富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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再び、虎と龍 Ⅶ

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 日曜日。
 俺はまた10時頃に起きた。
 夕べは5時まで騒いだ。

 「タカさん、おはようございます!」
 亜紀ちゃんが元気よく挨拶してくれる。

 「「「「おはようございます!」」」」
 柳も起きていた。
 俺は卵かけごはんを食べた。

 「やっぱり最高だな、柳!」
 「うれしいです!」
 「褒めるとまた送られるから困るんだけどな。でもやっぱり美味い。卵が絶品なのもそうだけど、他に送ってくれる食材も最高だよなぁ」
 「みんな一生懸命に作ってくれてますから」
 実質的に、御堂の家は小作農のままだ。
 しかし、御堂家のためにと、みんなが懸命に働いている。

 「タカさん、今日のご予定は?」
 亜紀ちゃんが聞いてきた。

 「今日は六花と走る予定だ。柳はどうする?」
 「よろしければ、響子ちゃんと遊びたいんですけど」
 「ああいいぞ。じゃあ悪いけど、タクシーで行ってくれ。病院で待ち合わせよう」
 「いいえ、電車で行きますよ」
 俺は無理にタクシーで行かせる。
 亜紀ちゃんが手配した。




 俺はライダースーツに着替え、ドゥカティを出す。

 「大きいバイクですね」
 「いいだろう!」
 「はい!」
 「ちょっと乗ってみるか?」
 「ダメですよ! 昨日の六花さんの泣き顔を見たら、1秒だって乗れません」
 俺は笑って柳の頭を撫でる。
 タクシーが来たので、俺は先に出た。

 「向こうで待ってるからな」


 

 響子の病室には、既に六花が来ていた。
 
 「タカトラー!」
 響子が抱き着いて来る。
 抱えてやる。
 少し重くなった。
 ちゃんと成長してくれているのが嬉しい。

 「後からまた柳が来るぞ」
 「うん!」
 「響子と一緒にいたいんだと」
 「うれしー!」
 響子がニコニコしている。

 「響子ちゃん!」
 柳が来て、響子が抱き着く。

 「リュウ、また来てくれて嬉しい」
 「うん。今日はまた一緒に遊ぼうね!」
 俺は柳に、響子のスケジュールを話した。
 昼食は響子と同じく、オークラのものが柳の分も届くこと。
 昼食後は、響子は少し寝ること。
 起きた頃に、俺たちも戻ると言った。

 「響子が寝ている間、お前も少し寝ろよ」
 「はい。でもここでいいんでしょうか?」
 「俺の部屋を貸してやる」
 俺は案内し、窓のロールカーテンを降ろした。

 「これで外から見えないからな。警備の人なんかには話しておくから」
 「はい、ありがとうございます」
 柳は目を輝かせて俺の部屋を見ていた。



 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■



 「響子ちゃん、セグウェイに乗ろうか?」
 「うん!」
 響子は柳を屋上へ案内した。
 響子は石神から指定された乗っていい場所以外では、セグウェイを引いて歩いた。
 それを見て、柳が持ってやる。

 「へぇー、ここはいいねぇ」
 「エヘヘ」
 二人で走る。
 三十分が経ち、柳は石神に言われた通りに、響子を部屋へ戻した。
 
 ベッドに寝かせると、響子は喉が渇いたと言った。
 柳はテーブルで常温になっている紅茶を響子のために注ぐ。

 「おいしい」
 響子がニコニコして言った。
 日曜日は誰もいない。
 しかし、今日は柳がいるのが嬉しい。

 「リュウ! タカトラを見よう!」
 「え?」
 響子はタブレットを操作し、石神の動画を次々に柳に見せてやった。

 「あー!」
 柳は響子の隣に座り、一緒に楽しんだ。

 看護師が食事を運んできた。

 「柳さんね? 石神先生から伺っています。今日は響子ちゃんを宜しくお願いします」
 「はい! すみません、運んでいただいて」
 「いいんですよ。終わった頃に、また下げに来ますね」
 「はい」
 響子と向かい合わせで、テーブルで一緒に食べた。
 魚介のリゾットとサラダ。
 ポルチーニと細切りのササミのマリネがあった。
 柳のものは、響子よりもずっと量が多い。
 どれも美味しかったが、デザートの烏骨鶏のプリンがまた良かった。

 「このプリンが大好きなの!」
 「うん、美味しいね!」
 響子はサラダとマリネを少し残した。
 リゾットは完食している。

 看護師が食器を下げに来る。
 響子の食欲を褒め、ボードに記録し、写真を撮る。
 歯を磨かせ、響子をベッドに寝かせてくださいと言い、出て行った。
 またタブレットをしばらく見ているうちに、響子が眠そうになる。

 「じゃあ、響子ちゃん、また後で」
 「うん」
 響子はすぐに眠った。
 幸せそうな寝顔だった。

 柳は石神の部屋へ行く。

 「へぇー、ここが石神さんの仕事部屋かぁ」
 デスクの上には論文と医学書が積み上がっている。
 どれにも付箋が貼ってあり、赤でマークがついている。
 英語の論文がほとんどだ。
 柳が読もうとしても、専門用語が多く分からない。
 雑然としているようで、しっかり片付いている。

 部屋の空気を思い切り吸った。
 石神が使っている、ペンハリガンのクァーカスの香りがほんのりとする。
 柑橘系の気品のある香りだ。
 柳は椅子に腰かけ、目を閉じた。
 寝不足のせいもあり、すぐに眠りに落ちた。



 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■



 「柳、起きろ」
 「あ、石神さん」
 「よく寝てたな」
 「はい」
 
 「じゃあ、響子の部屋にいるからな」
 「はい」
 洗面所を案内した。

 柳が来た。
 丁度、響子がモゾモゾし始めた。

 「お前にこれを見せたくてなぁ。熟睡してたけど起こした。悪かったな」
 「いいえ! カワイイですねぇ」
 「そうだろ?」
 六花と三人で眺めていた。
 三人で顔を近づける。
 響子が目を開けた。

 「いやぁー」
 俺たちは笑った。
 六花がウェットティッシュで顔を拭いてやる。

 「今日もカワイかったぞ」
 「やだぁー」
 響子は洗面台で顔を洗い、六花がタオルで拭く。

 「そう言えば柳さんに聞き忘れてました」
 六花が柳に向かって言った。

 「柳さんは何曜日になさいますか?」
 「「え?」」
 俺と柳は意味が分からなかった。
 六花は説明する。

 「響子は月曜日がいいと言ってます。これは決まりです。栞さんは火曜日希望だと。鷹さんは金曜日で絶対。これも決まりです。土曜日はもちろん私。これも決まりです」

 「おい、お前何言ってんの?」
 「石神先生は少し前まで週休二日でした」
 「今もそうだけど?」
 「いえ、鷹さんが入ってから、週休一日になってます」
 「は?」

 「今回柳さんが入って、もうお休みはありませんね」
 「だから何?」
 「残りの水曜日、木曜日で、柳さんと、またお会いしたことはありませんが緑子さん。もしかしたら亜紀ちゃん。ですのでどこかの曜日で3P……」
 俺は六花の頭にチョップを入れた。

 「「3P」ってなーに?」
 響子が聞いてきた。
 理解した柳が真っ赤になっている。

 「じゃあ、私は水曜日で」
 「おい!」
 「かしこまりました」
 六花は手帳に書き込んだ。






 休みの無い俺とみんなで、セグウェイで楽しく遊んだ。

 「私は時々ならば3Pでも」
 俺は六花の頭にまたチョップを入れた。

 でも、ちょっとだけ楽しくなった。
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