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皇紀、独りだぞ!
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翌朝。
朝食の後、六花と響子が帰った。
「顕さん、またね。元気でね」
「響子ちゃんもね。また会おうね」
響子が顕さんに抱き着き、少し泣いた。
タクシーに乗って、六花と帰る。
栞と鷹も見送りに来た。
顕さんは電車で帰るつもりだったのだろうが、奈津江の大きな30号の絵がある。
苦笑して、送らせてくれた。
亜紀ちゃんと双子を一緒にハマーに乗せる。
「皇紀、じゃあお前独りだからな」
「はい! 行ってらっしゃい!」
「数時間戻らないから、ロボの飯を頼むな」
「はい、お任せください」
「数時間戻らないぞ?」
「はい!」
「お前独りだからな!」
「はい」
「俺の部屋のDVDはいくらでも持ってっていいからな!」
「え?」
「地下の大画面で見てもいいからな!」
「はい?」
「飛び散ったもので汚すんじゃねぇぞ!」
「なんなんですか!」
「数時間、お前独りだからな!」
「分かりましたよ!」
栞と鷹が笑っている。
ハーが右手で輪っかを作り、上下にしてニヤニヤしていた。
俺は頭を引っぱたいた。
たまには安心して羽を伸ばして欲しい。
一時間もかからず、顕さんの家に着く。
上がって行って欲しいと言うので、お茶をご馳走になった。
亜紀ちゃんが煎れてくれた。
「あちこち見て回ったよ。すっかり綺麗にしてもらったね、ありがとう」
改めて顕さんが子どもたちに礼を言った。
「何か所も、修繕までしてもらったようだな」
流石に顕さんは目ざとい。
俺が便利屋を使って、雨どいの修理やドアの建付けなどをやらせた。
「顕さんの家ですからね」
「フィリピンから帰ったら建て替えてそうで怖いよ」
「アハハハハ!」
「絶対にやるなよ!」
また遊びに来てくださいと言い、俺たちは帰った。
「皇紀ちゃん、楽しんでるかなー」
「今帰ったら、大変なことになるよね」
双子が言う。
「やめてやれ!」
まったく、情け容赦ない。
「タカさん、お昼はどうします?」
「顕さんに教わったんだ。近くに肉の安くて美味い店があるんだと」
「えー、じゃあ顕さんも一緒に来れば良かったのに」
「恥をかきたくねぇんだろうよ」
「……」
店はすぐに分かった。
トラックの運転手なども利用するのだろう。
駐車場には大型車用のスペースもあった。
広い建物だ。
郊外だからこそだろう。
俺たちが店に入ると、昼時ということもあり、結構混んでいた。
5分ほど待たされて、席に案内された。
六人掛けのテーブルだ。
「こりゃ、一編に頼まねぇと時間がかかるな」
「皇紀ちゃんのお愉しみ時間が増えるな」
俺はルーの頭をはたく。
ベルを押し、店員に注文をした。
「黒毛和牛のステーキを10人前、ハンバーグを10人前、若鳥のグリルは……」
店員が驚いている。
注文を取り終え、慌てて厨房の方へ行った。
店長という人が来た。
「お客様、大変失礼なのですが、本当にご注文の通りに召し上がりますか?」
「はい」
「失礼いたしました」
店長が去って行った。
「あー、やっぱり恥をかいた」
「アハハハハ」
亜紀ちゃんが笑う。
双子は店内に漂ういい匂いに、もうよだれを垂らしそうだ。
結構早い時間で料理が運ばれてきた。
ワゴンに乗っている。
二台だ。
店員がテーブルに並べていく。
乗り切れないものはワゴンにそのまま入っている。
「追加は後程お持ちします」
恐らく食べきれないと思っているのだろう。
満足したところまでの支払いで済ませようという、店側の親切だ。
これでも二人前ずつある。
二人はまだ小学生だ。
十分だという判断が優しい。
子どもたちが喰い始めた。
みるみる皿が空になっていく。
驚いて見ている店長を俺は呼んだ。
「見ての通りだから、全部ちゃんと持って来て下さい」
「はい!」
5つのワゴンが運ばれてきた。
他の客も気づいてこっちを見ている。
何人かがスマホを向けている。
「撮影はお断りします」
俺は大きな声で言った。
それでも向けている奴がいる。
亜紀ちゃんが指を動かした。
「あぁー! 壊れた!」
ピンポイントで電撃を飛ばせるようになっている。
制御が上手くなったものだ。
しばらく前なら店が吹っ飛んでいる。
あれだけ食べても、10数万円で済んだ。
「またのお越しをお待ちしております!」
店長が名刺を渡してきた。
また来てもいいかもしれない。
折角なので、横浜方面へドライブした。
馬車道の洒落たカフェでお茶を飲んだ。
双子はクリームメロンソーダを頼んだ。
皇紀に電話した。
「そろそろ帰るからな」
『はい』
「あと一時間もかからないからな」
『はい』
「ラストスパートだぞ!」
『なんなんですか!』
「おい、声が聞こえるけど、誰か来てるのか?」
『え、音は切ってるはずなのに』
俺は笑って電話を切った。
家に帰ると、ロボに熱烈歓迎された。
抱き上げると顔を一杯舐めてくる。
「おい、皇紀は何をやってた?」
ロボが耳元でコショコショ言った。
全然分からなかった。
朝食の後、六花と響子が帰った。
「顕さん、またね。元気でね」
「響子ちゃんもね。また会おうね」
響子が顕さんに抱き着き、少し泣いた。
タクシーに乗って、六花と帰る。
栞と鷹も見送りに来た。
顕さんは電車で帰るつもりだったのだろうが、奈津江の大きな30号の絵がある。
苦笑して、送らせてくれた。
亜紀ちゃんと双子を一緒にハマーに乗せる。
「皇紀、じゃあお前独りだからな」
「はい! 行ってらっしゃい!」
「数時間戻らないから、ロボの飯を頼むな」
「はい、お任せください」
「数時間戻らないぞ?」
「はい!」
「お前独りだからな!」
「はい」
「俺の部屋のDVDはいくらでも持ってっていいからな!」
「え?」
「地下の大画面で見てもいいからな!」
「はい?」
「飛び散ったもので汚すんじゃねぇぞ!」
「なんなんですか!」
「数時間、お前独りだからな!」
「分かりましたよ!」
栞と鷹が笑っている。
ハーが右手で輪っかを作り、上下にしてニヤニヤしていた。
俺は頭を引っぱたいた。
たまには安心して羽を伸ばして欲しい。
一時間もかからず、顕さんの家に着く。
上がって行って欲しいと言うので、お茶をご馳走になった。
亜紀ちゃんが煎れてくれた。
「あちこち見て回ったよ。すっかり綺麗にしてもらったね、ありがとう」
改めて顕さんが子どもたちに礼を言った。
「何か所も、修繕までしてもらったようだな」
流石に顕さんは目ざとい。
俺が便利屋を使って、雨どいの修理やドアの建付けなどをやらせた。
「顕さんの家ですからね」
「フィリピンから帰ったら建て替えてそうで怖いよ」
「アハハハハ!」
「絶対にやるなよ!」
また遊びに来てくださいと言い、俺たちは帰った。
「皇紀ちゃん、楽しんでるかなー」
「今帰ったら、大変なことになるよね」
双子が言う。
「やめてやれ!」
まったく、情け容赦ない。
「タカさん、お昼はどうします?」
「顕さんに教わったんだ。近くに肉の安くて美味い店があるんだと」
「えー、じゃあ顕さんも一緒に来れば良かったのに」
「恥をかきたくねぇんだろうよ」
「……」
店はすぐに分かった。
トラックの運転手なども利用するのだろう。
駐車場には大型車用のスペースもあった。
広い建物だ。
郊外だからこそだろう。
俺たちが店に入ると、昼時ということもあり、結構混んでいた。
5分ほど待たされて、席に案内された。
六人掛けのテーブルだ。
「こりゃ、一編に頼まねぇと時間がかかるな」
「皇紀ちゃんのお愉しみ時間が増えるな」
俺はルーの頭をはたく。
ベルを押し、店員に注文をした。
「黒毛和牛のステーキを10人前、ハンバーグを10人前、若鳥のグリルは……」
店員が驚いている。
注文を取り終え、慌てて厨房の方へ行った。
店長という人が来た。
「お客様、大変失礼なのですが、本当にご注文の通りに召し上がりますか?」
「はい」
「失礼いたしました」
店長が去って行った。
「あー、やっぱり恥をかいた」
「アハハハハ」
亜紀ちゃんが笑う。
双子は店内に漂ういい匂いに、もうよだれを垂らしそうだ。
結構早い時間で料理が運ばれてきた。
ワゴンに乗っている。
二台だ。
店員がテーブルに並べていく。
乗り切れないものはワゴンにそのまま入っている。
「追加は後程お持ちします」
恐らく食べきれないと思っているのだろう。
満足したところまでの支払いで済ませようという、店側の親切だ。
これでも二人前ずつある。
二人はまだ小学生だ。
十分だという判断が優しい。
子どもたちが喰い始めた。
みるみる皿が空になっていく。
驚いて見ている店長を俺は呼んだ。
「見ての通りだから、全部ちゃんと持って来て下さい」
「はい!」
5つのワゴンが運ばれてきた。
他の客も気づいてこっちを見ている。
何人かがスマホを向けている。
「撮影はお断りします」
俺は大きな声で言った。
それでも向けている奴がいる。
亜紀ちゃんが指を動かした。
「あぁー! 壊れた!」
ピンポイントで電撃を飛ばせるようになっている。
制御が上手くなったものだ。
しばらく前なら店が吹っ飛んでいる。
あれだけ食べても、10数万円で済んだ。
「またのお越しをお待ちしております!」
店長が名刺を渡してきた。
また来てもいいかもしれない。
折角なので、横浜方面へドライブした。
馬車道の洒落たカフェでお茶を飲んだ。
双子はクリームメロンソーダを頼んだ。
皇紀に電話した。
「そろそろ帰るからな」
『はい』
「あと一時間もかからないからな」
『はい』
「ラストスパートだぞ!」
『なんなんですか!』
「おい、声が聞こえるけど、誰か来てるのか?」
『え、音は切ってるはずなのに』
俺は笑って電話を切った。
家に帰ると、ロボに熱烈歓迎された。
抱き上げると顔を一杯舐めてくる。
「おい、皇紀は何をやってた?」
ロボが耳元でコショコショ言った。
全然分からなかった。
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