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金曜日のアレコレ。

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 翌日の金曜日の朝九時。

 俺は亜紀ちゃんに首にロープを巻かれていた。
 眠っている亜紀ちゃんが、ロープの一端を手首に巻いている。
 逃れることは簡単だが、好きなようにやらせていた。
 鷹はもう起きている。
 下で子どもたちの朝食を作って、送り出してくれているのだろう。
 ロボもいないので、鷹にご飯をもらっていることと思う。
 ロボは鷹が大好きなようだ。
 ありがたい。

 「おい亜紀ちゃん」
 「うーん」
 亜紀ちゃんが俺の股間に手をやる。
 途端に反応した。

 「おい!」
 「タカさん、本当にテンガが必要ですね」
 「いるかぁ!」
 「もう、ヘンタイですねぇ」
 「お前だぁ!」
 俺は布団をはいで、トイレに行く。
 でかいテントのままだ。
 亜紀ちゃんが俺をじっと見ている。
 俺は歩きながら瞬時にロープを解いた。
 オチンチンに巻いて見せる。

 「ほらほら、太いぞー」
 「ヘンタイ!」
 俺は笑いながら部屋を出た。



 下に降りると、鷹が洗い物をしていた。

 「おはよう。悪いな、子どもたちにやらせてくれよ」
 「おはようございます。いいえ、私がやりたいと言ったんです」
 俺が座ると、お茶を出してくれる。

 「今朝は普通に召し上がれますか?」
 「ああ、大丈夫だ」
 鷹が配膳してくれた。
 亜紀ちゃんも起きて来て、一緒に食事をする。
 鷹の作るものは絶品だ。
 
 俺は食後にコーヒーを淹れてもらった。
 亜紀ちゃんと二人で飲む。

 「あのよ」
 「はい」
 「俺はともかくなぁ。亜紀ちゃんまで鷹に甘えてんじゃねぇ!」
 「はぁ!」

 「すみません、鷹さん!」
 鷹は笑って構わないと言う。

 鷹は午前中に帰ってもらうことにした。

 「ゆっくり休んでくれよ」
 「まだお世話したいのですが」
 「申し訳なさすぎるよ。もう大丈夫だ。鷹のお陰で普通の食事ができるようになったからな」
 亜紀ちゃんが封筒を持って来る。

 「こんなものじゃ済まない。これはお礼の一端だと思って納めてくれ」
 100万円入っている。

 「こんな大金、いただけません!」
 俺は無理矢理押し付けた。

 「受け取ってもらえなければ、俺が本当に困る。本当のお礼はまた後日するけど、とにかくな!」
 鷹は渋々受け取った。

 「また、鷹のマンションでご馳走してくれ」
 「喜んで! 是非いらしてください。金曜日が私の日です」
 俺たちは笑った。

 タクシーを呼び、鷹は帰って行った。




 「さて亜紀ちゃん」
 「はい?」
 「俺は明日の夕方に出掛けるからな」
 「!」
 亜紀ちゃんはダッシュで階段を上がって行った。
 ロープを手に戻って来る。

 「タカさん! バカすぎですよ!」
 俺は笑って、座れと言った。

 「夕べ、皇紀から蓮花の報告を聞いた。絶対に必要なことなんだ」
 「絶対にダメです」
 「特別移動車を手配した。六花の運転で行く」
 「絶対にダメです」
 亜紀ちゃんが涙ぐんでいる。

 「安静にする。約束する。蓮花は万事上手く俺に無理をさせずに、俺の仕事をこなせる」
 「ぜ、絶対にダメです」
 「六花もプロの看護師だ。俺を丁寧に世話してくれる」
 「それでも絶対にダメですってぇ!」

 「この家にいる以上に、俺は向こうで養生できる」
 「……」
 「蓮花の研究所は、医療体制が整っている。ある部分じゃ、うちの病院以上だ」
 「そ、それでも……」
 「俺の身体についても、蓮花の施設で調整が必要だ。ここではそれが出来ない」

 「本当に、タカさんは今以上に元気になって帰って来るんですか?」
 「約束する。そのためにも行くんだからな」
 「本当に約束ですよ!」

 「おう! 任せろ!」

 亜紀ちゃんは泣きながら抱き着いて来た。
 俺は優しく背中に手を回し、抱きしめてやる。

 俺はロボと上で横になっていると言った。
 昼にはウナギをとってくれと頼んだ。
 部屋に入り、冗談で飾っていたテンガや「おもちゃ」類を金庫に仕舞った。




 ウナギを喰うと、一段と体力が戻った気がする。
 亜紀ちゃんにそう言うと、喜んでくれた。

 「じゃあ、夕飯は何にしましょうか!」
 「そうだなぁ。念のためにさっぱりしたものにしておこうかなぁ」
 「そうですよね」
 「刺身でも喰うか」
 「いいですね! ルーとハーにデパートで買って来させます」
 「トロみたいな脂はやめてくれ。マグロの赤身とヒラメや鯛とかがいいな」
 「分かりました」
 「お前たちは普通に肉を喰えよな」
 「分かってます!」
 ウナギを食べ終えた亜紀ちゃんがステーキを焼きながら、元気よく返事をした。

 午後は亜紀ちゃんとのんびり映画を観た。
 山口雄大の『地獄甲子園』だ。
 亜紀ちゃんと大笑いした。

 「最高の作品だろう?」
 「はい! スカッとしました」
 「あの主役の坂口拓が大好きでなぁ」
 「いいですよね! あの人!」
 『デッドボール』『極道兵器』を今度観ようと言った。



 夕飯を食べていると、六花が来た。

 「おう! 来たか」
 「い、石神先生!」
 「おい、お前も喰えよ。夕飯はまだだろう?」
 いきなり、抱き着かれた。
 六花は大泣きしている。

 「何も知らなくて! 私、何も知らなくて!」
 「俺が知らせないようにしてたんだから、しょうがないだろう」
 六花はワンワン泣いた。
 六花が悲しむと、俺の胸が酷く痛んだ。
 俺は無理矢理座らせ、亜紀ちゃんに六花の食事を用意させる。

 「あとでゆっくり話すから、さあ、飯を喰えよ」
 六花は泣きながら箸をとった。
 あれだけ食事が大好きな六花が、ほとんど食べなかった。

 俺は地下に連れて行った。
 亜紀ちゃんがコーヒーを持って来て、そのまま一緒に座った。


 俺は双子の話を聞いて、気になってクロチャンを呼び出したことを話した。

 「別荘でも思っていたんだが、ちゃんとしておきたかったんだ」
 風花の関りを感じさせないように注意した。

 「そうしたらこのザマだ。でもな、もうあいつは舎弟にしたからな」
 六花は俺のやせ細った身体にしがみついたまま聞いていた。

 「一時はもっと痩せてたんだ。なあ、亜紀ちゃん?」
 「はい! 今はどんどん戻ってますよね!」
 亜紀ちゃんも合わせてくれる。

 「そうなんだよ。だから六花も安心してくれ。ただ、もうちょっとだけかかりそうだからな」
 六花は俺の胸に顔を埋めたまま頷いた。

 「それでな。一江から聞いていると思うけど、大事な用事があるんだ」
 「嫌です」
 六花が、俺の胸に口を付けて言った。

 「どうしても行かなきゃならないんだ」
 「ダメです」
 「俺が元に戻るためにも必要なんだ」
 「!」
 六花が顔を離し、俺を見つめる。

 「六花、お前が必要なんだ。俺を助けてくれ」
 六花が立ち上がった。

 「お任せ下さい!」

 俺は手招いて、俺を抱き締めてくれと言った。

 「いしがみせんせいー!」
 六花がまた泣いた。
 亜紀ちゃんも俺たちを見て泣いていた。




 詳しいことは、明日行きながら話すと言い、夕方に迎えに来るように言った。

 「夕方まで休むからな。4時半くらいに来てくれ」
 「分かりました。今日は泊ってはダメですか?」
 「悪いな。お前がいると、どうしても愛が迸るからなぁ」
 六花が潤んだ目で見てくる。

 「お前も十分に寝てくれ。向こうでは頼むこともあるだろうしな」
 「分かりました。お任せ下さい!」





 さて、明日は栞が来る。
 上手く運ばなくては。 
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