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優しい温もり

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 研究所に帰ると、六花が言った。

 「今日は虎曜日ですよ!」

 「そうだったのか!」
 「そうです」

 俺は笑って、分かったと言った。
 器のでかい女だ。



 俺は蓮花とミユキを誘って風呂に入った。
 二人の女を抱く。

 コンバットスーツに着替え、俺は三人で「ティーグフ」に乗って六花の戦闘を観に行った。

 デュール・ゲリエは、人工筋肉を搭載している。
 双子が開発しているベンチャー企業を買収した。
 筋肉の3倍の収縮率を出せる。
 単純に言えば、人間の三倍の力が出せる。
 実際は二倍にも及ばないが。
 電子制御はまた違う買収した研究機関だ。
 何よりも稼働可能たらしめているのは、皇紀たちが開発した「フリーエネルギー機関」だ。
 小型化に成功し、体内に納めている。

 稼働制御はボディ内にもあるが、繊細な制御は量子コンピューターが行っている。
 研究所内を走っている自走ロボットと同様だ。

 俺はデュール・ゲリエに格闘、銃火器の扱い、そして最終的には「花岡」の発動を目指している。
 双子が数式化を完成しそうなので、実現の可能性は高い。
 但し、それは量子コンピューターが制御するはずなので、ハッキング対策が重要だ。

 ニューヨークに行っている皇紀も、最初のアクセスの認証で、1時間はかかるはずだ。
 暗号化された文字列を特殊な同期解析のプログラムを通して、ヘッドマウンとディスプレイに表示させた文字列を打ち込んでいく。
 このヘッドマウントディスプレイが無ければ、正しいコードを入力できない。
 コードは千変万化してく。
 決まったものではない。
 更に、システムグループごとに同様の認証作業があり、しかも一定時間が過ぎれば、最初からやり直しだ。
 俺と皇紀の様々な生体認証が必要なこともある。

 
 鷹は飛行、栞は技の習得と伝達、そして六花は近接戦闘と機械関連の扱いだ。
 子どもたちは亜紀ちゃんが絶大な攻撃力、皇紀は防御、双子は解析とテクニックだ。
 亜紀ちゃんの場合、攻撃力が凄すぎて、極論を言えば訓練の必要はない。
 しかし実際には毎回核弾頭を使うわけには行かないように、力を抑えての戦闘が圧倒的に多い。
 よって、訓練の必要はある。
 聖の訓練で度肝を抜かれているだろう。

 ミユキは特徴は無いが、オールマイティの万能タイプだ。
 あらゆる局面で活躍できる。
 前鬼はパワー型だが、スピードもある。
 テクニックを磨けば面白い戦士になる。
 後鬼はソードダンサーだ。
 武器は必要だが、それを使っての戦いで突出するだろう。
 俺は蓮花に後鬼用の武器の開発を頼んでいる。
 名称は決まっている。
 「カサンドラ」だ。
 量子のある特徴を利用していることからの命名だ。

 機構的には、プラズマ兵器だ。
 プラズマを撃ち出し、プラズマの剣を発生させることも出来る。
 連続稼働は20分を目指す。
 シューティングで50発。
 ソードで20分。
 特殊なビームで20秒だ。
 ビーム仕様では、約100メートルの長大な熱線になる。

 機構のラフな設計は俺が蓮花に渡している。
 必要であれば量産し、仲間に配っても良い。



 「六花様の動きは素晴らしいですね」
 「そうだな」
 「鷹様はお元気ですか?」
 「ああ、でも先日罰を与えた」
 「え、どのような」
 「ぶっとい杭を何度も打ち込んだ。涅槃に行くまでな」
 「え? あ! あぁ! アハハハハハ!」
 「何度も必死でやめて欲しいと言ったけどな。許さなかった」
 「それは大変でございましたね」
 「もう二度と御免だからな」
 「はい、それはもう」

 「子どもたちがいないからよ、玄関から全部の部屋を入れたまま回ったんだ」
 「アハハハハハ!」

 「実はな、栞にもやった」
 「えぇ!」
 「栞は途中からおかしくなったな」
 「アハハハハハ!」

 「蓮花もうちに来いよ」
 「結構でございます」
 「そうか?」
 「はい」
 「じゃあ、ここでやるか!」
 「やめて下さい、本当に」
 「楽しいんだがなぁ」
 「それは石神様がでございます。女は大変です」

 「六花ならもつかもな」
 「そうなのですか?」
 「ああ、でもあいつも俺の最大出力にはついて来れなかったなぁ」
 「まぁ!」

 俺たちは引き続き、六花の動きを見ていた。

 「あの、なぜこんなお話になったのでしょうか」
 「蓮花が言い始めたんだろう」
 「違います! 私は鷹様がお元気かと」
 「そうだったか?」
 「そうです」
 「まあ、いいじゃんか」
 「まあ!」

 俺たちは笑った。




 六花の作業が終わり、俺たちは夕飯を食べた。

 「石神先生」
 「なんだ?」

 「お風呂に入ったら、ティーグフで散歩しましょうよ!」
 「分かったよ」


 俺はもう一度六花と風呂に入り、六花とロボをティーグフに乗せ、研究所を回った。

 「ティーグフ、もっと速く走れるか?」

 ティーグフのスピードが上がった。
 角をタイヤを滑らせて曲がる。

 「スッゲェーな! 四輪ドリフトかよ!」

 俺と六花は興奮した。
 ロボが怖がり出したので、スピードを戻した。
 ロボを二人の膝の上に乗せて撫でて落ち着かせる。

 「石神先生、箱乗りしましょうよ!」
 「おう!」

 俺と六花で二台の縁に座った。

 「アハハハハハ!」
 六花が楽しそうに笑った。


 走っている途中で、ライオンやゾウなどの頭の自走ロボットを見た。
 蓮花の趣味は順調のようだ。




 俺は六花に部屋で待っているように伝え、蓮花を外へ呼び出した。
 ロボも連れている。

 「蓮花には見せておこう」
 「はい」

 「ロボ、上空に火を吐いてくれ」

 ロボは俺を見てから上を向いた。
 尾が二つに割れ、放電が起きる。
 次の瞬間、大きく開いたロボの口の前に光の玉が生まれ、上空に勢いよく上った。

 「!」

 上空で光の玉が弾け、眩い光の帯を拡散させて消えた。
 ロボが俺を得意げに見ている。
 俺は近づいて撫でてやった。

 「石神様、今のは!」
 「ロボに聞いてくれ」
 「にゃ?」
 蓮花が聞いたが、ロボは答えなかった。

 「オロチも熱線を吐く。ロボは違うものらしいけどな」
 「一体、どのようなものなのでしょうか?」
 「オロチの場合は破壊された軽トラがあるけどな。ロボのものはまだ破壊検証してないんだ。うちの近所でやるわけにはいかんからなぁ」
 「ここではどうです?」
 「やめておけよ。多分、あれはヤバイ」
 「さようでございますか」

 俺は蓮花と中へ入った。




 俺は部屋へロボと戻った。
 六花が裸で寝ていた。
 こいつは異常に寝つきがいい。

 俺は笑って浴衣に着替え、布団に潜り込んだ。
 ロボが俺と六花の間に入って来た。
 寒いのだ。

 布団の中は、六花の優しい温もりに満たされていた。
 ロボも俺も、すぐに寝付いた。
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