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忘れた。

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 木曜日。
 部下の斎藤が寝過ごして遅刻した。
 俺は朝からのオペで、それを知らなかった。
 他のナースから夕方に知らされ、激怒した。

 斎藤と大森を呼ぶ。

 「お前ら、なんで俺に報告しなかった!」
 「「申し訳ございません!」」
 二人は俺の部屋で正座している。

 「何故だと聞いている!」
 「斎藤が最近頑張ってて。毎日遅くまで練習や調べ物をしているのを知ってましたので」
 俺は説明する大森を殴った。

 「部長! 大森先輩は僕のために」
 斎藤を殴った。

 「俺が気付かなきゃ黙っていればいいと思ったか?」
 「はい、申し訳ありません」
 「俺がミスは許す人間だと知っているな?」
 「「はい!」」
 「でも、許さねぇことがある」
 「「はい!」」

 「一江!」

 一江が部屋へ飛び込んでくる。

 「はい!」
 「お前は知ってたのか?」
 「いいえ! 大森と斎藤がオペに取り掛かっているとばかり思っていました!」
 「じゃあ、他の部員も知らなかったんだな?」
 「はい! 20分の遅れだったそうで、オペが多少遅れた程度でしたので、誰も遅刻には」
 一江を殴る。

 「多少は遅れても構わないってかぁ!」
 「「「すみません!」」」
 俺は空いている病室で正座をさせた。
 大森と斎藤の二人だ。
 廊下から見えるので、一江にでかい段ボール箱を持って来させ、二人に被せた。

 響子を呼んで、箱に蹴りを入れさせる。
 「ウゴッ!」という声が聞こえ、響子がびっくりした。
 空いた穴から響子が恐る恐る中を覗くと、斎藤が唇を押さえていた。

 「やだー!」
 「やだよなー。早くシャワーを浴びてばい菌を流せ」
 「うん!」
 斎藤は笑って響子を見ているので、俺はガムテープで穴を塞いだ。
 俺は帰宅した。





 家で夕飯を食べ、ロボと遊んでいると、亜紀ちゃんが俺の着替えを持って来た。

 「さー!」

 俺は笑って一緒に風呂に入った。
 亜紀ちゃんの背中を髪を洗う。
 髪はちょっと伸びた。
 本気で伸ばすつもりらしい。
 俺の背中と髪を亜紀ちゃんが洗う。

 「タカさん、今日もハゲてないですよー」
 「そ、そうか!」
 ハゲになってもしばらくは黙っててくれと言った。
 お互いに前を洗う。

 「タカさんのオチンチンは、すっかり慣れましたね!」
 「お前なー」
 「御立派なのも分かりました!」
 「やめろ!」
 「女泣かせですもんね」
 「どこで覚えてくんだ?」

 まあ、俺のDVDとかだろうが。

 「俺のオチンチンはそれだけじゃ済まないぞ!」
 「そうなんですか?」
 俺は思いついて、オチンチンを握った。

 「虚チン花!」
 「ギャハハハハ!」

 振ると、湯船の表面がチャプンと小さな水柱を立てた。

 「お! なんか出たな!」
 「出ましたね!」
 やれば出来るもんだ。

 「おい、亜紀ちゃん。ちょっと湯船に入ってろ!」
 「はーい!」
 亜紀ちゃんが端に入る。

 「虚チン花!」
 「ギャハハハハ!」
 
 「あ! ちょっとピリッてしましたよ!」
 「ちゃんとプラズマもあるか!」
 「はい!」
 「これで俺のオチンチンは一段上がったな!」
 「はい!」

 《カイザー・オチンチンですよ》

 どこからか声が聞こえた気がする。

 「亜紀ちゃん、なんか聞こえなかったか?」
 「いーえ、別に?」
 「そうか」

 気のせいだったか。
 俺は亜紀ちゃんと湯船に浸かった。

 「スゴイですね、タカさん」
 「まーな!」
 俺がスゴイ物を湯船に出して揺らすと、やめろと言われた。

 



 二人で笑いながら風呂から上がり、リヴィングへ行った。
 「虚チン花」の祝いに酒でも飲もうと話して盛り上がっていた。

 「虚チン花!」
 「ギャハハハハ!」
 「アチャコでごじゃいましゅるー」
 「ギャハハハハ!」

 笑いながら歩いた。
 リヴィングから、皇紀と双子の楽しそうな笑い声が聞こえる。
 何かと思ったら、ロボがダンボール箱に突っ込んで遊んでいた。
 ロボは段ボール箱が大好きだ。
 その中で寝るのも好きだし、俺が天地を畳んで枠だけにすると、それに突っ込む遊びを覚えた。
 今もそれをやっている。

 離れてお尻を振り、箱を目指してダッシュする。
 前足を伸ばして頭から突っ込む。
 そのまま1メートルほど滑る。
 カワイイ。

 何度もそれを繰り返すのを、みんなで笑いながら眺めた。
 亜紀ちゃんがつまみを作り始める。

 「あれ?」

 俺は何かを忘れていることを思い出した。

 「ああ!」

 一江に電話した。

 「あ、部長!」
 「おう、お前今どこにいる?」
 「まだ病院で自分のデスクですけど」

 「あのよ」
 「部長! また忘れてたでしょう!」
 「な、なんのことだよ?」
 「大森と斎藤です!」
 「あ、ああ。そろそろ帰っていいと言ってくれ」
 「ほんとうに、もう!」

 前に一江にもやらせて忘れた。
 病院の玄関でやらせた。

 「また忘れるんじゃないかって思って待ってました!」
 「そ、そうか」
 「もう十時ですからね!」
 「まあ、もう十分だな」

 「私は翌朝でしたけどね!」
 「お前! 勝手に帰っただろう!」
 「部長が忘れちゃったからですよ!」
 「ごめん」

 俺は電話を切った。

 「タカさん、何か忘れちゃったんですか?」
 亜紀ちゃんが心配そうに聞いて来た。

 「ああ。大森と斎藤を正座させてたんだけどな」
 「え! いつからですか!」
 「夕方の5時ごろかな」
 「五時間!」
 「アハハハ」

 「「「「……」」」」





 翌日。
 俺は大森と斎藤を「ざくろ」に誘い、軽く説教して腹いっぱいに喰わせた。

 許せ。
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