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I ♡ NY X

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 夕方になり、亜紀たち三人は聖のマンションへ向かった。
 皇紀はまだぐっすりと寝ていたので置いて来た。
 聖とアンジーが降りてきた。
 マンションの前に、リムジンが停まる。
 ドアを開け、聖とアンジーが乗り込んだ。
 亜紀たちも乗り込む。

 聖は黒のスーツだった。
 アンジーは黒のドレス。
 高そうなネックレスに、大きなルビーの指輪をしている。
 一層綺麗だった。
 亜紀は白のパンツにベージュのブラウス。
 それと緑の革のジャケット。
 双子はゴスロリっぽい黒のドレスに、短めの赤のシルクのジャケットを着ている。

 聖は何も言わない。
 運転手は行き先を分かっているのだろう。

 「アンジェラさん、今日もとてもお綺麗ですね」
 「ありがとう。あなたたちもね」
 これが車内での唯一の会話だった。




 
 15分程で着いた。
 大きな平屋の建物だ。
 聖はアンジーと腕を組んで歩いた。
 三人も付いていく。
 入り口で店員が挨拶し、奥のテーブルに案内する。
 テーブルには、既に男が一人座っていた。

 「「「ジャンニーニ!」」」
 ジャンニーニ、聖、アンジーが座り、ルー、亜紀、ハーが対面に座った。
 
 「ここはステーキハウスだ。ニューヨークで一番のな。お前らは遠慮なくどんどん喰え」
 「「「はい!」」」

 「あの、どうしてジャンニーニさんが?」
 「ああ、こないだの詫びにな」
 「セイントは襲撃の後、必ずメシに呼ぶんだ。これでチャラになるわけないのによ」
 「あんだ、文句あるのか?」
 「ねぇよ!」

 多少気まずい雰囲気はあったが、ステーキが運ばれてからは関係なかった。
 亜紀たちは夢中で食べていく。
 
 「すげぇな」
 ジャンニーニが言った。
 アンジーも驚いている。

 「フフフ、アハハハハハ!」
 アンジーが笑い出した。

 「あなたたち、最高ね!」
 三人は夢中で食べながら、親指を立てた。

 「こりゃ、勝てねぇな」
 ジャンニーニが言った。
 ウェイターが笑いながら持って来る。
 流石、アメリカは懐が深い。
 日本の店では誰もが驚いているだけだった。
 30キロほどの肉を喰い、漸く三人は満足した。




 「どうだ、満足したか」
 「「「はい!」」」
 「あ、ジャンニーニさん。いろいろすみませんでした」
 「今更かよ!」
 ジャンニーニが大笑いした。

 「ジャンニーニ、詫びとして一億ドルやろう」
 聖が言った。

 「「「!」」」
 「ほんとかよ」
 「今までも散々だったからな。ここらで清算しよう」
 ジャンニーニは黙っていた。
 
 「いや、いらねぇよ。俺も裏社会の人間だ。負けりゃどうなるのかって分かってるぜ」
 「そうか」
 「そりゃ、俺だって弱気にもなった。特にこんなお嬢ちゃんたちにまで負けちゃあな。でもこのお嬢ちゃんたちもセイントたちも、命張って来たんだ。負けたくせに詫びいれろ、なんてダサい真似はできねぇよ」

 「そうかよ」
 聖は微笑んでいた。

 「こいつらはセイントのとこのか?」
 「いや、もっとおっかねぇファミリーの連中だ」
 「そんなのがいんのかよ!」
 「ああ。「虎ファミリー」っていうな」
 「へぇ」

 「俺の親友だ。だからこいつらもべらぼうに強い」
 「なるほどな」

 「一度お前も会ってるぞ?」
 「なんだって!」
 「一番最初にお前の屋敷に突っ込んだ時だ」
 「あのバケモノかよ!!」

 聖は大笑いした。

 「納得したか?」
 「ああ、あいつなら分かるぜ」

 四人は店を出た。
 ジャンニーニは黒のベンツに乗り込んだ。

 「じゃあな、チビ共、楽しかったぜ」
 「お元気で」
 「お前らが来なきゃな」
 「「「アハハハハ!」」」
 「またこっちへ来たら遊びに来い。飯くらい喰わせてやる」
 「弾の方を喰らいたいですけどね」
 「勘弁しろ」

 ジャンニーニは笑って去った。



 リムジンの中で、聖が屁をした。
 三人が聖に殴りかかる。
 防がれるのが分かっての攻撃だ。
 聖は全部、防御せずに受けた。

 「「「え?」」」

 笑っていた。

 「お前ら、強くなったな」
 「「「!」」」

 アンジーがあまりの悪臭に、窓を開けた。 



 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■



 9時ごろにロックハートの屋敷に帰ると、皇紀が食事をしていた。
 香草焼きのチキンローストと、シチューだった。
 量は普通だ。
 静江とレイも一緒に食べている。
 亜紀たちもテーブルにつき、シチューだけ頂いた。

 「セイントのお食事は如何でした?」
 「ハイ! とても美味しいステーキでした」
 亜紀が店の名前を言うと、レイも納得した。

 「それで、何キロほど?」
 「一人10キロですかね?」
 「「アハハハハハ!」」
 静江とレイが大笑いした。
 亜紀と双子も笑っている。

 食事が終わり、みんなでコーヒーを飲んだ。

 「みなさんのお陰で、皇紀さんのシステム「クロノス」が整いました。ありがとうございました」
 静江が言った。

 「いいえ、私と双子はただ遊んでいただけで」
 「あなた方は皇紀さんの護衛です。つつがなく終われたのは、あなたがたのお陰ですよ」
 「でも、毎日ここを離れて」
 「何かあれば駆けつける距離です。それに、またみんなを守るために訓練されていたのでしょ?」
 「それはそうですが」

 「明日はお帰りになってしまう。私はそれが残念です」
 「静江さん……」
 「また遊びに来て下さいね」
 「「「「はい!」」」」

 「じゃあ、みんなで最後のお風呂をいただこうか!」
 「「そうだね!」」

 「さあ、皇紀、行くよ!」
 「えぇ、僕は後でいいよ!」
 「何言ってんの! 四人兄弟全員で入らなきゃ!」
 「いいよ!」

 皇紀は亜紀たちに無理矢理連れて行かれた。
 ルーがみんなの着替えを持って来た。

 「あんた溜まってるでしょ! あたしたちで白いの出してあげる!」
 「やめてよぉー!

 洗い場で皇紀はみんなで洗われた。
 双子がオチンチンを洗うと、大きくなった。
 皇紀が泣き出したので、そこまでにした。

 四人で湯船に浸かって、『人生劇場』を歌った。


 脱衣所で、レイが声を殺して笑っていた。
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