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幼子のごとくでなければ。

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 俺の感情が激しく震え、溢れ出ていた。

 命の遣り取りをしている時にも決して乱れない、俺の心が。
 誰よりも強いはずのこの俺が、子どもが描いた絵に慟哭している。
 情けない。

 しかし、どうにもならなかった。
 涙が溢れるだけではない。
 みっともない、子どものような泣き方を止められなかった。

 子どもたちが集まって来る。
 情けない。
 こんな俺が、今まで何を偉そうにこいつらに威張っていたのか。
 そんなことまで思うほど、俺は弱かった。

 「タカさん、あんまり泣くと、折角の絵が汚れちゃいますよ」
 俺は無意識で手を伸ばし、画用紙を身体から離していた。
 俺の胸元はグショグショだった。
 無言で絵を双子に返す。
 
 「タカさん、お風呂に入りましょう」
 誰かがそんなことを言った。
 俺は何も見えず、何も考えられなかった。




 俺は自分が担がれたのを感じた。
 服を脱がされ、また担がれて浴室に入った。

 「しょうがないなー! 今日は前も洗ってあげますね!」
 まだ泣いている俺は、背中を洗われ、前を洗われた。
 その後で、優しく髪を洗われた。

 「がんばれー、がんばれー」
 そう声が聞こえた。
 俺は両腿を持たれ、恥ずかしい格好のまま湯船にそっと入れられる。
 
 「オチンチンがブラブラですよ!」
 明るく笑いながら、指摘された。
 俺の足の上に跨り、俺は抱きしめられた。

 「タカさん、思い切り泣いて下さい」
 俺はまた声を上げて泣いた。











 「亜紀ちゃん、恥ずかしいよ」
 俺はようやく言った。

 「何言ってるんですか、あんなに泣いちゃって」
 「……」
 「今更ですよ! もう私、忘れませんから」
 「やめてくれ」
 亜紀ちゃんは一層強く俺を抱き締めた。

 「大好きです、タカさん」

 「そんなに泣いたら、奈津江さん、困っちゃいますよ」

 「そうだな」

 「オチンチンって、重たいんですね」
 「おい」
 「洗ってると、ちょっと硬くなりましたよ?」
 「アハハ」
 「おい! ちょっと調子が出てきたじゃねぇかぁー!」
 亜紀ちゃんが言った。
 俺は笑った。
 少し落ち着いた。

 「悪かったな、突然」
 「しょうがないですよ。タカさんの唯一の弱点ですからね」
 「そうだな」




 「まいった」
 「はい」
 「本当にまいった」
 「はい」
 亜紀ちゃんが俺にキスをした。

 「みんなは?」
 「いつもどーり、片付けて勉強して寝ますよ」
 「そうか」

 「ああ、風呂から上がってやらないと。あいつら、待ってるだろう」
 「いいんです。今日はいつもよりゆっくり入りましょう」
 まったくこんな時まで、と亜紀ちゃんが呟いた。
 亜紀ちゃんは俺を抱いたままだった。

 「何か音楽かけましょうか?」
 「ああ、いいよ」
 「エッチなDVDでもどうですか?」
 「バカ」
 「じゃー、今日は私にちょっとエッチなことします?」
 「やめろ!」
 俺たちは笑った。
 俺も亜紀ちゃんを抱き締めた。

 「おかえりなさい、タカさん」
 「悪かったな」





 風呂から上がると、皇紀と双子がリヴィングで待っていた。

 「悪かったな、取り乱した。もう大丈夫だ」
 「「タカさん、ごめんなさい」」
 俺は双子を抱き締めた。

 「何言ってんだ。ありがとうな、ルー、ハー」
 奈津江の絵は仕舞われていた。
 俺は皇紀も抱き締めた。

 「ちょっとみっともなかったな。悪い」
 「そんなことありません!」
 子どもたちは風呂に入りに行った。



 
 亜紀ちゃんがワイルドターキーを用意した。
 俺は一気に煽った。



 「タカさん、おやすみなさい」
 「ああ、おやすみ」





 俺は部屋へ入り、寝た。














 奈津江の夢を見た。
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