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ミユキ

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 俺たちは部屋へ案内された。
 六花とは別室だ。
 俺の部屋の向かいが六花に当てがわれる。
 俺は蓮花が用意した着物を着た。
 黒地の背に、「六根清浄」の筆文字がある。
 正面には桜が散っている。

 見事なものだった。

 蓮花が着替えを手伝ってくれた。

 「よくお似合いでございます」
 「満足した。素晴らしいものだ」
 蓮花が丁寧に頭を下げた。
 着流しだが、非常に品がある。
 俺の寸法を完全に把握し、身体も楽だ。
 まあ、今は痩せすぎているが。
 しかし、着物の余裕が、貧相なものを感じさせない。
 蓮花の気遣いの深さを感じる。

 部屋を出ると、六花が出てきた。
 タイガーストライプのバトルスーツだ。
 俺は車いすから立ち上がって着物を見せた。

 「か、カッケェー!」
 「おい」
 六花が鼻を押さえた。
 鼻血を出している。

 「大丈夫か、お前」
 「もう、死んでもいい」
 「俺のために生きろ」
 「はい!」
 蓮花が懐からティシュを差し出す。
 六花は礼を言って鼻に詰め込んだ。
 アホのようなことも、こいつがやると美しい。

 俺たちは大きなテーブルのある部屋へ案内された。
 目の前の壁に巨大なディスプレイがある。

 「まず、六花様にお願いすることを説明いたします」
 蓮花がPCを操作し、話し出した。

 「六花様には、わたくしたちが開発しました機器のテストをしていただきます」
 画面には様々な機器が映し出され、一つ一つ解説された。

 「この装置は「花岡」の「闇月花」を生成するものです。六花様に、それがどれだけ有効なのか試していただきたいのです」
 「分かりました」
 「次にこの装置は、「虚震花」を疑似的に放ちます。これに関しては……」
 蓮花の説明を六花は真剣に聞いていた。
 これらの機器が、いずれ必要な各所に設置されることを分かっているのだ。
 六花は操縦もそうだが、機械に対する適正が高い。
 俺と皇紀の発案だが、非常にうってつけだ。
 
 「石神様には、まずは検査を受けていただき、その上で必要な治療を用意させていただきます」
 俺は頷いた。
 ドアが開き、音もなくロボットが入って来た。
 高さ80センチほどの、自立走行をするものだ。
 ウサギの顔をしている。
 
 「か、カワイー!」
 六花が喜んだ。

 「六花様は、この「ラビ」がご案内いたします」
 「ら、ラビ!」
 「ラビとモウシマス。リッカさま、ヨロシクオネガイイタシマス」
 「喋ったぁー!」
 六花は嬉しそうだ。
 まだ開発途中だが、量子コンピューターのAIが操っている。
 ラビ本体には運動制御のシステムしか搭載されてはいない。
 「知性」は別な高度AIだ。
 
 六花はラビのアルミ製の顔を撫でまわしている。
 目のLEDが感情を表わすような仕様だ。
 撫でられて喜んでいる。
 これもアルミ製の丸い尾を振っている。

 「カワイイ!」
 ラビに先導され、六花は実験室へ向かった。




 「石神様、「ミユキ」に会っていただけますか?」
 「もちろんだ。そのために来たんだからな」
 蓮花が俺の車いすを押した。
 長い廊下を進み、幾つかエレベーターを乗り継いだ。
 テンキーと指紋、虹彩のセキュリティを経て、俺は「ミユキ」の部屋へ着いた。
 蓮花がドアを開ける。
 床で蹲る少女がいた。
 俺は立ち上がって近づいた。
 少女は微動だにしない。

 「顔を見せてくれ、ミユキ」
 俺が声を掛けると、少女の背中が小刻みに震えた。

 「やっと会えたな。会いたかったぞ、ミユキ」
 少女の上半身が起き上がった。
 美しい少女だった。

 長い黒髪は額で切り揃えられ、漆黒の大きな瞳が俺を映している。
 整った鼻筋と、赤い唇。
 頬がやや紅潮している。
 俺を見つめる瞳から、涙が流れた。

 「尊きお方様、眼前に控えることをお許し下さい」
 蓮花の洗脳プログラムのせいだが、俺を神格化している。

 「許す。お前に会いたかったのだ。立て」
 俺が命じると、ミユキが立ち上がった。
 白のタンクトップと短パンを履いている。

 180センチ。
 大した長身だ。
 骨格も太い。
 長い手足には、鍛え上げた筋肉がついている。
 特に腿は太い。
 肩幅が広い。
 胸の大きさは普通だ。
 腹は細くはないが、引き締まっている。
 腰回りは女性らしくやや大きいが、やはり締まっている。
 理想的な戦士体形だ。

 「ミユキは美しいな」
 ミユキの顔が歓喜に輝いた。

 「もったいなきお言葉」
 「お前の訓練課程を見た。よく「俺のために」頑張ってくれているな。「嬉しい」ぞ」
 「ハッ!」
 「「俺のために」生まれ、俺に「尽くしてくれる」お前を労いに来た。「これからもずっと」俺に尽くしてくれ」
 「いかようにも磨り潰して下さい!」
 「すまないが、俺は「敵の攻撃を受けて」疲労している。万全ではないが、「お前のために」ここへ来た」
 「その敵は!」
 「心配するな。もちろん俺が撃破した」
 「私がその場にいさえすれば!」
 ミユキの顔が凶暴な苦悩で覆われる。
 俺はミユキを抱き締めた。
 ミユキは硬直して震えた。

 「ありがとう。いつかお前は「俺をそうやって守ってくれる」だろう。そして俺のために「どんな敵でも撃破」してくれるだろう」
 「ハッ! 必ず!」




 「まずは俺を癒してくれ。風呂に入ろう」
 「ああ! 尊きお方!」
 蓮花に風呂場へ連れて行ってもらう。
 前とは違う、一層広い浴場だった。
 俺の服を蓮花が脱がせる。
 ミユキは恍惚の表情で待っていた。

 「ミユキも脱ぎなさい」
 「はい」
 何の恥じらいもなく、ミユキは脱いだ。
 蓮花も着物を脱ぐ。
 俺の手を蓮花が引いて、浴室へ入った。
 恐らくかけ流しの湯が常に溢れているせいか、浴室は温かかった。
 俺は椅子に座らされ、二人に洗われる。

 「ミユキ、俺の身体はどうだ?」
 「尊いとしか言葉が見つかりません」
 蓮花が俺の股間を洗う。
 湯で泡を流し、ミユキに口で綺麗にするように命じた。
 ミユキが四つん這いになり、俺を丁寧に舐め上げ、くわえた。
 硬くなり、腹に張り付く俺のものを見て、ミユキは誇らしく微笑む。




 蓮花がマットを敷き、ミユキを導いた。

 「石神様、お鎮めください」
 俺は後ろからミユキに挿入した。
 ミユキがそれだけで歓喜の声を上げる。

 「ミユキ、お前を愛しているぞ」
 ミユキが気を喪った。
 蓮花がミユキを仰向けにし、俺のものをまた挿し込んだ。
 ミユキが意識を取り戻し、言葉にならない絶頂に到達する。
 大きな声を上げ、俺の背に手を伸ばしながら、無数に逝った。
 大量のものが、ミユキの中から溢れ出た。

 蓮花が口で俺を舐め上げ吸い取った。
 湯に浸した柔らかなタオルで丁寧に拭う。

 ミユキは恍惚の表情で寝ていた。
 俺はミユキを抱え、洗い場に移動する。
 止めようとする蓮花を手で制した。
 シャワーでミユキの身体を洗う。
 ミユキが目を覚ました。

 「起きたか」
 俺が指で掻き出しながら洗っていることに気付く。

 「石神様、いけません。自分で」
 「いいんだ。俺にやらせてくれ、「愛しいミユキ」」
 「!」
 俺は指を入れて、ミユキを刺激する。
 俺の腕を押さえようとしていたミユキの両腕が、俺の首に回される。
 ミユキが大量の液を噴出しながら、また絶頂に達した。
 俺がさらに指で刺激すると、何とも身体を震わせた。

 「もう、いけません」
 やっと言葉にし、俺の指を抜いた。
 放心したように、俺に体重を預けている。
 蓮花がミユキを支え、俺に湯船に入るように言った。

 しばらくして、二人が俺の両側に来る。

 「石神様、もう私はいつでも死ねます」
 「生きろ、俺のために」
 「!」
 蓮花が俺の背中に回り、俺の身体を指圧していった。
 非常に気持ちがいい。
 俺はミユキを前に呼び、抱き締めながらキスをした。
 舌を入れると、ミユキはうっとりとしながら、恐る恐る自分の舌を挿し込み回した。
 俺の股間をまさぐる。
 すぐに俺の準備が整うが、蓮花が止めた。

 「これ以上はお身体に障ります」
 ミユキがそれを聞き、手を離した。
 しばらく俺は蓮花の指圧を受けた。
 一度湯から上がり、マットでも丁寧に全身を押された。
 ミユキはその様子を見ながら、自分も習得しようとした。
 蓮花は幾つかミユキに教え、俺を指圧させた。
 格段に身体がほぐれた。
 血流が隅々まで回るのを感ずる。

 「蓮花」
 俺は蓮花をマットへ横たえた。
 全身を愛撫していく。
 次第に蓮花の身体は紅潮し、一度絶頂に達した。
 俺はそのまま蓮花の中へ入った。

 「いけません、石神様!」
 抵抗する蓮花の唇を奪う。
 蓮花は何度も身体を痙攣させて気を喪った。
 また大量のものが蓮花の中から溢れてきた。
 蓮花はすぐに目を覚まし、俺に無理をしないで下さいと言った。

 「無理はしない。愛するお前を抱きたかったんだ」
 蓮花はミユキに俺を湯船にと言い、自分の身体を洗った。



 「後で精のつくものを御作りします」
 「頼む」


 蓮花とミユキが俺の肩に頭を乗せた。





 「ミユキ」
 「はい、蓮花様」
 「石神様をお守りしましょう」
 「はい! 命に換えても!」



 俺はその白さが悲しかった。
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