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帰宅

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 元旦の朝。
 俺と六花が下に降りると、タケとよしこ、また10人程の「紅六花」のメンバーがいた。
 雑煮を出すと言うので、俺は餅なしで頼んだ。

 「あまり好きではないんだ」
 タケは笑って頷き、餅以外の具を入れて持って来た。
 六花は普通に餅を食べる。
 俺たちの前に、おせち料理が並ぶ。
 六花は大喜びだ。

 「小鉄が作ったのか?」
 俺が小鉄に聞くと、違うのだと言う。

 「毎年おせち料理と雑煮は姉ちゃんたちが作るんです」
 「へぇ。忙しい中をやってたのか」
 「「はい!」」
 タケとよしこが返事した。

 「普段は全部小鉄が作るんで、正月くらいはのんびりしてもらおうと」
 「そうか」
 俺は幾つかつまみ、美味いと言った。
 二人が喜ぶ。

 「タケ、よしこ、世話になったな」
 「いいえ! また是非いらして下さい」
 タケが言う。

 「石神さんには、孤児院までいらしてもらって」
 よしこが恐縮して言う。

 「ああ。また連絡するけど、俺も気持ちだけ寄付させてもらうからな。昨日聞いたよしこの口座へ入金するから」
 「すいません!」
 「あくまでお前たちからの寄付ということで頼むな」
 「はい、分かりました」
 六花がお替りで餅を二つ入れてもらう。
 ニコニコして食べていた。

 「嬉しそうだな!」
 「モチろん!」
 俺は頭にチョップを入れる。




 「ああ、それと紫苑の公園な」
 「はい!」
 「まず、一般財団法人を設立しろよ」
 「え?」
 「よしこ、お前はそこから公益財団法人を目指せ」
 「は、はい!」

 「「紅六花」は、今も様々な世の中のためになることをやっている。それを事業として確立しろ。多くのメンバーの受け入れ先にもなるしな。稼ぎの無い者も多いだろう」
 「それはそうですが」
 「別に今まで通りに無償でやってもいいんだ。だけど、金を取れるものは取って、自分たちを養え」
 「なるほど、分かりました!」
 「いい仕事をすれば、お前の旦那や父親にも利になる」
 「はい!」

 六花が腕を組んで頷いている。

 「な、六花!」
 「私もそう思っていました!」
 「流石だな!」
 「はい!」

 まあ、「紅六花」のためになる、というのは感じているようだが。


 「設立資金は俺が出す。お前たちはしばらくそれを食い潰していればいい」
 「いえ、そんな!」
 「大丈夫だ。俺に任せろ」
 「はい、じゃあ詳しい話はまた」

 「よし! じゃあ俺たちは帰るからな」
 「は! ありがとうございました!」
 全員がタケに倣って俺たちに言った。
 荷物をまとめ、車に乗り込んだ。
 表では、「紅六花」総勢81名が集まっていた。

 「じゃあな! また来る!」
 「みんな! 元気でやれよ!」

 俺たちは声援に見送られ、俺たちは颯爽とハマーで去った。
 いつまでも、「紅六花」の全員が頭を下げている。

 「いい年末と元旦になったな」
 「はい! 楽しかったですね!」
 「ああ、ロボも楽しそうだったよな」
 「はい! あれ?」
 「どうした?」

 「石神先生、ロボは?」
 「!」

 俺たちは引き返し、恥ずかしさ一杯でロボを引き取った。
 みんな笑っていた。




 ロボがちょっと不機嫌だった。
 置いて行かれたのを分かっているのか。
 途中で停めて、ネコ缶をたらふく食べさせ、機嫌を取った。

 「ちょっと『ホームアローン』ごっこをしただけじゃねぇか」
 「フゥーッ!」
 「ロボ、機嫌を直してね」
 「シャァーッ!」

 でも満腹になるとご機嫌になった。
 誰かに似ている。
 ロボは六花の膝で丸まって寝た。



 六花を送るために、虎ノ門へ行った。
 途中で病院に寄って、響子の部屋へ行く。
 響子は丁度昼食を食べていた。
 遅く起きたようだ。

 「響子、俺たちまだ昼を喰ってないんだ」
 「響子、ちょっと分けて」
 「いやー!」

 俺がプリンを取ると、本気で怒る。
 カワイイ。
 俺たちは、タケたちと撮った写真を響子のタブレットで見た。
 響子が嬉しそうに見た。

 「いつか、響子も一緒に行きましょう」
 「うん! 必ずね!」
 まあ、特別移送車を使えば行けないこともない。



 響子をハマーまで連れて行き、ロボに会わせた。
 響子が呼びかけると、尻尾だけ動かして返事した。

 「ちょっとご機嫌ななめだね」
 「ああ、ちょっと、な」

 でも響子が頭を撫でると、ゴロゴロいった。
 六花はしばらく響子といると言うので、俺は荷物を降ろし、帰った。





 家に帰っても独りだ。
 明日にはみんなが帰って来る。
 俺は荷物を解き、洗濯をした。
 着物は六花が泣いて濡れたので、クリーニングに出そう。

 空腹なはずだったが、あまり食べる気にならなかった。
 やはり、肉食獣と一緒でないとダメだ。
 あいつらのバカみたいな食事を見ていないと、俺も食べる気にはならない。

 ロボのためにササミを焼き、マグロの柵を少し切った。
 栄養のバランスのために、カリカリも入れる。
 ロボはササミを食べ、マグロを食べ、最後にカリカリを食べる。
 俺は双子のたこ焼きを温め、酒を飲んだ。
 風呂に入り、ロボと少し遊んで早く寝た。
 ロボも、家に帰って安心して寝た。

 

 翌朝。
 疲れていたのか、途中で目が覚めることは無かった。
 8時頃に起きる。
 午後に、子どもたちのために、食事の用意を始めた。
 土鍋でタコの炊き込みご飯を作る。
 ロボがいい匂いに興奮するので、タコを少し喰わせた。

 ハンバーグのために、ひき肉を作り、タネをたくさん作る。
 ステーキは、きっとたくさん食べて来ただろう。
 聞かなくても分かる。
 俺はもう、子どもたちのことしか考えていなかった。
 そのことに気付き、苦笑する。
 俺ともあろう男が、なんてザマだ。
 しかし、それでも子どもたちの顔を見る時を考えてばかりで、ニヤけてしまう。

 何度も時計を見る。
 スマホを常に傍に置く。
 普段はしない、メールのチェックをする。
 何も無ければ、あいつらもメールなどしないのに。
 あいつらは、俺がメールを頻繁に見ないことを知っているのに。
 
 食事の用意が終わると、俺はコーヒーを淹れ、普段はいない一階の応接室で待った。
 


 「「「「タカさーん!」」」」
 やっと帰って来やがった。



 「おう、お帰り。よくやったな!」



 「「「「うん!」」」」











 石神一家が揃った。 
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