625 / 2,840
お誕生日会
しおりを挟む
11月最後の土曜日。
俺は「お誕生日会」を開いた。
本当は10月の双子の誕生日に合わせようとしていたのだが、いろいろあって延期していた。
去年と同じく、俺がステーキを大量に焼き、予約していたケーキを届けてもらい、みんなで騒いだ。
発案者の栞、それに響子と六花、鷹を呼んでいる。
みんなに俺が作らせた、「石神一家」のトレーナーを渡す。
Tシャツもだ。
ロボには、革製の首輪に「石神一家」が入っている。
嫌がるかと思ったが、気に入ってくれたようだ。
ロボの首輪には、その瞳と同じアクアマリンの大粒の石が入っている。
料理を食べ、歌を歌い、ゲームをした。
オセロでは響子と俺が圧勝で、俺と響子の勝負で、俺が勝った。
「石神くんって、大人げないよね」
「アハハハハ!」
「ジェンガ」をやった。
積み上げた積み木を抜いていくゲームだ。
それでも俺が最強だった。
「栞ちゃん、がんばって!」
ルーが応援する。
「ロボ、やれ!」
ロボがそっと引き抜こうとする栞の手をペシペシと叩く。
「ロボ、やめてよー!」
栞が崩した。
次の勝負。
俺が抜く。
「ロボ! やって!」
栞が言う。
ロボは動かない。
亜紀ちゃんの番だ。
「ロボ、やれ!」
亜紀ちゃんの手をペシペシやる。
鷹の番だ。
「ロボ、舐めてやれ」
ロボがペロペロする。
カワイイ。
ルーの番だ。
「ロボ、思い切りやれ」
ロボが腕に体当たりする。
全壊した。
「タカさん、ずるいよ!」
「お前らもロボにやってもらえよ」
「タカさんの言うことしか聞かないじゃん!」
「ガハハハハ!」
「にゃー」
負けるたびに墨で顔に何か描いた。
栞は極太の眉を。
六花はオチンチンを。
喜んだ。
鷹は毛の生えたホクロを。
響子は口の周りを黒く。
子どもたちは額に「肉」を。
「よし! 散歩に行くぞ!」
俺たちは近所のタイ焼き屋へ行った。
一人一人、好きなタイ焼きを注文する。
店の人が爆笑だった。
みんなで食べながら帰った。
家に入って、亜紀ちゃんが「石神家拡張計画」を発表した。
模造紙をテーブルに拡げる。
既にある俺の家が書いてあり、周囲の拡張予定地が実線で示してある。
住宅地図から写し取ったものだ。
防衛システムなども、既に決定事項として書き込んであった。
子どもたち以外は知らないので、亜紀ちゃんの説明で栞たちが驚いていた。
「すでに、みなさんは引っ越されています。まだまだ時間の余裕があるので、案のある方はおっしゃって下さい」
「虎の家!」
響子だ。
「それは将来の俺と響子の家だろう」
「そっか!」
「石神先生と私のS……」
「却下だ!」
とんでもねぇことを言いかけた。
「タカさん、ガラスの屋上はどうします?」
「ああ、あれ!」
みんなが喜ぶ。
俺は図面に線を引いた。
空中に伸びる十字だ。
「「「「「「「「ワァーーー!!」」」」」」」」
「うちの三階部分から伸びて、後ろの建物に通じる。左右は建物に通じてもいいし、ただ支柱か鉄筋の構造体で支えてもいいな」
「スゴイですよ、タカさん!」
亜紀ちゃんが興奮する。
「これなら道路からも見えないしな。まあ、どうせ景色は楽しめないんだ。うちの土地の中で完結した方がいいだろう」
みんなが喜んだ。
亜紀ちゃんが大浴場が欲しいと言い、皇紀が男湯が欲しいと言うのを蹴とばして黙らせた。
鷹が竹林の中の茶室のような空間が欲しいと言った。
「いいな、それ! ガラス張りにしたらどうだ?」
「いいですね!」
「ガレージも拡張しましょうよ!」
亜紀ちゃんが言った。
「そうだな。いずれお前らの車も入るかもしれないしな」
双子はベンチが欲しいと言い、皇紀はシロツメクサとコスモスの花壇が欲しいと言った。
「高い塔なんてどう?」
栞が言う。
悪くはないが、敷地的に難しそうだ。
日照権の問題は、区画全体がうちのものになるので問題はないが。
俺たちは意見を出し合い、俺が簡単に図面に描いた。
「じゃあ、顕さんにちょっと見てもらおうか」
みんなが賛成してくれた。
大分話し込んで、夕飯の時間になっていた。
「じゃあ、今日はここまでな。何か思いついたら、俺に言ってくれ」
今日は出前をとることにした。
昼に散々肉を食べたので、蕎麦屋に注文した。
8万円払った。
どういうことか分からない。
夕飯を食べ、みんな帰って行った。
風呂に入り、亜紀ちゃんと飲んだ。
「タカさん、新しい家、楽しみですね」
「そうだな。しばらく工事でうるさくなるけどな」
「いいですよ。でも、早くガラスの空間が見たいです」
「お前ら、入り浸りそうだよな」
「えー! タカさんがいないとダメですよ」
「俺が毎回話をするのかよ」
「そうですよ?」
俺は笑った。
「あの、タカさん」
「なんだ?」
「響子ちゃんの部屋というのは」
「無理だな」
「前に、ICUとかCTとかの装置が必要だって言ってましたけど、今なら」
「それを扱う人間はどうする?」
「あ!」
「俺がいつもいるわけじゃない。対応できないんだよ」
「そうですか」
「響子も真っ先に言いたかっただろう。「虎の家」じゃなくてな」
「はい」
「あれでも我慢してたんだ。「俺と響子の家」というのは、だから幻想なんだよ」
「分かりました」
「もちろん、今双子の金を使えば解決する問題だ。でもな、あいつはそんな負担を俺たちにして欲しくはないんだ。病院の中に俺たちが住むんだしな」
「そうですね」
「それにな。これは契約もある」
「どういうことですか?」
「うちの病院で引き受ける、というものだ。アメリカ大使館からも近いしな。何かあれば大使館から人間が飛んでくるんだよ」
「そうだったんですか!」
「ああ。だから本当はうちに遊びに来るとかってダメなんだ。最初はともかく、後に響子がうちに来るときは、いろいろ手続きが大変だったんだよ」
「知りませんでした」
「もちろん、今じゃ俺がアビゲイルに電話一本で済むけどな。やったことはないけど、六花でも大丈夫だ。ああ、そういえば一度銀座に連れ出したな!」
「アハハハハ!」
「六花も絶大な信頼を寄せられているからな」
「最愛の人が傍にいられないなんて、残念ですね」
「何を言ってる。俺の最愛は亜紀ちゃんだぞ?」
「あ! オッパイ狙いですか!」
「アハハハハ!」
亜紀ちゃんが「ほれほれ」とオッパイを差し出す。
「まあ、みんな最愛なんだけどよ。俺はハーレムを作りたいわけじゃないからな」
「ほんとですか?」
「お前たちが一緒にいてくれるだけでな。ああ、いずれは外に行くことも分かってるよ」
「私はずっといますよ」
「そうかよ」
俺には先のことは分からない。
でも、亜紀ちゃんがそう言ってくれるのは、確かに嬉しい。
俺は「お誕生日会」を開いた。
本当は10月の双子の誕生日に合わせようとしていたのだが、いろいろあって延期していた。
去年と同じく、俺がステーキを大量に焼き、予約していたケーキを届けてもらい、みんなで騒いだ。
発案者の栞、それに響子と六花、鷹を呼んでいる。
みんなに俺が作らせた、「石神一家」のトレーナーを渡す。
Tシャツもだ。
ロボには、革製の首輪に「石神一家」が入っている。
嫌がるかと思ったが、気に入ってくれたようだ。
ロボの首輪には、その瞳と同じアクアマリンの大粒の石が入っている。
料理を食べ、歌を歌い、ゲームをした。
オセロでは響子と俺が圧勝で、俺と響子の勝負で、俺が勝った。
「石神くんって、大人げないよね」
「アハハハハ!」
「ジェンガ」をやった。
積み上げた積み木を抜いていくゲームだ。
それでも俺が最強だった。
「栞ちゃん、がんばって!」
ルーが応援する。
「ロボ、やれ!」
ロボがそっと引き抜こうとする栞の手をペシペシと叩く。
「ロボ、やめてよー!」
栞が崩した。
次の勝負。
俺が抜く。
「ロボ! やって!」
栞が言う。
ロボは動かない。
亜紀ちゃんの番だ。
「ロボ、やれ!」
亜紀ちゃんの手をペシペシやる。
鷹の番だ。
「ロボ、舐めてやれ」
ロボがペロペロする。
カワイイ。
ルーの番だ。
「ロボ、思い切りやれ」
ロボが腕に体当たりする。
全壊した。
「タカさん、ずるいよ!」
「お前らもロボにやってもらえよ」
「タカさんの言うことしか聞かないじゃん!」
「ガハハハハ!」
「にゃー」
負けるたびに墨で顔に何か描いた。
栞は極太の眉を。
六花はオチンチンを。
喜んだ。
鷹は毛の生えたホクロを。
響子は口の周りを黒く。
子どもたちは額に「肉」を。
「よし! 散歩に行くぞ!」
俺たちは近所のタイ焼き屋へ行った。
一人一人、好きなタイ焼きを注文する。
店の人が爆笑だった。
みんなで食べながら帰った。
家に入って、亜紀ちゃんが「石神家拡張計画」を発表した。
模造紙をテーブルに拡げる。
既にある俺の家が書いてあり、周囲の拡張予定地が実線で示してある。
住宅地図から写し取ったものだ。
防衛システムなども、既に決定事項として書き込んであった。
子どもたち以外は知らないので、亜紀ちゃんの説明で栞たちが驚いていた。
「すでに、みなさんは引っ越されています。まだまだ時間の余裕があるので、案のある方はおっしゃって下さい」
「虎の家!」
響子だ。
「それは将来の俺と響子の家だろう」
「そっか!」
「石神先生と私のS……」
「却下だ!」
とんでもねぇことを言いかけた。
「タカさん、ガラスの屋上はどうします?」
「ああ、あれ!」
みんなが喜ぶ。
俺は図面に線を引いた。
空中に伸びる十字だ。
「「「「「「「「ワァーーー!!」」」」」」」」
「うちの三階部分から伸びて、後ろの建物に通じる。左右は建物に通じてもいいし、ただ支柱か鉄筋の構造体で支えてもいいな」
「スゴイですよ、タカさん!」
亜紀ちゃんが興奮する。
「これなら道路からも見えないしな。まあ、どうせ景色は楽しめないんだ。うちの土地の中で完結した方がいいだろう」
みんなが喜んだ。
亜紀ちゃんが大浴場が欲しいと言い、皇紀が男湯が欲しいと言うのを蹴とばして黙らせた。
鷹が竹林の中の茶室のような空間が欲しいと言った。
「いいな、それ! ガラス張りにしたらどうだ?」
「いいですね!」
「ガレージも拡張しましょうよ!」
亜紀ちゃんが言った。
「そうだな。いずれお前らの車も入るかもしれないしな」
双子はベンチが欲しいと言い、皇紀はシロツメクサとコスモスの花壇が欲しいと言った。
「高い塔なんてどう?」
栞が言う。
悪くはないが、敷地的に難しそうだ。
日照権の問題は、区画全体がうちのものになるので問題はないが。
俺たちは意見を出し合い、俺が簡単に図面に描いた。
「じゃあ、顕さんにちょっと見てもらおうか」
みんなが賛成してくれた。
大分話し込んで、夕飯の時間になっていた。
「じゃあ、今日はここまでな。何か思いついたら、俺に言ってくれ」
今日は出前をとることにした。
昼に散々肉を食べたので、蕎麦屋に注文した。
8万円払った。
どういうことか分からない。
夕飯を食べ、みんな帰って行った。
風呂に入り、亜紀ちゃんと飲んだ。
「タカさん、新しい家、楽しみですね」
「そうだな。しばらく工事でうるさくなるけどな」
「いいですよ。でも、早くガラスの空間が見たいです」
「お前ら、入り浸りそうだよな」
「えー! タカさんがいないとダメですよ」
「俺が毎回話をするのかよ」
「そうですよ?」
俺は笑った。
「あの、タカさん」
「なんだ?」
「響子ちゃんの部屋というのは」
「無理だな」
「前に、ICUとかCTとかの装置が必要だって言ってましたけど、今なら」
「それを扱う人間はどうする?」
「あ!」
「俺がいつもいるわけじゃない。対応できないんだよ」
「そうですか」
「響子も真っ先に言いたかっただろう。「虎の家」じゃなくてな」
「はい」
「あれでも我慢してたんだ。「俺と響子の家」というのは、だから幻想なんだよ」
「分かりました」
「もちろん、今双子の金を使えば解決する問題だ。でもな、あいつはそんな負担を俺たちにして欲しくはないんだ。病院の中に俺たちが住むんだしな」
「そうですね」
「それにな。これは契約もある」
「どういうことですか?」
「うちの病院で引き受ける、というものだ。アメリカ大使館からも近いしな。何かあれば大使館から人間が飛んでくるんだよ」
「そうだったんですか!」
「ああ。だから本当はうちに遊びに来るとかってダメなんだ。最初はともかく、後に響子がうちに来るときは、いろいろ手続きが大変だったんだよ」
「知りませんでした」
「もちろん、今じゃ俺がアビゲイルに電話一本で済むけどな。やったことはないけど、六花でも大丈夫だ。ああ、そういえば一度銀座に連れ出したな!」
「アハハハハ!」
「六花も絶大な信頼を寄せられているからな」
「最愛の人が傍にいられないなんて、残念ですね」
「何を言ってる。俺の最愛は亜紀ちゃんだぞ?」
「あ! オッパイ狙いですか!」
「アハハハハ!」
亜紀ちゃんが「ほれほれ」とオッパイを差し出す。
「まあ、みんな最愛なんだけどよ。俺はハーレムを作りたいわけじゃないからな」
「ほんとですか?」
「お前たちが一緒にいてくれるだけでな。ああ、いずれは外に行くことも分かってるよ」
「私はずっといますよ」
「そうかよ」
俺には先のことは分からない。
でも、亜紀ちゃんがそう言ってくれるのは、確かに嬉しい。
0
お気に入りに追加
228
あなたにおすすめの小説
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
NPO法人マヨヒガ! ~CGモデラーって難しいんですか?~
みつまめ つぼみ
キャラ文芸
ハードワークと職業適性不一致に悩み、毎日をつらく感じている香澄(かすみ)。
彼女は帰り道、不思議な喫茶店を見つけて足を踏み入れる。
そこで出会った青年マスター晴臣(はるおみ)は、なんと『ぬらりひょん』!
彼は香澄を『マヨヒガ』へと誘い、彼女の保護を約束する。
離職した香澄は、新しいステージである『3DCGモデラー』で才能を開花させる。
香澄の手が、デジタル空間でキャラクターに命を吹き込む――。
双葉病院小児病棟
moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。
病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。
この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。
すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。
メンタル面のケアも大事になってくる。
当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。
親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。
【集中して治療をして早く治す】
それがこの病院のモットーです。
※この物語はフィクションです。
実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
人形の中の人の憂鬱
ジャン・幸田
キャラ文芸
等身大人形が動く時、中の人がいるはずだ! でも、いないとされる。いうだけ野暮であるから。そんな中の人に関するオムニバス物語である。
【アルバイト】昭和時代末期、それほど知られていなかった美少女着ぐるみヒロインショーをめぐる物語。
【少女人形店員】父親の思い付きで着ぐるみ美少女マスクを着けて営業させられる少女の運命は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる