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防衛システム輸送 Ⅲ

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 謎の巨獣に襲撃されたことを受け、護衛艦が「セブンスター」についていた。
 アーレイバーク級ミサイル巡洋艦3隻。
 インディペンデンス級フリゲート艦4隻。
 そしてハワイ基地から空母が向かっている。

 巨獣たちは時速500キロ近いスピードで、まず2隻のフリゲート艦に体当たりした。
 その間にミサイル巡洋艦、フリゲート艦から次々とSM2ミサイルが発射される。
 レーダー・ホーミングで誘導されるミサイルの半数が、巨獣の高速移動により回避された。
 弾着しても、ほぼダメージは与えられなかった。
 F15イーグルから対艦ミサイルが幾度も発射されるが、同様の結果だった。

 ミサイル巡洋艦が1隻バラバラに吹っ飛び、二頭の巨獣が左右から「セブンスター」に迫って来た。

 「ハー! 右舷を守って!」
 「うん!」
 双子が左右に分かれる。
 迷わず二人は「轟閃花」を放った。
 100メートル手前で突進は止まった。
 
 「ルー! ダメだ、無傷だ!」
 「でも、攻撃は止められる! ハー、やるしかない!」
 必死の形相でルーが叫ぶ。
 本来双子は連携しての攻撃に優れている。
 必殺技もある。
 しかし、それを読まれていた。
 二人が分かれて対処する戦略が、巨獣にはあった。
 何度か、二方向からの攻撃が続いた。
 巨獣たちは、双子の攻撃力を推し量っているようだった。



 4頭が四方向から迫って来る。
 
 「「舐めるなぁ!」」

 二人は両手から「轟閃花」を放った。

 「あと2分凌いで!」
 「レイ!」

 レイはマリーンたちを連れて、レールガンを引いて来た。
 ほぼ組み上がっている。
 ケーブルが後ろから伸びてくる。
 双子は思わぬ援軍に驚いた。
 レイがハーに駆け寄った。

 「石神さんが、巨大生物の襲撃の可能性を言ってたの。だから準備だけはしてたの!」
 「分かった! 急いで!」

 レイはマリーンたちに指示し、ケーブルを繋ぎセッティングに入った。
 皇紀が設計した自動照準システムと、量子コンピューターの予測シミュレーション・システムが起動する。

 5体の巨獣が迫って来る。
 ルーが2体、ハーが3体を迎撃する。
 しかし、ハーが狙った3体目は「轟閃花」を回避し、巨大な角から何かを撃って来る。

 「「槍雷」だ!」
 「みんな伏せてぇー!」

 甲板を電撃が襲い、吹き飛んだ破片が甲板上の人間に飛んで来た。
 レイの腹部に破片が突き刺さり、血しぶきを上げた。

 「レイ!」
 ハーが駆け寄る。

 「大丈夫! まだ動ける!」
 動ける傷ではなかった。
 反対側を向くと、ルーも頭部から血を流していた。
 立ってはいるが、フラついている。
 脳震盪だ。



 再び、五方向から電撃が来た。
 ハーは「闇月花」を展開し、遅れてルーも展開した。
 しかし一部の電撃が再び甲板に刺さり、激しく破片を撒き散らした。
 迫りくる破片をハーは感じた。
 回避できない。

 突然、ハーは抱き締められた。

 「レイ!」

 レイの右背に破片が突き刺さっている。
 ハーに向けた顔。
 その口から鮮血が溢れた。
 
 「ハーちゃん……」

 抱き締めていた力が抜け、レイは甲板に崩れた。

 「チックショォーーーー!」

 14頭の巨獣が「セブンスター」を囲んだ。

 「ハー! いよいよだぁ! 最終奥義だぁ! タカさんのために死ぬぞぉーーー!」
 「オォォォォーーー!」




 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■




 「タカさん! どこへ行くんですかぁ!」
 「決まってる! 双子を救いに行く!」
 「どうやってですか! 間に合いません!」

 「「飛ぶ」!」

 「何言ってんですか! あの「飛行」で長距離を飛んだら、タカさんはバラバラになっちゃいますよ」
 「それがどうしたぁ! 二人が危ないんだ!」
 皇紀が俺にしがみついてくる。

 「何の騒ぎなの!」

 階段を駆け上がって来る人間がいる。
 栞と鷹だった。

 「栞さん、鷹さん! タカさんを止めて下さい! ルーとハーを助けに「飛行」するってぇ!」
 「石神くん、無茶だよ!」
 「バカヤロー! そんなこと言ってる暇はねぇ!」
 栞と鷹も俺にしがみつく。
 二人とも「仁王花」を使い、俺を力づくで止めている。
 皇紀が離れた。
 キッチンに入る。
 出刃包丁を手にしている。

 「タカさん! 行くって言うなら僕は死にます!」
 「バカ! そんな場合じゃねぇ!」
 「タカさんを止められなかった不甲斐ない僕は、死んで詫びるしかない!」
 「やめろ!」

 皇紀が包丁を腹に思い切り突き立てた。
 寸前に鷹が止めてくれた。

 「石神くん!」
 栞に殴られた。
 リヴィングの端まで吹っ飛ぶ。
 皇紀に気を取られて、防御できなかった。
 頭がフラつく。

 「分かって! 皇紀くんは本当に死ぬ気よ!」

 俺は涙を流した。

 「皇紀、死ぬな!」
 「タカさん!」
 皇紀の白いシャツに血がにじんでいる。
 少し刃が入ったようだ。




 俺は椅子に座り、アビゲイルに電話した。
 皇紀は鷹によって処置されている。
 キッチンに常備している縫合具で縫われた。

 「それほどの傷ではありません!」
 処置されながら、皇紀が栞と鷹に状況を説明していた。
 アビゲイルが捕まった。
 
 「状況は分かるか!」
 「まだだ。ハワイ基地に連絡は入っているが、その後の状況はまだ分らん!」
 「頼む! 急いでくれ! 俺は何でもするから!」
 「タカトラ! それは私も同じ気持ちだ。もう少し待ってくれ。必ず知らせる」
 「頼むよ、アビゲイル!」

 俺たちは連絡を待った。
 それしか出来ることは無かった。

 俺は皇紀に土下座した。
 床に頭を叩きつけた。

 「皇紀! 許してくれ!」
 「タカさん! 血が出てますよ!」
 「俺が悪かった!」
 もう一度床に叩きつけた。

 「タカさん! もうやめてください!」
 「石神くん!」
 「石神先生!」
 また三人にしがみ付かれた。

 「赦してくれぇ!」
 「分かりました! タカさん! だからもう!」





 俺たちは不毛な叫びを上げるしかなかった。
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