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御堂が来る。

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 日曜日。
 俺は亜紀ちゃんと食事のメニューの打ち合わせをした。
 もちろん、御堂が来た時のためのものだ。

 「お前ら、いくら「おやつ」を喰ってもいいから、御堂がいる時の食事はまっとうな態度をみせろ」
 「でも、御堂さんの家で散々やっちゃってるじゃないですか」
 「あれは一時の気の迷いだ」
 「無理ですよー!」
 俺たちは激しく言い合った。

 「まあ、少しは落ち着いて食べてくれよ。せめて一般人の3倍までとか」
 「私たち、いつも落ち着いてますよ?」
 「じゃあ死んだふりをしろ」
 「何言ってんですか!」
 鍋はしない、皿盛の料理にする、ということで何とか話し合った。

 「ああ、いっそ外食にするかなぁ」
 「あ、いいですね!」
 「俺と御堂でな」
 「ずるいですぅー!」
 亜紀ちゃんが膨れる。

 「あ! あそこ行きましょうよ! 沼津!」
 「お、いいな!」
 「みんなでですよ!」
 「え?」
 「なんでなのって顔しないで下さい!」
 一食は決まった。
 土曜日にするか。

 「栞さんも誘いましょうよ」
 「?」
 「なんで不思議そうな顔するんですかぁ!」
 しょうがねぇ。

 「金曜日は俺がフレンチを作る」
 「やったぁー!」
 「金をやるから、お前らは好きなところで喰って来い」
 「絶対嫌です!」
 散々揉めた後で、なんとかメニューは決まった。

 「じゃあ沼津の寿司屋には俺が連絡するから。亜紀ちゃんは食材の手配を頼むな」
 「はい!」
 俺は双子を散歩に誘った。

 「御堂さん、来るね!」
 「御堂さん、楽しみだね!」
 双子は俺を乗せるのが上手い。

 「御堂さんと一緒にソフトクリームを食べたいね!」
 「一杯食べたいね!」
 俺は笑って、JR中野の駅前のソフトクリーム屋に行く。
 
 「根性入れます!」
 俺たちに気付き、いつもの店員が言った。
 俺たちは笑って、店員を褒め称えた。

 「おい、ここが日本一のソフトクリーム屋か?」
 「店員さんがイケメンなのもいいよね!」
 「とにかくソフトクリームの量がはんぱないって!」

 「おい、見ろよあの美しい動き! 腰が色っぽいよな!」
 「今度の全国ソフトクリーム大会の優勝候補だって!」
 「うちの亜紀ちゃんが結婚してって言ってた!」

 店員が笑って三つ作ってくれた。
 大盛りだ。
 俺は礼を言い、チップも渡した。

 「それで亜紀ちゃんってどんな人ですか?」
 「「世界最強!」」

 「?」




 三人でベンチで食べる。
 俺は御堂が来たらやりたいことを話していく。

 「まずはアヴェンタドールでのドライブだろ!」
 「「うんうん」」
 「それにドゥカティにも乗せてやりたいな」
 「「うんうん」」
 「お前たちは会ってるから、他の連中にも会わせたいしなぁ」
 「「うんうん」」
 「つまんねぇけど、丹沢の山も見せたいな。お前らの訓練とかもな」
 「「うんうん」」

 「あ! 別荘も見せたい!」
 「タカさん」
 ルーが言う。

 「それって、詰め込み過ぎじゃない?」
 「そうか?」
 「「そうだよ!」」
 俺たちは笑った。

 「いかんな。つい楽しくていろいろ連れ回しそうだ。スケジュールも考えなきゃな」
 「のんびりしてもらおうよ。御堂さんって、いつも忙しいんでしょ?」
 「そうだな」




 俺たちは手を繋いで公園に向かった。
 ベンチでまったりする。
 小さな子どもが両親に手を繋がれて歩いてくる。
 幸せそうな家族だ。
 子どもが両親を見て笑いながら歩いている。
 時々二人に手を引っ張られて足を浮かせて楽しんでいる。

 ルーとハーが、その「幸せ」をじっと見ていた。

 「おい! うちの子がいかに素晴らしいか、あのちんけな親子に見せてやるか」
 「「うん!」」
 二人が明るく笑い、俺を見た。
 俺はルーを空中に投げて、ルーは高難度の伸身三回ひねりで着地した。
 
 「10点!」
 俺が言うと、ルーがガッツポーズで笑った。
 親子が驚く。
 続いてハーを投げた。
 ハーは伸身五回転に挑戦した。

 脇の林に頭から突っ込み、地面に突き刺さった。
 足だけが地面から出ている。

 「キャーーーー!」

 母親が絶叫し、父親が電話で救急車を呼んだ。
 俺とルーは慌ててハーを掘り起こし、走って逃げた。
 三人で大笑いしながら走った。






 俺たちは帰って、泥だらけのハーを見て亜紀ちゃんが呆れた。
 三人で肩を組んで笑い、亜紀ちゃんが汚さないように入れと言った。
 双子と三人で風呂に入った。
 俺は二人の小さな背中ときれいな髪を洗ってやる。
 でかい声でみんなで『人生劇場』を歌うと、外で待っているロボも大声で鳴いた。

 風呂から上がり、午後は三人で『犬神家の一族』を観た。

 「そろそろ出るぞ」
 「ハーだ!」
 湖から飛び出ている足。
 三人で笑った。


 俺はロボと少し寝た。
 ロボがまた俺の右手にしがみつく。
 今日はもう出掛けるなということだ。

 「分かったよ、もう家にいるよ」
 ロボが小さく鳴いた。

 「おい、ロボ。もうすぐ御堂が来るぞ」
 ロボが嬉しそうに身を揺する。

 「そういえばお前は初めてだよな。ちゃんと紹介するからな」
 尻尾を揺する。

 「本当にいい奴なんだよ。俺なんかと友達になってくれてなぁ」
 「にゃー」
 「うん、歓迎しような。お前も頼むな」
 ロボは俺の腕にからまったまま、スヤスヤと寝た。




 「ああ、楽しみだなぁ」

 俺も笑いながら寝た。 
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