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月光の下で、ワルツを。

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 土曜日の朝。
 俺たちはしばらくロボとじゃれた。
 9時くらいに起きて、遅めの朝食を作る。
 ご飯は炊いてあるので、ベーコンエッグとサラダ、双子はそれにウインナー。

 俺は食べ終えて、ベンツに乗った。
 大使館へ行くのでスーツだ。
 病院の駐車場へ停めて、歩いて大使館へ行く。

 「タカトラ!」
 響子が俺の顔を見て抱き着いて来た。

 「迎えに来たぞ」
 「うん!」
 「六花、今日の朝は何を食べた?」
 「オムレツと野菜サラダでした。サラダは……」
 よく管理している。
 アビゲイルも来た。

 「イシガミ、大変だったね」
 「ああ。でも全部終わったぞ」
 「流石だ。ジェイにも会って行くか?」
 「いるのか!」
 「ああ。君に会いたがっている」
 「分かった」

 またマリーンに連絡していた。
 戦闘になるだろう場所は事前に伝えていた。
 前回と同じで、ターナー少将止まりということで、撮影も許可していた。

 「響子、ちょっと待っててな」
 「うん!」
 響子は笑って俺を送り出してくれた。

 アビゲイルの用意した部屋で、ジェイに会う。
 アビゲイルは出て行った。
 ソファに座り、ジェイがノートPCを俺に見せた。
 大使館前の戦闘だった。

 「RPGを撃った奴は、すぐに離脱したようだな」
 「ああ、恐らくはアダンの直属の部下だろう。いい動きだ」
 「対地雷装甲の特別車だった」
 「それを見込んでの攻撃だったな」
 次に御堂家だ。

 「これは分からん。説明してくれるか?」
 ジェイが俺に求めた。
 荷電粒子砲はいいだろう。
 問題は「オロチ」と「クロピョン」だ。

 「あそこには、皇紀システムと名付けた防衛システムがある。それは知っているな?」
 「ああ。今回使った荷電粒子砲と、あとはレールガンだな」
 「そして生物兵器ということだ」
 「あの大蛇か!」
 「そう捉えて欲しい。まあ、正確には「ガーディアン」だ」
 「神話かよ……」
 ジェイはため息をついた。

 「ジェイ、見たものを受け入れろ」
 「分かった。突然装甲車と歩兵が沈黙したのも、大蛇の力か?」
 「そう思っておいてくれ」
 「そうか。攻撃の内容がさっぱり分からんが」
 「神話だ。俺たちには理解できんよ」
 ジェイは不服そうだが、了解した。
 まだ100%味方になったわけではない。
 そのことは、ジェイも分かっている。

 「もう一か所、攻撃を受けたんだよな」
 「そうだ。お前たちには教えていない場所でな。そこも撃破した」
 「どういう方法かは教えてもらえるのか?」
 「皇紀システムだと思ってくれ」
 「分かった」
 ジェイはPCを操作して、最後の戦闘を出した。

 「これは、理解できるものも多い。特にM82のスナイパーは最高だな!」
 「アハハハ。あいつも喜ぶよ。実際、非常によくやってくれた」
 「「ハナオカ」のアーツも幾分かは分かる。タイガーたちは控えめだったということもな」
 「じゃあ、敵にも知れているだろうな」
 
 映像は最後の戦闘に差し掛かる。

 「問題はこれだな」
 「ああ。ジェイには分かるか?」
 「いや。でも、俺の勘ではアメリカのものだろう」
 「やはりそうか」
 「ここまで高度な人体改造と装備を考えれば、自ずとな」
 「アダンは「ヴァーミリオン」と言っていた」
 「分かった。そっちは俺も調べよう」
 「頼む。俺たちの戦闘を横合いから邪魔してきやがった」




 俺はジェイと別れ、響子と一緒に大使館を出た。
 響子を抱き上げて出る。

 「響子、今日は俺の家に来いよ」
 「いいの!」
 「ああ。今日は響子と一緒にいたいんだ」
 「嬉しい!」

 「あの、石神先生?」
 六花がもじもじしている。

 「お前はバイクで来てくれ」
 「は、はい!」
 「家でゆっくりしてからでいいぞ? 慣れない大使館で疲れただろう」
 「いいえ! 石神先生のお傍がいいです!」
 「そうかよ」
 俺は笑って六花を引き寄せた。
 病院の駐車場で響子をベンツに乗せ、六花は一度家に戻った。



 子どもたちが響子を歓迎し、昼食の準備をした。
 俺は響子のためにキノコのリゾットを作った。
 子どもたちは朝が軽かったので、唐揚げを大量に作っていた。
 響子にも一つもらう。

 六花が来て、ライダースーツで喰い始めた。
 好物の唐揚げを頬張って、ニコニコしている。
 みんながもっと食べろと勧めた。
 食い意地の張った連中だが、六花の笑顔は何よりも崇高だ。
 食べ終わったロボが六花の腿に前足を乗せる。
 六花は人気者だ。

 響子を寝かせ、俺は六花に戦闘の経緯を話した。
 地下室へ移っている。

 「その「ヴァーミリオン」ですか。次は私が撃破します」
 「頼むぞ。でも、あれはまだ完成形ではなかったようだ。今、蓮花の研究施設で調べている」
 「そうですか。ああ、またあそこへ行きましょうよ!」
 俺は笑って必ず行こうと言った。

 「ラビ、可愛かったなー」

 「それはそうとなー」
 「石神先生?」

 「ここは完全防音だ。鍵もかけた」
 六花はいきなり全裸になった。
 俺たちは思い切り愛し合った。




 「おい、子どもたちに見つかるなよ?」
 「はい!」
 俺たちはそっと風呂場へ向かった。
 全裸だ。
 二人でクスクスと笑い合う。

 リヴィングの戸は閉まっている。
 子どもたちは勉強中だ。

 ダッシュで通り過ぎたが、ガチャリと戸が開いた。
 二人とも硬直する。
 ロボだった。
 二人で笑って風呂場へ急ぐと、ロボもついてきた。

 一緒に風呂に入る。
 ロボは濡れていない床で伏せていた。

 また二人で全裸で俺の部屋まで行き、俺の部屋に備えてある六花の下着を出し、ジャージを着せた。
 ベッドで響子がスヤスヤと寝ている。
 六花を響子の隣に寝かせた。
 俺は地下へ行き、消臭剤を撒いて換気扇を最強にする。
 六花のライダースーツを持って部屋に戻る。

 俺も響子を挟んで寝た。



 少し経つと、響子がモゾモゾし始めた。
 六花も気付いて起きる。
 俺が耳元で「コショコショ」と言うと、響子が「エヘヘ」と笑った。
 六花が笑いを堪えている。

 「タカトラー」
 響子が俺に抱き着く。
 チュッチュしてやる。
 双子が起こしに来た。
 俺たちは顔を洗ってリヴィングに降りた。

 炊き込みご飯とサンマの焼き物とマメのサラダ。
 吸い物は頂き物の松茸だ。
 香りがいい。
 俺が響子にサンマをほぐしてご飯に乗せてやると、美味そうに食べた。
 六花がニコニコと見ている。

 夕飯後はみんなでまた人生ゲームをした。
 六花と響子と俺で風呂に入る。
 響子はずっと笑って俺たちを見ていた。

 俺は井上陽水の『とまどうペリカン』を歌った。
 六花が歌い始めたので湯船に沈めた。
 響子が笑った。




 響子を寝かせ、俺と六花はバイクで出掛けた。

 「どこへ行きますか?」
 「竹芝桟橋へ行こう!」
 俺と六花は誰もいない倉庫群にバイクを停めた。

 「ああ、綺麗ですね!」

 俺は六花を見つめた。
 本当に綺麗だ。



 俺は六花を呼び、向かい合って肩を寄せた。
 『ドナウ河の漣』を歌った。
 俺はゆっくりと動き出す。

 「石神先生?」
 「踊ろう六花」
 「え、でも私、ダンスはできません」
 「大丈夫だ」

 俺はゆっくりと歌い動いた。
 六花がステップを把握していく。
 すぐに覚えた。
 ニッコリと笑った。
 輝くような笑顔だった。
 俺も笑い、最初から歌った。

 月光の下で、俺たちはワルツを踊った。

 六花は楽しそうに笑って輝いた。

 「ワルツは独りじゃ踊れない」
 「はい」
 「お前が必要だ、六花」
 「はい」
 
 「お前を愛している」
 「私も愛しています」





 月光の下で、俺たちはワルツを踊った。
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