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トラ&聖:異世界転生 Ⅱ

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 聖が銃を構えるが、俺はまだ撃つなと言った。

 「すいませーん、道に迷っちゃって」
 「ふざけるな! 人間がエルフの結界を超えられるはずがない!」
 「結界って、あのパシャンって割れちゃう奴?」
 「結界を壊したのか!」
 「ああ、通ったら割れちゃったっていうか」


 「ゴブリンだぁー!」
 内側から叫ぶ声が聞こえた。
 物見やぐらの男は俺たちを放って、下へ降りていく。

 「どうする、トラ?」
 「まあ、中に入ろうや。情報は必要だ」
 「おーけー」

 俺たちはジャンプし、軽々と柵を乗り越えた。
 遠くで人々が逃げている。
 その後ろを小さな人影が追っている。

 「なんだ、ありゃ」
 「とにかく行くぞ、聖」
 「おう」

 俺と聖は走りながら、小さな人影を撃って行った。
 ダムダム弾仕様だから、頭や身体が吹っ飛んでいく。
 耳の長い連中は、唖然と見ていた。
 すぐに50匹くらいが肉塊となった。

 「オークだぁー!」

 「今度はなんだ?」
 「いいから行くぞ!」
 「おう」

 俺たちが声のした方へ行くと、身長8メートルくらいのでかい豚のような人型が、柵を切り裂いていた。
 手に巨大な刃物を持っている。

 「後ろにオークキングだぁー!」
 「だからこんな群れを!」

 俺と聖は射撃を「対物ライフル」仕様にし、人豚にぶち込んだ。
 次々とでかい穴が空き、人豚は斃れていく。

 俺がジャンプして柵に乗ると、後ろで一際大きな人豚がいる。
 20メートルを超えている。

 「ファイアー(スティンガーミサイル・モード)!」

 俺の手の先から炎の塊がでかい人豚に飛んだ。
 人豚は爆散した。
 他の人豚を、同じく柵に乗った聖が駆逐する。



 「ドラゴンだぁー!」
 「もう御終いだぁー!」

 見ると、空に羽を広げたトカゲのようなものが迫って来る。
 20頭ほどか。

 「またかよ」
 「いいからやるぞ、聖」
 「おう」

 ライフルを「対物ライフル」仕様にし、狙い撃った。
 面白いように撃ち落されていく。

 「チョッパーより楽勝だな」
 聖が言った。

 羽トカゲが口を開いてなんか吐いた。
 俺は「障壁」と念じて、バリアーを張った。
 熱線が弾かれる。

 「このやろう!」

 俺たちは銃弾を「トマホーク・ミサイル」仕様にし、一気に羽トカゲ共を落とした。

 「英雄だぁー!」

 「今度は何?」
 「ああ、あれ」

 柵の後ろで、耳長たちが集まり、俺たちに喝采を送っていた。





 「あなた方のお陰で、村は救われました」
 長老だという男が言った。
 彼らはエルフ族で、人間に隠れて森の奥深くに住んでいるらしい。
 非常に長命で、長老は二万歳を超えているそうだ。

 「黒髪の二人の屈強な男。これは100万年前から伝わっている預言の「マイトレーヤ(救世主)」様に相違ありません。
 「そうなの?」

 随分と壮大な設定だ。
 あの羽虫は、そんな前から仕込んでやがったのか。

 「ゴブリンに襲われることも稀ですが、オーク、しかもオークキングに率いられた集団など、5万年に一度もありません」
 「へぇ」

 長ぇ話だ。

 「ましてドラゴン、またその集団など、1000万年に一度も」
 「あ、そう」

 「オークキングが現われた時点で、私らは皆殺しでした。ドラゴンともなれば、もう一瞬です」
 「俺らが成り行きでやっただけだ。別にいいよ」

 「なんと! 預言通りの御返答!」
 「……」

 「まあ、とにかくこの世界のことを知りたいんだ。俺たちは別な世界から呼ばれたもんでな」
 「はい、預言にすべて書かれております。マイトレーヤ様に、そういう内容をお伝えするようにと」
 「助かるよ」




 俺と聖は、長老から話を聞いた。
 徐々に、この世界のことが分かった。
 魔素というものがあり、それが動物に吸収されると魔獣になるらしい。
 一般のイノシシはずっと小さいようだ。
 また、稀に人間に吸収されると魔人になる。
 魔王とは、膨大に魔素が溜まった魔人らしい。

 この世界にはエルフ、ヒューマン(人間)、獣人がいるらしい。
 多くの土地を支配しているのが人間で、次いで獣人、エルフは少数派とのことだ。

 「我々エルフは長命で、魔力は随一なのですが、攻撃的なものは少ないのです」
 「大変だね」

 「魔道具を作るのは得意なのですが、何しろ人間の攻撃性と繁殖力には圧倒されております」
 「そうかぁ」

 「しかし! マイトレーヤ様が、エルフに繁栄を授けると預言にはありました」
 「へ?」
 「おい、トラ」
 交渉はいつも俺に任せる聖が、身を乗り出してきた。

 「どうか、我々に子孫繁栄の御情けを」
 「ちょ、ちょっと待て」
 「待たねぇよ、トラ」

 「今、村の女たちに準備をさせています。エルフは、人間にとっては美の象徴。マイトレーヤ様方も燃えて下さるかと」
 「いや、だから待てって!」

 「長老、準備が整いました」
 長い金髪の、ナスターシャ・キンスキーのような女が入って来た。

 「どうです? 御嫌ですかな?」
 「「全然嫌じゃありません!」」



 俺たちは200人の村中の女とやった。
 二週間、ぶっ続けでやった。
 男たちは俺たちのために、狩をし、食事を作り続けた。
 肉が少ないので、俺と聖は途中で狩った魔獣や獣を出した。
 それを見て、またエルフたちが驚き、さらに称えた。

 二週間後、俺たちはエルフの村を出た。
 魔王の情報は人間が掴んでいるらしい。

 「じゃあな、世話になったな」
 村中の女が俺と聖を引き留めようとする。

 「どうやら、全員に子種が付いたようです」
 長老が太鼓判を押した。

 「そうなのか?」

 「200年後に、ちゃんと生まれます」
 「……」





 俺と聖は旅だった。

 俺たちは肩を組み、歌を歌い、時々殴り合いながら、そして途中で襲ってくる魔獣や獣を狩りながら。
 人間の街を目指した。  
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