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双子の漂流記 Ⅱ

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 「お腹空いたね」
 「うん。どーしようか?」
 砂浜に寝そべりながら話した。

 「ここはアレだね!」
 「オペレーション・ハー発動だぁ!」
 ハーが海に腰まで入り、「轟雷」を放つ。
 前方50メートルに渡り、魚が浮いた。
 二人で素手で必死に掴んで、次々に砂浜に投げた。

 「結構獲れたよ!」
 「うん!」

 80匹ほどの魚がいた。
 サメも何匹かいる。
 それほど大型ではない。
 ロレンチーニ器官が電撃にやられたのだろう。

 「生じゃなぁ」
 「ルー、電子レンジだよ!」
 「ああ!」
 ハーが「轟雷」を改良し、マイクロ波を放出した。
 魚が炙られていく。

 「やったぁー!」

 二人で次々に炙っては平らげた。
 美味くはないが、取り敢えず腹は満ちた。
 サメはアンモニア臭かったが、我慢して食べた。

 「フカヒレって美味しいんだよね?」
 「タカさんが言ってた」
 「ゲキマズじゃん!」
 「そうだねー」
 一応、喰っといた。




 二人で島の探検に出た。
 それほど広くはない。
 ヤシの木があった。
 二人は実をジャンプしてもぎ、水分を補給した。
 指でズボッと穴を空けた。
 以前は人が住んでいた痕跡もあった。
 二人で捜し歩き、使えそうなものを集めた。
 何も無かった。
 
 「まず服を作らなきゃね」
 「まっぱだもんね」

 二人はサメの革に目を付けた。
 「花岡」の技で自在にカットしていく。
 スカートが出来た。
 幾つか指で穴を空け、ヤシの実の繊維で縛った。
 上着も作る。
 貫頭衣のようなものが出来たが、革が足りずにヘソが出る。

 「ゴワゴワするね」
 「気合だよー!」
 「おー!」

 取り敢えず、また「オペレーション・ハー」をやった。
 ヤシガニもいたので、そいつらも獲物にした。
 ヤシガニは結構美味しかった。
 ヤシの実ジュースをまた飲んだ。

 「あ、そうだ!」
 「なになに?」
 「タカさんが前に言ってたじゃん、アラスカのコート」
 「あ!」
 石神が狼の頭がついた毛皮がカッチョイイと言っていた。
 あの時は笑ったが、石神のダンディズムはよく知っている。
 きっと、肩に顔があるのがいいのだ。

 二人はそれぞれサメの頭と、こっちも良いと、反対側にウツボの頭を取り付けた。
 石神が、狼の尻尾も良かったと言っていたのを思い出した。
 ウツボの革を剥ぎ、背中に取りつけた。

 「あ、なんかいいかも!」
 「ウツボがいい仕事してるよね!」
 二人で喜んだ。
 二人は次に、陸へ帰る方法を話し合った。

 「筏は作れるけど、現実的じゃないね」
 「火曜日までに帰らなきゃだよね」
 「「うーん」」



 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■



 俺は亜紀ちゃんと二人きりだった。
 亜紀ちゃんの機嫌が最高に良い。
 用もないのに、俺にべったりしている。
 ロボも俺たちの間に入りにくい。

 「二人っきりですね、エヘヘヘ」
 朝から何十回も言う。

 「オッパイ触っちゃダメですよー」
 「ちょっとでもダメですよー」
 「ほらほら」
 「ほんのちょっとならいいかもですよー」
 「……」
 ウザイ。

 「亜紀ちゃんもどっか出掛けて来いよ」
 「嫌です」
 「俺も久しぶりにドゥカティでも乗るかな」
 「ダメです!」

 「……」

 困った。

 「あー、テンガでも使うかな!」
 「私がお手伝いします!」
 「バカヤロー! あれは孤独な仕事なんだぁ!」
 「じゃあ、そっと見てます」

 「……」



 「散歩してくるわ」
 「あ、一緒に!」
  「一人で歩きたい」
 亜紀ちゃんが泣きそうな顔をする。
 泣き真似に決まっている。

 「私と一緒は嫌ですか?」
 「一人がいいんだよ」
 「そんなに嫌なんですかー!
 「わかったよ! 一緒に行こう!」
 「うん!」
 亜紀ちゃんが俺の腕に絡めてくる。
 玄関でもそのままなので、靴が履きにくい。



 皇紀、双子、早く帰ってくれ。



 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■



 「じゃあさ、近距離で「虚震花」を撃って、横滑りで推進するってことで!」
 「うん! 最初は私が下になるね!」
 二人は海へ入り、ハーが横に浮かんだ。
 バランスを取りながら、ルーが上に乗り、「虚震花」を撃つ。
 足元に爆発が生まれ、物凄い勢いで二人は前に進んだ。

 「成功、成功!」
 「スゴイよ、これ!」

 方向は、ある程度把握している。
 途中でハーがハワイ島を見ていた。
 だからここは中米か南米の近くだ。
 だから、東に進めば、どこかの大陸にぶつかる。
 幸い、北米から南米までは連なっている。
 いずれどこかに到達すると、二人は読んでいた。

 「ハー、大丈夫?」
 「うん。サメの服が丈夫で良かった!」
 衝撃は、ハーも「花岡」を駆使して減衰させていた。
 そうでなければ、二人の服はとっくに吹っ飛んでいる。
 次々と海面を爆破しながら、物凄いスピードで陸を目指した。


 五時間後、ルーとハーはメキシコに到達した。


 真っ白い砂浜が美しいメキシコ・ビーチでは、30分前から謎の海面爆発で大騒ぎだった。
 警官隊が呼ばれ、ビーチの人々を避難させた。

 「海底火山の爆発か!」
 「いいえ、この辺りにはそのようなものは」
 「どこかの国の攻撃なのか!」
 「分かりません! しかし爆発物の可能性が大きいです!」
 軍隊の出動が要請された。

 ビーチから離れた場所で、双眼鏡を覗いていた警官の一人が言った。

 「怪物です!」
 ワカメのようなものを頭部らしきものから大量に垂らし(ワカメだった)、脇にサメのような顔(サメ)と、ヘビのようなもの(ウツボ)。
 
 上司が双眼鏡の警官に問いただす。

 「未知の生物です! 二本足で立っています。サメの顔が横に!」
 「なんだと!」
 全員が拳銃を構える。

 

 「「はろー!」」



 二体の恐ろしい怪物が叫んだ。
 肩から触手を伸ばし、警官隊に振っていた。
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