642 / 2,840
I ♡ NY Ⅷ
しおりを挟む
「レイさん、明日はいよいよ「アダマス」のセッティングです。24時間かかる予定です」
「分かりました。ご無理をなさらないように」
「アハハハハ。でもこれは頑張らないと。始めると途中で止められないものですから」
「そうですか」
「作業中は、誰も近づけないで下さい。全部僕がやりますので」
「かしこまりました。責任をもって」
「レイさんは、ちゃんと休んで下さいね」
「あの、お食事はどうなさいますか?」
「多分、作業中は無理ですね」
「では、終えられたら是非」
「お願いします」
皇紀は早めに寝た。
朝の5時。
「じゃあ、始めるか!」
皇紀はヘッドマウントディスプレイを装着し、コンソールに向かった。
次々にパスワード入力が求められ、皇紀はそのたびにキーボードを打ち、その他の機械を操作する。
認証終了まで1時間を要する。
作業工程が変わるたびに、新たな認証が10分ほどかかる。
一定の休止時間があると、システムはクリアされてしまうため、続けていくしかない。
皇紀は作業に没頭していた。
「亜紀ちゃん、大丈夫?」
「うん。ハーも大丈夫?」
「平気だよ!」
「ルーは?」
「あたしたちは全然平気だけど。亜紀ちゃん、歩くのヘンだよ?」
「うーん、実は大丈夫じゃない。アハハハ」
聖のマンションへ向かう途中。
何とか起き上がってはみたが、亜紀は全身の痛みとだるさを感じていた。
特に右半身の痛みが酷い。
聖の部屋を呼ぶ。
「あ、お前らか! 先に行ってろ! 今アンジーの尻に初めて入れてるんだ! ウォーー! ギュインギュインだぜぇ!」
「「「……」」」
「しょうがない、先に行くか」
「タクシー?」
「うーん、でもどうやって場所を説明していいか」
「ああ、あの会社って公表してないんだよね」
「敵が多いからなんだよね」
「あ!」
「何か思いついたの、亜紀ちゃん?」
「ジャンニーニにやらせよう」
「「そうか!」」
三人は、ニューヨークのマフィア、ジャンニーニの屋敷へ向かった。
「「「はろー」」」
門番が、門扉がなく口を開けているだけの門の前で愕然とした。
「お前ら……」
「おい、車を出せ」
「な、なんだと?」
「もたもたしてると、タマ潰すぞ!」
「ヒィ!」
男は庭の中に三人を案内した。
駐車場に、何人か立っている。
「おい、どうし……お前ら!」
「亜紀ちゃん、あのベンツにしよ?」
「うん、そうだね」
「あのベンツを転がせ!」
「てめぇ、何言ってやがる!」
「いきるな、三下ぁ! 目玉えぐってキンタマぶっこむぞ?」
「おい、やめてくれ」
「さっさとしろ!」
男はベンツに乗り込み、エンジンをかけた。
「セイントの会社って分かるな?」
「は、はい」
「よし、行け」
「はい!」
三人は後ろの座席で運転席を蹴り、遅いだのハゲだのと罵った。
男は途中から涙を流しながら運転した。
聖の会社に着いた。
「よし、降りろ」
「はい!」
「パンツを降ろせ」
「はい?」
「早くしろ」
「はい!」
男は下を脱いだ。
股間のものは縮み上がっていた。
「「「ギャハハハハハ!」」」
「よし、帰れ!」
「はい!」
ズボンを上げようとする男に、そのまま帰れと言った。
男はズボンを抱えて、慌てて帰った。
「「「ギャハハハハハ!」」」
悪魔のような三人だった。
「あースッキリした!」
三人は受付に行き、聖が後から来るので先に始めると伝えた。
「分かりました。入り口は開けておきます」
訓練場に向かった。
中に入る。
「何やってようか?」
「ルーと私でやる?」
「そうだね。亜紀ちゃんは寝てなよ」
「いや、私と二人でやろう」
「大丈夫?」
「うん。休みに来たんじゃないもん」
「そっかー」
しばらくすると、聖が来た。
「あれ? ブサ、動いてんの?」
「え、はい」
「お前、あれ喰らって無理に動いたら、手足動かなくなっぞ?」
「え!」
「俺もトラに喰らった時さ、動くと痛むから寝てたのな。無理すると神経が死ぬって言われた」
「エェッー!」
「息もぜぇぜぇいってさ。でもあいつ優しいんだぜ。引っ掛けた女の所に遊びに行っちゃったけどさ。たまに帰って来て水置いてくれんの。また出てっちゃうけどな」
「……」
「俺、トイレにも行けなくってさ。漏らしてるの見て、あいつペットボトル置いてってくれたんだよ」
「……」
「ブサも無理すんなって」
「タカさん、そんな聖さんを看病してなかったんですね」
亜紀が呟いた。
「え、何か言ったか?」
「そんなこと、最初に言え!」
「いやお前、普通動かないだろ、そんな痛みじゃ」
「私、頑張ったのに!」
「お前ってバカなの?」
「……」
亜紀は休んだ。
「メシ喰ったらゆっくりとな。取っ掛かりと順番を教えてやんよ」
「お願いします」
双子がボコボコにされている。
でも、離れて見ていると、その動きの善し悪しがよく見えた。
亜紀は、客観視する視点を学んだ。
みんなで食事を食べた。
亜紀も大分動けるようになり、旺盛に食べた。
「じゃあ、取っ掛かりな。相手の目線を見て、こうやって視線誘導だ」
「はい」
「その後で、視界の外から。鍵突きかフックな。回し蹴りはやめとけ。動作が大き過ぎる」
「はい」
聖は亜紀に動きを教えた。
夕方になり、三人はヘトヘトになって聖に送られた。
「おい、明日は休日な」
「そうなんですか」
「どっか行きたいとこあるか?」
「いえ、別に」
「そうか、じゃあ自由時間な。でも夕食を一緒に喰おう」
「え?」
「6時にうちに来い。美味いものを喰わせてやる」
「ありがとうございます」
「罠?」
「また何かやんの?」
「ばかやろー! 頑張ったお前らに褒美だ!」
三人は笑い、楽しみだと言った。
ロックハートの屋敷に戻ると、レイが「皇紀システム」の完成が近いと言った。
「今、皇紀さんが最後の調整をしています。明日の朝には完成の予定です」
「そうですか。レイさん、ありがとうございます」
「私なんて。私たちこそ、ありがとうですよ」
「ウフフフ」
皇紀の分まで三人で大いに食べた。
皿を洗い、厨房を掃除し、玄関から幾つかの部屋の掃除をした。
広すぎて、一部しか出来なかった。
三人で風呂に入っていると、レイと何人かの使用人が入って来た。
「お背中を流します」
レイたちが笑顔で言った。
亜紀たちは喜んで洗ってもらった。
亜紀は庭に出た。
風が冷たい。
皇紀が作業しているであろう建物の灯を見た。
レイが近づいてはいけないと言っていた。
ふと、「オシッコはどうしているんだろう」と、聖の話で思い出した。
「ウフフフ」
亜紀は建物に向かって、小さな声で応援した。
「皇紀、ガンバレ!」
「分かりました。ご無理をなさらないように」
「アハハハハ。でもこれは頑張らないと。始めると途中で止められないものですから」
「そうですか」
「作業中は、誰も近づけないで下さい。全部僕がやりますので」
「かしこまりました。責任をもって」
「レイさんは、ちゃんと休んで下さいね」
「あの、お食事はどうなさいますか?」
「多分、作業中は無理ですね」
「では、終えられたら是非」
「お願いします」
皇紀は早めに寝た。
朝の5時。
「じゃあ、始めるか!」
皇紀はヘッドマウントディスプレイを装着し、コンソールに向かった。
次々にパスワード入力が求められ、皇紀はそのたびにキーボードを打ち、その他の機械を操作する。
認証終了まで1時間を要する。
作業工程が変わるたびに、新たな認証が10分ほどかかる。
一定の休止時間があると、システムはクリアされてしまうため、続けていくしかない。
皇紀は作業に没頭していた。
「亜紀ちゃん、大丈夫?」
「うん。ハーも大丈夫?」
「平気だよ!」
「ルーは?」
「あたしたちは全然平気だけど。亜紀ちゃん、歩くのヘンだよ?」
「うーん、実は大丈夫じゃない。アハハハ」
聖のマンションへ向かう途中。
何とか起き上がってはみたが、亜紀は全身の痛みとだるさを感じていた。
特に右半身の痛みが酷い。
聖の部屋を呼ぶ。
「あ、お前らか! 先に行ってろ! 今アンジーの尻に初めて入れてるんだ! ウォーー! ギュインギュインだぜぇ!」
「「「……」」」
「しょうがない、先に行くか」
「タクシー?」
「うーん、でもどうやって場所を説明していいか」
「ああ、あの会社って公表してないんだよね」
「敵が多いからなんだよね」
「あ!」
「何か思いついたの、亜紀ちゃん?」
「ジャンニーニにやらせよう」
「「そうか!」」
三人は、ニューヨークのマフィア、ジャンニーニの屋敷へ向かった。
「「「はろー」」」
門番が、門扉がなく口を開けているだけの門の前で愕然とした。
「お前ら……」
「おい、車を出せ」
「な、なんだと?」
「もたもたしてると、タマ潰すぞ!」
「ヒィ!」
男は庭の中に三人を案内した。
駐車場に、何人か立っている。
「おい、どうし……お前ら!」
「亜紀ちゃん、あのベンツにしよ?」
「うん、そうだね」
「あのベンツを転がせ!」
「てめぇ、何言ってやがる!」
「いきるな、三下ぁ! 目玉えぐってキンタマぶっこむぞ?」
「おい、やめてくれ」
「さっさとしろ!」
男はベンツに乗り込み、エンジンをかけた。
「セイントの会社って分かるな?」
「は、はい」
「よし、行け」
「はい!」
三人は後ろの座席で運転席を蹴り、遅いだのハゲだのと罵った。
男は途中から涙を流しながら運転した。
聖の会社に着いた。
「よし、降りろ」
「はい!」
「パンツを降ろせ」
「はい?」
「早くしろ」
「はい!」
男は下を脱いだ。
股間のものは縮み上がっていた。
「「「ギャハハハハハ!」」」
「よし、帰れ!」
「はい!」
ズボンを上げようとする男に、そのまま帰れと言った。
男はズボンを抱えて、慌てて帰った。
「「「ギャハハハハハ!」」」
悪魔のような三人だった。
「あースッキリした!」
三人は受付に行き、聖が後から来るので先に始めると伝えた。
「分かりました。入り口は開けておきます」
訓練場に向かった。
中に入る。
「何やってようか?」
「ルーと私でやる?」
「そうだね。亜紀ちゃんは寝てなよ」
「いや、私と二人でやろう」
「大丈夫?」
「うん。休みに来たんじゃないもん」
「そっかー」
しばらくすると、聖が来た。
「あれ? ブサ、動いてんの?」
「え、はい」
「お前、あれ喰らって無理に動いたら、手足動かなくなっぞ?」
「え!」
「俺もトラに喰らった時さ、動くと痛むから寝てたのな。無理すると神経が死ぬって言われた」
「エェッー!」
「息もぜぇぜぇいってさ。でもあいつ優しいんだぜ。引っ掛けた女の所に遊びに行っちゃったけどさ。たまに帰って来て水置いてくれんの。また出てっちゃうけどな」
「……」
「俺、トイレにも行けなくってさ。漏らしてるの見て、あいつペットボトル置いてってくれたんだよ」
「……」
「ブサも無理すんなって」
「タカさん、そんな聖さんを看病してなかったんですね」
亜紀が呟いた。
「え、何か言ったか?」
「そんなこと、最初に言え!」
「いやお前、普通動かないだろ、そんな痛みじゃ」
「私、頑張ったのに!」
「お前ってバカなの?」
「……」
亜紀は休んだ。
「メシ喰ったらゆっくりとな。取っ掛かりと順番を教えてやんよ」
「お願いします」
双子がボコボコにされている。
でも、離れて見ていると、その動きの善し悪しがよく見えた。
亜紀は、客観視する視点を学んだ。
みんなで食事を食べた。
亜紀も大分動けるようになり、旺盛に食べた。
「じゃあ、取っ掛かりな。相手の目線を見て、こうやって視線誘導だ」
「はい」
「その後で、視界の外から。鍵突きかフックな。回し蹴りはやめとけ。動作が大き過ぎる」
「はい」
聖は亜紀に動きを教えた。
夕方になり、三人はヘトヘトになって聖に送られた。
「おい、明日は休日な」
「そうなんですか」
「どっか行きたいとこあるか?」
「いえ、別に」
「そうか、じゃあ自由時間な。でも夕食を一緒に喰おう」
「え?」
「6時にうちに来い。美味いものを喰わせてやる」
「ありがとうございます」
「罠?」
「また何かやんの?」
「ばかやろー! 頑張ったお前らに褒美だ!」
三人は笑い、楽しみだと言った。
ロックハートの屋敷に戻ると、レイが「皇紀システム」の完成が近いと言った。
「今、皇紀さんが最後の調整をしています。明日の朝には完成の予定です」
「そうですか。レイさん、ありがとうございます」
「私なんて。私たちこそ、ありがとうですよ」
「ウフフフ」
皇紀の分まで三人で大いに食べた。
皿を洗い、厨房を掃除し、玄関から幾つかの部屋の掃除をした。
広すぎて、一部しか出来なかった。
三人で風呂に入っていると、レイと何人かの使用人が入って来た。
「お背中を流します」
レイたちが笑顔で言った。
亜紀たちは喜んで洗ってもらった。
亜紀は庭に出た。
風が冷たい。
皇紀が作業しているであろう建物の灯を見た。
レイが近づいてはいけないと言っていた。
ふと、「オシッコはどうしているんだろう」と、聖の話で思い出した。
「ウフフフ」
亜紀は建物に向かって、小さな声で応援した。
「皇紀、ガンバレ!」
0
お気に入りに追加
228
あなたにおすすめの小説
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
NPO法人マヨヒガ! ~CGモデラーって難しいんですか?~
みつまめ つぼみ
キャラ文芸
ハードワークと職業適性不一致に悩み、毎日をつらく感じている香澄(かすみ)。
彼女は帰り道、不思議な喫茶店を見つけて足を踏み入れる。
そこで出会った青年マスター晴臣(はるおみ)は、なんと『ぬらりひょん』!
彼は香澄を『マヨヒガ』へと誘い、彼女の保護を約束する。
離職した香澄は、新しいステージである『3DCGモデラー』で才能を開花させる。
香澄の手が、デジタル空間でキャラクターに命を吹き込む――。
双葉病院小児病棟
moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。
病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。
この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。
すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。
メンタル面のケアも大事になってくる。
当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。
親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。
【集中して治療をして早く治す】
それがこの病院のモットーです。
※この物語はフィクションです。
実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
人形の中の人の憂鬱
ジャン・幸田
キャラ文芸
等身大人形が動く時、中の人がいるはずだ! でも、いないとされる。いうだけ野暮であるから。そんな中の人に関するオムニバス物語である。
【アルバイト】昭和時代末期、それほど知られていなかった美少女着ぐるみヒロインショーをめぐる物語。
【少女人形店員】父親の思い付きで着ぐるみ美少女マスクを着けて営業させられる少女の運命は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる