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挿話 「カタナ」秘話
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☆☆高等学校。
県内トップの進学校。
毎年、東大現役合格者を10人以上出していた。
切田が、また俺を睨んでいる。
中間テストの結果発表。
廊下に学年全員の名前が、順位順に総合点数と共に貼られている。
俺は左端にある自分の名前を見ていた。
《総合得点1200点 学年一位:石神高虎》
《総合得点981点 学年二位:切田美紗子》
「おい、石神!」
担任の竹尾先生だ。
「また全教科満点だったな!」
「はぁ」
「お前は本当にどうかしてるよなぁ!」
竹尾先生は嬉しそうに笑い、俺の肩を揺すった。
「あの、先生」
「おお、なんだ切田」
「石神くんって、おかしいですよ。絶対に不正をしてます」
「お前、そんないい加減なことを言うな。石神はちゃんと試験を受けているぞ」
「だって!」
「なんだ?」
「おかしいですよ、全教科100点なんて!」
「あのさ、切田」
「なによ!」
「なんで、あんな問題で間違うの?」
切田は恐ろしい顔をして俺の頬を殴った。
俺は切田の鼻にパンチを入れた。
切田は鼻血を出しながらぶっ倒れる。
「おい、やめろって!」
職員室。
「お前、幾らなんでも女の子の顔を殴るか?」
「すいませんでした!」
「まあまあ、竹尾先生。石神も先に殴られたんだし、その前にも酷いことを言われたんでしょ?」
教頭先生だ。
「はあ、まあその通りですが」
「だったらもう、その辺でいいじゃないですか。石神も反省してるんですし」
「はぁ」
「よし、石神はもう帰っていいぞ」
「はい、もうしわけありませんです!」
《力なき正義は無力であり、正義なき力は圧制である》
(La justice sans pouvoir est impuissante et le pouvoir sans justice est l’oppression.)
切田、パスカルくらい読んでおけよな!
俺は高校生になっても、暴力への衝動は衰えることがなかった。
しかし、学年トップをぶっちぎりでひた走る俺は、何のお咎めも受けることはなかった。
まあ、悪知恵のお蔭もあるが。
切田は勉強家だ。
相当の時間を勉強に充て、進学塾を3つも掛け持ちしている。
まあ、俺に言わせれば、それが時間の無駄なのだが。
人間の記憶や思考は、単純な暗記動作では向上しない。
重要なのは「関連性」だ。
複数のものと関連付けされることで、記憶は定着し、思考は活性化する。
切田がやっているのは、小学生が九九を暗記する方法と同じだ。
時間をかければできるが、効率は非常に悪い。
塾でテクニックなどを教わっているだろう。
そんなものよりも、俺はずっと効率的な方法を知っている。
それだけのことだ。
地上にいれば、周囲のことしか見えない。
しかし、上空から見れば、ずっと多くのものが見える。
俺は英語だけではなく、ドイツ語やフランス語も勉強している。
俺は微積分だけではなく、線形、非線形数学を学び、岡潔を読んでいる。
俺は『万葉集古儀』を読み、保田與重郎を読み尽くす。
俺は『プリンキピア』を読み、相対性理論の数式を暗記している。
俺はニーチェを読み、埴谷雄高を読みゲーテを原文で読み、『エッセー』をフランス語で読解中だ。
そして俺は、暴走族『ルート20』の近隣で有名な特攻隊長だ。
中間試験が終わり、夏休みを前にしてヘッドの井上さんが言った。
「トラ! そろそろピエロと決着つけるか?」
「いいんじゃないですか」
「俺のカタナの仇だからな!」
「え、ええ。そうですね!」
土曜の集会でピエロのコースとぶつかる進路を決めた。
総勢150名が全員遠征パレードに参加する。
どこにもバカがいて、知り合いに自慢するものだから、お互いにぶつかるつもりで走っている。
相模原の基地跡で総勢500名のゴチャマンとなった。
「オイ! 赤虎だ!」
数人が俺に向かってくる。
俺は赤い特攻服を着ていたので、「赤虎」と敵チームから呼ばれていた。
真っ先に出てきた一人の鎖骨をすれ違いざまに砕き、後ろの一人の首に腕を絡めて頭から地面に落とす。
ゴキっという音がして、そいつは動かなくなる。
圧力を感じて頭を下げると、鉄パイプが通過した。
「こいつ! 後ろにも目があるのかよ!」
振り切った鉄パイプを掴み、相手から引き抜く。
そのまま脳天を直撃。
派手な血を振りまきながら、ぶっ倒れた。
残りの二人は普通に睾丸を蹴り、肋骨を膝でへし折って終わった。
俺を見つけて潰そうと集まってくるが、五人がほとんど一撃で沈んだのを見て、遠巻きにしている。
「赤虎はやべぇよ」
誰かがそう言った。
俺の傍にも、仲間が数人集まってきた。
「俺がやる!」
日本刀を抜いてきた。
「おい、ポントウ出てきたぞ!」
俺が叫んだ。
「トラさん、まずいですよ!」
「ばかやろう! 楽しくなってきたなぁ!」
俺は走り出し、日本刀の奴に向かう。
振り下ろされる前に、俺は横に移動した。
地面に切っ先が打ち込まれる。
俺は握り手を踵落としで蹴り下げた。
日本刀が地面に跳ねる。
そのまま俺は前進し、アッパーを顎に叩き込む。
50センチも浮き上がり、下顎が粉砕され数本の歯が飛び散った。
俺は日本刀を拾い、肩に担いだ。
超嬉しかった。
遠巻きの集団が一斉に逃げた。
「おい、待てって! ちょっと斬らせろ!」
横からバイクが突っ込んで来る。
俺は日本刀を横なぎにして、ライトからガスタンクまで切り裂いた。
日本刀が折れた。
「あぁー! 俺の正宗がぁー!」
「トラさんって、時々ヘンなこと言いますよね」
「バカ! あの人は☆☆高校の学年トップだぞ!」
「じゃあ、秀才?」
「天才だよ!」
「ああ、俺の正宗が泣いているぜ!」
「やっぱヘン」
「バカ! 天才なんだよ!」
俺は折れた日本刀を捨て、激しそうな場所を探した。
シャコタンのセリカのボンネットに胡坐かいてる坊主頭の奴がいた。
ニタニタ笑っている。
そいつは俺を見て叫んだ。
「赤虎ぁー!」
「青か?」
ピエロのヘッドの「青」だった。
カチコミになると、クスリでハイになる奴。
そのせいかは知らないが、残虐なことも平気でやると聞いている。
青は2メートルもある鉄パイプを肩に掲げ、俺に向かってくる。
その手前でピエロの数人が襲い掛かってきた。
足をかけて転ばし、顔を踏み潰す。
口に手を突っ込んで横に移動させ、肝臓に足を突っ込む。
耳を掴み頭を下げさせ、膝で顔を潰す。
そいつで、青が振り下ろす鉄パイプを防いだ。
右の肩がひしゃげ、胴体に20センチもめり込んだ。
とんでもない怪力だ。
クスリでリミッターがぶっ飛んでやがる。
顔を踏み潰した奴の足を掴み、ジャイアントスイングで青に投げる。
青は鉄パイプを横に払い、肋骨にめり込ませた。
そいつは気絶から醒め、瞬時にまた気を喪った。
俺は青に迫り、青の顎に掌底を打ち込む。
青はのけぞり、鉄パイプを手放した。
そのまま俺の右腕を掴む。
握りつぶされそうだ。
左手の人差し指を青の眼球に打ち込む。
思わず青は手を離し、身体を前に折り、目を押さえた。
「もう潰れてるぜ!」
青の両耳を掴み、膝を手ごと顔面にぶち込む。
青は斃れない。
もう一度ぶち込む。
青の手が離れてダラリと下がった。
俺の特攻服は、青の噴出す血と恐らく歯が食い込んだ。
もう一度ぶち込む。
顔面がへこんだ。
青が大の字にぶっ倒れた。
顔がちょっとヒラメのようになった。
「トラが青をやったぁー!」
誰かが大声で叫んだ。
「オオォッーーー!!」
俺たちのチームが勢いづいた。
倍以上も多かったピエロは崩壊していく。
俺を見るとみんな逃げ出し、もう相手をしてくれない。
俺は青が座っていたセリカのボンネットに腰掛、一息ついた。
もう趨勢は決まった。
ピエロの中には早々に逃げ出す奴も出てきた。
俺は一休みの後、いきっていた奴らを次々に倒した。
仲間が青の近くに幹部連中を集めた。
全員裸にして正座。
あちこちで、バイクに火がつけられる。
「お前ら! こんなことして」
俺はそいつの口にバールを突っ込んで、前歯を壊した。
口を押さえる手の間から、激しく血を吐きながら、地面に転げまわる。
額を踏み、指の間から、もう一度バールを突っ込む。
「お前ら負けたんだよ」
他の幹部連中は蒼白になる。
井上さんが出てきた。
「お前ら幹部は100万、下の連中は一人十万だ。来週一杯で持って来い!」
俺たちは幹部二人を四つ輪のトランクに押し込み、アジトの産廃工場のプレハブに運ぶ。
井上さんが俺の肩を抱き、お前のお蔭だと言った。
「ところでよ、トラ」
「はい、なんですか」
「青って、死んだんじゃねぇの?」
「いや、さすがに」
「だって、顔が異常にへこんでるぞ」
「最初から、あいつはあんな顔ですよ」
「そーかなー」
後日、金を集めてきた幹部に聞くと、青はちゃんと生きていた。
良かったぁー。
「ねぇ、石神くん」
切田が教室に来て、俺に言った。
「放課後に音楽室に来てよ」
「やだよ」
「私、石神くんがスキなの」
「……」
音楽室に行くと、切田が下着姿で待っていた。
「石神くん、来て」
「せんせー!」
教頭先生が入ってくる。
「切田さん、何やってるの?」
切田は停学になり、その後転校した。
善人が悪いこと考えても、どうしようもねぇな。
ピエロから集まった金は、井上さんがカタナの代金を取り、他は幹部で分けられた。
俺は一応、断った。
「トラは漢だ!」
「金や女よりも、喧嘩だ!」
ヘンな評判が立った。
だって井上さんのカタナ潰したの俺だしなぁ。
ピエロがやったって嘘ついたもんなぁ。
俺は女などに興味はねぇよ。
ということは全然なかった。
県内トップの進学校。
毎年、東大現役合格者を10人以上出していた。
切田が、また俺を睨んでいる。
中間テストの結果発表。
廊下に学年全員の名前が、順位順に総合点数と共に貼られている。
俺は左端にある自分の名前を見ていた。
《総合得点1200点 学年一位:石神高虎》
《総合得点981点 学年二位:切田美紗子》
「おい、石神!」
担任の竹尾先生だ。
「また全教科満点だったな!」
「はぁ」
「お前は本当にどうかしてるよなぁ!」
竹尾先生は嬉しそうに笑い、俺の肩を揺すった。
「あの、先生」
「おお、なんだ切田」
「石神くんって、おかしいですよ。絶対に不正をしてます」
「お前、そんないい加減なことを言うな。石神はちゃんと試験を受けているぞ」
「だって!」
「なんだ?」
「おかしいですよ、全教科100点なんて!」
「あのさ、切田」
「なによ!」
「なんで、あんな問題で間違うの?」
切田は恐ろしい顔をして俺の頬を殴った。
俺は切田の鼻にパンチを入れた。
切田は鼻血を出しながらぶっ倒れる。
「おい、やめろって!」
職員室。
「お前、幾らなんでも女の子の顔を殴るか?」
「すいませんでした!」
「まあまあ、竹尾先生。石神も先に殴られたんだし、その前にも酷いことを言われたんでしょ?」
教頭先生だ。
「はあ、まあその通りですが」
「だったらもう、その辺でいいじゃないですか。石神も反省してるんですし」
「はぁ」
「よし、石神はもう帰っていいぞ」
「はい、もうしわけありませんです!」
《力なき正義は無力であり、正義なき力は圧制である》
(La justice sans pouvoir est impuissante et le pouvoir sans justice est l’oppression.)
切田、パスカルくらい読んでおけよな!
俺は高校生になっても、暴力への衝動は衰えることがなかった。
しかし、学年トップをぶっちぎりでひた走る俺は、何のお咎めも受けることはなかった。
まあ、悪知恵のお蔭もあるが。
切田は勉強家だ。
相当の時間を勉強に充て、進学塾を3つも掛け持ちしている。
まあ、俺に言わせれば、それが時間の無駄なのだが。
人間の記憶や思考は、単純な暗記動作では向上しない。
重要なのは「関連性」だ。
複数のものと関連付けされることで、記憶は定着し、思考は活性化する。
切田がやっているのは、小学生が九九を暗記する方法と同じだ。
時間をかければできるが、効率は非常に悪い。
塾でテクニックなどを教わっているだろう。
そんなものよりも、俺はずっと効率的な方法を知っている。
それだけのことだ。
地上にいれば、周囲のことしか見えない。
しかし、上空から見れば、ずっと多くのものが見える。
俺は英語だけではなく、ドイツ語やフランス語も勉強している。
俺は微積分だけではなく、線形、非線形数学を学び、岡潔を読んでいる。
俺は『万葉集古儀』を読み、保田與重郎を読み尽くす。
俺は『プリンキピア』を読み、相対性理論の数式を暗記している。
俺はニーチェを読み、埴谷雄高を読みゲーテを原文で読み、『エッセー』をフランス語で読解中だ。
そして俺は、暴走族『ルート20』の近隣で有名な特攻隊長だ。
中間試験が終わり、夏休みを前にしてヘッドの井上さんが言った。
「トラ! そろそろピエロと決着つけるか?」
「いいんじゃないですか」
「俺のカタナの仇だからな!」
「え、ええ。そうですね!」
土曜の集会でピエロのコースとぶつかる進路を決めた。
総勢150名が全員遠征パレードに参加する。
どこにもバカがいて、知り合いに自慢するものだから、お互いにぶつかるつもりで走っている。
相模原の基地跡で総勢500名のゴチャマンとなった。
「オイ! 赤虎だ!」
数人が俺に向かってくる。
俺は赤い特攻服を着ていたので、「赤虎」と敵チームから呼ばれていた。
真っ先に出てきた一人の鎖骨をすれ違いざまに砕き、後ろの一人の首に腕を絡めて頭から地面に落とす。
ゴキっという音がして、そいつは動かなくなる。
圧力を感じて頭を下げると、鉄パイプが通過した。
「こいつ! 後ろにも目があるのかよ!」
振り切った鉄パイプを掴み、相手から引き抜く。
そのまま脳天を直撃。
派手な血を振りまきながら、ぶっ倒れた。
残りの二人は普通に睾丸を蹴り、肋骨を膝でへし折って終わった。
俺を見つけて潰そうと集まってくるが、五人がほとんど一撃で沈んだのを見て、遠巻きにしている。
「赤虎はやべぇよ」
誰かがそう言った。
俺の傍にも、仲間が数人集まってきた。
「俺がやる!」
日本刀を抜いてきた。
「おい、ポントウ出てきたぞ!」
俺が叫んだ。
「トラさん、まずいですよ!」
「ばかやろう! 楽しくなってきたなぁ!」
俺は走り出し、日本刀の奴に向かう。
振り下ろされる前に、俺は横に移動した。
地面に切っ先が打ち込まれる。
俺は握り手を踵落としで蹴り下げた。
日本刀が地面に跳ねる。
そのまま俺は前進し、アッパーを顎に叩き込む。
50センチも浮き上がり、下顎が粉砕され数本の歯が飛び散った。
俺は日本刀を拾い、肩に担いだ。
超嬉しかった。
遠巻きの集団が一斉に逃げた。
「おい、待てって! ちょっと斬らせろ!」
横からバイクが突っ込んで来る。
俺は日本刀を横なぎにして、ライトからガスタンクまで切り裂いた。
日本刀が折れた。
「あぁー! 俺の正宗がぁー!」
「トラさんって、時々ヘンなこと言いますよね」
「バカ! あの人は☆☆高校の学年トップだぞ!」
「じゃあ、秀才?」
「天才だよ!」
「ああ、俺の正宗が泣いているぜ!」
「やっぱヘン」
「バカ! 天才なんだよ!」
俺は折れた日本刀を捨て、激しそうな場所を探した。
シャコタンのセリカのボンネットに胡坐かいてる坊主頭の奴がいた。
ニタニタ笑っている。
そいつは俺を見て叫んだ。
「赤虎ぁー!」
「青か?」
ピエロのヘッドの「青」だった。
カチコミになると、クスリでハイになる奴。
そのせいかは知らないが、残虐なことも平気でやると聞いている。
青は2メートルもある鉄パイプを肩に掲げ、俺に向かってくる。
その手前でピエロの数人が襲い掛かってきた。
足をかけて転ばし、顔を踏み潰す。
口に手を突っ込んで横に移動させ、肝臓に足を突っ込む。
耳を掴み頭を下げさせ、膝で顔を潰す。
そいつで、青が振り下ろす鉄パイプを防いだ。
右の肩がひしゃげ、胴体に20センチもめり込んだ。
とんでもない怪力だ。
クスリでリミッターがぶっ飛んでやがる。
顔を踏み潰した奴の足を掴み、ジャイアントスイングで青に投げる。
青は鉄パイプを横に払い、肋骨にめり込ませた。
そいつは気絶から醒め、瞬時にまた気を喪った。
俺は青に迫り、青の顎に掌底を打ち込む。
青はのけぞり、鉄パイプを手放した。
そのまま俺の右腕を掴む。
握りつぶされそうだ。
左手の人差し指を青の眼球に打ち込む。
思わず青は手を離し、身体を前に折り、目を押さえた。
「もう潰れてるぜ!」
青の両耳を掴み、膝を手ごと顔面にぶち込む。
青は斃れない。
もう一度ぶち込む。
青の手が離れてダラリと下がった。
俺の特攻服は、青の噴出す血と恐らく歯が食い込んだ。
もう一度ぶち込む。
顔面がへこんだ。
青が大の字にぶっ倒れた。
顔がちょっとヒラメのようになった。
「トラが青をやったぁー!」
誰かが大声で叫んだ。
「オオォッーーー!!」
俺たちのチームが勢いづいた。
倍以上も多かったピエロは崩壊していく。
俺を見るとみんな逃げ出し、もう相手をしてくれない。
俺は青が座っていたセリカのボンネットに腰掛、一息ついた。
もう趨勢は決まった。
ピエロの中には早々に逃げ出す奴も出てきた。
俺は一休みの後、いきっていた奴らを次々に倒した。
仲間が青の近くに幹部連中を集めた。
全員裸にして正座。
あちこちで、バイクに火がつけられる。
「お前ら! こんなことして」
俺はそいつの口にバールを突っ込んで、前歯を壊した。
口を押さえる手の間から、激しく血を吐きながら、地面に転げまわる。
額を踏み、指の間から、もう一度バールを突っ込む。
「お前ら負けたんだよ」
他の幹部連中は蒼白になる。
井上さんが出てきた。
「お前ら幹部は100万、下の連中は一人十万だ。来週一杯で持って来い!」
俺たちは幹部二人を四つ輪のトランクに押し込み、アジトの産廃工場のプレハブに運ぶ。
井上さんが俺の肩を抱き、お前のお蔭だと言った。
「ところでよ、トラ」
「はい、なんですか」
「青って、死んだんじゃねぇの?」
「いや、さすがに」
「だって、顔が異常にへこんでるぞ」
「最初から、あいつはあんな顔ですよ」
「そーかなー」
後日、金を集めてきた幹部に聞くと、青はちゃんと生きていた。
良かったぁー。
「ねぇ、石神くん」
切田が教室に来て、俺に言った。
「放課後に音楽室に来てよ」
「やだよ」
「私、石神くんがスキなの」
「……」
音楽室に行くと、切田が下着姿で待っていた。
「石神くん、来て」
「せんせー!」
教頭先生が入ってくる。
「切田さん、何やってるの?」
切田は停学になり、その後転校した。
善人が悪いこと考えても、どうしようもねぇな。
ピエロから集まった金は、井上さんがカタナの代金を取り、他は幹部で分けられた。
俺は一応、断った。
「トラは漢だ!」
「金や女よりも、喧嘩だ!」
ヘンな評判が立った。
だって井上さんのカタナ潰したの俺だしなぁ。
ピエロがやったって嘘ついたもんなぁ。
俺は女などに興味はねぇよ。
ということは全然なかった。
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