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四度目の別荘 XⅤ

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 スーパーで買ったものは、また運んでもらった。
 皇紀に電話し、俺たちより先に着いたら受け取っておくように言った。

 「響子は寝てるか?」
 「はい。タカさんたちが出掛けてすぐに」
 起きたら水分を摂らせるように、六花に伝えるよう言った。
 響子のために、睡眠中はなるべく冷房を使わないようにしていた。
 今日は少し暑いから寝汗をかくだろう。
 
 「響子ちゃんのことは、本当に大事にしてますよね」
 柳が後ろで言った。

 「もちろんだ」
 「私にも何でも言って下さい。お手伝いします」
 「ありがとう。頼むぞ。お前何で後ろにいるんだよ。お礼にオッパイ揉めないじゃないか」
 「いいですよ!」
 「ちょっとオッパイこっちに出せ!」
 「いやです」

 別荘に着き、柳は一通り挨拶を済ませた。
 部屋へ案内する。

 「亜紀ちゃんと一緒の部屋だからな」
 「はい。亜紀ちゃん、よろしくね」
 「こちらこそ」
 「そういえば、柳。お昼は食べたのか?」
 「ああ、いえ。朝はちゃんと食べたんで大丈夫ですよ」

 「何いってんだよ。先に言ってくれ。悪かった気が回らなくて」
 「いいんですよ。私も言わなかったですし」
 「ばかやろー! 石神家では食事を抜いたら殺し合いになるんだぞ?」
 「アハハハ」

 俺は柳をリヴィングに連れていき、簡単なものを作る。

 「夕飯もあるから、ちょっと軽めだ。勘弁してくれ」
 「いえ、私こそすいません」
 俺はソバを茹で、その間に薬味を作る。
 10分もかからず、柳に出した。

 「俺たちもソバだったんだ。こんなもので悪いな」
 「いいえ、ありがとうございます」
 柳は箸を手に取った。

 「ところで石神さん」
 「あんだよ」
 「このウインナーとハムって」
 「ああ、うちの薬味な」
 「へぇー」
 浅葱、ショウガの摺り下ろし、ワザビ、刻み海苔、ウインナー二本、ハム二枚。
 柳は優雅に啜り、すべて食べた。



 響子と六花が起きて来た。
 柳と挨拶を交わす。

 「リュウー!」
 響子が抱き着き、柳も嬉しそうに笑った。
 俺は響子と六花、柳を連れて散歩に出た。

 「悪いな柳。来た早々に連れ回して」
 「いいえ」
 響子は電動移動車だ。

 「響子ちゃん、それいいね」
 「うん! タカトラが用意してくれたのよ」
 「へぇー」
 しばらく歩き、俺は響子と六花を先に返した。
 柳と二人で、倒木の広場に行く。

 二人で座り、柳に水筒の冷たいダージリンティーをカップに注いで渡す。

 「柳、オロチがやったことを聞いているか?」
 「はい、父から聞きました。何かのエネルギーを吐いたって」
 「ああ。うちでは亜紀ちゃんしか知らない」
 「分かりました」
 「柳、済まなかった」
 俺は頭を下げた。

 「石神さん、何を」
 「御堂の家まで標的になるとは思わなかった。オロチがいなければどうなっていたか。今でも恐ろしいよ」
 「そんな! 石神さんのお陰で私たちも無事だったんですから」
 「いや、オロチはお前の家の守り神だ。俺のせいじゃないよ」
 「でも、石神さんがオロチを強くして下さったんですよね」
 柳はすべて聞いているようだった。

 「まあ、全部俺の思い付きだけだったけどな。でも、本当に助かった」
 「石神さん」
 「御堂を、みなさんを、柳、お前を喪わなくて良かった」
 柳が俺を抱き締めて来た。

 「お前を喪ったら、俺は鬼になっていただろう」
 柳は俺を抱きながら泣いていた。
 俺は柳を隣に座らせた。
 肩を抱く。

 「こないだ、お前の家に行って、俺たちはコンバットスーツでたびたび出掛けただろう?」
 「はい。運動とかで」
 「あれは、お前の家の周辺を見回って、防衛対策をしてたんだ。皇紀が詳細に資料を集めて今も解析している」
 「そうなんですか!」
 「御堂には少し話しているが、俺の敵がまた動き出す。お前の家は必ず守るからな!」
 「それでオロチに」
 「不思議な感覚があったからな。それが良かったらしい」

 俺は柳にキスをした。
 口に舌を入れた。
 柳はぐったりとした。

 「どうだよ、大人のキスは」
 「ダメです。立てません」
 「だらしねぇな。そんなんじゃ、とても俺の「相手」はできねぇぞ?」
 柳は立ち上がった。

 「よし、じゃあ帰るか!」
 俺は柳を背負った。
 荷物は柳に持たせる。

 「今日は大人のオッパイ触りをやるからな!」
 「え、ちょっと待って下さい」
 俺は笑い、揺らしてやると柳が笑った。

 「子どもの頃に戻ったみたいです」
 「お前、まだ子どもだろう?」

 柳が俺の頭を叩いた。
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