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別荘の日々 Ⅳ

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 朝に、やっぱり双子の花岡流で起こされた。
 俺の両腕に絡み付いている。


 柳と亜紀ちゃんとも違って、何の感触もねぇ。
 俺はそのままベッドの上に立ち上がって両手を振ってやった。
 二人がキャッキャと喜ぶ。
 亜紀ちゃんが朝食ができたと呼びに来た。

 「あ、ヤラシー王様だ」

 「……」



 朝食は中山夫妻からいただいたアジの干物と、ウインナーが大量に炒められていた。
 ウインナーが好きな双子が大喜びだ。


 「すいません。冷蔵庫に一杯あったんで。まずかったですか?」
 「いや、全然構わないよ。どうせまた買出しに行くんだしな」

 「あ、そうだ。皇紀!」
 「はい?」

 「お前、昨日生意気なことを言ってた罰だ。俺と一緒に買出しに行くぞ!」
 「はい」



 片付けは三人に任せ、俺と皇紀は街に向かった。

 「あの、タカさん。昨日は生意気を言ってすみませんでした」

 俺は笑って言う。
 「そうじゃねぇよ! 冗談だって。お前と一緒に出掛けたかっただけだ」
 皇紀はホッとすると同時に嬉しそうに笑う。


 「女が三人もいると、なかなか男同士で話せないからなぁ。今日から響子も来るし、ますますだ」
 「はい」
 「でも、俺はいつもお前のことを大事に思っているし、大好きだしな。昨日も真っ先に俺に礼を言ってくれたのもお前だ」
 「はい」
 「もちろん礼なんて要らないけど、お前の心だよな。ありがとう」
 「いいえ」


 狭い舗装道路を進んでいく。
 ハマーはでかいから、対向車に注意が必要だ。


 「ところで、今日は何を買出しに行くんですか? 昨日タカさんが行ってましたよね」
 「ああ、昨日見つけられなくてな。別に今日じゃなくてもいいんだが、花火だよ」
 「なるほど!」
 「もう、花火と言えば皇紀じゃない」
 「そうなんですか」
 「おう!」



 昨日のスーパーには売ってなかった。
 まあ、スーパーに寄って聞いてみるか。



 俺は昨日のスーパーに行った。
 丁度昨日手伝ってくれた店員が、俺を見つけて寄って来る。

 「昨日はありがとうございました! 今日は何かお探しですか?」
 「ええ、子どもたちに花火をやらせたいと思ってるんですが、こちらにはありませんか?」
 「ああ、それでしたら、特設売り場です。どうぞ」
 
 俺たちは案内してもらった。
 駐車場はスーパーの裏にあり、特設売り場は正面にあった。
 どうりで見つからなかったわけだ。



 俺は皇紀にキャリーを二つ持ってくるように言う。
 二人で選ぼうとしたが、いろいろあって面倒くさい。

 「なあ、皇紀どん」
 「なんでしょうかタカどん」

 「選んで買うのって、めんどくさくねぇか?」
 「え、でも」
 「近所の子どもたちが、この花火を楽しみにしてるんだよなぁ、きっと」
 「ええ、そうでしょうね」
 「なくなっちゃったら、面白ぇとは思わねぇか? どん」
 「それは悪いことですねぇ、どん」

 俺たちは片っ端から花火をキャリーに入れた。
 皇紀にももっとキャリーを持って来いと言う。
 皇紀が三つのキャリーと格闘していると、先ほどの店員がまた助けてくれる。

 「皇紀! 全部入れろ!」
 「はい!」

 「いえ、お客様。ここで会計いたします。こちらで全部包みますから」
 「そうなの?」



 俺は会計だけして、花火の梱包に時間がかかると聞いたので、構内の喫茶スペースに向かった。
 ちなみに、50万円ほどだった。

 俺と皇紀はクリームメロンソーダを頼む。
 たまに飲みたくなるんだよなぁ。




 俺は皇紀に葵ちゃんたちとの進展を聞き、何もねぇことに嘆く。
 「オッパイとか見せてもらってねぇのかよ!」
 「見ませんよ!」

 「なあ、柳のオッパイとか見たいか?」
 「見たいです!」
 言い切ったぁ!


 「お前も葵ちゃんたちとか付き合ってるのに、柳に惚れるとか、悪い奴だなぁ」
 「えーと、別に二人とは付き合ってるわけじゃ」
 「そんな言い訳が世間様に通用すると思うか?」




 くだらないことを話しているうちに、店員が呼びに来た。

 「準備が整いました! お待たせしてすみません。あ、ここのお飲み物はサービスいたします」

 「だったら、もっと頼んでおけばよかったな」
 「タカさん、悪すぎですよ」
 俺たちは小声で話し、笑った。




 先ほどの特設売り場には、ほとんど「売り切れ」の札が下がっている。
 やったな、皇紀!

 しかし、その脇に積まれたダンボールの量に驚く。
 まずい、ハマーに積めねぇ。


 「あの、この量はお持ち帰り大丈夫でしょうか?」
 「すいません、ちょっと何往復かさせてください」
 「いえいえ、もし宜しければ、お届けさせていただきますが」


 なんていい店員だ。
 名刺を差し出すので、俺も返す。
 店長さんだった。
 どうりで接客が気持ちいいはずだ。


 相手も俺の名刺を見て驚いている。
 まさか医者だとは思っていなかっただろう。

 俺はペンを借り、住所を名刺の裏に書いた。
 私用の電話番号もだ。

 距離的にもお届けは問題ないと言われ、三時ごろにとのことだった。


 俺たちはハマーで別荘に戻る。
 皇紀の勉強時間を削ったからだ。




 俺は何となく、さっきの話の続きをする。

 「お前、本当に柳が好きなんだな」
 「はい。こんな気持ちは初めてです」
 「おい」
 「はい」
 「初恋はなぁ、実らないのがいいんだぞ」
 「エェッー!」

 俺は大笑いした。







 これは、一応三角関係なのだろうか?
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