富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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千万組、歓迎 Ⅲ

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 翌朝。
 亜紀ちゃんが起きて来ない。
 完全な二日酔いだ。
 初めての経験だろう。
 俺と三人で朝食を作った。
 終わる頃に、亜紀ちゃんと千両が降りて来た。

 「タカさん、すみません」
 「おはようございます」
 亜紀ちゃんはゲッソリとしており、千両は普通だった。
 千両も結構飲んだはずだ。
 やはり鍛えている男だ。
 千両と亜紀ちゃんを座らせ、茶を煎れる。

 「どうだよ、二日酔いは?」
 「気持ち悪いですー」
 俺は笑って桜たちを起こしに行った。
 三人ともへたばって寝ている。
 
 「おい、起きろ!」
 「石神さん」
 「朝食だ。這ってでも来い」
 「「「はい!」」」
 三人が降りて来た。
 テーブルに座らせる。
 亜紀ちゃんほどひどくはない。
 まあ、途中で潰れたせいだが。
 亜紀ちゃんと桜たちは、しじみの味噌汁だけ飲んだ。

 朝食の後、桜たちを少し寝かせた。
 俺は千両を誘って、アヴェンタドールに乗った。

 「なんとも凄い車ですね」
 千両が珍しく驚いていた。
 車は青梅街道から新宿通りへ抜ける。


 「千両、フランス外人部隊が来るのか?」
 夕べ千両が歌ったのは、フランス外人部隊の歌だ。
 まだ明確な情報ではないのだろう。

 「はい。「業」が雇ったようです」
 「よく掴んだな」
 「私らは裏社会にいますので」
 恐らく前から張っていたのだろう。
 「業」がいた組織だ。
 何か動きがあっておかしくない。
 もしかしたら、組員を潜らせているのかもしれない。
 危険な潜入だ。

 「規模は?」
 「この日本での市街戦です。それほど多くは無いと思います。一個小隊程度でしょうか」
 「詳しく調べられるか?」
 「はい。必ず」
 俺は病院へ向かっていた。
 千両は行き先を一切聞かない。

 駐車場に車を停め、響子の病室へ行った。



 「タカトラー!」
 響子が嬉しそうに俺に抱き着いて来る。
 
 「今日は最近できた友達を連れて来たんだ」
 「そうなの?」
 「千両、これが俺の「宝」だ」
 「初めまして。千両弥太と申します」
 「よろしくお願いします、千両さん」
 千両は深々と頭を下げた。

 「なんかカッコイイ人ね!」
 「分かるか」
 「うん。それにタカトラのことも大好きなんでしょ?」
 「その通りです」
 千両が嬉しそうに笑った。
 俺が響子にライブの仮編集の動画を渡すと、喜んでいた。

 「あんまり遅くまで見るなよ」
 「うん」
 俺は千両を連れて出た。
 途中で薬局に寄り、アヴェンタドールで帰る。

 「石神さん」
 「なんだ」
 「なぜ、私のような者をあのお嬢さんに?」
 「冥途の土産は多い方がいいだろうよ」
 千両は笑った。

 「あいつを守りたいんだ。お前たちにも頼みたい」
 「喜んで」
 千両はずっと微笑んでいた。




 家に帰ると、桜たちは何とか起きていた。
 俺は二日酔いの薬を渡す。

 「わざわざ石神さんが病院まで取りに行って下さったんだ」
 千両が言った。
 響子のことは話さない。

 「「「ありがとうございました!」」」
 亜紀ちゃんにも持って行く。
 寝ているのを起こして、薬を飲ませた。

 「これは御駄賃な!」
 オッパイを揉む。
 何の反応もなかった。
 下に降りると、桜たちが薬のお陰で良くなったと言っていた。
 そんなに即効性はない。
 
 「よし、じゃあまた栞の道場で組み手な!」
 「ちょっと勘弁してください」
 みんなが笑った。
 栞が来た。

 「みんなおはよう! 石神くん、今日も道場を使う?」
 桜たちが俺の後ろに隠れた。

 「栞、お前が一番いじめっ子じゃん」
 「え?」



 昼食はカツ丼を作った。
 桜たちには重いだろうが、がんばれ。
 亜紀ちゃんは薬が効いたのか、一杯を食べていた。
 桜たちも懸命に食べる。
 俺が丼を確認し、残った飯粒も喰えと言うと、涙目になっていた。

 桜が電話で連絡した。
 千両たちが帰る。

 「石神さん、本当にお世話になりました」
 「ああ」
 千両が言った。

 「桜、どうだよ。もう二度とうちには来たくなくなったろう?」
 「いいえ、とんでもありません!」
 東雲と月岡も礼を述べて来た。

 「おい、また来てもいいが、もうあんな真っ黒集団はやめろよな」
 「はい。どうしても石神さんに挨拶したいと聞きませんで」
 「バカ揃いだな」
 「はい!」
 リムジンが迎えに来た。
 四人が礼をして乗り込んで帰って行った。



 「やっと帰ったな」
 「はい」
 亜紀ちゃんが笑って言った。

 「みんないい人たちですよね」
 「そうかもな」
 「それに、楽しかったですよね」
 「俺はゲロ始末で大変だったけどな」
 亜紀ちゃんが俺の尻を叩く。

 「さて、ヤクザくせぇ布団でも干すか!」
 「はい!」



 俺の寝室のベランダに、四人分の布団を干す。
 ロボが気持ちよさそうにその上で寝た。
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