かった。
俺は亜紀ちゃんに感謝し、記事は基本的に許可で、念のためにゲラの確認をさせてもらうことにした。
亜紀ちゃんと風呂に入る。
「全身を洗ってくださいー!」
「冗談じゃねぇ!」
危ねぇことを言いやがる。
泣きながら自分で洗い、綺麗になったか見ろと言うので頭を引っぱたいた。
その後も湯船でべったりだ。
「タカさんだぁー、エヘヘヘ」
「……」
オチンチンけん玉の練習も出来なかった。
風呂を上がって飲む。
亜紀ちゃんが俺の隣に座り、べったりしてくる。
いつも響子か賓客の座る席だ。
油断すると、膝の上に乗って来る。
「タカさんの匂いだぁー、エヘヘヘ」
気持ち悪い。
レイと柳を呼んだ。
「ガルルルルルゥ」
「今日は遠慮します」
「お二人でごゆっくり」
「……」
双子が皇紀との打ち合わせを終えて、何か食べに来た。
俺を二人が見ている。
「タカさん」
「あんだよ」
「気を付けてね」
「なに?」
「亜紀ちゃんに食べられないでね」
「!」
冷静な亜紀ちゃんじゃないらしい。
「亜紀ちゃん」
「なーに?」
「ちょっと上げたいものがあるんだ」
「ほんとですかぁ!」
「ああ、リング的なものな」
「ハァウッ!」
俺は部屋から手錠を持って来た。
「α」の粉末入りの特製だ。
ガチャン。
「……」
椅子ごと抱えて、いつもの斜め前に移動した。
ゆっくり飲める。
亜紀ちゃんのために肉を焼く。
「ほら、喰えよ」
亜紀ちゃんが条件反射で肉に食らいつく。
手錠で喰いにくそうだが。
でも、一生懸命に肉を食べていた。
「アハハハ」
俺はその様子を見て、思わず笑った。
「なんですか」
「いや、何でもねぇ」
「そうじゃないでしょう。今、ちょっと遠い目をしてました」
「怖ぇな、お前!」
「「トラちゃん道」の求道者ですからね!」
「マジで怖ぇよ!」
「はい、何を思い出したのか話して下さい」
「大したことじゃないよ」
「それは私が決めることです」
「お前なぁ」
「いいお話じゃなかったら承知しませんよ!」
「なんだとぉ!」
まあ、話してやるか。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
俺が高校二年生くらいか。
身体はすっかり元気になった。
熱は相変わらずだが、40度でもほとんど支障ない。
その代わり、よく警察の厄介になった。
族同士の抗争が多かったが、その他にも筋者や愚連隊などとも喧嘩した。
汚い真似をする奴には、俺は異常なほど厳しい報復をした。
何本も骨を折る。
燃えている車に突っ込んで殺しかける。
手足を縛って湖に投げ込む。
芋虫のように泳ぐので大笑いした。
盗んだタンクローリーで突っ込んで来ようとした奴は、途中の歩道橋で飛び乗り、大爆発させた。
一応、運転席からそいつを引きずり出してやった。
でかい木のてっぺんに登らせ、下で斧で切り倒した。
途中で他の木に飛び移りやがって、頭に来た。
時々、裸で町を走った。
多くは警察の知らないことだったが、何しろ数が多いので捕まることもあり、時々留置場に入れられた。
俺の噂は酷いもので、キレるととんでもない鬼畜になると言われていた。
抗争相手を殺しかけ、目を抉り、耳を食いちぎる。
俺に言わせればひ弱なのに俺を殺しに来て、目に根性がなく、耳は引っ張ったら取れちゃっただけだ。
まあ、だからいつも警察署の中では、俺はずっと手錠を掛けられたままだった。
俺には人権なんてものは無かった。
「俺はお前の係じゃねぇんだがな」
いつも佐野さんが調書を取った。
「今回は人助けもしたようだから、カツ丼でも取ってやるか!」
「ありがとうございます!」
手錠を掛けられたままでカツ丼を頬張った。
ただの喧嘩や裸で捕まった場合は、白米にフリカケだった。
俺専用の出前メニューだ。
まあ、喧嘩や裸で捕まっても、時々はカツ丼だったこともある。
要は佐野さんがいい人だったということだ。
概ね警察署では俺は笑われ、人気者とは言えないが、気軽に声を掛けられた。
「トラ、今度は何人殺した?」
「またかよ。佐野さんに迷惑かけるなよな!」
「トラちゃーん!」
婦人警官の佳苗さんは、中でも親切にしてくれた。
佐野さんがいない時には、佳苗さんがお菓子をくれたりした。
性格が明るく、なかなか美人でスタイルが良かった。
署内でも人気のある人だった。
オリヴィア先生と別れた辺りだったと思う。
俺はオリヴィア先生を思い出して、裸で町を走った。
理由は無い。
あっさりと捕まった。
思わず警察署の前を走ったためだ。
三台のパトカーに追い詰められた。
「俺らをバカにしてんのか?」
「すいません」
俺は手錠を掛けられ、誰かのジャージを借りて留置場へ入った。
佐野さんは居らず、明朝の取り調べとなった。
腹を空かせていると、佳苗さんが親子丼を運んでくれた。
「佐野さんが持ってってくれって」
「ありがとうございます!」
俺は礼を言って喰った。
佳苗さんはずっと傍で見ていた。
「手錠、食べにくいよね」
「へーきです!」
まあ、確かに喰いにくかった。
「ちょっと待っててね」
「待ってるも何も、どこへも行きませんよ」
「アハハハハ!」
佳苗さんは、プリンを持って来てくれた。
「はい、デザートね!」
「ありがとうございます!」
俺がプリンを食べようとすると、大きな音がした。
見ると、大柄な男が来る。
警察官ではない。
手に大きなハンマーと、「拳銃」を持っていた。
留置場にいた警察官は、いきなり拳銃で腹を撃たれた。
鍵を奪われ、男は内側から留置場への扉に鍵を掛けた。
「ノブは落とした。しばらく入って来れねぇ」
男は笑いながら言った。
「もう三人殺した。俺は死刑だな。最期に思い切りやってやるぜ」
留置場の俺、撃たれた警官、そして佳苗さん。
男は佳苗さんに近づいた。
ズボンを降ろす。
もういきり立っていた。
「ヘヘヘ、いい女がいるじゃねぇか」
佳苗さんは脅えて動けない。
ドアの向こうから大声が聞こえる。
扉が開かないのと、拳銃を持っている奴がいるので、突入できない。
俺は喚きながら鉄格子の扉を蹴った。
「うるせぇ!」
男が俺を撃った。
俺は銃口の向きを見て、咄嗟にかわした。
「このやろう!」
男は次々に撃った。
俺の左胸に二発撃ち込まれた。
俺は血を吐いて倒れた。
胸が灼けるように痛む。
そのうちに呼吸が出来なくなると分かっていた。
肺に血が溜まっていくためだ。
俺はまた鉄格子を蹴った。
蹴り続けている限り、男は俺を注視している。
意識が飛びそうになるが、俺は必死で蹴った。
何度も血を吐く。
「トラちゃん! ダメ! 大人しくしてて!」
「か、かな、さん!」
男は銃弾を撃ち尽くしている。
ニューナンブは5発しか弾を入れていない。
倒れている警官に1発。
俺に4発撃った。
何十回目かで、鉄格子の扉が吹っ飛んだ。
男は俺にハンマーを振るって来た。
身体がいつものように動けず、左腕で受けた。
左腕があっさりと折れた。
俺は右手を開いたまま、男の顔を掴む。
「もう殴る力もねぇか!」
男が笑った。
俺は指を曲げ、男の眼球を抉った。
物凄い声で叫びのけぞる。
俺は右足で股間を蹴り上げた。
確実に潰れる感触があった。
これで佳苗さんは大丈夫だ。
俺は気を喪った。
佳苗さんが金切り声で叫んでいるのが聞こえた。
いつもの日赤病院で目が覚めた。
お袋と、佐野さんがいた。
お袋が泣いていた。
本当に申し訳なかった。
しかし、俺は喋ることが出来なかった。
「何も言うな、トラ。お前、相当やばかったぞ」
佐野さんが言った。
「胸を撃たれてあれだけ暴れたんだ。死にかけたぞ」
「か、か」
俺は佳苗さんのことを聞きたかった。
「ばかやろう! 喋るなって言っただろう。佳苗は無事だよ、お前のお陰でな」
俺は安心して笑った。
「このやろう、笑ってやがる」
佐野さんも笑った。
「お前な、綺麗なお袋さんのためにも、お前自身をもっと大事にしろ」
お袋が俺の手を握った。
俺はお袋を見るしか出来なかった。
「でもありがとうな。本当に感謝している」
佐野さんが頭を下げた。
「ああ、お前がやった工藤な。外道の集まりの愚連隊だったがよ。仲間を三人殺したんだ。まあ、もう目も見えねぇし、何しろ男じゃなくなったからなぁ! ムショでもホモの的になるんじゃねぇか! ワハハハハ!」
俺は佐野さんを睨んだ。
お袋の前でそんな話をすんじゃねぇ。
「おい、悪かったよ。そんなコワイ顔で睨むな。悪かったって!」
佐野さんが帰ってすぐに、佳苗さんが来た。
俺の頭を抱いて泣きまくった。
俺は笑って、何とか苦しいと言った。
佳苗さんがすぐに身体を離す。
「ごめんね! 大丈夫?」
「ぷ、ぷり」
「え? 何?」
「くえ、かった」
「あ!」
佳苗さんが大笑いした。
そして、また俺の頭を抱いて泣いた。
「一杯持って来てあげる! だから早く良くなって!」
俺は笑って頷いた。
その後、俺は警察署で手錠を掛けられることがなくなった。
あの後で捕まった時、署長がうな重をごちそうしてくれた。
「お前は大食いだからな」
佐野さんが別に、カツ丼をとってくれた。
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