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稲城会、崩壊。
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「タカさん、明日どっか行きましょうよー!」
「なんだよ、いきなり」
亜紀ちゃんと酒を飲んでいる。
金曜日の夜だ。
「また羽田とかドライブとか」
「めんどくせぇ」
「私のこと、大事じゃないんですかぁー」
「それほどな」
「あ! 毎日裸を見せられて喜んでるくせに!」
「お前なぁ」
「タカさん、「亜紀ちゃん道」は遠く険しいんですよ!」
「そんな道、歩いた覚えはねぇよ」
「ダメですよ。もうとっくに歩き始めてます」
「ちょっと怖ぇな、それ」
「死して屍拾うものなし! です」
「拾ってくれよ」
「分かりました」
そんなに飲んでないが、もう酔ったのだろうか。
「こないだ緑子のとこへ行ったろう」
「あれはみんなでじゃないですか」
「何が不満なんだよ」
「私はタカさんと二人で行きたいんですぅー」
「やだ」
「なんでぇー!」
今日はしつこい。
別に絡み酒ではないはずだ。
普段の亜紀ちゃんは、飲むと明るくなる。
「なんだよ、今日は絡むなぁ」
「だってぇー」
「今も二人で飲んでるだろう」
「そうなんですけど」
何かあったようだ。
別に聞く必要もなさそうだが。
「実はですね」
なんか語り出した。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
「石神さんは、彼氏とかいるの?」
昼休み。
本を読んでいた亜紀に、クラスメイトの柿崎真夜が話しかけて来た。
最近、何度かある。
それほど親しくしてはいなかった。
髪を茶に染めている。
校則で禁止されているが、明らかに化粧をしている。
髪に隠れているが、ピアスをしているのを知っている。
進学校の中にもいる、不良だ。
「どうでもいいよね、それ?」
「いいじゃない。結構カワイイし、誰かと付き合っててもおかしくないし」
「関係ないじゃない」
「いいけどさ。高校生にもなって、男と付き合ったことがないなんてねぇ」
「あ?」
「なんかさ、石神さんって優等生よね。でも、つまんなくない?」
「別に」
「彼氏と一緒に出掛けたりさ。お勉強だけじゃ、高校生活は腐っちゃうよ?」
「あんたねぇ」
「つまんない女! 一生処女でいれば?」
亜紀は席を立った。
別な場所へ移動しようと思った。
「真夜!」
別なクラスの男子が呼んでいた。
「あいつ、私の彼氏。バスケ部なの。カッコイイでしょ?」
背は高い。180センチほどか。
短めの髪を薄い茶に染め、ディップで前髪を上げている。
シャツの裾を出している。
あれでカッコイイつもりなのだ。
「あれ?」
「そうよ」
「車は何乗ってるの?」
「え、持ってないよ」
「はぁ」
「何よ!」
「ブリオーニとか着てる?」
「何それ」
「靴はベルルッティとかラッタンジーとか?」
「意味分かんない!」
「私の彼氏は、ランボルギーニのアヴェンタドールに乗ってるの」
「え?」
「ブリオーニってね、一着100万以上なのよ」
「あんた!」
亜紀はスマートフォンの写真を見せた。
アヴェンタドールに乗っている二人だ。
シザードアが開いている。
「あんな安い奴にバージンあげちゃったんだ、カワイソー」
「あんた! なによ!」
「東大卒で大病院の外科部長。あんたの彼氏って、どこまで昇れるの?」
「……」
「ねぇ、今日はマ〇クでデート?」
「……」
「銀座のエスコフィエとかじゃなくて」
亜紀はまた写真を見せた。
「あとね、ベンツのロードスターとハマーH2の改造リムジンと、バイクはドゥカティのレッジェーラも持ってる。ああ、こないだシボレー・コルベットのC7ZR1をバッキバキに改造したの買ったっけ」
「石神ぃ」
男が来たせいか、真夜の態度が変わった。
「歩いてデートね。ごくろーさん!」
「覚えてろよ、てめぇ」
男が寄って来た。
「真夜、なんだよ。早く自販機に行こうぜ」
「あんた!」
「アハハハハハ!」
「ねえ、こいつちょっと締めてよ。あたしたちのことバカにすんのよ」
「あんだとぉ!」
「よし、かかってこい」
男が亜紀のブレザーの胸倉を掴んだ。
亜紀は男の鼻を押し込んだ。
「アゥ!」
男の鼻から血が滴る。
亜紀は男の手を離させないで、顎にアッパーを打ち込んだ。
ガキッと音がして、男の口から血が垂れた。
亜紀が離れると、男は床に沈んだ。
「喧嘩も弱いってかぁ! アハハハハハ!」
男は真夜の肩で支えられ、教室を出た。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
「ということがありました」
「悪いが全然分からん」
何やってんだ、こいつは。
「タカさーん」
「今日はもう寝るかな」
「待って下さいよー」
「ほんと、うぜぇ」
「もしかしたら、私、大勢の男たちにやられちゃうかも」
「フランス外人部隊が来ても平気だったろう!」
「私、女の子だもん」
「武闘派ヤクザが皆殺しだろう!」
「守ってください」
「巨大隕石でも来たらな」
「えぇー!」
「大体、なんで俺が彼氏っぽいことになってんだよ!」
「だってぇー」
「さて、明日は六花と流すかな!」
「あ、私も」
「六花がまた泣くだろう!」
「そうですけど」
「とにかく、今日はもう寝る」
「分かりましたよ!」
まさか、この先に予想外の展開があるとは、まるで考えていなかった。
「なんだよ、いきなり」
亜紀ちゃんと酒を飲んでいる。
金曜日の夜だ。
「また羽田とかドライブとか」
「めんどくせぇ」
「私のこと、大事じゃないんですかぁー」
「それほどな」
「あ! 毎日裸を見せられて喜んでるくせに!」
「お前なぁ」
「タカさん、「亜紀ちゃん道」は遠く険しいんですよ!」
「そんな道、歩いた覚えはねぇよ」
「ダメですよ。もうとっくに歩き始めてます」
「ちょっと怖ぇな、それ」
「死して屍拾うものなし! です」
「拾ってくれよ」
「分かりました」
そんなに飲んでないが、もう酔ったのだろうか。
「こないだ緑子のとこへ行ったろう」
「あれはみんなでじゃないですか」
「何が不満なんだよ」
「私はタカさんと二人で行きたいんですぅー」
「やだ」
「なんでぇー!」
今日はしつこい。
別に絡み酒ではないはずだ。
普段の亜紀ちゃんは、飲むと明るくなる。
「なんだよ、今日は絡むなぁ」
「だってぇー」
「今も二人で飲んでるだろう」
「そうなんですけど」
何かあったようだ。
別に聞く必要もなさそうだが。
「実はですね」
なんか語り出した。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
「石神さんは、彼氏とかいるの?」
昼休み。
本を読んでいた亜紀に、クラスメイトの柿崎真夜が話しかけて来た。
最近、何度かある。
それほど親しくしてはいなかった。
髪を茶に染めている。
校則で禁止されているが、明らかに化粧をしている。
髪に隠れているが、ピアスをしているのを知っている。
進学校の中にもいる、不良だ。
「どうでもいいよね、それ?」
「いいじゃない。結構カワイイし、誰かと付き合っててもおかしくないし」
「関係ないじゃない」
「いいけどさ。高校生にもなって、男と付き合ったことがないなんてねぇ」
「あ?」
「なんかさ、石神さんって優等生よね。でも、つまんなくない?」
「別に」
「彼氏と一緒に出掛けたりさ。お勉強だけじゃ、高校生活は腐っちゃうよ?」
「あんたねぇ」
「つまんない女! 一生処女でいれば?」
亜紀は席を立った。
別な場所へ移動しようと思った。
「真夜!」
別なクラスの男子が呼んでいた。
「あいつ、私の彼氏。バスケ部なの。カッコイイでしょ?」
背は高い。180センチほどか。
短めの髪を薄い茶に染め、ディップで前髪を上げている。
シャツの裾を出している。
あれでカッコイイつもりなのだ。
「あれ?」
「そうよ」
「車は何乗ってるの?」
「え、持ってないよ」
「はぁ」
「何よ!」
「ブリオーニとか着てる?」
「何それ」
「靴はベルルッティとかラッタンジーとか?」
「意味分かんない!」
「私の彼氏は、ランボルギーニのアヴェンタドールに乗ってるの」
「え?」
「ブリオーニってね、一着100万以上なのよ」
「あんた!」
亜紀はスマートフォンの写真を見せた。
アヴェンタドールに乗っている二人だ。
シザードアが開いている。
「あんな安い奴にバージンあげちゃったんだ、カワイソー」
「あんた! なによ!」
「東大卒で大病院の外科部長。あんたの彼氏って、どこまで昇れるの?」
「……」
「ねぇ、今日はマ〇クでデート?」
「……」
「銀座のエスコフィエとかじゃなくて」
亜紀はまた写真を見せた。
「あとね、ベンツのロードスターとハマーH2の改造リムジンと、バイクはドゥカティのレッジェーラも持ってる。ああ、こないだシボレー・コルベットのC7ZR1をバッキバキに改造したの買ったっけ」
「石神ぃ」
男が来たせいか、真夜の態度が変わった。
「歩いてデートね。ごくろーさん!」
「覚えてろよ、てめぇ」
男が寄って来た。
「真夜、なんだよ。早く自販機に行こうぜ」
「あんた!」
「アハハハハハ!」
「ねえ、こいつちょっと締めてよ。あたしたちのことバカにすんのよ」
「あんだとぉ!」
「よし、かかってこい」
男が亜紀のブレザーの胸倉を掴んだ。
亜紀は男の鼻を押し込んだ。
「アゥ!」
男の鼻から血が滴る。
亜紀は男の手を離させないで、顎にアッパーを打ち込んだ。
ガキッと音がして、男の口から血が垂れた。
亜紀が離れると、男は床に沈んだ。
「喧嘩も弱いってかぁ! アハハハハハ!」
男は真夜の肩で支えられ、教室を出た。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
「ということがありました」
「悪いが全然分からん」
何やってんだ、こいつは。
「タカさーん」
「今日はもう寝るかな」
「待って下さいよー」
「ほんと、うぜぇ」
「もしかしたら、私、大勢の男たちにやられちゃうかも」
「フランス外人部隊が来ても平気だったろう!」
「私、女の子だもん」
「武闘派ヤクザが皆殺しだろう!」
「守ってください」
「巨大隕石でも来たらな」
「えぇー!」
「大体、なんで俺が彼氏っぽいことになってんだよ!」
「だってぇー」
「さて、明日は六花と流すかな!」
「あ、私も」
「六花がまた泣くだろう!」
「そうですけど」
「とにかく、今日はもう寝る」
「分かりましたよ!」
まさか、この先に予想外の展開があるとは、まるで考えていなかった。
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