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双子の漂流記
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六花に送られ、家には三時ごろに着いた。
六花は俺に付いて一緒に上がったが、すぐに帰った。
「ちょっと響子の顔を見てきます」
俺は二日間の礼を言い、見送った。
亜紀ちゃんがジロジロと俺を見ている。
「なんだよ」
「タカさん、何か雰囲気が」
昨日の今日だが、体調はまた格段にいい。
筋肉はまだまだ戻らないが、少し肉がついてきた。
「行って良かっただろう?」
「それはそうなんですが。なんだかタカさん、若返ってません?」
「俺は元々若いんだぁ!」
「アハハハ」
蓮花の言った通りか。
子どもたちに囲まれ、ロボに熱烈に舐められ、俺はリヴィングでコーヒーを飲んだ。
「タカさん、夕飯はどうしましょうか?」
「もう普通に食べられる。いつものようにしてくれ」
「分かりましたぁ!」
夕食はハンバーグだった。
俺用にいい肉で作ってくれ、子どもたちは質より量だ。
俺がロボに、混ぜ物のないひき肉だけのハンバーグを作ってやる。
ロボは作っている間、俺の足に擦り寄り、大興奮で400gを平らげた。
亜紀ちゃんに聞くと、俺のいない間食欲がなかったそうだ。
久しぶりににぎやかな食卓を味わう。
食後に双子が俺に言って来た。
「タカさん、今度の連休はお出かけしたいのですが」
「誰とだ?」
「「虎の穴」でキャンプでもと」
「おお、面白そうだな!」
「大人の引率はいないんですけど」
「まあ、お前らなら必要ないんじゃないか? でも他の親御さんにはちゃんと許可を取っておけよ」
「分かりましたー!」
二人が嬉しそうに笑う。
今度は4連休になる。
子どもだけで楽しみたいんだろう。
「じゃあ、後で簡単なスケジュールを教えてくれ。連絡はとれるようにな」
「「はい!」」
二人は嬉しそうに離れた。
「タカさん」
皇紀が言う。
「なんだよ、お前もどこかへ出掛けたいのか?」
「はい! 蓮花さんの研究所へ行きたいんですが」
「ああ、いいだろう。一人で行けるか?」
「はい!」
皇紀ならば心配もない。
「分かった。ああ皇紀、後で俺の部屋へ来い」
「分かりました!」
皇紀と一緒に上がり、俺は「ブラン」のことを話した。
ミユキの奇跡を話すと、皇紀が涙を拭いながら喜んだ。
「じゃあ、ミユキさんは自分の記憶と心を!」
「ああ。完全ではないだろうがな。でも大部分の記憶が甦ったようだぞ」
「タカさん! ありがとうございました!」
皇紀が俺に抱き着いて来る。
背中を優しく撫でてやった。
「だから、お前がそれを気にしてのことだったら大丈夫だぞ?」
「はい! でもその他のことも蓮花さんと打ち合わせたいので」
「そうか。なら行って来い。俺が連絡しておいてやる」
「お願いします!」
「ああ、向こうでウサギの顔のロボットがいた」
「え? じゃあそれは蓮花さんがやったんですよ」
「そうなのか!」
「はい。僕は丸い頭しか図面に書いてません」
「あいつ、あんなカワイイとこがあったのか」
俺は笑った。
「蓮花さんは優しい人ですよ」
「そうだな!」
俺はもう一週間、病院を休んだ。
家で養生していると、どんどん回復した。
子どもたちがいない昼間は、ほとんどロボと遊ぶかまったりしていた。
金曜日の夕方。
ルーとハーが出発した。
丹沢の俺の土地でキャンプを張るらしい。
少し歩けば民家もあり、その先にコンビニもある。
自炊も二人がいれば問題ない。
楽しんで来いと送り出した。
少しメンバーの訓練もするようだが、大半は自分たちの遊びだ。
本当に楽しんできて欲しい。
俺のためにしばらく鬱屈させてしまった思いもある。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
金曜日の夜八時。
でかいリュックを背負ったルーとハーは、開けた場所でリュックから取り出した「花壇」の土を盛った。
二人だけだ。
「じゃあ、ハー。準備はいいかな?」
「うん。やろう!」
二人が声を合わせた。
「「クロピョン! 出て来い!」」
しばらくは何も起きなかった。
しかし。
「来た!」
「ハー! 「絶花」はいいね!」
「うん!」
花壇の土から、黒いヘビが頭をもたげる。
あの一つ目が先端に開き、双子を見る。
「タカさんの下に着いたってことだけどさ!」
「あんたがどれほど強いか確かめるから!」
「「かかってきなさい!」」
ヘビが頭を横に振った。
ルーとハーが空中へ吹っ飛んだ。
「ルーーーーーーー!」
「ハーーーーーーー!」
空中で必死に手を伸ばし、お互いを握った。
音速を遙かに超える速さで飛んでいるため、衝撃波で二人の服は既にない。
ハワイの軍事基地で、マッハ10で移動する物体を観測した。
通常ならば息もできない。
その前に、それだけの衝撃でバラバラになっている。
「どこまで飛ぶんだろうね?」
「うーん。考えてもしょーがないね」
二人はどこかへ着くまで待った。
約一時間後、海に落ちた。
数百メートルも水柱が上がり、流石の二人も一瞬気を喪った。
水面に飛び出た双子は、四方を見回した。
「あちゃー、海だよ」
「何か見える、ハー?」
「なんもない」
「ちょっと上に投げて!」
「うん」
ハーがルーを投げ上げた。
「花岡」の力で、50メートルほどルーが飛ぶ。
「あ!」
着水したルーが指さした。
「あっちに島があったよ!」
「やりー!」
二人で泳ぐ。
「花岡」を使った。
20ノット。
砂浜に着き、流石に肩で息をした。
「よかったー!」
二人で島を見回す。
僅かな木々があるが、人の気配はない。
辺りは明るい。
双子には分からなかったが、時差のため、土曜日の朝8時だ。
約二時間ほど飛行(?)していた。
「「無人島だぁー」」
二人は取り敢えず、そう言ってみた。
六花は俺に付いて一緒に上がったが、すぐに帰った。
「ちょっと響子の顔を見てきます」
俺は二日間の礼を言い、見送った。
亜紀ちゃんがジロジロと俺を見ている。
「なんだよ」
「タカさん、何か雰囲気が」
昨日の今日だが、体調はまた格段にいい。
筋肉はまだまだ戻らないが、少し肉がついてきた。
「行って良かっただろう?」
「それはそうなんですが。なんだかタカさん、若返ってません?」
「俺は元々若いんだぁ!」
「アハハハ」
蓮花の言った通りか。
子どもたちに囲まれ、ロボに熱烈に舐められ、俺はリヴィングでコーヒーを飲んだ。
「タカさん、夕飯はどうしましょうか?」
「もう普通に食べられる。いつものようにしてくれ」
「分かりましたぁ!」
夕食はハンバーグだった。
俺用にいい肉で作ってくれ、子どもたちは質より量だ。
俺がロボに、混ぜ物のないひき肉だけのハンバーグを作ってやる。
ロボは作っている間、俺の足に擦り寄り、大興奮で400gを平らげた。
亜紀ちゃんに聞くと、俺のいない間食欲がなかったそうだ。
久しぶりににぎやかな食卓を味わう。
食後に双子が俺に言って来た。
「タカさん、今度の連休はお出かけしたいのですが」
「誰とだ?」
「「虎の穴」でキャンプでもと」
「おお、面白そうだな!」
「大人の引率はいないんですけど」
「まあ、お前らなら必要ないんじゃないか? でも他の親御さんにはちゃんと許可を取っておけよ」
「分かりましたー!」
二人が嬉しそうに笑う。
今度は4連休になる。
子どもだけで楽しみたいんだろう。
「じゃあ、後で簡単なスケジュールを教えてくれ。連絡はとれるようにな」
「「はい!」」
二人は嬉しそうに離れた。
「タカさん」
皇紀が言う。
「なんだよ、お前もどこかへ出掛けたいのか?」
「はい! 蓮花さんの研究所へ行きたいんですが」
「ああ、いいだろう。一人で行けるか?」
「はい!」
皇紀ならば心配もない。
「分かった。ああ皇紀、後で俺の部屋へ来い」
「分かりました!」
皇紀と一緒に上がり、俺は「ブラン」のことを話した。
ミユキの奇跡を話すと、皇紀が涙を拭いながら喜んだ。
「じゃあ、ミユキさんは自分の記憶と心を!」
「ああ。完全ではないだろうがな。でも大部分の記憶が甦ったようだぞ」
「タカさん! ありがとうございました!」
皇紀が俺に抱き着いて来る。
背中を優しく撫でてやった。
「だから、お前がそれを気にしてのことだったら大丈夫だぞ?」
「はい! でもその他のことも蓮花さんと打ち合わせたいので」
「そうか。なら行って来い。俺が連絡しておいてやる」
「お願いします!」
「ああ、向こうでウサギの顔のロボットがいた」
「え? じゃあそれは蓮花さんがやったんですよ」
「そうなのか!」
「はい。僕は丸い頭しか図面に書いてません」
「あいつ、あんなカワイイとこがあったのか」
俺は笑った。
「蓮花さんは優しい人ですよ」
「そうだな!」
俺はもう一週間、病院を休んだ。
家で養生していると、どんどん回復した。
子どもたちがいない昼間は、ほとんどロボと遊ぶかまったりしていた。
金曜日の夕方。
ルーとハーが出発した。
丹沢の俺の土地でキャンプを張るらしい。
少し歩けば民家もあり、その先にコンビニもある。
自炊も二人がいれば問題ない。
楽しんで来いと送り出した。
少しメンバーの訓練もするようだが、大半は自分たちの遊びだ。
本当に楽しんできて欲しい。
俺のためにしばらく鬱屈させてしまった思いもある。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
金曜日の夜八時。
でかいリュックを背負ったルーとハーは、開けた場所でリュックから取り出した「花壇」の土を盛った。
二人だけだ。
「じゃあ、ハー。準備はいいかな?」
「うん。やろう!」
二人が声を合わせた。
「「クロピョン! 出て来い!」」
しばらくは何も起きなかった。
しかし。
「来た!」
「ハー! 「絶花」はいいね!」
「うん!」
花壇の土から、黒いヘビが頭をもたげる。
あの一つ目が先端に開き、双子を見る。
「タカさんの下に着いたってことだけどさ!」
「あんたがどれほど強いか確かめるから!」
「「かかってきなさい!」」
ヘビが頭を横に振った。
ルーとハーが空中へ吹っ飛んだ。
「ルーーーーーーー!」
「ハーーーーーーー!」
空中で必死に手を伸ばし、お互いを握った。
音速を遙かに超える速さで飛んでいるため、衝撃波で二人の服は既にない。
ハワイの軍事基地で、マッハ10で移動する物体を観測した。
通常ならば息もできない。
その前に、それだけの衝撃でバラバラになっている。
「どこまで飛ぶんだろうね?」
「うーん。考えてもしょーがないね」
二人はどこかへ着くまで待った。
約一時間後、海に落ちた。
数百メートルも水柱が上がり、流石の二人も一瞬気を喪った。
水面に飛び出た双子は、四方を見回した。
「あちゃー、海だよ」
「何か見える、ハー?」
「なんもない」
「ちょっと上に投げて!」
「うん」
ハーがルーを投げ上げた。
「花岡」の力で、50メートルほどルーが飛ぶ。
「あ!」
着水したルーが指さした。
「あっちに島があったよ!」
「やりー!」
二人で泳ぐ。
「花岡」を使った。
20ノット。
砂浜に着き、流石に肩で息をした。
「よかったー!」
二人で島を見回す。
僅かな木々があるが、人の気配はない。
辺りは明るい。
双子には分からなかったが、時差のため、土曜日の朝8時だ。
約二時間ほど飛行(?)していた。
「「無人島だぁー」」
二人は取り敢えず、そう言ってみた。
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