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しっかり休もう!

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 2月最後の土曜日。
 ステーキ蕎麦の昼食の後で、俺は双子を誘って散歩に行くことにした。
 皇紀の部屋に寄る。
 ちゃんとノックする。

 「おい、レイ」
 レイが皇紀とPCを見ていて、打ち合わせをしていた。

 「はい、なんでしょうか?」
 「これから散歩に行くんだ。付き合えよ」
 「え、でも今皇紀さんと」
 「ばかやろう! 男の子にはちょくちょく独りの時間をやれ!」
 「はい?」

 皇紀はうつむいた。
 俺はPCの前に行き、黙って「法律用語集」というフォルダーを開いて、「交通法規」というファイルをクリックした。

 
 《巨乳大噴火―僕もお乳も汁まみれ―》

 
 インタビューを飛ばし、メインの動画をレイに見せてやる。
 母乳物のようだった。

 「「「……」」」
 「ひどいよー」

 レイは黙って一緒についてきた。




 「どちらへ行くんですか?」
 「散歩っていうのは、自由気ままに行くもんだ」
 
 双子が笑ってレイを見た。
 二人は俺の両手を握っている。
 ハーに呼ばれ、レイがハーと変わって腕を組んだ。
 レイが笑った。
 俺はハーを抱え上げ、肩に乗せてやった。

 「なんか臭いな」
 ハーに頭を叩かれた。

 俺たちはいつもの公園に行く。
 自由気ままも、大体コースは決まっている。
 ルーが四人分の飲み物を買って来た。
 ベンチに座って、まったりした。
 俺とレイが一緒に座り、双子は別なベンチにいる。

 「レイ、休みながらやれって言っただろう」
 「はい、すいません」
 「皇紀にも休みが必要なんだ」

 「……」
 「「ギャハハハハ!」」

 まだ寒いが、陽の当たるベンチは温かい。
 レイも段々リラックスしてきた。

 「ああ、こういうのも確かにいいですね」
 「そうだろう? 今頃皇紀もリラックスして賢者になってるぞ」
 「?」

 


 俺たちはJR中野駅に向かって歩いた。
 俺たちはレイを「まんだらげ」の異様な空間に案内し、いつものソフトクリーム屋に行く。

 《期間限定 イチゴソフトクリーム》

 「タカさん! これにする!」
 「あたしもー!」
 「じゃあ、四つを」
 「はい! 根性ですね!」
 いつもの店員が大盛にしてくれた。

 テーブルで四人で食べた。

 「寒い中でと思ったんですが、美味しいですね」
 「レイはリラックスが下手だよなぁ」
 「はぁ」

 でもやっぱり寒いので、俺たちは有名チェーンのホットミルクティをテイクアウトして飲みながら歩いた。

 「タカさん、「猫三昧」に行こうよ!」
 「あ? あそこに行くとロボに怒られるんだよなぁ」
 「いいじゃん!」

 良くはないが、レイを案内しようと思った。
 店長とタマが歓迎してくれる。
 他の客がいたので、店長が「猫神様がいらっしゃいました」と断った。
 俺は、石神だと言った。
 俺たちが中に入ると、ネコが一斉に俺に寄って来る。
 レイも他の客も驚いて見ている。

 俺が寝転がると、ルーとハーが俺の横に寝そべる。
 
 「ほら、レイも!」
 レイも俺の頭の方に横になった。
 みんなでネコ塗れになった。
 コーヒーが飲みたくなり、タマを呼んだ。

 「タマ! ちょっと来てくれ!」
 「はーい!」
 「なんだ」

 細い黒いイタチが出てきた。
 ネコたちが一斉に退く。

 「お前は呼んでねぇ!」

 しばらくネコが寄ってこなかったので、コーヒーが飲めた。
 初めてだ。
 店を出て、「レザネフォール」でケーキを12個買った。




 家に帰って、やっぱりロボに怒られた。
 俺だけだ。
 足にネコパンチを喰らいつつ、風呂場に追いやられた。
 シャワーを浴び、ソファで寛いでいると、亜紀ちゃんがコーヒーを淹れ、みんなでケーキを食べた。
 ロボも機嫌を直して、俺の膝に乗り、前足を俺の肩に乗せて甘えた。
 ケーキが喰いにくい。

 「レイ、見ろよ、あの皇紀のスッキリした顔!」
 「はい、スッキリですね!」
 「やめてよー」

 俺はロボを床に降ろし、部屋へ行って、前に双子に持たせていた痴漢撃退ブザーをレイに渡した。

 「皇紀と二人で部屋にいる時にこいつがヘンな気を起こしたら、この紐を引け」
 「どうなるんです?」
 「でかい音が鳴る」
 「アハハハハ!」

 午後はみんなで映画を観た。
 『魁!クロマティ高校』だ。
 みんなで大爆笑する。
 レイが一番笑った。

 「どうだ、レイ? 休むことも重要だろう」
 「はい、よく分かりました!」

 夕飯を食べ、レイと皇紀は少しだけ打ち合わせをすると俺に言いに来た。

 「まあ、ほどほどにな」

 俺は亜紀ちゃんと一緒に風呂に入り、響子のアヒルで「オチンチンけん玉」の練習をした。







 「どうしたんですか、レイさん?」
 「ええ、これって、どんな音がするのかと」

 レイは痴漢撃退ブザーの紐を引いた。
 でかいブザーが鳴った。

 突然ドアが開き、双子が皇紀の胸を蹴って吹っ飛ばした。
 裸の亜紀ちゃんが飛び込んで、皇紀の顔に正拳をぶち込む。
 皇紀の鼻から血が噴き出した。

 「ち、違うんですぅー!」

 レイが叫んだ。
 俺はタオルを腰に巻いて部屋に入り、黙って「法律用語集」の中のファイルをクリックした。

 「はいはい! 勘違いでしたー。みんな解散!」

 ドアを閉めると、エッチな声の合間に皇紀のすすり泣く声が聞こえた。
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