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千万組、歓迎 Ⅱ

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 今日の夕飯の配置はいつもと違う。
 俺はテーブルの真ん中に座り、両側に左側に栞と皇紀、右側に千両と亜紀ちゃん。
 向かいに桜たち三人と、その脇にルーとハー。
 ロボは安全のためにキッチン。
 俺の後ろに食材を置いたテーブル。
 肉は20キロ。
 でかい鍋は当然俺の前にある。
 俺は肉を投入して宣言した。
 
 「今日はヤクザだ!」
 「「「「はい!」」」」
 「遠慮はいらねぇぞ」
 「「「「はい!」」」」
 「うちの「宴」を存分に見せてやれ!」
 「「「「はい!」」」」

 「いただきます」
 「「「「いただきます!」」」」
 「「「いただきます」」」
 「いただきます」

 桜たちは、何が起きたのか分かっていなかった。
 千両は笑っていた。
 俺の合図と同時に、栞と子どもたちが行動した。
 一瞬で肉が無くなる。

 「分かったか?」
 桜に言うと、桜が頷いた。

 「なるべくなら、できるだけ喰ってくれ。ああ、箸が折れたら一時退場な。そこの砂時計を使え」
 「はい!」

 千両が、亜紀ちゃんの箸をへし折った。
 流石だ。
 亜紀ちゃんの狙っていた肉を悠々と手に取った。

 「美味いですね」
 「ああ、最高の肉を仕入れたからな」
 桜たち三人はまったく肉が喰えない。
 半分に減ったところで、皇紀が三人に肉を入れてやった。
 「「「ありがとうございました!」」」


 終盤になっても、桜たちは肉がほとんど喰えなかった。
 俺は笑って「お手」を使った。
 栞は初めて見た「お手」に大笑いした。
 ケダモノたちに唸られながら、三人もやっと肉を喰った。

 「タカさん、締めはどうします?」
 「千両、雑炊でいいか?」
 「ありがたくいただきます」
 千両は意外と食べた。
 胃腸がまだまだ丈夫なのだろう。
 桜たちがガツガツと食べるのを見て、みんなで笑った。
 栞は千両に挨拶して帰って行った。

 「石神くん、あんまり桜さんたちをいじめないでね」
 俺は笑って見送った。




 俺は千両と亜紀ちゃんと風呂に入った。
 千両の背中を俺が流してやる。
 三人で湯船に浸かった。

 「いい風呂ですね」
 「まあ、お前の好みじゃないだろうけどな」
 俺は亜紀ちゃんに言って音楽を流させた。
 ジャンゴ・ラインハルトだった。

 「今日は参りました」
 「お前はやっぱり強いな」
 「いいえ。初見であれをかわされるようじゃ、自分もまだまだです」
 「斬みてぇなことを言うな! お前も三百まで生きるのか?」
 「アハハハ」
 「私は千両さんに負けちゃったー」
 「いえ、お嬢さんが本気だったら、私などとても」
 「分かるのかよ」
 「はい。お嬢さんは途轍もない余裕がありましたから」
 「だってよ、亜紀ちゃん」
 「でも、タカさんを守るためにはまだまだです。千両さんとやり合って、いい勉強になりました」




 俺たちの次に、桜たち三人が入った。
 俺はとっておきのエロDVDを流してやる。
 ホモ物だ。

 「風呂で映画が見れるんですね」
 「ああ、楽しんでくれたか!」
 「「「……」」」
 桜たちは止め方を知らないので、次に入った皇紀が「ギョエ!」と叫んでいた。
 みんなが風呂から上がり、俺たちは地下へ行った。

 「スゲェや!」
 桜たちが見たことも無い巨大なスピーカーなどに驚く。
 俺のギターで、子どもたちが次々に歌う。
 『人斬り子守唄』のテーマソング『叩き斬るのは涙じゃねぇ』を歌うと、千両が笑っていた。

 「おい、桜」
 「はい!」
 「お前、なかなか歌が上手かったな」
 「い、いいえ!」
 「100曲歌え」
 「はい?」
 「てめぇ! 親に逆らうってかぁ!」
 「すみません!」

 桜は『人生劇場』などを歌った。
 しかし段々考えるようになり、10曲をすぎてから『はとぽっぽ』を歌い出したので止めさせた。

 「お前は本当に役に立たねぇなぁ」
 「すみません」
 千両が立ち上がって『ル・ブダン(Le Boudin)』をフランス語で歌った。
 みんなが驚いた。

 「来ます。お気を付けください」
 俺の耳元で千両が囁いた。




 俺たちはリヴィングに上がった。
 子どもたちを寝かせる。
 俺と亜紀ちゃんで、手早くつまみを作る。

 枝豆。
 豆腐。
 スモークサーモン。
 鴨肉のソテー。
 ハモンセラーノ。

 結構豪華だ。
 俺はワイルドターキーをみんなに注いだ。

 「桜、東雲、月岡」
 「「「はい!」」」
 「俺と亜紀ちゃんより飲みが足りなかったら承知しねぇぞ!」
 「「「はい!」」」
 乾杯をして飲み始めた。

 「千両、好きな酒じゃないかもしれんが、今日は付き合え」
 「はい。石神さんのお好きなものをいただきますので」
 しばらく飲んでから、亜紀ちゃんに俺の部屋のノートPCを持って来るように言った。
 俺は四人に動画や写真を見せていく。

 「これは新宿の中央公園での戦闘シーンだ」
 桜たちは凄まじい戦闘に言葉を喪っていた。
 千両は真剣な顔で見ている。
 対応策を考えているのだろう。
 続いて国道246の動画も見せる。

 「あれも石神さんたちだったんですか!」
 桜が驚いた。
 最後に、丹沢での俺たちの訓練風景。
 巨大な電光や山の一部が吹っ飛んでいく。

 「お前たちの戦場だ」
 四人は言葉もない。

 「今、俺たちも対抗手段を考えている。「花岡」はその中心だけどな。でも、その外にもある。奴らに通用する武器なんかもな」
 「それは!」
 「今はまだ拠点防衛の大型のものだけだ。でも必ずお前たちが手にして戦えるものを作るからな」
 「石神さん、俺たちは!」
 「やめろ。お前たちは使い潰す。でも笑って死んでいけ」
 「石神さん」




 その後も飲み続けた。
 俺が子どもたちのトンデモ話をすると、みんな大笑いした。
 桜たちが酔いつぶれた。
 千両も酩酊している。
 ワイルドターキーは12本空いた。
 俺と亜紀ちゃんで三人を運び、千両はなんとか自分の足で歩いた。






 俺はロボを抱いて寝た。

 「あいつらもなぁ」
 ロボは俺の額に手を置いた。

 「ああ、心配だよなぁ」

 亜紀ちゃんがトイレで盛大に吐いている声が聞こえた。
 俺は笑いながら様子を見に行った。 
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