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再び、御堂家 Ⅲ
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夕飯は「舟盛」だった。
予想外だ。
全部で17杯もある。
どれもでかい。
5人前以上ある。
様々な刺身が乗っている。
子どもたちも滅多に喰わないアワビやサザエがある。
「おい、御堂。なんだこれ」
御堂が笑った。
「石神を驚かせて嬉しいよ」
「お前」
「まだあるからな。部屋に入りきれないから、調理場に置いてある」
「石神さん、早く!」
正巳さんに急かされた。
俺は正巳さんの隣に座った。
コの字型の配膳は、俺、正巳さん、菊子さんが並んでいる。
俺の右側に亜紀ちゃん、柳、御堂、澪さん。
反対側にルー、ハー、皇紀、正利がいる。
大丈夫か、正利。
「お前らー、頼むから抑えてくれー」
俺はついにお願いした。
「「「「はい!」」」」
「御堂! こいつらいつも返事だけはいいからな」
御堂は既に大笑いしていた。
正巳さんが立った。
「また今年も息子の大親友が遠くから来てくれた。石神さん、お子さんたち、今日も存分に食べて飲んでください。では、いただきます」
「「「「「「「「いただきます」」」」」」」」
子どもたちが目の前に置かれた舟盛に一斉に手を出す。
俺はすぐに正巳さんと菊子さんの前に移った。
近づいたサメを駆逐するためだ。
数分で子どもたちの舟盛が無くなる。
正巳さんが大喜びしている。
俺に酒を注ぎながら言った。
「ああ、これがまた見られた! 年を取ってから、よもやこんな楽しみがあったなんてなぁ!」
俺は苦笑しながら正巳さんに酒を注ぐ。
子どもたちは近くの舟に襲い掛かっている。
クラーケンか。
「おい! まだ持って来てくれるから大人しく待ってろ!」
亜紀ちゃんと双子が俺を睨む。
早くしないとこいつらがどうなるのか分かってるんだろうなぁ、という目だ。
ペースは落としながら、他の舟から刺身をつまむことをやめない。
御堂家の人々はみんな笑っている。
御堂や柳は子どもたちと争おうとしたが、相手にならない。
ようやく次の舟が来た。
今度は子どもたちの前に二つずつ置かれる。
ハーが皇紀を蹴り飛ばした。
正巳さんと菊子さんがびっくりしている。
「大丈夫ですよ。怪我するような育て方はしてません」
皇紀が何事もなかったかのように席に戻った。
「おぉー!」
正巳さんが喜んだ。
また子どもたちの舟が空になる。
「ツマもちゃんと喰え!」
子どもたちが夢中で掻き込む。
「空」にしないと次が喰えないという「教育(洗脳)」を施してある。
俺も苦労しているのだ。
やがて最後の舟が来た。
カニとエビが満杯に乗っている。
正巳さんの前にも置かれた。
子どもたちが喰い尽くした。
残るのはゆっくり召し上がっていた正巳さんたちの席と御堂たちの席だ。
「お手!」
子どもたちが唸りながらテーブルの端に移動し、手を重ねる。
目の前にいる正利が脅えた。
「ハァーッハッハ!」
正巳さんが大爆笑した。
他の御堂家のみなさんも笑っている。
「みなさん! 今のうちに食べて下さい!」
食後のお茶を出され、子どもたちも落ち着いてニコニコしていた。
「ああ、楽しかった!」
正巳さんが笑って言った。
「おい、正利! うちに遊びに来てくれな!」
「ちょっと考えさせてください!」
みんなが笑った。
「柳、よく生きて戻ったな」
御堂が言う。
「石神さんが守ってくれたから!」
澪さんが嬉しそうだった。
子どもたちはそれぞれ部屋へ行った。
柳は亜紀ちゃんと双子を、正利が皇紀を連れて行く。
やはり御堂家は育ちが違う。
ちゃんと客の歓待を心得ている。
テーブルがまとめられ、大人たちで酒を飲んだ。
正巳さんの席で残っていた刺身が皿に移され、澪さんが追加で幾つかのつまみを作ってくれた。
主に俺が子どもたちの大食いや悪戯の話をして、みなさんに笑ってもらった。
菊子さんも最後まで付き合い、酔った正巳さんと一緒に部屋に戻った。
澪さんがついていく。
俺と御堂だけになった。
「石神、今日の演武はお前たちの力を見せてくれたんだな」
「ああ。お前のご家族にな」
「本当はもっと」
「亜紀ちゃんが最強だけど、山を崩すくらいはやるよ」
「そうか」
「信じてくれるのか」
「お前だからな」
嬉しかった。
俺はちょっと待っててくれと言い、部屋の荷物からノートPCを持って来た。
「これはお前だけに見せる。子どもたちも、この映像の存在は知らない」
「うん」
国道246でのシーンだ。
栞と双子が駒沢大学付近で激しい戦闘をしている。
そこへ、巨大な電光と共に亜紀ちゃんが現われ、道路を粉砕する。
辺りが爆煙に包まれ、何も見えなくなる。
「これは俺が車の中から撮影した。カメラには「α」の破片を付けていたから、画像が残った」
「すさまじいな」
他にも、丹沢での訓練の映像も見せた。
御堂は驚いてはいたが、嫌な顔はしなかった。
親友は、俺の心を読んでいたのだろう。
「俺は山中の子どもたちを、こんなにしてしまったよ」
御堂が俺の肩に手を置いた。
「今はもう石神の子どもたちだろ?」
「ああ、そうだな」
「御堂」
「ああ」
「柳をもらっていいか?」
「もちろんだ」
「ありがとう」
俺は御堂の手を握った。
予想外だ。
全部で17杯もある。
どれもでかい。
5人前以上ある。
様々な刺身が乗っている。
子どもたちも滅多に喰わないアワビやサザエがある。
「おい、御堂。なんだこれ」
御堂が笑った。
「石神を驚かせて嬉しいよ」
「お前」
「まだあるからな。部屋に入りきれないから、調理場に置いてある」
「石神さん、早く!」
正巳さんに急かされた。
俺は正巳さんの隣に座った。
コの字型の配膳は、俺、正巳さん、菊子さんが並んでいる。
俺の右側に亜紀ちゃん、柳、御堂、澪さん。
反対側にルー、ハー、皇紀、正利がいる。
大丈夫か、正利。
「お前らー、頼むから抑えてくれー」
俺はついにお願いした。
「「「「はい!」」」」
「御堂! こいつらいつも返事だけはいいからな」
御堂は既に大笑いしていた。
正巳さんが立った。
「また今年も息子の大親友が遠くから来てくれた。石神さん、お子さんたち、今日も存分に食べて飲んでください。では、いただきます」
「「「「「「「「いただきます」」」」」」」」
子どもたちが目の前に置かれた舟盛に一斉に手を出す。
俺はすぐに正巳さんと菊子さんの前に移った。
近づいたサメを駆逐するためだ。
数分で子どもたちの舟盛が無くなる。
正巳さんが大喜びしている。
俺に酒を注ぎながら言った。
「ああ、これがまた見られた! 年を取ってから、よもやこんな楽しみがあったなんてなぁ!」
俺は苦笑しながら正巳さんに酒を注ぐ。
子どもたちは近くの舟に襲い掛かっている。
クラーケンか。
「おい! まだ持って来てくれるから大人しく待ってろ!」
亜紀ちゃんと双子が俺を睨む。
早くしないとこいつらがどうなるのか分かってるんだろうなぁ、という目だ。
ペースは落としながら、他の舟から刺身をつまむことをやめない。
御堂家の人々はみんな笑っている。
御堂や柳は子どもたちと争おうとしたが、相手にならない。
ようやく次の舟が来た。
今度は子どもたちの前に二つずつ置かれる。
ハーが皇紀を蹴り飛ばした。
正巳さんと菊子さんがびっくりしている。
「大丈夫ですよ。怪我するような育て方はしてません」
皇紀が何事もなかったかのように席に戻った。
「おぉー!」
正巳さんが喜んだ。
また子どもたちの舟が空になる。
「ツマもちゃんと喰え!」
子どもたちが夢中で掻き込む。
「空」にしないと次が喰えないという「教育(洗脳)」を施してある。
俺も苦労しているのだ。
やがて最後の舟が来た。
カニとエビが満杯に乗っている。
正巳さんの前にも置かれた。
子どもたちが喰い尽くした。
残るのはゆっくり召し上がっていた正巳さんたちの席と御堂たちの席だ。
「お手!」
子どもたちが唸りながらテーブルの端に移動し、手を重ねる。
目の前にいる正利が脅えた。
「ハァーッハッハ!」
正巳さんが大爆笑した。
他の御堂家のみなさんも笑っている。
「みなさん! 今のうちに食べて下さい!」
食後のお茶を出され、子どもたちも落ち着いてニコニコしていた。
「ああ、楽しかった!」
正巳さんが笑って言った。
「おい、正利! うちに遊びに来てくれな!」
「ちょっと考えさせてください!」
みんなが笑った。
「柳、よく生きて戻ったな」
御堂が言う。
「石神さんが守ってくれたから!」
澪さんが嬉しそうだった。
子どもたちはそれぞれ部屋へ行った。
柳は亜紀ちゃんと双子を、正利が皇紀を連れて行く。
やはり御堂家は育ちが違う。
ちゃんと客の歓待を心得ている。
テーブルがまとめられ、大人たちで酒を飲んだ。
正巳さんの席で残っていた刺身が皿に移され、澪さんが追加で幾つかのつまみを作ってくれた。
主に俺が子どもたちの大食いや悪戯の話をして、みなさんに笑ってもらった。
菊子さんも最後まで付き合い、酔った正巳さんと一緒に部屋に戻った。
澪さんがついていく。
俺と御堂だけになった。
「石神、今日の演武はお前たちの力を見せてくれたんだな」
「ああ。お前のご家族にな」
「本当はもっと」
「亜紀ちゃんが最強だけど、山を崩すくらいはやるよ」
「そうか」
「信じてくれるのか」
「お前だからな」
嬉しかった。
俺はちょっと待っててくれと言い、部屋の荷物からノートPCを持って来た。
「これはお前だけに見せる。子どもたちも、この映像の存在は知らない」
「うん」
国道246でのシーンだ。
栞と双子が駒沢大学付近で激しい戦闘をしている。
そこへ、巨大な電光と共に亜紀ちゃんが現われ、道路を粉砕する。
辺りが爆煙に包まれ、何も見えなくなる。
「これは俺が車の中から撮影した。カメラには「α」の破片を付けていたから、画像が残った」
「すさまじいな」
他にも、丹沢での訓練の映像も見せた。
御堂は驚いてはいたが、嫌な顔はしなかった。
親友は、俺の心を読んでいたのだろう。
「俺は山中の子どもたちを、こんなにしてしまったよ」
御堂が俺の肩に手を置いた。
「今はもう石神の子どもたちだろ?」
「ああ、そうだな」
「御堂」
「ああ」
「柳をもらっていいか?」
「もちろんだ」
「ありがとう」
俺は御堂の手を握った。
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