727 / 2,808
ドライブ: シボレー・コルベット C7ZR1
しおりを挟む
亜紀ちゃんが修学旅行に出掛け、俺も病院へ向かった。
今晩は六花とシボレー・コルベットで走るつもりだ。
やはり、こういう車を理解する奴と一緒に乗りたい。
出勤すると、早速六花が車を見たがった。
「凄いですね! 『マッドマックス』じゃないですか!」
「そうだよな! やっぱこのスーパーチャージャーだよなぁ!」
「はいはい! 楽しみですぅ!」
「おう!」
俺たちはハイテンションのまま響子の部屋へ行き、響子にも見せてやった。
「アニコレ?」
「どうだよ、シボレー・コルベットC7ZR1を改造したんだ!」
「ふーん」
「なんだよー、お前テンション低めじゃん?」
「だってねぇ」
「ナニナニ?」
「ヘン」
「「……」」
俺と六花は消沈した。
二人で両手を上げ、額に皺を寄せて、アメリカ人の嘆きのポーズをした。
まあ、アメ公には分からんのだろう。
レイもそうだった。
アメ車なのになぁ。
俺と六花は響子の部屋でずっと『マッドマックス』の話で盛り上がった。
響子が段々と不機嫌になっていく。
カワイイ。
「もう! なんなのよ!」
「おいおい」
「ここは私のお部屋! 私が楽しい話をして!」
「じゃあ、そろそろ『マッドマックス2』の話に入るかぁ!」
「あぁ! ニトロ・インジェクションですねぇ!」
「「ワハハハハ!」」
「……」
響子はむくれて、セグウェイでどこかへ行った。
響子も前に『マッドマックス』を六花のマンションで観ている。
怖かったようだ。
子どもにはそうだろう。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
俺が最初に『マッドマックス』を観たのは劇場だった。
井上さんや族の仲間たちと一緒に、横浜駅の近くの映画館へ行った。
「トラ! なんかすげぇ映画らしいぞ!」
井上さんが言った。
「そうなんですか!」
俺たちはバイクで出掛け、近くの駐車場に停めた。
チームの革ジャンをみんな着ている。
俺はだから真っ赤な特攻服だ。
鬼愚奈巣や他のチームを潰して、金は結構あった。
金庫番の奴が、みんなのチケットを買う。
モギリの女性が怖がっていた。
下の連中がプログラムをみんなの分買い、ジュースなどの注文を取って行く。
一番いい席を、何人かで確保する。
まあ、俺たちと並んで座ろうとする奴もいない。
俺は一番でかいポップコーンとコーラを手に、ワクワクして席に座っていた。
俺のポップコーンに手を入れる奴はいない。
井上さんでさえ、遠慮する。
俺がブチ切れるからだ。
映画が始まるとボリボリやってられないので、俺は急いで喰い始めた。
劇場が暗くなる。
仲間たちがため息のような声を上げる。
広告宣伝の映像が終わり、本編が始まった。
初っ端から爆走するシーンに、俺たちは興奮した。
V8マシンの雄々しい疾走。
俺たちの憧れの青春がそこにあった。
でかい斧で襲うシーン。
特攻隊の一人が、あれをやりましょうと言った。
後日、本当に鉄工所の息子が作って来た。
そして、あのスーパーチャージャーのインターセプターの登場だ。
俺たちは燃えに燃えた。
いつか、自分のマシンにスーパーチャージャーを取り付ける。
俺たちの夢になった。
俺はやったぞ!
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
仕事が終わり、6時から六花とドライブへ出掛けた。
俺が高校時代に仲間と観た『マッドマックス』の話をする。
「私はビデオでみんなで観たんですが、劇場だと迫力が違うでしょうね」
「そうだなぁ。でも、俺も今はブルーレイとかで観るけど、やっぱりいいよな!」
「何度観てもいいですよね!」
第二作が最高だと言い合い、第三作は評判は悪いが二人とも好きだと意見が合った。
そして『怒りのデスロード』!
俺たちは大興奮で語り合った。
「「V8に捧げよ!」」
「「ワハハハハハハ!!」」
「ああ。みんなで映画を観るというのがあの後ちょっと続いてな。よく観に行ったよ」
「へぇー。何を観たんですか?」
「印象的なのは『ジャンク』だな」
「?」
「知らないか。まあゲテモノ映画なんだけど、実際の事故とか死体をガンガン見せるっていうな。みんなショックを受けてたよ。なかなか本物の死体なんて見ないからなぁ」
「なるほど」
「結構ウケたらしくて、その後も何作も作られたな」
「石神先生のコレクションにもあるんですか?」
「一応なぁ。DVD化されたものはな」
「何でもあるんですねぇ」
「まーなー!」
俺たちは首都高に入り、V8エンジンの唸りと、スーパーチャージャーの回転に喜んだ。
「唸ってますね!」
「そうだな!」
ウキウキだ。
しかし、回転数が上がると、スーパーチャージャーは止まり、ターボチャージャーに切り替わる。
「あー、止まっちゃいましたよ!」
「回転数が上がると、スーパーチャージャーはむしろ邪魔なんだ。ターボチャージャーで本領を発揮するんだよ」
「へぇー!」
アクセルを踏み込み、スピードメーターがどんどん動いていく。
時速350キロを超える。
「石神先生! 飛ばし過ぎですよ!」
「大丈夫だよ」
「だって! 高機に捕まっちゃいますって!」
「おー、それな!」
時速400キロを超える。
「石神先生!」
「大丈夫なんだ。何しろこの車は「外ナンバー」だからな!」
「へ?」
六花がヘンな顔をして俺を見た。
「六花、俺が何のためにレイの車だと言って手間を掛けたと思ってんだ」
「どういうことですか?」
「レイは大使館の人間だ。だから俺は思い切り好きなように改造して、あいつが嫌がる車にした」
「はい?」
「でも、ナンバーは大使館のものだ。レイがいらないと言い、俺がもらった。ナンバーはそのままでな」
「えぇー!」
「欲しかったんだよ。日本の警察が手出しして来ない車をな。そのために頑張ったんだ」
「頭いいですね!」
「まーなー! この見た目で、警察は何も言って来ない。どんなにスピード出したって、捕まらない。まあ、まさか兵装まであるとも思ってねぇだろうけどな」
「はぁー!」
俺たちの車を見て、みんなが驚いている。
何しろ虎(レイ)のでかいプリントに、でかいスーパーチャージャー。
おまけにルーフの「ロボ」だ。
「じゃあ、石神先生も大使館の人間ってことですか?」
「まあ、一応はな。アビーにも、その旨で許可を得たしな」
「何かするんですか?」
「うーん、お茶くみとか?」
「アハハハハ!」
所属がアメリカ大使館員になっただけで、別に仕事はない。
アビゲイルのサービスだ。
俺たちは高速を降り、羽田空港へ向かった。
もっと遠くまで行っても良かったのだが、下道でスーパーチャージャーの回転を見たかったのと、腹が減って来たからだ。
駐車場で車を降り、六花がルーフの「ロボ」に触った。
「ろぼー」
《ニャンですか、六花さま!》
「喋ったー!」
六花は大喜びだった。
この車には人工知能が搭載されている。
そのため、荷物のための収納スペースはない。
「音声でいろいろな操作が出来るんだよ」
「そうなんですか!」
「ロボ、ガソリンは大丈夫か?」
《はい。でもまだドライブをなさるなら、給油をお勧めしますニャ》
「分かった」
「カワイー!」
後で話そうと言い、六花を焼肉店へ連れて行った。
前に、亜紀ちゃんを連れて来た店だ。
六花はニコニコして大量の注文を入れた。
すぐに皿が運ばれ、俺たちは焼き始める。
「そういえば、響子は六花のマンションで『マッドマックス』を観たんだよな?」
「はい。一緒に楽しもうと思ったんですが、ちょっと怖がってしまって」
「まーなー」
六花が特上ロースから食べ始める。
「しかし、六花の家にもまともなDVDがあったんだな!」
「石神先生、私を一体なんだと思ってるんですか」
「アハハハハ!」
俺は自分で焼いた特上カルビを食べようとして、六花に奪われる。
美しく笑うので、そのまま譲った。
「そういえばよ、こないだ石動から届いたDVDが、なんかみんな六花に似てるんだよ」
「へぇー、そうなんですか?」
エロ友達の六花は、当然石動の話も知っている。
「まあ、あいつは俺の好みとかも良く知ってるからな。今までのレポートとか感想からあいつが揃えてくれたのかもな」
「じゃあ、石神先生のお好みは私ということで!」
「アハハハ。他の奴が言ったら怒るけど、確かに六花は最高に好みだけどな!」
「ありがとうございます!」
俺たちは楽しく食べながら話して行く。
「あ! こないだ私が神保町に行ってた時に、石神先生からお電話いただいたじゃないですか」
「あー、あったな」
「あの時、よくお店で一緒になる男の人と、ちょっと親しくなったんですよ」
「おい、大丈夫かよ?」
「はい! とても紳士的な方で、ちょっと石神先生に似てるって思いました」
「そんな場所にいる奴が?」
別に何かを心配していたわけではない。
万一六花を襲おうとしても、返り討ちに遭うだけだ。
それに、六花は俺以外の男にまったく興味は無い。
「そうなんですが、何か気持ちのいい方でした」
「へぇー」
六花がそういうことを言うのは珍しい。
本当に良い人だったのだろう。
「ああ、その方もエロ映像を研究してるって言ってました」
「そうかぁ。結構そういう人がいるんだな」
「はい。私の趣味がいいって褒められましたよ」
「そうか!」
俺は笑った。
「なんでも、その方も知り合いにDVDを送ってるとか」
「まあ、自分のコレクションは自慢したがるものだからな」
「あ、今度その私に似てるっていうDVD貸してください」
「ああいいよ。でも、絶対に返せよな!」
「もちろんですよ。大事にします」
「ああ、俺の大事な六花ソックリの作品なんだからなぁ」
「アハハハハハ!」
「ワハハハハハ!」
明るくエロを語れる女は六花と双子だけだ。
最高の女だ。
俺たちは展望デッキを眺めてから、竹芝桟橋へ寄った。
「ロボをちょっと使ってみるか!」
「いいですね!」
誰もいないのを確認する。
「ロボ! 「虚震花」をちょっと見せてくれよ」
《ニャ!》
ロボの像が口を開いた。
海面に向けて発射する。
50メートル先の海面が爆発し、盛大な水しぶきを放った。
「「おぉー!」」
俺たちは拍手して称えた。
帰りの車の中で、六花はずっとロボに話しかけ、喜んでいた。
今晩は六花とシボレー・コルベットで走るつもりだ。
やはり、こういう車を理解する奴と一緒に乗りたい。
出勤すると、早速六花が車を見たがった。
「凄いですね! 『マッドマックス』じゃないですか!」
「そうだよな! やっぱこのスーパーチャージャーだよなぁ!」
「はいはい! 楽しみですぅ!」
「おう!」
俺たちはハイテンションのまま響子の部屋へ行き、響子にも見せてやった。
「アニコレ?」
「どうだよ、シボレー・コルベットC7ZR1を改造したんだ!」
「ふーん」
「なんだよー、お前テンション低めじゃん?」
「だってねぇ」
「ナニナニ?」
「ヘン」
「「……」」
俺と六花は消沈した。
二人で両手を上げ、額に皺を寄せて、アメリカ人の嘆きのポーズをした。
まあ、アメ公には分からんのだろう。
レイもそうだった。
アメ車なのになぁ。
俺と六花は響子の部屋でずっと『マッドマックス』の話で盛り上がった。
響子が段々と不機嫌になっていく。
カワイイ。
「もう! なんなのよ!」
「おいおい」
「ここは私のお部屋! 私が楽しい話をして!」
「じゃあ、そろそろ『マッドマックス2』の話に入るかぁ!」
「あぁ! ニトロ・インジェクションですねぇ!」
「「ワハハハハ!」」
「……」
響子はむくれて、セグウェイでどこかへ行った。
響子も前に『マッドマックス』を六花のマンションで観ている。
怖かったようだ。
子どもにはそうだろう。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
俺が最初に『マッドマックス』を観たのは劇場だった。
井上さんや族の仲間たちと一緒に、横浜駅の近くの映画館へ行った。
「トラ! なんかすげぇ映画らしいぞ!」
井上さんが言った。
「そうなんですか!」
俺たちはバイクで出掛け、近くの駐車場に停めた。
チームの革ジャンをみんな着ている。
俺はだから真っ赤な特攻服だ。
鬼愚奈巣や他のチームを潰して、金は結構あった。
金庫番の奴が、みんなのチケットを買う。
モギリの女性が怖がっていた。
下の連中がプログラムをみんなの分買い、ジュースなどの注文を取って行く。
一番いい席を、何人かで確保する。
まあ、俺たちと並んで座ろうとする奴もいない。
俺は一番でかいポップコーンとコーラを手に、ワクワクして席に座っていた。
俺のポップコーンに手を入れる奴はいない。
井上さんでさえ、遠慮する。
俺がブチ切れるからだ。
映画が始まるとボリボリやってられないので、俺は急いで喰い始めた。
劇場が暗くなる。
仲間たちがため息のような声を上げる。
広告宣伝の映像が終わり、本編が始まった。
初っ端から爆走するシーンに、俺たちは興奮した。
V8マシンの雄々しい疾走。
俺たちの憧れの青春がそこにあった。
でかい斧で襲うシーン。
特攻隊の一人が、あれをやりましょうと言った。
後日、本当に鉄工所の息子が作って来た。
そして、あのスーパーチャージャーのインターセプターの登場だ。
俺たちは燃えに燃えた。
いつか、自分のマシンにスーパーチャージャーを取り付ける。
俺たちの夢になった。
俺はやったぞ!
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
仕事が終わり、6時から六花とドライブへ出掛けた。
俺が高校時代に仲間と観た『マッドマックス』の話をする。
「私はビデオでみんなで観たんですが、劇場だと迫力が違うでしょうね」
「そうだなぁ。でも、俺も今はブルーレイとかで観るけど、やっぱりいいよな!」
「何度観てもいいですよね!」
第二作が最高だと言い合い、第三作は評判は悪いが二人とも好きだと意見が合った。
そして『怒りのデスロード』!
俺たちは大興奮で語り合った。
「「V8に捧げよ!」」
「「ワハハハハハハ!!」」
「ああ。みんなで映画を観るというのがあの後ちょっと続いてな。よく観に行ったよ」
「へぇー。何を観たんですか?」
「印象的なのは『ジャンク』だな」
「?」
「知らないか。まあゲテモノ映画なんだけど、実際の事故とか死体をガンガン見せるっていうな。みんなショックを受けてたよ。なかなか本物の死体なんて見ないからなぁ」
「なるほど」
「結構ウケたらしくて、その後も何作も作られたな」
「石神先生のコレクションにもあるんですか?」
「一応なぁ。DVD化されたものはな」
「何でもあるんですねぇ」
「まーなー!」
俺たちは首都高に入り、V8エンジンの唸りと、スーパーチャージャーの回転に喜んだ。
「唸ってますね!」
「そうだな!」
ウキウキだ。
しかし、回転数が上がると、スーパーチャージャーは止まり、ターボチャージャーに切り替わる。
「あー、止まっちゃいましたよ!」
「回転数が上がると、スーパーチャージャーはむしろ邪魔なんだ。ターボチャージャーで本領を発揮するんだよ」
「へぇー!」
アクセルを踏み込み、スピードメーターがどんどん動いていく。
時速350キロを超える。
「石神先生! 飛ばし過ぎですよ!」
「大丈夫だよ」
「だって! 高機に捕まっちゃいますって!」
「おー、それな!」
時速400キロを超える。
「石神先生!」
「大丈夫なんだ。何しろこの車は「外ナンバー」だからな!」
「へ?」
六花がヘンな顔をして俺を見た。
「六花、俺が何のためにレイの車だと言って手間を掛けたと思ってんだ」
「どういうことですか?」
「レイは大使館の人間だ。だから俺は思い切り好きなように改造して、あいつが嫌がる車にした」
「はい?」
「でも、ナンバーは大使館のものだ。レイがいらないと言い、俺がもらった。ナンバーはそのままでな」
「えぇー!」
「欲しかったんだよ。日本の警察が手出しして来ない車をな。そのために頑張ったんだ」
「頭いいですね!」
「まーなー! この見た目で、警察は何も言って来ない。どんなにスピード出したって、捕まらない。まあ、まさか兵装まであるとも思ってねぇだろうけどな」
「はぁー!」
俺たちの車を見て、みんなが驚いている。
何しろ虎(レイ)のでかいプリントに、でかいスーパーチャージャー。
おまけにルーフの「ロボ」だ。
「じゃあ、石神先生も大使館の人間ってことですか?」
「まあ、一応はな。アビーにも、その旨で許可を得たしな」
「何かするんですか?」
「うーん、お茶くみとか?」
「アハハハハ!」
所属がアメリカ大使館員になっただけで、別に仕事はない。
アビゲイルのサービスだ。
俺たちは高速を降り、羽田空港へ向かった。
もっと遠くまで行っても良かったのだが、下道でスーパーチャージャーの回転を見たかったのと、腹が減って来たからだ。
駐車場で車を降り、六花がルーフの「ロボ」に触った。
「ろぼー」
《ニャンですか、六花さま!》
「喋ったー!」
六花は大喜びだった。
この車には人工知能が搭載されている。
そのため、荷物のための収納スペースはない。
「音声でいろいろな操作が出来るんだよ」
「そうなんですか!」
「ロボ、ガソリンは大丈夫か?」
《はい。でもまだドライブをなさるなら、給油をお勧めしますニャ》
「分かった」
「カワイー!」
後で話そうと言い、六花を焼肉店へ連れて行った。
前に、亜紀ちゃんを連れて来た店だ。
六花はニコニコして大量の注文を入れた。
すぐに皿が運ばれ、俺たちは焼き始める。
「そういえば、響子は六花のマンションで『マッドマックス』を観たんだよな?」
「はい。一緒に楽しもうと思ったんですが、ちょっと怖がってしまって」
「まーなー」
六花が特上ロースから食べ始める。
「しかし、六花の家にもまともなDVDがあったんだな!」
「石神先生、私を一体なんだと思ってるんですか」
「アハハハハ!」
俺は自分で焼いた特上カルビを食べようとして、六花に奪われる。
美しく笑うので、そのまま譲った。
「そういえばよ、こないだ石動から届いたDVDが、なんかみんな六花に似てるんだよ」
「へぇー、そうなんですか?」
エロ友達の六花は、当然石動の話も知っている。
「まあ、あいつは俺の好みとかも良く知ってるからな。今までのレポートとか感想からあいつが揃えてくれたのかもな」
「じゃあ、石神先生のお好みは私ということで!」
「アハハハ。他の奴が言ったら怒るけど、確かに六花は最高に好みだけどな!」
「ありがとうございます!」
俺たちは楽しく食べながら話して行く。
「あ! こないだ私が神保町に行ってた時に、石神先生からお電話いただいたじゃないですか」
「あー、あったな」
「あの時、よくお店で一緒になる男の人と、ちょっと親しくなったんですよ」
「おい、大丈夫かよ?」
「はい! とても紳士的な方で、ちょっと石神先生に似てるって思いました」
「そんな場所にいる奴が?」
別に何かを心配していたわけではない。
万一六花を襲おうとしても、返り討ちに遭うだけだ。
それに、六花は俺以外の男にまったく興味は無い。
「そうなんですが、何か気持ちのいい方でした」
「へぇー」
六花がそういうことを言うのは珍しい。
本当に良い人だったのだろう。
「ああ、その方もエロ映像を研究してるって言ってました」
「そうかぁ。結構そういう人がいるんだな」
「はい。私の趣味がいいって褒められましたよ」
「そうか!」
俺は笑った。
「なんでも、その方も知り合いにDVDを送ってるとか」
「まあ、自分のコレクションは自慢したがるものだからな」
「あ、今度その私に似てるっていうDVD貸してください」
「ああいいよ。でも、絶対に返せよな!」
「もちろんですよ。大事にします」
「ああ、俺の大事な六花ソックリの作品なんだからなぁ」
「アハハハハハ!」
「ワハハハハハ!」
明るくエロを語れる女は六花と双子だけだ。
最高の女だ。
俺たちは展望デッキを眺めてから、竹芝桟橋へ寄った。
「ロボをちょっと使ってみるか!」
「いいですね!」
誰もいないのを確認する。
「ロボ! 「虚震花」をちょっと見せてくれよ」
《ニャ!》
ロボの像が口を開いた。
海面に向けて発射する。
50メートル先の海面が爆発し、盛大な水しぶきを放った。
「「おぉー!」」
俺たちは拍手して称えた。
帰りの車の中で、六花はずっとロボに話しかけ、喜んでいた。
0
お気に入りに追加
228
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
まさか、、お兄ちゃんが私の主治医なんて、、
ならくま。くん
キャラ文芸
おはこんばんにちは!どうも!私は女子中学生の泪川沙織(るいかわさおり)です!私こんなに元気そうに見えるけど実は貧血や喘息、、いっぱい持ってるんだ、、まあ私の主治医はさすがに知人だと思わなかったんだけどそしたら血のつながっていないお兄ちゃんだったんだ、、流石にちょっとこれはおかしいよね!?でもお兄ちゃんが医者なことは事実だし、、
私のおにいちゃんは↓
泪川亮(るいかわりょう)お兄ちゃん、イケメンだし高身長だしもう何もかも完璧って感じなの!お兄ちゃんとは一緒に住んでるんだけどなんでもてきぱきこなすんだよね、、そんな二人の日常をお送りします!
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
俺の幼馴染がエロ可愛すぎてヤバい。
ゆきゆめ
キャラ文芸
「お〇ん〇ん様、今日もお元気ですね♡」
俺・浅間紘(あさまひろ)の朝は幼馴染の藤咲雪(ふじさきゆき)が俺の朝〇ちしたムスコとお喋りをしているのを目撃することから始まる。
何を言っているか分からないと思うが安心してくれ。俺も全くもってわからない。
わかることと言えばただひとつ。
それは、俺の幼馴染は最高にエロ可愛いってこと。
毎日毎日、雪(ゆき)にあれやこれやと弄られまくるのは疲れるけれど、なんやかんや楽しくもあって。
そしてやっぱり思うことは、俺の幼馴染は最高にエロ可愛いということ。
これはたぶん、ツッコミ待ちで弄りたがりやの幼馴染と、そんな彼女に振り回されまくりでツッコミまくりな俺の、青春やラブがあったりなかったりもする感じの日常コメディだ。(ツッコミはえっちな言葉ではないです)
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
イケメン歯科医の日常
moa
キャラ文芸
堺 大雅(さかい たいが)28歳。
親の医院、堺歯科医院で歯科医として働いている。
イケメンで笑顔が素敵な歯科医として近所では有名。
しかし彼には裏の顔が…
歯科医のリアルな日常を超短編小説で書いてみました。
※治療の描写や痛い描写もあるので苦手な方はご遠慮頂きますようよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる