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柳とお風呂

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 柳の背中と髪を洗ってやり、一緒に湯船に浸かった。

 「あー、たまには独りゆっくり入りたいよ」
 「私はたまに石神さんと入りたいです」

 俺は笑った。
 オチンチンを水面でゆらゆらさせ、柳を困らせた。

 「あ、石神さん! あの時のこと、覚えてますか?」
 困った柳が話題を振って来た。

 「どの時だよ!」
 「ほら、私が風邪を引いて熱を出した時!」
 「あーーあ」




 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■

 


 柳が川で溺れた翌年の夏。
 俺はまた御堂の家に遊びに行った。
 御堂はまだ仕事でいなかったが、他の方々が俺を出迎えてくれた。

 「石神さん、いらっしゃい!」
 柳が俺に飛びついて来た。
 俺は抱き上げて、そのまま一緒に家に入った。

 「あー、靴!」
 正利が笑って柳の脱がせてくれる。

 「ほら、柳。風邪ひいてるんだから、石神さんにうつしちゃダメよ」
 澪さんが言った。

 「大丈夫だもん」
 「なんだ、風邪ひいてるのか?」
 「うん」
 
 「熱が38度近いんです」
 「なんだよ! お前寝てろ!」
 「やだー」

 柳は俺から離れなかった。
 座敷で挨拶をしている間も、ずっと俺の膝の上にいる。
 咳き込んでいた。
 挨拶を終えて、俺は柳に寝ているように言った。

 「しばらく一緒にいてやるから寝ろ!」
 「はーい」

 柳の横に寝て、いろんな話をしてやった。


 

 その夕方、俺は高熱を出した。
 39度ある。
 柳のがうつった。
 帰って来た御堂が、しきりに謝っていた。

 「石神、申し訳ない」
 「いや、俺がずっと自分で柳の傍にいたんだ。澪さんは何度も止めてたんだけどな」
 澪さんの失態にするわけには行かない。

 「病院から解熱剤を持って来るよ」
 「いらないよ。俺は高熱になっても全然大丈夫だから。食欲もあっただろ?」
 「だけど」
 「それに風邪の治し方は心得ているからな。ああ、柳と一緒に風呂に入ってもいいか?」
 「それは構わないけど」



 俺は柳と一緒に風呂に入った。
 柳の身体を洗ってやる。
 柳の熱は今も38度のようだ。
 だるそうにしている。
 一緒に湯船に浸かった。

 「柳、免疫機構って知ってるか?」
 「うん。ばい菌を殺す仕組みだよね」
 「そうだ。お前は今体温が上がってる」
 「うん」
 「それはな、免疫機構は身体が温かくなると活発になるためなんだよ」
 「へぇー!」
 「だから熱が出るように人体はなってるのな」
 「なるほど!」
 「熱が高くなると、身体がだるくなる。それは休んでいろという、身体のサインなんだ」
 「分かった!」

 「それでだ! 石神式免疫機構応援プログラムではなぁ」
 「あ、なんかカッコイイ!」

 俺は柳の頭を撫でてやる。

 「一層活躍してもらうために、こうやって風呂に入るんだ」
 「へぇー」

 俺たちはゆったりと浸かった。
 時々、柳をのぼせさせないように、湯船の縁に座らせる。
 俺も一緒に座った。

 「石神さん、見えちゃってますよ?」
 「いいだろう、俺のオチンチンは!」
 「えぇー!」

 俺はオチンチンで柳に湯を弾いた。
 
 「やー!」

 御堂が入って来た。
 
 「石神……」
 「お、おう!」

 俺はポットに入れてもらった番茶を柳と飲む。
 御堂は宜しく頼むと言って出て行った。
 柳は、身体を手で隠していた。

 「なんだよ、御堂には恥ずかしいのか?」
 「だって」
 「俺にはいいのかよ」
 「だって、石神さんのお嫁さんになるんだもん」
 「アハハハハ!」

 「汗をかくから、水分は補給しておけ」
 「はい」

 俺も柳も結構汗をかく。
 時々、温めのシャワーで汗を流して、また湯船に浸かる。
 2時間ほど、風呂にいた。

 柳は風呂から上がってすぐに寝た。
 俺も隣で寝かせてもらった。

 翌朝、俺たちはすっかり元気になっていた。
 体温も平熱だ。

 「すごいな、石神!」
 御堂が喜んだ。

 「俺は病気のベテランだからな!」
 「アハハハハ!」




 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■




 「あの時もこうやって、一緒に入りましたよね」
 「ああ、そうだったな」
 「石神さんは私に優しいですけど」
 「けど、なんだよ?」

 「私と一緒にいたり、話すのは嫌いですか?」
 「そんなはずがあるかよ」
 「だって。しょっちゅう邪険にされるし、からかわれるし」
 俺は笑った。

 「前にも、そんな話をしたな」
 俺は柳を抱き寄せて方に腕を回した。

 「その時も言ったけど、お前は俺のことになると、「自分、自分」ってなるんだよ」
 「はい」
 「他のことではそうでもない。お前はちゃんと遠慮を知っているし、他の人間に譲ることが出来ると知ってる」
 「でも」

 「俺がお前をからかったり、時には突き放すのは、お前が俺と御堂の間に割り込もうとする時だぞ?」
 「あ!」
 「お前は優しいし美人だし。俺なんかが好きだってこと以外には、欠点はねぇな」
 「!」

 柳が俺の方を向いた。
 腕が滑って柳の綺麗な背中を撫でた。

 「お前のことを忘れたことはねぇ」
 「石神さん!」
 「柳、好きだよ」
 「石神さん」

 「なんだよ、柳」

 「別荘に私が行く日を忘れてましたよね」
 「え?」
 「亜紀ちゃんに後で聞きました。朝に起きてから思い出して「やばかった」って言ってたって」
 
 「あいつぅ……」

 「石神さんって、時々ウソつきますよね?」
 「いや、あのな」
 「お父さんがいない時でも、よくからかわれるのを思い出しました!」
 「アハハハ」

 柳がキスをしてきた。

 



 「でも、どうしようもないほどに、大好きなんです」
 「俺もだよ」
 「ほんとに?」
 「多分な」




 「言い切ってよ!」
 「アハハハハハ!」




 俺は柳の美しい身体を見て困ったんだ。
 まあ、そういうことだ、柳。 
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