282 / 2,840
マグロを食べよう。
しおりを挟む
響子が寝ている。
最近、一日の行動が変わった。
朝、8時半に起床。
9時に軽い朝食。
このあたりは一般の入院患者と違う。
大分遅い。
ちなみに、一般の入院患者の食事は、病院側の都合に拠っている。
食事の時間帯を早めないことには、業者に負担をかけるためだ。
響子の場合は、直接ホテルなどから取り寄せるので、関係ない。
食事が終わると、響子はセグウェイに乗る。
俺が許可した範囲を巡回し、所々で挨拶する。
たまに、検査を受けるときもある。
そういう時は、多少不機嫌になるので、六花がその前に遊んでやっている。
30分も乗っていると疲れてくるので、ベッドに戻る。
本を読んだり、映画を観ることもある。
体調による。
昼食の後は、今まで通りに俺が抱いて部屋に連れて行く。
甘えてきたらベッドに戻し、昼寝をする。
2時間ほどで目を覚ますので、またセグウェイに乗る。
今度は六花が一緒にいて、屋上で遊ばせるか、六花も一緒に遊ぶ。
1時間ほどでまたベッドに。
夕食までまったりと過ごす。
ここまでセグウェイに夢中になるとは思わなかった。
「寝たな」
「寝ましたね」
「おい、一緒にマグロを喰いに行こう」
「はい! すぐに着替えてきます!」
規定ではないのだが、暗黙のルールとして、看護師服では外で食事をしない。
白衣も同様だ。
店に入ると、ギョッとされることがあるためだ。
別に病原菌に塗れているわけではないのだが、そういうイメージがある。
俺たちは、近くのビルの地下にある、マグロを売りにしている寿司屋へ入った。
相変わらず客は少ない。
路面店であれば違うのだろうが。
しかし、推しているだけあって、確かにマグロが美味い。
俺と六花はマグロづくしの20貫を頼む。
ランチメニューにはない。
よく来る俺の特別メニューだ。
「美味しい!」
六花が喜んでいる。
マグロが宝石のように輝いている。
鮮度がいいのだ。
しかも、大将の目利きでいいものを入れている。
マグロを味わいながら、俺は六花に相談した。
「週末のツーリングはどこへ行こうか?」
「え、石神先生にお任せしますが」
「いや、ツーリングはみんなで話し合って決めないとな」
「!」
「お前! なんで涙ぐむんだ!」
六花は俺をじっと見ている。
「いえ、嬉しくて」
「ヘンな奴だな」
苦笑しながら言った。
「それで、お前は行きたい所はないのか?」
「はい、そういうことでしたら、海が見てみたいかと」
「海かぁ。いいじゃないか!」
六花が嬉しそうに微笑んだ。
「それと、ハンバーガーの美味しいお店!」
「お! 今日の六花ちゃんはいつも以上に綺麗だな!」
「アハハハ!」
「よし、じゃあ横須賀なんてどうだ?」
「行ったことありませんが、両方揃っているということですね」
「ああ。やっぱりハンバーガーはアメ公のが美味い。横須賀は海軍基地があって、米兵が好む店が多いんだよ」
「なるほど!」
「ドブ板の店がいいんだよ。牛肉からの肉汁がまたすごくてなぁ」
「すぐに行きたいですね!」
「じゃあ決まりだな!」
「あー、なんか楽しくなってきました!」
「俺もだぁ!」
俺たちは、しばらくハンバーガーの話で盛り上がった。
俺はニューヨークで食べた様々なハンバーガーの話をした。
他のアメリカのあちこちで、変わったバーガーを喰った。
六花は驚きながら聞き、みんな食べてみたいと言った。
会計の時に、大将に言われた。
「マグロも、どうぞよろしく」
「「すいません」」
病院へ戻りながら俺は幾つかのコースを話したが、やはりできるだけ海沿いを行こうということになった。
響子と三浦半島にドライブへ行ったコースだ。
「なんだか燃えて来たな!」
「はい、そうですね!」
「たまには響子にセグウェイで勝って泣かすか!」
「泣いた響子もカワイイですよね!」
「「よし!」」
俺の部屋の内線が鳴った。
「今、響子が起きました」
「よし、すぐ行く!」
俺たちは三人で屋上に上がった。
パイロンでコースを作る。
「じゃあ、三周して一番早くゴールした奴が勝ちな!」
俺と六花は本気で走った。
呆気なく、響子に負けた。
走りなれているということ以上に、響子の体重が軽かった。
俺はハングオンでコーナーを攻めて、派手に転んだ。
最近、一日の行動が変わった。
朝、8時半に起床。
9時に軽い朝食。
このあたりは一般の入院患者と違う。
大分遅い。
ちなみに、一般の入院患者の食事は、病院側の都合に拠っている。
食事の時間帯を早めないことには、業者に負担をかけるためだ。
響子の場合は、直接ホテルなどから取り寄せるので、関係ない。
食事が終わると、響子はセグウェイに乗る。
俺が許可した範囲を巡回し、所々で挨拶する。
たまに、検査を受けるときもある。
そういう時は、多少不機嫌になるので、六花がその前に遊んでやっている。
30分も乗っていると疲れてくるので、ベッドに戻る。
本を読んだり、映画を観ることもある。
体調による。
昼食の後は、今まで通りに俺が抱いて部屋に連れて行く。
甘えてきたらベッドに戻し、昼寝をする。
2時間ほどで目を覚ますので、またセグウェイに乗る。
今度は六花が一緒にいて、屋上で遊ばせるか、六花も一緒に遊ぶ。
1時間ほどでまたベッドに。
夕食までまったりと過ごす。
ここまでセグウェイに夢中になるとは思わなかった。
「寝たな」
「寝ましたね」
「おい、一緒にマグロを喰いに行こう」
「はい! すぐに着替えてきます!」
規定ではないのだが、暗黙のルールとして、看護師服では外で食事をしない。
白衣も同様だ。
店に入ると、ギョッとされることがあるためだ。
別に病原菌に塗れているわけではないのだが、そういうイメージがある。
俺たちは、近くのビルの地下にある、マグロを売りにしている寿司屋へ入った。
相変わらず客は少ない。
路面店であれば違うのだろうが。
しかし、推しているだけあって、確かにマグロが美味い。
俺と六花はマグロづくしの20貫を頼む。
ランチメニューにはない。
よく来る俺の特別メニューだ。
「美味しい!」
六花が喜んでいる。
マグロが宝石のように輝いている。
鮮度がいいのだ。
しかも、大将の目利きでいいものを入れている。
マグロを味わいながら、俺は六花に相談した。
「週末のツーリングはどこへ行こうか?」
「え、石神先生にお任せしますが」
「いや、ツーリングはみんなで話し合って決めないとな」
「!」
「お前! なんで涙ぐむんだ!」
六花は俺をじっと見ている。
「いえ、嬉しくて」
「ヘンな奴だな」
苦笑しながら言った。
「それで、お前は行きたい所はないのか?」
「はい、そういうことでしたら、海が見てみたいかと」
「海かぁ。いいじゃないか!」
六花が嬉しそうに微笑んだ。
「それと、ハンバーガーの美味しいお店!」
「お! 今日の六花ちゃんはいつも以上に綺麗だな!」
「アハハハ!」
「よし、じゃあ横須賀なんてどうだ?」
「行ったことありませんが、両方揃っているということですね」
「ああ。やっぱりハンバーガーはアメ公のが美味い。横須賀は海軍基地があって、米兵が好む店が多いんだよ」
「なるほど!」
「ドブ板の店がいいんだよ。牛肉からの肉汁がまたすごくてなぁ」
「すぐに行きたいですね!」
「じゃあ決まりだな!」
「あー、なんか楽しくなってきました!」
「俺もだぁ!」
俺たちは、しばらくハンバーガーの話で盛り上がった。
俺はニューヨークで食べた様々なハンバーガーの話をした。
他のアメリカのあちこちで、変わったバーガーを喰った。
六花は驚きながら聞き、みんな食べてみたいと言った。
会計の時に、大将に言われた。
「マグロも、どうぞよろしく」
「「すいません」」
病院へ戻りながら俺は幾つかのコースを話したが、やはりできるだけ海沿いを行こうということになった。
響子と三浦半島にドライブへ行ったコースだ。
「なんだか燃えて来たな!」
「はい、そうですね!」
「たまには響子にセグウェイで勝って泣かすか!」
「泣いた響子もカワイイですよね!」
「「よし!」」
俺の部屋の内線が鳴った。
「今、響子が起きました」
「よし、すぐ行く!」
俺たちは三人で屋上に上がった。
パイロンでコースを作る。
「じゃあ、三周して一番早くゴールした奴が勝ちな!」
俺と六花は本気で走った。
呆気なく、響子に負けた。
走りなれているということ以上に、響子の体重が軽かった。
俺はハングオンでコーナーを攻めて、派手に転んだ。
0
お気に入りに追加
228
あなたにおすすめの小説
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
NPO法人マヨヒガ! ~CGモデラーって難しいんですか?~
みつまめ つぼみ
キャラ文芸
ハードワークと職業適性不一致に悩み、毎日をつらく感じている香澄(かすみ)。
彼女は帰り道、不思議な喫茶店を見つけて足を踏み入れる。
そこで出会った青年マスター晴臣(はるおみ)は、なんと『ぬらりひょん』!
彼は香澄を『マヨヒガ』へと誘い、彼女の保護を約束する。
離職した香澄は、新しいステージである『3DCGモデラー』で才能を開花させる。
香澄の手が、デジタル空間でキャラクターに命を吹き込む――。
双葉病院小児病棟
moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。
病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。
この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。
すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。
メンタル面のケアも大事になってくる。
当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。
親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。
【集中して治療をして早く治す】
それがこの病院のモットーです。
※この物語はフィクションです。
実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
人形の中の人の憂鬱
ジャン・幸田
キャラ文芸
等身大人形が動く時、中の人がいるはずだ! でも、いないとされる。いうだけ野暮であるから。そんな中の人に関するオムニバス物語である。
【アルバイト】昭和時代末期、それほど知られていなかった美少女着ぐるみヒロインショーをめぐる物語。
【少女人形店員】父親の思い付きで着ぐるみ美少女マスクを着けて営業させられる少女の運命は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる