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ギュインギュインだぜぇー!

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 栞は家に帰り、鷹もそっちへ行った。
 一江と大森は皇紀と少し話し合うようだ。
 俺は他の三人の子どもたちと聖とでリヴィングにいた。

 「このネコ本当にカワイイなぁ」
 「お前が動物好きなんて初めて知ったぞ」
 聖がロボを抱いて撫でている。
 気持ちが悪い。

 「お前、早く風呂に入って寝ろよ」
 「ああ。じゃあテンガ貸して」
 双子が不快な顔をし、亜紀ちゃんは笑っていた。
 俺は部屋の金庫を開け、テンガを聖に渡した。

 「風呂場では使うな」
 「分かったよ!」
 それでも持って行こうとするので、俺が取り上げた。

 



 亜紀ちゃんがコーヒーを淹れてくれ、双子はミルクセーキを飲んだ。

 「ルーとハーは大丈夫か?」
 「「うん!」」
 ハーは手術後だ。
 まあ、院長の手で完全に治っているが。
 ルーももう肉が盛り上がってきている。
 大した奴らだ。

 「亜紀ちゃんも大丈夫だよな」
 「はい。でもとんでもない敵でしたね」
 「ああ。「ヴァーミリオン」と言ってたな」
 「朱色のこと?」
 ルーが聞いた。

 「そうだな。辰砂、硫化水銀の色のことだ。他にもあるのかもしれんがな」
 「絵の具の色だよね」
 「ああ。昔は本当に水銀を使ってたんだけどな。猛毒なんで今は別な化学配合で作ってる」

 俺は皇紀たちを呼んだ。

 「どうだ、何か出たか?」
 「はい。「花岡」無効の件ですけど、やっぱり「闇月花」の波動解析じゃないかと。一江さんが量子コンピューターで解析したら、ちゃんと出ました」
 「そうか」
 「大型の弾頭の方が再現しやすいのも分かりました」
 「じゃあ、対物ライフルの方が怖いわけだな」
 「はい」

 「対策は出来るか?」
 「そうですね。機械的には、今日僕がやったことの延長なんですが。でももっと簡単に「花岡」で出来るんじゃないかと思います」
 「分かった。蓮花の研究所ではもっと詳しい解析が出来るだろう。皇紀、必要ならまた行ってくれ」
 「はい、喜んで! また蓮花さんやミユキさんにも会いたいですし」
 俺は笑って皇紀の頭を撫でた。

 「じゃあ一江と大森はもう帰れ。何かあったら知らせろ。すぐに行くからな」
 「はい、部長。お疲れ様でした」
 「ああ、お前らもな」
 亜紀ちゃんがタクシーを呼んだ。





 聖が風呂から上がった。
 ニコニコ顔でテンガを俺にせがむ。

 「よく他人が使ったの平気よね」
 ハーが言う。

 「ああ? だってトラとはよく同じパンツ履いてたもんな!」
 「あれはお前がいつも間違えてたんだろう!」
 「お前だって、俺が発射したパンツはいて「ベトベトだぁ」って言ってたじゃんか」
 「てめぇが俺のカゴに入れたんだろう!」
 「だって、お前よく洗濯してたからさ。一緒に洗ってもらおうかって」

 「もういい! 寝ろハゲ!」
 「あ、DVDもくれ」

 俺は頭を抱えながら、寝室から聖好みのものを何枚か渡した。

 「新しいテンガ買っときますね」
 亜紀ちゃんが言った。
 
 「い、いらねぇ」
 なんなんだ、この家は。





 皇紀と双子も風呂から上がり、俺は亜紀ちゃんと一緒に入った。
 いつものようにお互いの背中と髪を洗い、湯船に浸かった。

 「これでしばらくは平和ですかね」
 「そうだといいな」
 「タカさんはどう思います?」
 「まあ、しばらくはないと思うけどな」
 「そのココロは?」
 「今回のデータ解析が必要だからだよ。俺たちの防御力と戦力を観測したわけだからな」
 「それには時間がかかるってことですか」
 「ああ。結果論だけど、俺たちは「花岡」をほとんど使わなかった。聖がまたいい仕事をしてくれたお陰が大きいけどな」

 「じゃあまた観測に来るかもしれないじゃないですか」
 「いや。あれが俺たちの実力だと思うよ。対「花岡」が有効だって思わせたからな。その改良にかかるだろう」
 「なるほど!」
 「それと、今回は御堂の家でも蓮花の研究所でも、荷電粒子砲しか使ってない」
 「はい」
 「レールガンの情報は得ていると思うが、それが実現しなかったと判断する」
 「そうなるんですか?」
 「ああ。レールガンを使うべき場面で使わなかったからな。荷電粒子砲は射程が短い。接近させてから撃たなければならないのは、レールガンが使えないという結論になる」
 「なるほど」

 「あとは「クロピョン」だ」
 「あれは分かりませんよね!」
 「そうだ。解析のしようがねぇ。だから一生懸命考えなきゃならん」
 「オロチは?」
 「あれはもう驚天動地だろうよ! 怪獣が守ってるなんて想定外どころじゃねぇ」
 「アハハハハ」

 「まあ、目に見える分対策も考えるだろうけどな。もっと重火器での集中攻撃とかなぁ」
 「そんな! オロチがカワイソウですよ!」
 「そうだな。あいつも守ってやらんとな」
 「はい!」




 「最大の問題は」
 「ヴァーミリオンですよね」

 亜紀ちゃんが響子のアヒルを胸に乗せて俺に見せようとした。
 ちょっと動いたら滑り落ちたので残念がる。

 「あれは俺たちにとっても大問題だ。蓮花がどこまで聞き出せるかにかかってるな」
 俺がオチンチンにアヒルを乗せて見せると、引っぱたかれた。
 オチンチンへの攻撃は辞めろと言った。
 すいませんと謝られた。

 「ヴァーミリオンはどこかの先進国が作っているのは確かだ。膨大な開発費と無慈悲な研究者が集まっている」
 「蓮華の兵士と同じってことですか」
 「そうだな。それ以上かもしれん」
 「敵が増えましたね」
 俺は亜紀ちゃんを抱き締めた。

 「でも良かった」
 亜紀ちゃんが言った。

 「何がだ?」
 「もしかして、タカさんが落ち込んでるんじゃいかって」
 「ああ」
 「ハーが大怪我して、ルーも傷だらけでしょ? だからタカさんがまた「俺のせいでー」って泣いちゃうかって」
 「そうだよな」
 「泣いてませんよね」
 「お前たちは俺と一心同体だからな」

 「はい!」

 「それにな、あいつらはもっと負ける経験が必要なんだよ」
 「負けですか」
 「ああ、自分がまだまだダメだって思ってねぇとな」
 「なるほど」
 「亜紀ちゃんも今回はやばかったよな」
 「はい。「花岡」を使いそうになっちゃいました」
 「よく我慢したな」
 「タカさんは私たちのために「使え」って言ってくれましたけど。でもギリギリまではって」
 「そうか」

 「それにしても聖さんは凄いですよ!」
 「ああ」
 俺は笑った。
 あのバカを手放しで褒める人間は非常に少ない。
 俺も嬉しかった。

 「なんなんですか、あの戦闘センス! 何の打ち合わせもなくて、ちゃんとフォローも攻撃もこなしてて。「花岡」を知らないのに、私たちが苦労する敵とちゃんと渡り合って」
 「まあ、元々が打ち合わせの出来ねぇバカだけどな」
 二人で笑った。

 「でも、バカだから強いってこともあるんだよ」
 「はい」
 「今回だって、皇紀の言うことを信じ込んでたら大変なことになってた」
 「タカさんも賛成してましたけど」

 俺はオッパイを揉んだ。
 滑り落ちる真似をすると怒られた。

 「聖にはまた世話になったよなぁ」
 「はい。聖さんがいなければ、私が着く前に双子がやられてたかもしれません」
 「十分に礼をしないとな」
 「はい!」





 俺と亜紀ちゃんが風呂から上がって寝室へ行くと

 「ふはわぁーーー! ギュインギュインだぜぇ! ホッホッホ、フッワァーーーーー!!!」

 もう礼は十分だろうと二人で話した。
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