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美しい姉妹 Ⅵ
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風花が風呂から上がった。
「スゴイお風呂ですね! テレビが見られるなんて!」
「喜んでもらって、何よりだ」
今日は土曜日で、亜紀ちゃんとの梅酒会だ。
俺は六花と風花も誘って、四人で飲んだ。
六花はハイネケンと梅酒で悩んでいたが、結局みんなと同じ梅酒を飲む。
「石神先生! そういえば、あのコンソメは絶品でした!」
「そうそう、皇紀もルーもハーも驚いてました」
六花と亜紀ちゃんが口々に言う。
「お前らも、ケダモノみたいに喰わなきゃ、ああいういいものも出せるんだけどなぁ」
「「エェッー!」」
風花が可笑しそうに笑っている。
「そういえば、夕べはあれからどうしたんだ?」
「あ、そうです。石神先生がいつの間にか帰っちゃってて!」
「だってしょうがないだろう」
「一緒にお風呂に入って、背中を洗ったんです」
「そうか」
「お姉ちゃんは部屋を用意してくれてたんですが、一緒に寝ようって」
「全部鍵は閉めてます」
亜紀ちゃんが不思議そうな顔をする。
「そ、そうか」
「そうしたら、お姉ちゃん部屋が石神さんのポスターだらけで」
「お前、何やってんの?」
俺は全部剥がせと言い、六花は絶対嫌ですと言う。
「あの特攻服のやつか」
「あ、それは一杯ありましたが、他にもスーツとか白衣とか、さっきの車の写真もありました」
「おーまーえー!」
「私が隠し撮りしました」
「平然と言うな!」
俺たちは剥がせ、絶対嫌ですと、言い合った。
風花と亜紀ちゃんが笑って見ている。
「儀式があると言われ、寝る前に枕元のお姉ちゃんの写真に手を合わせるんですね。石神さん知ってました?」
「あのスタジオで撮ったやつか」
「そうです!」
亜紀ちゃんにちょっと話してやる。
六花を先輩のモデル事務所に連れて行き、本格的なメイクでプロのカメラマンに撮影してもらったこと。
「へぇー、私も見てみたいです」
「じゃあ、今度持ってきます」
亜紀ちゃんは楽しみだと言った。
「まあ、あの時の六花は、本当に綺麗だったよなぁ」
「そんなことないです」
「お前もまんざらでもなかったじゃないか!」
「まあ、そんなことも」
六花が珍しく赤くなった。
俺は、あれが俺の印税のかわりだったと教えた。
六花にも話していなかった。
「カマキリ好子というなぁ。そのモデルの歌なんだよ。『カマキリ・パッション』というな」
「それ知ってます!」
「私も!」
風花と亜紀ちゃんが言う。
「あれって、タカさんが作ったんですか!」
「ああ。酔った勢いで即興で作ったものを、先輩が録音してたんだよ」
俺は詳しい経緯を話してやった。
大爆笑だった。
「知りませんでした」
六花が言う。
それから六花のレディース時代の話を風花が聞きたがり、話の流れで俺の暴走族の話になった。
「あの特攻服は、隊長の俺だけが赤だったのな。まあ、喧嘩ばっかりやってたよなぁ」
「石神先生は今でもお強いんです」
「今はそんなにやってないだろう」
「でも、大阪に行ったときにも」
「あ!」
風花が言う。
「そういえば、友だちから聞いたんですけど。私の中学の先輩が、ゲームセンターで大きな男の人が、地元の危ない人たちを一瞬で倒したのを見たって」
六花が俺を指差す。
「あれって、石神さんだったんですか!」
「いや、ちょっと話したらちゃんと分かってくれて良かったよ。いい青年たちだったな」
「石神先生は一言もお話しになりませんでした。何人か骨を折られたと記憶してます」
「あ、お前ぇー!」
「私は「やめてやめて」と叫ぶだけでした」
「うそつけ! お前笑って見てたじゃないか!」
「タカさん、何やってんですか」
亜紀ちゃんが呆れたように、そう言った。
「でも、あの人たちって、地元でもみんな怖がってて。先輩も見ててスッキリしたって言ってました」
「ほらな! 俺は全部分かってたんだよ!」
「ウソです。私にゲームでちょっと負けてて、イライラしていたのではないかと」
「おまえー!」
「リハビリにもならねぇなっておっしゃってましたよね」
「もう勘弁してくれ」
「タカさん、危ないことはしないでください」
亜紀ちゃんが涙目で言う。
俺は亜紀ちゃんの頭を抱きしめて謝った。
俺は話を逸らすために、双子の学校での凄さを話した。
「え、あんなカワイらしい子たちが、小学校を支配してるんですか?」
「そうなんだよ。何しろテストは100点以外ないし、ああ見えて喧嘩も強いからなぁ。風花は気に入られたようだからいいけど、もしも何かされそうになったら「ぱらのーまる」と言えば大丈夫だ」
「「ぱらのーまる」ってなんですか?」
亜紀ちゃんが、以前に俺が怖い映画を見せた話をする。
「私もちょっと見てみようかな」
「やめた方がいい!」
亜紀ちゃんが止めた。
俺たちは楽しく深夜まで話し込んだ。
「じゃあ、そろそろ寝るか」
「あ、私片付けますね!」
手伝うという六花と風花に、大丈夫だと亜紀ちゃんが言う。
六花と風花は一緒の部屋だ。
ダブルサイズのベッドだから、大丈夫だろう。
部屋の前で、六花に礼を言われた。
「石神先生、今日はありがとうございました」
「いいんだよ。風花、おやすみ」
「おやすみなさい。ありがとうございました」
「石神先生、是非お礼を」
潤んだ目で六花が言う。
「いらねー」
俺は念のため鍵を掛けた。
しばらくすると、ガチャガチャと音がする。
あいつ、ブレねぇなぁ。
「スゴイお風呂ですね! テレビが見られるなんて!」
「喜んでもらって、何よりだ」
今日は土曜日で、亜紀ちゃんとの梅酒会だ。
俺は六花と風花も誘って、四人で飲んだ。
六花はハイネケンと梅酒で悩んでいたが、結局みんなと同じ梅酒を飲む。
「石神先生! そういえば、あのコンソメは絶品でした!」
「そうそう、皇紀もルーもハーも驚いてました」
六花と亜紀ちゃんが口々に言う。
「お前らも、ケダモノみたいに喰わなきゃ、ああいういいものも出せるんだけどなぁ」
「「エェッー!」」
風花が可笑しそうに笑っている。
「そういえば、夕べはあれからどうしたんだ?」
「あ、そうです。石神先生がいつの間にか帰っちゃってて!」
「だってしょうがないだろう」
「一緒にお風呂に入って、背中を洗ったんです」
「そうか」
「お姉ちゃんは部屋を用意してくれてたんですが、一緒に寝ようって」
「全部鍵は閉めてます」
亜紀ちゃんが不思議そうな顔をする。
「そ、そうか」
「そうしたら、お姉ちゃん部屋が石神さんのポスターだらけで」
「お前、何やってんの?」
俺は全部剥がせと言い、六花は絶対嫌ですと言う。
「あの特攻服のやつか」
「あ、それは一杯ありましたが、他にもスーツとか白衣とか、さっきの車の写真もありました」
「おーまーえー!」
「私が隠し撮りしました」
「平然と言うな!」
俺たちは剥がせ、絶対嫌ですと、言い合った。
風花と亜紀ちゃんが笑って見ている。
「儀式があると言われ、寝る前に枕元のお姉ちゃんの写真に手を合わせるんですね。石神さん知ってました?」
「あのスタジオで撮ったやつか」
「そうです!」
亜紀ちゃんにちょっと話してやる。
六花を先輩のモデル事務所に連れて行き、本格的なメイクでプロのカメラマンに撮影してもらったこと。
「へぇー、私も見てみたいです」
「じゃあ、今度持ってきます」
亜紀ちゃんは楽しみだと言った。
「まあ、あの時の六花は、本当に綺麗だったよなぁ」
「そんなことないです」
「お前もまんざらでもなかったじゃないか!」
「まあ、そんなことも」
六花が珍しく赤くなった。
俺は、あれが俺の印税のかわりだったと教えた。
六花にも話していなかった。
「カマキリ好子というなぁ。そのモデルの歌なんだよ。『カマキリ・パッション』というな」
「それ知ってます!」
「私も!」
風花と亜紀ちゃんが言う。
「あれって、タカさんが作ったんですか!」
「ああ。酔った勢いで即興で作ったものを、先輩が録音してたんだよ」
俺は詳しい経緯を話してやった。
大爆笑だった。
「知りませんでした」
六花が言う。
それから六花のレディース時代の話を風花が聞きたがり、話の流れで俺の暴走族の話になった。
「あの特攻服は、隊長の俺だけが赤だったのな。まあ、喧嘩ばっかりやってたよなぁ」
「石神先生は今でもお強いんです」
「今はそんなにやってないだろう」
「でも、大阪に行ったときにも」
「あ!」
風花が言う。
「そういえば、友だちから聞いたんですけど。私の中学の先輩が、ゲームセンターで大きな男の人が、地元の危ない人たちを一瞬で倒したのを見たって」
六花が俺を指差す。
「あれって、石神さんだったんですか!」
「いや、ちょっと話したらちゃんと分かってくれて良かったよ。いい青年たちだったな」
「石神先生は一言もお話しになりませんでした。何人か骨を折られたと記憶してます」
「あ、お前ぇー!」
「私は「やめてやめて」と叫ぶだけでした」
「うそつけ! お前笑って見てたじゃないか!」
「タカさん、何やってんですか」
亜紀ちゃんが呆れたように、そう言った。
「でも、あの人たちって、地元でもみんな怖がってて。先輩も見ててスッキリしたって言ってました」
「ほらな! 俺は全部分かってたんだよ!」
「ウソです。私にゲームでちょっと負けてて、イライラしていたのではないかと」
「おまえー!」
「リハビリにもならねぇなっておっしゃってましたよね」
「もう勘弁してくれ」
「タカさん、危ないことはしないでください」
亜紀ちゃんが涙目で言う。
俺は亜紀ちゃんの頭を抱きしめて謝った。
俺は話を逸らすために、双子の学校での凄さを話した。
「え、あんなカワイらしい子たちが、小学校を支配してるんですか?」
「そうなんだよ。何しろテストは100点以外ないし、ああ見えて喧嘩も強いからなぁ。風花は気に入られたようだからいいけど、もしも何かされそうになったら「ぱらのーまる」と言えば大丈夫だ」
「「ぱらのーまる」ってなんですか?」
亜紀ちゃんが、以前に俺が怖い映画を見せた話をする。
「私もちょっと見てみようかな」
「やめた方がいい!」
亜紀ちゃんが止めた。
俺たちは楽しく深夜まで話し込んだ。
「じゃあ、そろそろ寝るか」
「あ、私片付けますね!」
手伝うという六花と風花に、大丈夫だと亜紀ちゃんが言う。
六花と風花は一緒の部屋だ。
ダブルサイズのベッドだから、大丈夫だろう。
部屋の前で、六花に礼を言われた。
「石神先生、今日はありがとうございました」
「いいんだよ。風花、おやすみ」
「おやすみなさい。ありがとうございました」
「石神先生、是非お礼を」
潤んだ目で六花が言う。
「いらねー」
俺は念のため鍵を掛けた。
しばらくすると、ガチャガチャと音がする。
あいつ、ブレねぇなぁ。
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