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襲撃者の夜

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 「蓮華って誰だよ」
 『お前も会っている』
 「だから誰?」
 『バイクでバカ共と来た時に会っただろう』
 思い出した。

 「あの気味の悪い子どもか!」
 『あれは子どもではない。お前よりも年は上だ』
 そんなはずはない。
 どう見てもせいぜい15歳かそのくらいだった。

 「それで若作りのババァがどうかしたのか」
 『蓮華はお前を許さないと言っていた』
 「どうしてだよ」
 『お前ぇ! うちの塀をぶっ壊していっただろう!』
 斬がキレた。

 「だからあれはケジメだって言っただろう! お前こそバカ孫に俺が何されたか忘れたか!」
 『あれは業がやったことだ! わしは関係ない!』
 「ふざけんなぁ!」
 『本当に殺すぞ!』
 しばし罵り合う。

 「いい加減にしろ。何でお前じゃなくその蓮華が来るんだよ」
 『蓮華が本当に怒っているのは、お前が「花岡」を超え「業(カルマ)」を脅かしたからだ』
 「ああ、やっぱりスルッと超えちゃったもんな!」
 『ふん! 少なくとも、蓮華はそう思っておる』

 「負け惜しみを言うな!」
 『わしはちゃんと止めたぞ?』
 「ならどうして」
 『蓮華は特別だからな』

 「どういうことだ?」
 『蓮華は「花岡」の直系ではない。わしの「外の娘」だ』
 「相変わらず気持ち悪いな、お前は」
 『わしが生ませた子どもたちの中でも、特に変わっておる。「花岡」の技を独自に変化させた』
 「……」

 『驚いたか。お前たちだけではないわ。わしらも日々変化している』
 「俺を殺しに来るのか?」
 子どもたちが緊張した。

 『最終的にはな』
 「!」
 それは俺以外の人間を襲うということを意味していた。

 『蓮華には、配下がいる。あやつが独自に集め改造して鍛えた連中だ。前のようなチンピラとは違うぞ?』
 「改造?」
 『蓮華は脳をいじくる。あいつに忠実で、しかも人間の限界まで能力を上げているバケモノたちだ』
 「本当に気持ち悪いな」
 『もはや人間ではないわ。蓮華にどんな扱いをされてもヘラヘラと笑っておるよ』
 斬も嫌っているらしい。

 「どうして俺に教える」

 『一応、わしの手落ちもあるからな。それにお前にはまだ価値がある。お前以外はどうでもいいがの』
 「俺たちには、もう「花岡」は通じないぞ」
 『人を殺すのに、「花岡」だけが方法ではない。そうだろう』
 「てめぇ」
 『蓮華と配下で、およそ50人。数日のうちに行くぞ。お前、ちゃんと生き延びろよ』
 「なんのこともねぇ」

 電話を切った。
 子どもたちが真剣な顔で俺を見ている。



 「戦争だ」



 子どもたちが頷いた。






 家に戻り、すぐに電話をかける。
 六花に、響子の傍を離れるなと言った。
 アビゲイルにも事情を話す。
 すぐに警備を手配すると言ったが、俺はマリーンに手を貸してもらえないかと話した。
 
 「ターナーに話そう」
 「頼む」

 電話を切り、俺は考えていた。
 子どもたちは「花岡」を使えるが、実際の戦闘の経験はない。
 
 あいつを呼ぶか。

 俺は強力な助っ人を頼んだ。


 子どもたちを集めた。
 車の中で、斬の言ったことはすべて説明している。
 斬との会話を録音していた。
 それも聞かせている。

 「ルーとハーは鷹を警護してくれ」
 「「はい!」」
 「亜紀ちゃんと皇紀は家にいてくれ。作戦の参謀本部になる。栞も呼ぶ」
 「「はい!」」
 「俺は響子につく。恐らく、攻撃の主力は響子を狙う」
 「タカさん、お気を付けて」
 亜紀ちゃんが縋るような目で俺を見て言った。

 俺は子どもたちに戦闘の予測と対処を説明する。
 恐らく敵は「花岡」の他に銃器を使う。
 どこまでの装備かは想像でしかないが、それほどの重火器は使われないと考えている。
 日本国内で重火器を使えば、追及が相当なものになる。
 それは斬の側にいる蓮華も望んではいないだろう。

 「恐らくは短期決戦になる。ある程度同時多発的な戦闘になるかもしれん。でも、相手もそれほどの人数ではない。主に響子への主力に割くだろう」
 「俺が響子に着くことは、相手も予測している。それとこの家、つまりお前たちだ。そして栞、鷹だ」

 「栞さんもですか」
 「ああ、栞は実質的に花岡家から離れている。俺の側だ」

 「私たちが「花岡」を使うことは知られているんでしょうか」
 「これは何とも言えないが、多分知られていない。まあ、度肝を抜いてやれ」
 「はい」

 「いいか、相手は人間じゃない。思う存分やれ」
 「「「「はい!」」」」



 俺は更に電話を数本かけた。
 そしてハマーに双子を乗せ、病院へ向かった。

 「お前ら、鷹を頼むぞ」
 「うん!」
 「まかせてー!」
 コンバットスーツを着ている。
  ハマーはでかい。
 普通の駐車場には停められないため、資材搬入用の出入り口に停めた。
 連絡してあるので、鷹が待っていた。

 「タクシーで移動しろ。車を降りる時に、特に注意するんだぞ」
 「「はい!」」
 「鷹、しばらく悪いが二人と一緒にいてくれ」
 「分かりました」
 「迷惑をかける」
 「石神先生と運命を共にします」
 「ありがとう」

 「チューは?」
 ハーのリクエストに応えた。

 「「ヤー!」」
 「お前がやれって言ったんだろう!」
 「ほんとにやらなくてもいいじゃん!」
 鷹が笑ってくれた。
 双子にもチューをしてやる。
 俺は裏手に並んでいるタクシーに三人を乗せた。





 響子の病室へ向かっている途中で電話が鳴った。

 「おう! 9時には羽田に着くぞ」
 「分かった、迎えに行ってやる」
 「なにおぅ! お前、ハワイでバカンスを楽しんでたのを飛んできてやったのに!」
 「悪かったな、ハンバーガーを奢ってやる」
 「ナゲットとポテトも付けろ!」
 「分かったよ!」

 頼もしい奴が来た。
 すぐにハマーで羽田へ向かう。







 「おう! 久しぶりだな、聖!」 
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