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皇紀と蓮花

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 日曜日。
 俺は双子に起こされた。

 「タカさーん。朝食ができましたよー」
 「タカさーん。大丈夫ですかー」
 「ダメだ。もう死ぬ。言い残すことがあるから、こっちへ来い」
 双子がニコニコしながらベッドに来る。
 俺は二人をベッドに引きずり込み、顔をペロペロしながら言った。

 「俺はなー、お前たちが大好きなんだぁー!」
 双子が声を上げて笑い、喜んで嫌がった。

 「折角顔を洗ったのにー」
 ロボが一緒に双子の顔を舐めた。
 「「やー」」
 顔を洗って、リヴィングへ降りた。

 「おはようございます。もう大丈夫そうですね!」
 亜紀ちゃんが笑って言った。

 「ああ、おはよう。大丈夫だよ」
 俺は夕べ軽く済ませたので、多めに食べた。

 「皇紀、この後出かけるから付き合え」
 「は、はい!」
 「タカさん、ゆっくりしてましょうよ」
 「大丈夫だよ」
 心配する亜紀ちゃんに言う。

 「どちらへ行くんですか?」
 「群馬だ。蓮花の研究所へ行くぞ」
 「分かりました!」
 「え、そんな遠くまで?」
 「大丈夫だよ、亜紀ちゃん。皇紀も一度見ておいた方がいいだろう」




 朝食を終えてすぐに、俺たちはアヴェンタドールに乗り込んだ。
 蓮花には先ほど連絡している。
 皇紀のカードも頼んだ。
 皇紀はカメラや何枚かの図面などを用意した。
 先日蓮花に渡した後に作成された図面だ。

 「皇紀、お前にも全部見てもらうからな」
 「はい!」
 「気持ちの悪いものもある。悪いな」
 「いいえ!」
 高速を飛ばし、二時間もかからずに着いた。

 「お待ち申し上げておりました」
 蓮花は門の前で待っていた。
 恐らく、周辺のカメラや監視装置、またレーダーなどで到着を知ったのだろう。
 ずっと待っていたわけではない。
 時間を無駄にする女ではないことを知っている。

 「皇紀だ。こいつにも案内してくれ」
 「かしこまりました」
 車を駐車場へ入れ、蓮花が皇紀にカードを渡し、俺たちは中へ入る。
俺がされたと同じコースを回る。
 皇紀はカメラで次々に必要なものを押さえていく。
 時々蓮花に質問し、蓮花がそれに答えていった。





 俺が見ていない、新たな施設もあった。
 皇紀の図面により建設されつつあるものだ。

 「こちらは「イーヴァ」(IVA:Imaginary Vibration Arms 虚震兵器)の建設現場です。実験映像は拝見しましたが、なんとこのようなものが」
 「皇紀と双子が作った。こいつらは天才なんだ」
 天才という言葉では正確ではない。
 ルーとハーが「エジソン嫌いのセルビア人」に相談したと言っていた。
 自分たちのことを気に入ってくれたのだと話していた。
 数学的に調整された周波数の組み合わせによって実現している。
 その周波数と組み合わせは極秘だ。
 蓮花にも教えていない。

 「タカさんとのお話がきっかけね!」
 「おじちゃんも驚いてたよ!」
 俺の様々なことをセルビア人に話すと、その人も笑っていたそうだ。
 まあ、俺が会えるわけもないが。




 「皇紀、肚をくくれ」
 俺はある建物の前で言った。
 そこには、蓮華の作った改造人間が納められている。
 皇紀は涙を流した。

 「タカさん、僕は絶対に許しません! こんな、こんなことは……」
 俺は皇紀を抱き寄せて建物を出た。




 以前に案内された食堂へ行った。
 蓮花が食事を用意してくれると言った。
 フレンチだった。

 「おい」
 「はい、なんでございましょうか」
 「お前、和食以外も作れたの?」
 「はい」

 「もしかして中華とかも?」
 「はい。お望みでしたらお作りしますが」
 「なんでこないだは和食ばっかだったんだよ」
 「石神様がわたくしに作って下さったので」
 「それで俺が好きだと思ったのか」
 「はい」
 よく見ると、蓮花がうっすらと笑っているようだ。
 俺も嬉しくなった。

 「おい、お前の作るものは何でも美味いな!」
 「ありがとうございます」
 俺たちは旺盛に食べた。
 オマール海老のテルミドールが絶品だった。
 ヨーロピアン種の高級品と思われた。

 「今日は他にご用事は」
 食後のコーヒーを飲んでいると、蓮花が聞いて来た。

 「いや、ない」
 「さようでございますか」
 蓮花が少し悲しげに言った。
 俺でなければ気付かないだろう。

 「皇紀、外のものをすべて写真に撮っておけ」
 「はい」
 「俺は少し汗をかいたので風呂を借りる。終わったらこの部屋で待っていろ」
 「分かりました」
 蓮花に案内され、俺は風呂に入った。
 蓮花を抱いた。



 食堂で皇紀が待っていた。

 「じゃあ帰るぞ」
 「はい!」
 「蓮花」
 「はい」
 俺は小さな袱紗を蓮花に渡した。

 「土産だ。身に着けてくれ」
 蓮花が袱紗を開いた。
 ペンダントだ。

 「俺がデザインして宝飾店に作らせた。お前の専用だ」
 蓮花が彼岸花と月の意匠のデザインを見て驚いた。

 「これを私に」
 「ああ。お前は俺の大事な女だ。「α」の欠片が入っている。お前を守るだろう」
 「ありがとうございます」

 俺たちは研究所を出た。
 またアヴェンタドールを飛ばす。





 「蓮花さん、嬉しそうでしたね」
 「そうか。お前にも分かったか?」
 「はい。だって、空の袱紗を何度も丁寧に畳んでましたもん」
 「流石、何人もの女を手玉にとる男は違うな!」
 「アハハハ!」

 俺は皇紀に俺の「ウルテク」を指南してやった。
 何度か説明のためにハンドルから手を離す俺を、皇紀から指摘されて笑った。
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