上 下
558 / 2,840

双子式「サバイバル・キャンプ」

しおりを挟む
 土曜日の朝6時。
 全員がリヴィングに集合した。
 朝食はご飯と味噌汁と目玉焼きとウインナー。
 6時半に栞も来た。
 栞も朝食を済ませている。
 全員が掃除用の汚れても構わない服を着込んでいる。
 まあ、俺と亜紀ちゃんはジーンズにセーターだが。
 栞と皇紀たちは、掃除の後でキャンプとのことで、思い思いのラフな格好をしていた。

 「コンバットスーツじゃないのか?」
 「うん! キャンプでは汚れて捨ててもいい格好で、ということになってます」
 ハーが言った。

 「なんかやるのかよ?」
 「サバイバルを実体験でと」
 「ふーん」
 どうでもいい。
 こいつらに「危険」ということはねぇ。

 全員で掃除用具とキャンプ用品を積み込んで出発した。
 キャンプ用品は、ハーが大きめのリュックを担いでいるだけだ。
 各自の着替えすら持ってない。
 まあ、一泊で明日の午後に迎えに行くからいいのか。
 俺はハマーを出発させた。




 1時間ほどで、顕さんの家に着く。
 俺は鍵を開け、子どもたちが掃除用具を降ろす。

 「分担な! 皇紀は庭の草むしり。亜紀ちゃんは掃除機。俺は天井と高い場所の埃を落とす。栞は小物の拭き掃除をしてくれ。ルーとハーは最初は布団干しで、俺と亜紀ちゃんが終わった場所の拭き掃除。亜紀ちゃんは掃除機が終わったら窓拭き。何か質問はあるか?」
 「「「「「ありません!」」」」」
 「よし、かかれ!」
 全員が素早くかかっていく。

 1時間もすると、亜紀ちゃんは窓拭きに入り、双子はどんどん床を磨き上げて行く。
 皇紀は既に45リットルのゴミ袋を4つ使っていた。
 栞は台所を中心にやっている。
 俺は見回って安心した。

 「石神くん、ここは大体終わったけど、あとはどこからやろうか?」
 「顕さんの部屋と奈津江の部屋かな」
 「じゃあ、奈津江の部屋に行こう!」
 栞が俺の手を引く。
 何度か来たことがあるらしい。
 二階の角の部屋だ。
 俺はほとんど入ったことはない。

 「懐かしいでしょ?」
 「ああ、何度か来たかな」
 「そうなの!」
 あとは顕さんの入院中の風入れくらいだ。

 「ほら、石神くんと奈津江の写真!」
 那須高原で撮ったものだ。
 奈津江の机に木製の額に納められていた。

 「奈津江、嬉しそう」
 栞が言った。
 本当にそうだ。

 「さあ、あとは頼むぞ」
 「え、もう行っちゃうの?」
 「掃除に来たんだろう」
 「だってぇ。ねえ、奈津江の下着とか見たくないの?」
 「ないよ!」
 ちょっと見たい。
 栞があちこち、開け始めた。

 「おい、やめろよ!」
 「いいじゃない。あ、これ!」
 奈津江のアルバムが出てきた。
 
 「本当にやめろって。ちゃんと掃除してくれな!」
 俺は部屋を出た。



 やはり、まだ少しいるのが辛かった。



 顕さんの部屋に入った。
 整然と片付けられている。
 俺はデスクや設計台を気を付けて拭いた。
 本も多いので、ハンディ・クリーナーで天の埃を吸って行く。
 他の部屋もどんどんやっていった。
 午前中で全部終わった。
 ゴミを集め、ハマーに積んでいく。
 
 「綺麗になったね!」
 栞が言った。
 俺もそう思う。





 「じゃあ、昼を喰って行こうか」
 「「「「「はーい!」」」」」

 俺は近くのファミレスに入った。
 あまりこういう場所は入ったことがない。
 子どもたちの方が知っている。

 「好きなだけ頼め!」
 「「「「ワーイ!」」」」
 俺はピザを頼んだ。
 亜紀ちゃんが頼んでくれた。
 まあまあ喰えた。
 子どもたちはワイワイとやっている。
 
 「タカさん、ドリングバーとサラダバーがついてるんですよ?」
 「そうなのか?」
 それがどういうものか知らない。

 「あっちです!」
 手を引かれ、連れて行かれた。
 自由に選んでいいらしい。
 俺はコーヒーと、サラダを少し盛った。

 「それっぽっちですか!」
 「家でまともなものを喰うよ」
 「なるほど!」
 亜紀ちゃんはサラダを山盛りにしていた。




 食事を終え、丹沢に向かった。
 3時くらいに着き、みんなを降ろす。

 「おい、そんな荷物でいのか?」
 「大丈夫です!」
 ハーがまたそう言う。
 食材は全然足りないだろう。
 こっちで何か買うつもりか。
 まあいい。

 「じゃあ、俺たちは行くからな。楽しんで来い」
 「「「「はい!」」」」
 俺と亜紀ちゃんは出発した。



 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■


 
 「行ったね」
 「もう見えないね」

 「さあ! じゃあもうちょっと奥まで行こう!」
 ルーが号令をかける。

 「亜紀ちゃんも来ればよかったのに」
 栞がルーに言う。

 「タカさんを放っておけないって」
 「石神くんはまだ身体がきついもんね」
 「そうそう。それに一人にしておくと、また何かやりそうだから」
 「なるほど」
 「あとは二人きりになりたいっていうのも大きいけどね」
 「ちょっと羨ましいかなー」
 
 「栞さんも残れば良かったのに」
 「私は「サバイバル」ってやってみたかったから」
 「そう! 楽しいよ、きっと!」
 「今日はよろしくね!」
 「うん!」

 山の中腹まで登る。
 みんなで走って10分もかからない。

 「さて! じゃあ早速始めるね! まずサバイバルの基本!」
 ルーとハーが前に立っている。

 「「はい!」」
 「それは、自然に還ること!」
 「「はい!」」
 ハーが動作する。
 生暖かい突風が吹いた。




 「「ギャァーーーーーー!」」



 全員の服が飛び散った。
 全裸になった。
しおりを挟む
感想 56

あなたにおすすめの小説

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

NPO法人マヨヒガ! ~CGモデラーって難しいんですか?~

みつまめ つぼみ
キャラ文芸
 ハードワークと職業適性不一致に悩み、毎日をつらく感じている香澄(かすみ)。  彼女は帰り道、不思議な喫茶店を見つけて足を踏み入れる。  そこで出会った青年マスター晴臣(はるおみ)は、なんと『ぬらりひょん』!  彼は香澄を『マヨヒガ』へと誘い、彼女の保護を約束する。  離職した香澄は、新しいステージである『3DCGモデラー』で才能を開花させる。  香澄の手が、デジタル空間でキャラクターに命を吹き込む――。

双葉病院小児病棟

moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。 病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。 この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。 すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。 メンタル面のケアも大事になってくる。 当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。 親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。 【集中して治療をして早く治す】 それがこの病院のモットーです。 ※この物語はフィクションです。 実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

人形の中の人の憂鬱

ジャン・幸田
キャラ文芸
 等身大人形が動く時、中の人がいるはずだ! でも、いないとされる。いうだけ野暮であるから。そんな中の人に関するオムニバス物語である。 【アルバイト】昭和時代末期、それほど知られていなかった美少女着ぐるみヒロインショーをめぐる物語。 【少女人形店員】父親の思い付きで着ぐるみ美少女マスクを着けて営業させられる少女の運命は?

ハイスペック上司からのドSな溺愛

鳴宮鶉子
恋愛
ハイスペック上司からのドSな溺愛

処理中です...