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一緒に寝よう!

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 俺は子どもたちを集め、千両のことを話した。

 「俺の靴を舐めて泣いて頼むんで、仕方なく受け入れた」
 亜紀ちゃんが笑う。

 「でも、俺はヤクザの親分じゃねぇからな!」
 「「「「はい!」」」」
 「ここは大事なとこだ。試験に出るからな!」
 子どもたちが笑う。

 「本当に何でもないことだ。あいつらが勝手に下に置いてくれと言うんで、そうするだけだ。別に特に関わるつもりはねぇ」
 「「「「はい!」」」」



 午後の予定はない。
 俺は中断した六花とのツーリングも考えたが、結局やめた。
 来週は鷹と別荘に行く。
 だからこの休みは子どもたちといよう。

 俺は双子を連れて散歩に出た。
 手を繋いで歩く。
 俺は誰かと手を繋ぐのは嫌いだ。
 腕を組むのはいい。
 先端を自由にしていないと、落ち着かないのだ。
 しかし、双子だけは違う。
 両手を繋ぐと気分が良くなる。
 不思議だ。

 「お前らってやっぱり、「気持ちいい光線」とか出してるよな。
 双子が喜ぶ。

 「私たちもタカさんと一緒にいるのがいい!」
 ルーが言い、ハーも頷いている。

 「今日はどこへ行こうか」
 「タカさんの行きたいとこでいいよー」
 「いつものコースでいいじゃん!」
 「お前ら、カワイイなぁ!」
 「「アハハハ!」」

 俺たちはいつもの公園へ行った。
 いつものベンチに座る。
 ルーが缶コーヒーを買ってくる。
 自分たちは好きなジュースだ。
 大金持ちのくせに、俺にねだる。
 カワイイ。

 まったりした。

 「ああ、千両がな」
 「「うん」」
 「「虚震花」を刀で斬ったらしいぞ」
 「「エエッーー!!」」

 「それで斬と仲良くなったらしい」
 「ありえないよー!」
 ルーが言った。

 「反物質をどうやって斬るの!」
 「「斬る」っていうのは、概念的なものもあるからな」
 「どういうこと?」
 「信じる力だよ。刀がただの鋼だと思ってる奴には、そういうものでしかない」
 「ええ?」

 「岩を斬ると信じた奴だけが斬れる」
 「そんなことってあるの?」
 「予定調和的なものだな」
 「ライプニッツ?」
 「そうだな。人間の信ずる力というのは決して侮れない。量子力学の「観測者」と同じことだな」
 「なるほど!」
 双子の理解は早い。

 「千両さんは信じたってことですか?」
 「そうだな。あれは極めた人間だからなぁ。「斬る」ということに関しては化け物だ。俺たちだって危ういかもしれん」
 「でも、タカさんだって信じる力はあるでしょ?」
 「そういうことだ。その力でもって、物事のすべての勝敗が決まると言っても過言ではない」
 双子がジュースを飲み干した。
 もう一本とねだるので、金を渡した。

 「じゃあ、信じたら何でもできるの?」
 「理論的にはな。でも、人間はやっぱり信ずる限界が自ずとしてあるからな」
 俺はナポレオンの話をした。

 「昔は戦争は貴族と傭兵のものだった。その時代にナポレオンは平民として軍隊に入った。ナポレオンのスゴイ所は、その時点で自分が元帥になると信じたことなんだよ」
 「へぇー」
 「普通は絶対に信じられない。貴族以外は士官には絶対になれない時代なんだからな。無理なんだよ。でも、ナポレオンは本当に信じたから元帥になり、ついには皇帝になった」
 「すごいね」
 「でも、ナポレオンの信ずる力も、そこまでだった。後は凋落する自分を信じてしまった」
 「それも信じるということなんですね」
 「そうだ。負けを信じてしまえば負ける。それが人間の限界なんだよ。まあ、それでいいんだけどな」
 「どこまでも上る自分は信じられないんですね」
 「そういうことだ」



 俺たちはJR中野駅の近くの『猫三昧』に顔を出した。
 ロボが元気なことと、いただいたオモチャの礼を言いに行った。

 「猫神様!」
 「石神だぁ! お前ら絶対わざと言ってるだろう」
 店長とタマが笑った。
 わざわざ来てくれてと言い、中へ案内されそうになったが、散歩の途中で寄っただけだと言った。

 「猫神様たちは、いつでも無料ですから!」
 「ロボに浮気を咎められたくねぇ」
 「なるほど!」


 
 俺たちはいつもの店でソフトクリームを買った。
 双子が店員に「根性入れて盛れ!」と言っていた。

 「俺はこういういつもの日常でいいんだけどなぁ」
 「そうですねー」
 「でも、毎日楽しいよ?」
 ルーが言った。

 「そうか?」
 「うん。だって、タカさんと一緒だもん!」
 「そうだそうだ」
 俺は二人を抱き締めた。
 勢いよく抱いたので、二人のソフトクリームがこぼれた。

 「「ギャーーーー!!!」」

 俺は慌てて二本買った。
 根性入れろと凄んだ。
 店員が笑っていた。

 帰り道。
 俺たちはロボのどこがカワイイのかを話した。

 「目が薄い緑じゃん」
 「ああ、そうだな」
 「キレイだよねー」

 「真っ白の毛もいい」
 「長いしっぽも?」
 「スラっとした体形」
 「ああ、前はデブだったよな」

 「あと、あんまり鳴かないね」
 「そうだなぁ。おとなしいよな」
 「タカさんが何か言うと鳴くよね」
 「返事するよな」
 「口をあけたり」
 「ちっちゃい牙がまたカワイイよな」

 「寝てるときは?」
 「ああ、俺も寝てるから知らねぇ」
 三人で笑った。

 「私たちも一緒に寝たいな」
 「お前ら寝相が悪いからなぁ」
 「そんなことないよ!」
 「じゃあ、今度頼んでみろよ」
 「「うん!」」





 家に帰って、双子がロボに一緒に寝てくれと言った。
 ロボが後ろ足で床をこすった。
 絶対嫌らしい。  
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