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狂犬・宇留間 Ⅱ

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 宇留間が、俺のことを探している。

 恐らく、あいつは近いうちに俺に辿り着くだろう。
 逆の立場ならば、俺は明日にでも前に立つことができる。



 準備しなければならない。

 俺はすぐに何本かの電話を掛けた。



 「ああ、花岡さん。お休みのところを申し訳ありません」
 「ううん。私に声が掛かるのは分かってたから」

 栞には、やはりじじぃから連絡が行っていたようだ。

 「おじいちゃんがね、石神くんはきっと私に頼んでくるだろうって」
 「本当に申し訳ありませんが」
 「いいのよ。子どもたちのことでしょう?」
 「はい」

 「学校の行き帰りは、うちの人間が付くって。任せて大丈夫だと思うよ」
 予想外だった。
 


 「私は石神くんの家にいればいいのかな?」
 「はい、そうしていただけると。俺も家を空けることが多いもんですから」
 「分かった。今日から行くね」
 「ありがとうございます」

 「ああ、それとね。おじいちゃんが私の弟を呼んだって」
 あのフランス外人部隊か。

 「石神くんじゃ動きにくいこともあるだろうから、弟にその辺はやらせると言ってた」
 「そうですか」



 「それとね」
 「はい」

 「石神くんから連絡が来たら伝えろって」
 「なんでしょうか」

 「あのね、ちょっと言い難いんだけどね、あのね、「キンタマだけは守ってやる」だって!」
 栞は一際大きな声で言った。

 「あのじじぃ」
 「でもね、おじいちゃんがここまでするって、ちょっと心配なの」
 「はい」
 「花岡が動けば大抵のことは収まるの。でもね、ここまでやるとなると、相手は多分一筋縄じゃいかないということだと思うの」

 「そうですね」





 あの時、詫びの金を宇留間のチームに収めさせたときに、幹部連中から聞いた。

 「もう解散するからいいんですけど」
 
 幹部の一人は、宇留間のやり方に付いていけないと言った。
 俯いたまま、憑き物が落ちたように放心した顔で吶々と語り出す。

 相手チームのヘッドの姉妹を攫って、暴行した挙句に股間と尻に熱した鉄棒を突っ込んだこと。
 強姦や暴行は日常茶飯事だったようだ。

 また、自分たちよりもでかいチームの幹部には、家族全員の顔をズタズタに切り裂いてやったことを語った。

 他にも凄まじい残虐な行為を告白した。
 従わない仲間も、同様の目に遭ったこと。




 そして、三人を山に埋めたこと。



 あいつには人間のブレーキはねぇ。

 聞いていた俺たちも背筋が寒くなった。






 以前に六花の母親の調査で使った探偵事務所に連絡した。
 金は幾らでも払うから、横の繋がりも使って、徹底的に宇留間とその半グレ集団を調べるように伝える。

 大学の友人の伝を使い、警察幹部の協力を仰いだ。
 キャリア組に進んだ友人たちが、俺のために動いてくれる。
 特に暴対と公安の情報はありがたい。




 徐々に情報が集まり、すぐに宇留間の拠点が千葉の房総にあることが分かった。


 俺は斬のじじぃに電話した。


 「じじぃ、喜べ」
 「なんだ」

 「お前の着信ウンコがちょっとだけ小さくなったぞ」
 「なんだと!」

 「良かったな」
 「お前! いつかぶっ殺す!」
 「なんだよ、この前は俺に尻を蹴られて泣いて謝ってたくせに」
 「本当に殺すからな!」

 しばらく、殺す、やってみろと言い合う。


 「さて、本題です」
 「このやろう」

 俺は房総半島での宇留間の拠点を話した。

 「ふん! そんなことをわしに話してどうするんだ」
 「いや、栞の弟が来るって聞いたもんで、俺は別に会いたくもねぇから。さっさとそっちに行かせてくれ」
 「お前、わしを利用しようとしても無駄だぞ」

 「だって、お前は俺のキンタマが舐めたいんだろ?」
 「おのれ!」

 「さっさと始末しろよな!」

 俺は電話を切った。








 翌日、そいつが俺の前に現われた。
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