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お誕生日会

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 11月最後の土曜日。
 俺は「お誕生日会」を開いた。
 本当は10月の双子の誕生日に合わせようとしていたのだが、いろいろあって延期していた。
 去年と同じく、俺がステーキを大量に焼き、予約していたケーキを届けてもらい、みんなで騒いだ。
 発案者の栞、それに響子と六花、鷹を呼んでいる。

 みんなに俺が作らせた、「石神一家」のトレーナーを渡す。
 Tシャツもだ。
 ロボには、革製の首輪に「石神一家」が入っている。
 嫌がるかと思ったが、気に入ってくれたようだ。
 ロボの首輪には、その瞳と同じアクアマリンの大粒の石が入っている。

 料理を食べ、歌を歌い、ゲームをした。
 オセロでは響子と俺が圧勝で、俺と響子の勝負で、俺が勝った。
 
 「石神くんって、大人げないよね」
 「アハハハハ!」

 「ジェンガ」をやった。
 積み上げた積み木を抜いていくゲームだ。
 それでも俺が最強だった。

 「栞ちゃん、がんばって!」
 ルーが応援する。

 「ロボ、やれ!」
 ロボがそっと引き抜こうとする栞の手をペシペシと叩く。
 
 「ロボ、やめてよー!」
 栞が崩した。

 次の勝負。
 俺が抜く。

 「ロボ! やって!」
 栞が言う。
 ロボは動かない。

 亜紀ちゃんの番だ。
 
 「ロボ、やれ!」
 亜紀ちゃんの手をペシペシやる。

 鷹の番だ。

 「ロボ、舐めてやれ」
 ロボがペロペロする。
 カワイイ。

 ルーの番だ。
 
 「ロボ、思い切りやれ」
 ロボが腕に体当たりする。
 全壊した。

 「タカさん、ずるいよ!」
 「お前らもロボにやってもらえよ」
 「タカさんの言うことしか聞かないじゃん!」
 「ガハハハハ!」
 「にゃー」

 負けるたびに墨で顔に何か描いた。

 栞は極太の眉を。
 六花はオチンチンを。
 喜んだ。
 鷹は毛の生えたホクロを。
 響子は口の周りを黒く。
 子どもたちは額に「肉」を。

 「よし! 散歩に行くぞ!」
 俺たちは近所のタイ焼き屋へ行った。
 一人一人、好きなタイ焼きを注文する。
 店の人が爆笑だった。

 みんなで食べながら帰った。



 家に入って、亜紀ちゃんが「石神家拡張計画」を発表した。
 模造紙をテーブルに拡げる。
 既にある俺の家が書いてあり、周囲の拡張予定地が実線で示してある。
 住宅地図から写し取ったものだ。
 防衛システムなども、既に決定事項として書き込んであった。
 子どもたち以外は知らないので、亜紀ちゃんの説明で栞たちが驚いていた。

 「すでに、みなさんは引っ越されています。まだまだ時間の余裕があるので、案のある方はおっしゃって下さい」

 「虎の家!」
 響子だ。

 「それは将来の俺と響子の家だろう」
 「そっか!」

 「石神先生と私のS……」
 「却下だ!」
 とんでもねぇことを言いかけた。

 「タカさん、ガラスの屋上はどうします?」
 「ああ、あれ!」
 みんなが喜ぶ。
 俺は図面に線を引いた。
 空中に伸びる十字だ。

 「「「「「「「「ワァーーー!!」」」」」」」」

 「うちの三階部分から伸びて、後ろの建物に通じる。左右は建物に通じてもいいし、ただ支柱か鉄筋の構造体で支えてもいいな」
 「スゴイですよ、タカさん!」
 亜紀ちゃんが興奮する。

 「これなら道路からも見えないしな。まあ、どうせ景色は楽しめないんだ。うちの土地の中で完結した方がいいだろう」
 みんなが喜んだ。

 亜紀ちゃんが大浴場が欲しいと言い、皇紀が男湯が欲しいと言うのを蹴とばして黙らせた。
 鷹が竹林の中の茶室のような空間が欲しいと言った。

 「いいな、それ! ガラス張りにしたらどうだ?」
 「いいですね!」
 「ガレージも拡張しましょうよ!」
 亜紀ちゃんが言った。

 「そうだな。いずれお前らの車も入るかもしれないしな」
 双子はベンチが欲しいと言い、皇紀はシロツメクサとコスモスの花壇が欲しいと言った。

 「高い塔なんてどう?」
 栞が言う。
 悪くはないが、敷地的に難しそうだ。
 日照権の問題は、区画全体がうちのものになるので問題はないが。
 俺たちは意見を出し合い、俺が簡単に図面に描いた。

 「じゃあ、顕さんにちょっと見てもらおうか」
 みんなが賛成してくれた。


 大分話し込んで、夕飯の時間になっていた。

 「じゃあ、今日はここまでな。何か思いついたら、俺に言ってくれ」
 今日は出前をとることにした。
 昼に散々肉を食べたので、蕎麦屋に注文した。
 8万円払った。
 どういうことか分からない。




 夕飯を食べ、みんな帰って行った。
 風呂に入り、亜紀ちゃんと飲んだ。

 「タカさん、新しい家、楽しみですね」
 「そうだな。しばらく工事でうるさくなるけどな」
 「いいですよ。でも、早くガラスの空間が見たいです」
 「お前ら、入り浸りそうだよな」
 「えー! タカさんがいないとダメですよ」
 「俺が毎回話をするのかよ」
 「そうですよ?」
 俺は笑った。

 「あの、タカさん」
 「なんだ?」
 「響子ちゃんの部屋というのは」
 「無理だな」
 「前に、ICUとかCTとかの装置が必要だって言ってましたけど、今なら」
 「それを扱う人間はどうする?」
 「あ!」
 「俺がいつもいるわけじゃない。対応できないんだよ」
 「そうですか」

 「響子も真っ先に言いたかっただろう。「虎の家」じゃなくてな」
 「はい」
 「あれでも我慢してたんだ。「俺と響子の家」というのは、だから幻想なんだよ」
 「分かりました」

 「もちろん、今双子の金を使えば解決する問題だ。でもな、あいつはそんな負担を俺たちにして欲しくはないんだ。病院の中に俺たちが住むんだしな」
 「そうですね」

 「それにな。これは契約もある」
 「どういうことですか?」
 「うちの病院で引き受ける、というものだ。アメリカ大使館からも近いしな。何かあれば大使館から人間が飛んでくるんだよ」
 「そうだったんですか!」
 「ああ。だから本当はうちに遊びに来るとかってダメなんだ。最初はともかく、後に響子がうちに来るときは、いろいろ手続きが大変だったんだよ」
 「知りませんでした」

 「もちろん、今じゃ俺がアビゲイルに電話一本で済むけどな。やったことはないけど、六花でも大丈夫だ。ああ、そういえば一度銀座に連れ出したな!」
 「アハハハハ!」
 「六花も絶大な信頼を寄せられているからな」
 「最愛の人が傍にいられないなんて、残念ですね」
 「何を言ってる。俺の最愛は亜紀ちゃんだぞ?」
 
 「あ! オッパイ狙いですか!」
 「アハハハハ!」

 亜紀ちゃんが「ほれほれ」とオッパイを差し出す。

 「まあ、みんな最愛なんだけどよ。俺はハーレムを作りたいわけじゃないからな」
 「ほんとですか?」
 「お前たちが一緒にいてくれるだけでな。ああ、いずれは外に行くことも分かってるよ」
 「私はずっといますよ」

 「そうかよ」



 俺には先のことは分からない。
 でも、亜紀ちゃんがそう言ってくれるのは、確かに嬉しい。
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